ノアの手作りケーキを三人で食べた日
ハワード領に来てから3年経った。
最近の領は来た頃よりかなり発展したと思う。民家や街灯の明かりが格段に明るくなり空き巣やスリ強盗などがめっきり減った。領周辺の魔獣も減り安全に出来る観光や旅の通り道として人気が出ている。国に納める税も年々増えつつあり、王城からハワード領で何か怪しい事業を興してないか不審がり呼び出しがあってお祖父様がぶつぶつ文句を言いながら王都に出かけていった事もある。
俺はと言うと、この世界のお菓子が焼き菓子しかないことに不満であった。俺の好物はパイや、タルト、レアチーズケーキなどで、毎回バターたっぷりのマドレーヌや、フィナンシェ、マフィン、クッキー、パウンドケーキでは飽きてくる。カスタードクリームのイチゴタルト食べたいなぁ・・・なんて思い立ち早速厨房にお邪魔して即席のタルト生地であるクッキーを麺棒で叩いていたら料理長が慌ててとんできた。俺がご乱心と思ったらしい。
「クッキーを砕いて溶かしたバターを少し混ぜて土台にするんだよ。それを型に押し固めてたまごで作ったカスタード入れてイチゴ並べるわけよ。本当はアーモンドの粉で土台作るんだけどな。今すぐ食べたいから仕方ないだろ。」
と言いながらカスタードクリームを見せると、目を光らせた料理長が
「甘い匂いのクリームですな。ちょっと味を見てもよろしいでしょうか?」
「いいよ。本当は卵黄と砂糖とミルク、小麦粉で作るんだけど、もったいないから全卵で作った。卵黄で作ると濃厚になるんだけど、まあ俺が食べるからこれでいいや。」
ささっと作って魔道具の冷蔵庫に入れて冷えるのを待っているとお祖母様が部屋に顔を出し
「ノアちゃん、料理長に聞いたんだけど、美味しそうなケーキ作ったって。私も食べさせてくれない?」
なんてかわいいおねだりしてくるから
「勿論、いいですよ。もう少ししたらお茶にしましょう。トーマス先生もお誘いしてもよろしいですか?」
と聞いて三人でお茶会をした。
「王都にはこんな美味しいケーキがあるのね。ここは田舎でごめんなさいね。退屈でしょ?」
申し訳なさそうなお祖母様、全然退屈してませんけど。色々やることがあって忙しいです。民家の魔導灯の魔方陣全部俺が手書きしてます。街灯の設置も騎士団に手伝ってもらって設置今もしてます。
「奥様、王都にもこのようなケーキはありませんよ。僕も今初めて食べました。ノア君、これものすごく美味しいですね。これ、領内で売り出したらどうでしょう。」
トーマスが家庭教師になったので、俺はトーマス先生と呼び、生徒となった俺をノア君と呼ぶようになった。そしてトーマスはハワード領の発展のために俺と協力して色々考えてくれる。お祖父様も最初は男爵出と言うことであまりアテにしていなかったが、トーマスの優秀さにあっという間に態度を変え今ではものすごく頼りにして事務なんかも手伝ってもらっている。このように平和で穏やかに過ごしていたのに父上からものすごく本当にものすごく久しぶりに手紙が届いた。
1週間後にハワード領に行く。連れ帰るから荷物をまとめておくように
ジーザス。なにそれ?勝手すぎる。今まで厄介払いが出来たって感じで完全放置だったのになんで王都に帰らないといけないの?なんて大体想像つく。
来年王立のクラーク学園に入学する年だから迎えに来るんだろ。ハワード家の息子として学園に入学させなかったら伯爵家として恥だもんな。俺学園に入学する気無いんだけどな。
もう俺の学力結構上がってると思うのよ。トーマス先生も
「今の学習範囲は4年生後半くらいですね。このまま頑張れば来年には卒業認定試験受けられるレベルですよ。」
なんて言われてるし。なによりもう父親面してほしくない。10歳まで衣食住不自由なく育ててもらったけど、それ以外は完全無視だったし、子供を親の所有物と思ってる感有ったしな。
ハワード領に来て初めて親に手紙を書いた。
クラーク学園には入学しませんので、お迎えは結構です。もう息子と思ってくれなくて構いません。ご不満でしたら籍を抜いて頂いても構いません。
そして俺は父上が領に来る日にトーマスと一緒にミラー男爵領に旅行に出かけた。




