馬車に揺られて1日目
夕方近くに今日の最終便の馬車に乗ることが出来た。
今の俺の格好は灰色のよれたシャツに茶色の寸足らずなパンツ。黒のサスペンダーに髪色を隠すために布の大きめの巾着のひもを抜いて被っている・・・こういう時小説では頭からすっぽりローブ着たりするんでしょ。今季節夏なのよ。こんな暑い中ローブってさ。そして銀糸の髪色は目立つのだ。ぱっと見布製の帽子に見えるが巾着だ。服装は気にしないけどこの巾着だけがものすごく自分で気になる。
(俺、今巾着かぶってるんすよ~これ帽子にみえます?無理っしょ!)
頭の中は騒がしいがしれっとトーマスに
「この格好違和感ない?」
と聞くが、
「やっぱりお顔を隠した方が良いかもしれません。どこぞのお貴族子息様がお忍びでお出かけと見られるかもしれません。この巾着をいっそ目の部分だけ切り取って頭からすっぽり被ってお顔を隠すというのはどうでしょう」
「・・・ばかなの?余計目立つでしょ。こういうのは変にコソコソするとかえって注目されるから堂々としてた方がいいんだよ。とりあえず髪だけ隠すわ。はぁ、カツラでも被りたいところだよ・・・あ、兄と弟がお使いで遠くの親戚が住むハワード領に行くっていう設定だからよろしくね。お兄ちゃん。俺のことノンタンって呼んでよ。敬語も禁止ね。」
「ノンタン・・・」
なんてやりとりをしながらやっとの事で最終便に乗った客は俺たちの他に3人。中年の夫婦と年寄りのおじいさんだった。冒険者が護衛を務めているようだ。とりあえず日が沈むまで馬車に乗って降りた町で宿を取り、そして翌朝早くに再び辻馬車に乗ってハワード領にその日のうちに着けたらいいなぁ位の気持ちで出発。なんせ道中何が起こるかわからないからね。車輪がぬかるみにはまったり、魔獣が出たりするかもだし。
なんて大雑把に計画しながら馬車に乗り込むと時間になり出発。2時間ほど進んで、そろそろ終点って手前で1匹の魔獣が草むらから飛び出してきた。初めて見る魔獣。馬が怖がって前足を上げ嘶く。やば!と思ったら、そこはサクッと護衛の冒険者が退治。間近で退治するところをみるなんて初めてで興奮がおさまらない。
「ノンタン!あんまり身を乗り出すと危ないよ!」
おぉ~トーマス兄さんが適応してらっしゃる。
「すげ~!兄さんすごいよ。あの人!かっこいい!」
俺が褒めて手を叩いて喜ぶと冒険者の男はニコッと笑って
「坊主大丈夫か?もうすぐ町に着くぞ、大人しくしとけよ」
だってさ。イケオジじゃん。こんなカラッとした性格の良い冒険者ばっかりだったら子供は冒険者に憧れるんだろうなぁ。明日もどうか素敵な冒険者の護衛がつきますようにと祈りながら1日目の馬車の旅は終了。宿屋に行き二人部屋を取ってついでに食堂でご飯を食べて部屋に帰ってきた。
「ちょっと聞きたかったんですけど、ハワード領に家出って家出になります?すぐ連れ戻されると思いますけど。ご両親もすぐ迎えに来られそうですし。」
「あーないない。お祖父様と父上仲あんまりよくないもん。父上がさ、王城に務めてるのって王都が好きな母上がハワード領に行きたくないからそれをごまかすために務めているようなもん。お祖父様もまだ元気だし、本当は隠居して気楽に過ごしたいみたいだけど、父上がハワード領に1年間で1.2回しか行かないから領主やってるんだって。」
「お母様はどうしてハワード領に行きたくないんでしょうね」
「あーあの人派手好きだしな。ハワード領って王都に比べて田舎じゃん。夜会も茶会もないし。だから王都に居たいのよ。あの人ハワード領に結婚してから1回くらいしか来てないよ。俺ら兄弟は毎年父上に連れられて行って何日か滞在して兄弟だけで王都に帰ってたけど。その度にお祖父様が父上に小言いってたからな。」
自分の子育ての失敗で息子が父親のもとに家出なんてわかったら、計画がばれた時点で速攻部屋に監禁されていたと思う。一番父親が俺の家出を知られたくない相手を俺は頼ったのだ。いい年して父親に叱られろばーか。




