ノア・ハワード④
目の隈が濃い男が何かに手を伸ばしている。男ははしごに登って魔導灯を根元からへし折る。男たちが何かをのぞき込んでハッとしたと思ったら、急に顔を真っ赤にして怒りだした。次にまた男たちがオレンジの実を半分に切った物を近づけキュッと果汁を垂らした瞬間真っ白になり大量の紙が舞ったかと思ったらぐるぐる回転しながら外に飛び出した。真下の方で老人と少年二人が見上げている。銀糸の髪の少年が手を伸ばし彼の手の中に収まったらしく真っ暗闇になった。
魔導塔が爆発した日の宵の口、王都の大広場の噴水前の建物の外壁に動く絵姿が映し出された。それは夜半まで続いた。王都の人々は映し出された絵姿に驚き噂が噂を呼び夜だというのに人だかりが出来るほどであった。私も城内で騎士たちが騒いでいたので連れて行ってもらった。初めて見る動く絵姿に驚きと感動でしばし見入っていたが、ハッと気がつくと少年二人は私の友人であるヘンリーと手を伸ばしたのは弟のノア・ハワードであった。男たちの中には魔導塔主もいたし、顔なじみの数名も絵姿になっていた。そして今日の謁見の間での出来事を思い出し唖然とした。
翌日学園に着いてすぐにヘンリーのクラスを訪ねた。
「来ると思った。」
と苦笑いするヘンリーは、私が来ることを予想していたのだろう。
絵姿を見たらしいクラスメート数名に取り囲まれていた。
「昨日噴水前に移された絵姿にハワード君居たよね?」
「あれってどう言う仕組みなの?」
「なんでハワード君が映ってたの?」
皆興味津々と言ったところだ。私もそのうちの一人だ。
「あれは弟がなんかやってるみたいなんだよね。僕も昨日初めて動く絵姿見て感動したんだ。どう言う仕組みか聞いたけど内緒って言われちゃった。」
兄にも内緒なんだ。でもどうせ今日もノア・ハワードは王城に呼び出されている。学園を早退して私も謁見の間に行くつもりだ。そう言うとヘンリーは
「ずるいよ。僕も行きたいよ。」
と言っていたが、すまん私も無理矢理入れてもらうのだ。昨日からノア・ハワードから目が離せない。今日は何をしてくれるのか楽しみでしかない。気もそぞろに数時間授業を受けささっと早退し謁見の間に入った。
ノア・ハワードは今日もお祖父様のルイズ・ハワードを伴って謁見の間に入ってきた。昨日と打って変わって今日は不機嫌そうにしていた。
「ノアよ、あれだけのことをしておいて何事もなく帰れるわけなかろう。観念して殿下に聞かれたことに素直に答えるのじゃぞ。」
お祖父様が孫をなだめている。
「今日は魔導塔の連中もいない故、気軽に答えて良いと思われる。殿下は気さくな人であるからな。」
宰相が気を使って和やかな雰囲気を出そうとしているのに、ハワード伯爵が
「ノア!お前とんでもないことをしてくれたな!お前のせいで魔導塔主が逮捕されたぞ。冤罪だったらどうしてくれる。勘当してやろうか!」
と怒りだしノア・ハワードの機嫌は更に低下していく。
「はいはい、勘当ね。いいですよ。では平民になったと言うことでここから失礼いたします。」
と言って出て行こうとするからルイズ・ハワードが息子のエイダン・ハワードに
「お前は口を出すな!せっかくここまでなだめて連れてきたというのに。馬鹿たれ!」
と怒鳴り宰相に部屋から出るようエイダン・ハワードが言われていた。
ハワード伯爵と息子の仲の悪さを露呈し、気まずい空気の中王の登場となった。
昨日と同じように膝をつき頭を垂れるノア・ハワード
「面をあげよ」
無表情のノア・ハワードが
「ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じます。」
とぶっきらぼうに挨拶したが、王は
「昨日とえらく態度が違うぞ。今日は昨日のことを色々と聞きたいからな、機嫌悪そうだがこたえてもらうぞ」
と笑いながら言った。父もノア・ハワードに興味津々であるようだ。




