#11 LIFE
辺りが闇と静寂に包まれる深夜3時
冴夢は山奥にある屋敷の扉の前に立っていた
はぁ〜だるいな…
憂鬱な心情がこぼれ落ちる
ギィィっと古びた扉が開く
お待ちしておりました、冴夢様
出迎えたのは幼いヴァンパイア
冴夢は案内されるままについて行く
吸血鬼協会…通称ヴァンパイア協会には階級制度がある
・血宰⋯吸血鬼の中の頂点、全ての吸血鬼を管理するもの。今の血宰は紅である
・夜帝⋯制裁を行う実行部隊、冴夢がこの階級である
・血徒⋯一般の吸血鬼、煌星がここの階級である
その他に堕血者と呼ばれる吸血鬼がいる
堕血者とは自我がなく
本能のままに人間を襲う吸血鬼の総称であり
ヴァンパイア協会に属する吸血鬼は
堕血者の管理、監視を責務として動いている
冴夢も煌星もかつては人間だった
理性を失わず自我を保ったまま吸血鬼となった
⋆✦⋆
紅様、冴夢様がご到着されました
おーよぅ来たな、まぁ座れや
通されたのは大きな大広間
大広間の真ん中には楕円形の黒いテーブルと
椅子がいくつか用意されていた
紅と呼ばれた真っ赤に燃えるような長髪の吸血鬼が
冴夢を出迎えた
うちが最後か…
冴夢は用意された椅子に腰掛ける
いつもあんたが1番最後だよ
横に座っている煌星が嫌味っぽく言った
冴夢さんよぉ〜
相変わらずかわいいメイドちゃんを飼い慣らしてんのかぁ?
同じく夜帝の斗蒼が声をかけてくる
チッ…(やっぱり来てたか…)
冴夢は小さく舌打ちをして斗蒼から目線を逸らした
斗蒼、人の趣味に口を突っ込むのは野暮だよ
斗蒼の向かいの席にいる
白銀の長髪が綺麗な吸血鬼、乃蒼が呟いた
はぁ?別にええやん
1匹の人間に固執するとかおもろいやんけw
バカにしたように笑う斗蒼
冴夢は黙って無視を続けた
さて、お集まりのヴァンパイア達
遠くまで御足労頂きありがとうやで
紅が席を立ち話し始めた
今回集まってもろたんは
最近の堕血者たちの動きが活発やて言う話や
おまえらちゃんと仕事しとんのか?あ?
紅は黒いテーブルをバンッと叩き他の吸血鬼を睨んだ
そんなん言うても堕血者の増えるスピードのが早いやん
斗蒼が行儀悪くテーブルに足を組み
両腕を頭に回し呟いた
僕たちはできることをやってるだけだよ
乃蒼が言った
夜帝がしっかりせんからやろが!!!
紅が声高らかに怒鳴った
(そんなこといわれてもなぁ…)
冴夢は心の中で思ったが黙っていた
それよりさぁ…俺おもろい話あんねんなぁ??
なぁ?煌星くん??
斗蒼がにまにましながら煌星の方を見る
なに
煌星は目の色ひとつ変えず冷たく言い放った
『煌星くんの亡くなった恋人の
生まれ変わりが今この世に生きてる』って言うても
なんも思わんのか??
は?
煌星は思わず立ち上がり斗蒼を睨みつけた
その生まれ変わりが…夢血やって言うたら??
なんやって!?
冴夢が驚いたように声を出した
夢血とは冴夢のように美食家の吸血鬼にとって
最高級の血を持つ人間のこと
夢血を持つ人間の血は最高に美味で甘いとされている
俺がわざわざ今日来たんはその夢血ちゃんのことを
どーしてもおまえらふたりに教えたらなあかんなぁ?
って思ったから来たんや、有難く思えや
その人間が生まれ変わりだって証拠はあるの?
煌星が冷静を保ちつつ言った
写真見たらその冷静も一瞬で砕けると思うけどなぁ?
そう言って煌星の目の前に
夢血を持つ人間の写真を投げつけた
煌星は目を見開いた
間違いなく亡くなった恋人瓜二つだったから
こいつの名前と居場所、今すぐ教えろ
まぁ待ちや…そんな焦んなって、な?
煌星はもはや冷静を失っていた
自身の周りから蒼い炎が漏れだし
いつでも斗蒼を攻撃できる体制になっている
名前は○○、今この街で花屋の娘として生まれ変わっている
○○…
そう、煌星くんが愛した恋人と同じ名前や
煌星はガクッとその場にしゃがみ込む
まさか…○○が生きてる…
煌星にとって衝撃の事実だった
その子が夢血って言う証拠はあるの?
乃蒼が斗蒼に問いかける
俺の部下がこいつの血を吸ってる
一瞬で逃げられたけど
間違いなく夢血だったって言ってた
は?
煌星は斗蒼に殴り掛かろうとする
乃蒼がそれを止めた
今はやめときな
煌星じゃ斗蒼には敵わないのはわかってるよね?
くっそ…
なぁ?冴夢?
お前も喉から手が出るほど欲しいやろ
○○のこと
お前のかわいいメイドちゃんも夢血やもんな??
冷静を失った煌星と
夢血の言葉に今すぐにでも○○を味わいたい冴夢
ふたりの様子を滑稽とゲラゲラ笑いだす斗蒼
この集会で煌星の中に芽生えた感情が
静かに動き出す




