#12 ROSE
〇〇ちゃん、こんにちは
あ!いらっしゃいおばあちゃん!
スイセンは入っているかしら?
うん!丁度この前入ってきたのがあるわ
待っててね
〇〇は奥の方にスイセンを取りに行った
街の小さな花屋
地元民しか買いに来ることのないこの花屋に
煌星の姿があった
花屋の目の前の交差点
歩行者信号機の傍に立ち尽くす煌星
向かいの花屋がよく見えた
おばあちゃんこれでいい??
ああ、ありがとうね
〇〇の微笑む姿が目に入ってくる
息をするのも忘れて〇〇の姿を見つめる煌星
心が苦しい
今の感情をどう伝えたらいい
会いたかった、ずっと…ずっと会いたかったんだ…
掠れた声で呟いた
ほんとは少し、いや一目見るだけと決めて
会いに来たのに
〇〇に近づきたい、傍にいたい
もう二度と…離れたくない
そんなどうしようもない感情が溢れて止まらない
泣きたいのに涙が出ない
もう二度と〇〇を失いたくないんだって
自分の気持ちが暴走する
おばあちゃん、ありがとう
気をつけて帰ってね!
花屋から出てお婆さんに手を振る〇〇の姿に目を奪われる
ぶわっと大きな風が吹いた
その風で店先のバラが入った花筒が倒れそうになった
煌星は凄い勢いでその花筒をかばった
煌星のお陰で花筒は倒れる事はなかった
あっ、すみません
ありがとうございます!
〇〇が煌星に声をかけた
煌星はバラを見つめたまま黙っていた
あの…?
この白いバラを1本くれませんか?
え…?あ、はい!
ご自宅用ですか?
いえ、プレゼントです
わかりました、お包みしますね!
にこっと〇〇が微笑んだ
その笑顔に胸が締め付けられる
〇〇はボクのことを知らない
今、初めて会った人
過去の記憶も前世の記憶もきっとない
わかってる、そんなこと…わかってるのに…
なんで…もう一度ボクの名前を呼んでよって
煌星くんって呼んで…お願いだよ
店先でひとりポロッと涙が零れた
もう涙なんて枯れ果てたと思ってたのに
すみません、この包みでだ…
〇〇が煌星を見上げる
煌星の蒼い瞳から一筋の涙が零れ落ちていた
〇〇は優しく左手でその涙に触れた
煌星は驚いたがすぐに〇〇の左手に自らの手を重ねた
大丈夫…ですか?
少し昔のことを思い出してしまって
取り乱しました、もう…大丈夫です
重ねた手から暖かい温もりが伝わる
その温もりは冷たいものじゃなく
ちゃんと暖かい生きた人間の温もり
あの…
すみません…
〇〇の左手が煌星から離れてゆく
名残惜しそうにその手を離す煌星
こちら、どうされますか?
白いバラを1本包んでくれた
差し出されたそのバラを受け取り
代金を支払った煌星
目の前に〇〇がいる
生まれ変わりだと言うことはわかってる
でも頭で考えるよりも先に〇〇を求めてる
離したくない、離れたくない
煌星はその蒼い瞳で〇〇を見つめる
このバラを貴方に…
え…?
バラの花言葉をご存知ですか?
白いバラは…純潔…
それもある、ボクが言いたいのは
白いバラ、そして1本の意味
…?
恋の告白、そしてボクには貴方しかいない
〇〇は差し出されたそのバラを受け取った
また冷たい風がふたりを包み込む
粉雪が街に降り始める
その様子を街角から監視する吸血鬼がひとり
どうや?〇〇と会うたか?
はい、接触しました
やっぱりなぁ!煌星くんは我慢っちゅうもんを知らんのやで
どうしますか?
夢血の跡つけろ
了解
ジジッとトランシーバーが切れる音が響き渡った




