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ミラー男爵領に着いた日

 「ノンターンこっちこっち~」

俺は今日初めて会ったやつになんでノンタンって呼ばれてるんだ・・・

遠い目をしながらはしゃぐトーマスの末の弟パーシーを見ている。

ミラー男爵領に着いたのだ。ついさっき。今回はお祖父様の配慮でハワード家の馬車で騎士の護衛付きで来たんだけどミラー領につく寸前魔獣が出てきたので雷魔法が得意な騎士に

「雷を剣にまとわせて、電流流す感じでサクッと逝っちゃって~」

なんて偉そうに指示出してたのを、お兄ちゃんに久しぶりに会うのが楽しみなパーシーが門外まで迎えに来ちゃってそれを見てたのよ。俺の魔法の使い方はちょっと変わってるらしい。こうみえて騎士団にかわいがってもらってる俺は騎士にたびたび戦い方のアドバイスを求められるので今回も調子に乗って偉そうにアドバイスしているところをバッチリ見られた上に興味を持たれたらしい。トーマスのご両親には貴族の顔でしっかりとご挨拶をしたいと思っていたのに、

「なあ、さっきのあれ何?魔獣の体小刻みに震えてたけど?なあ、他にもどんな使い方すんの?俺氷魔法得意なんだけどなんか教えてよ。」

と、ずっとまとわりついてくる。そんなパーシーを見て騎士たちも

「ノア坊おもしれーぞ。空中に浮かぶ魔導灯作ったり水魔法めっちゃ細く出して剣の様にスパッと切ったり風魔法で竜巻作ったりな~まぁ、初めて会ったとき巾着袋を頭に被ってるくらい陽気なやつだったしな」

さらっと黒歴史を披露しないで欲しい。トーマスも弟に久しぶりに会って嬉しかったのか

「ノア君は、最初に一緒に旅したときは自分のことノンタンって呼べって言ったんだよ~」

それ、今言うこと?

「ふ~んじゃあ、俺もノンタンって呼ぶわ。ノンタン!年いくつ?俺13なんで巾着被ってたの?」

もうどうでもいいや。貴族面するの今更無理でしょ。

「・・・俺も13。で、キミの名前何?」

「パーシーだよ。よろしくね」

同い年だったらしい。年下かと思った。巾着の話はしれっとスルーしておいた。その後トーマスの家に着いて

「お初にお目に掛かります。ノア・ハワードと申します。トーマス先生には大変お世話になっております。しばらくご厄介になりますがどうぞよろしくお願いいたします。」

と挨拶している横でパーシーがニヤニヤしていた。むかつく。

「ハワード様には息子が大変お世話になっております。ハワード様の所で働くようになってから仕送りが多くなりまして、家族一同感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。」

そうなのよ、トーマスは家庭教師の給金の他に事務も手伝っているので、普通の家庭教師より給金を沢山もらっているのだ。それに見合った仕事をしているのでお礼を言われる筋合いはない。

 挨拶してしばらくお茶して落ち着いた頃に領内の案内をしてもらう。

「何もない領なんですが、領民は気さくですのでなにかお聞きになっても気軽に答えてくれると思います。ただ人が近いと言いますか、気さくゆえなれなれしく感じるかもしれません。本人たちは悪きはないのでご了承いただけますと幸いです。」

トーマスの親が心配して釘を刺してくるけど、大丈夫。俺気にしないから。領民の事心配する前に息子のパーシーの心配をした方が良いと思う。

 トーマス先生に案内してもらう予定だったのに、冒頭のこれである。パーシーついて来ちゃったのよ。で、率先して案内してくれる。

 「リンゴの木が沢山有りますね。リンゴが特産なんですか?」

リンゴの木が至る所にあって赤い実を鈴なりに付けている。

「リンゴが特産ってわけじゃないんだけど、まあ、ぼちぼち出荷したり加工品にして売ったりはしてるけど大した収益にはなってないよ。」

もったいないな~リンゴこんなになってるのに収益になってないってどう言う事?クビをひねってるとパーシーが

「ウチのリンゴ、王都のリンゴと比べると大きさも小さいし、あんまり甘くないんだよ。王都のリンゴ甘いだろ?このリンゴ酸味がきついんだよ。だからあんまり売れないんだ」

見るとリンゴを収穫していた農家のおじさんがぽいぽいリンゴを捨てていたので

「おじさん、このリンゴ捨てるの?食べられないの?」

と聞くと

「これ、傷もんだからな。きれいなリンゴの方が売れる。このあたりじゃ近所でリンゴ配り合うから傷のあるリンゴは捨てて肥料にする位しか使い道ないね。」

加工品はシードルとかになるらしい。捨てるリンゴを一つもらって丸かじりする。

「あー確かにちょっと酸っぱいわ。・・・!これってさぁ、料理につかえないの?」

「料理には使いますが、やはり王都で出回っているリンゴの方が有名ですよ。このリンゴはあまり使われません。領民は使いますが・・・」

ひらめいた。

「俺、多分いけると思う。このリンゴ加熱向きだ。何個かもらって家帰ろう。」

いくつか傷物のリンゴをもらってトーマスの家に帰り、厨房を借りて俺はアップルパイを作った。

アップルパイ、俺の好物。ずっと食べたかった。甘酸っぱいリンゴを使ったパイ。皮と芯でアップルティーを入れてトーマスの家族の前に出す。両親、お兄さん、パーシーの6人で試食する。

「なっ!うまい!これがあのリンゴか?甘酸っぱいリンゴが口いっぱいに広がる!」

お父さん、食レポお上手ですね。そして兄貴とパーシー、無言で食べ過ぎる。試食なんだから意見を言え。

「とても美味しいわ。アップルパイって初めて食べたわ。都会には美味しい物があるのねぇ」

お母さん王都にもありません。

「ノア君、本当にお菓子作るの上手いね。この前のタルトも美味しかったし。やっぱりハワード領でお店出しちゃいなよ。」

自分の領に帰ってもハワード領の事考えなくて大丈夫だよ。トーマス先生。

「ジャムやコンポートを作っても良いと思います。王都でアップルパイの店を出してみてはどうでしょう。もちろんハワード領で販売していただいても構いません。ていうかしてください。アップルパイの他にも何か特産となる物がないかしばらく領内を歩いて考えてみます。」

口の周りにパイを付けたお兄さんが

「そりゃ願ってもないことだけど、ミラー領の為になんでこんなにしてくれるの?なんか後で請求とかしないよね?出せる物なんてないんだけど」

と疑心暗鬼になって聞いてくる。

「僕はトーマス先生にはとてもお世話になっているし、僕が困ったときに手を貸してもらったので自分で出来ることは力になりたいだけです。」

俺は受けた恩は返したいし、仲間だと思った人の力になりたい。ハワード領に家出するから着いてきてと言った時にすぐに行きましょうと言ってくれたトーマス先生、魔導灯を改良したいと言った時馬鹿にせず一緒に考えてくれたトーマス先生、ハワード領を発展させるためにお祖父様の補佐となって力を注いでくれるトーマス先生。いつかトーマス先生の為に何かしたいと思ってたんだ。

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