決意
私として飾らずに過ごすのは、とても楽だった。
蓮も同じ痛みを抱えていて、自分の事情を知ってくれている。
だからか、とても息が吸いやすかった。
蓮が気遣ってくれていることが、ひしひしと伝わってくる。
そのことが、ただただ嬉しかった。
友達からの愛情――気づいた瞬間、手が震えた。
こんなにも嬉しいものか、と。
同時に、私はその愛情を返せていない。
その事に気づいた。
気づいてしまった。
私の中には愛情が貯まるが、相手はただ減るだけだ。
私が優しさを奪ってしまっている。
自分だけが満たされるだけじゃ駄目だ。
周りに返さないといけない。
そう感じた。
だから、返し方を模索した。
「荷物持つよ。」
と言ってみたり。
「ハイヒール似合ってるね。」
と本心で誉めてみたり。
でもその度、蓮から言われる。
「真弓は、自然体のままでいいんだよ。」
泣きそうになる。
気を遣うことしか出来ないのにどうすればいいのか、分からない。
でも、進むしかない。
まずは、蓮の真似だ。
蓮は何をしてくれた。
それをそのまま蓮に返そう。
そうすれば愛情を返せる。
はずだ。
でもどうすればいいのか分からない。
逃げ出したくなる。
それでも、蓮のように。
私も、堂々と歩きたい。
ハイヒールを履いて、まっすぐ前を向きたい。
そう思った。
どんな道のりだろうと知ったことじゃない。
私は、私らしく生きたいだけだ。
それが出来ない世界なら、いらない。
あっても意味がない。
私は前を向く。
それが今出来る最大の自己顕示だ。
これで、本当にいいのだろうか?
どこかで裏切られたら?
私は……。
今考えてもしょうがない。
そう思って蓮の顔を見た。
微笑みながら前を向いている。
周りを見渡すとハイヒールを履いている蓮のことを
奇怪な目で見ていた。
そんな人達にはなりたくない。
死んでもならない。
そう決意した。