ノア・ハワード① アレクサンダー視点
側近予定のヘンリー・ハワードの弟が家出したと聞いたのは確か4年前だったと思う。私たちがクラーク学園に入学する前の年だ。その年は弟の側近予定と婚約者候補を選ぶための若葉のお茶会は開催される年だったから良く覚えている。王城に来たヘンリーは気落ちした様子で
「弟が家出したんだ。もうすぐ若葉のお茶会なのに父上と喧嘩したみたいで・・・」
とうなだれていた。
「弟って大人しく引っ込み思案って言ってなかったか?そんな子が家出するか?」
大人しくあまり出来の良くない弟とヘンリーの話から想像していたが、そんな大それた事をするような子とは思えなかった。
「最近ちょっとずつ意見を言うように変わってきてたんだ。でもまさかそんなことするなんて思ってもみなかった」
そして開催された若葉のお茶会は高熱につき出席をご辞退いたしますという返事でノア・ハワードはお茶会を欠席した。それからしばらく経ってハワード領の納税額が昨年よりかなり多くなっていると財務課の文官から聞いたとヘンリーが言っていた。年を経るたびに納税額が増えている、なにか怪しい事業でも興していないか?と財務課がざわつきだし、ハワード伯爵に尋問したと聞いた。しかしハワード伯爵は領の管理は父がしているので知らないと言うので、ハワード伯爵の父であるルイズ・ハワードを領から呼び出し尋問することとなったが、ルイズ・ハワードは
「なんもやっとりません。ただ領内の安全に配慮したので観光客や行商人の宿泊が多くなっただけでございます。」
と、答えるばかりでラチがあかない。仕方ないので、財務課の文官が視察にハワード領に行くと街全体が魔導灯で明るく照らされ人々は活気に満ちていたらしい。それでまたルイズ・ハワードを呼び出しあの街の明るさはなんだ?と問い詰めれば
「孫がしてるのでわしは何も知りません。」
と答え、孫を王城に連れてくるように言うと
「孫は療養の為にハワード領に居ります。体調が悪いのに王城に来いと?未成年ですのでご了承ください。」
とのらりくらりと躱され、とうとう勅令でノア・ハワードを王城に呼び出すこととなった。それが今日である。ノア・ハワードに聞きたいことはハワード領全体の魔導灯の明るさと、どうやって領の納税を上げたかという事であった。そして空中に浮かぶ魔導灯が有るとか無いとかはっきりがその噂も聞きたいことであった。謁見の間に通されたノア・ハワードは、14歳と聞いたが年齢より落ち着いており、銀糸の髪を片方編み込み、洒落たイヤーカフだけのアクセサリーを付け、品の良いシンプルな紺色のスーツで登場した。母親に似た整った顔でヘンリーとはあまり似ていなかった。お祖父様であるルイズ・ハワードの半歩後ろに立ち壁際に並ぶ魔導塔で働く数人と宰相をはじめとする文官数名を左右見渡した後ある一点の所で視線を止め
「見つけました。」
と呟いた。
そして父である王が謁見の間に姿を見せたので恭しく頭を垂れ膝をついて声が掛かるのを待った。
「表をあげよ」
王をしっかりと見つめ
「ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じ泰ります。ハワード伯爵家が次男ノア・ハワードでございます。」
と挨拶をした。
「病気療養中だとの事、今回は誠にすまなかったな。体調はいかがじゃ。今日来られたと言うことは健勝か?」
と、王が気遣うとフッと微笑み
「お気遣いいただきありがとうございます。体調は万全ではありませんが、本日は別件がございまして、どうしても王都に来る用事が出来ましたので参上いたしました。」
なかなかキツいことを言い出したな。と思った。
王の呼びつけは体調不良で断る事もあるけど、今回は用事があるからついでに王に会ってやったよ。という意味だ。確かに病気療養って先方が言ってるのに勅令で呼びつけているのだから配慮がないと言えば配慮がないな。しかも相手は未成年だし。さてどうする父上よ。
二人の間にピリついた空気が流れ周りの者たちがざわざわ騒ぎ出した。
「おい、殿下に向かって失礼ではないか。不敬であるぞ」
「やっぱりハワード家の出来損ないだな。療養中というのも嘘なんだろ。学が足らなくて学園に行けないんだろ」
騒がれても涼しい顔で微笑むノア・ハワード。
「聞きたいことは何でしょう。」




