第2話 転生者たちの放課後
放課後になると、この学園は急に静かになる。
廊下を歩く生徒もまばらで、空気はちょっとだけ重い。
でも、わたしはその空気を楽しんでいる。
観測者として、世界の“隙間”を覗き込めるから。
「篁さん、手伝ってくれる?」
くくりがそう言って、机の上に転生者のデータが散らばった紙を置く。
彼女は今日も、何か大きな作戦を立てているみたいだ。
異能を駆使して、この学園の中で“勝ち筋”を探している。
「手伝うって言っても、私が何かできるわけじゃ…」
「大丈夫、篁さんは観測するだけでいいの」
観測するだけ――
その言葉が、神の私にはすごく重い。
世界の動きがわかる。未来も見える。
でも、手を出すことはできない。
手を出すと、世界のバランスが崩れてしまうから。
くくりが紙を指差す。
「ここ、次の戦闘で勝てるかどうかの分岐点。あなたが観測した結果を教えて」
ノートを開く。ペンを持つ。
心の中で静かに答えを探す。
――この分岐、彼女はここで右に進むだろう。
でも左を選べば、結果はもっと面白くなるかもしれない。
「……右を選ぶと、戦闘は安定するけど、学園全体の未来は少し窮屈になるかも」
くくりはうなずく。
「なるほど……それも面白いかもね」
彼女の笑顔を見て、わたしは少しだけ安心する。
観測するだけの神様でも、こうやって関わる瞬間があるんだ。
放課後の光が、窓から差し込む。
それを見て、わたしは思う。
神様だって、少しだけ青春を味わえるんじゃないかって。
ノートにもう一行書き加える。
――今日も、この世界を静かに観測する日。
そして、明日もまた、物語は続く。