LINE登録しよ
「……これで良い?」
少しの沈黙のあと、自分のことを話したくないのか、蓮が口を開いた。
私は、いつの間にか引き留めていた。
思わず出た声が、周りに響いてしまった。
近くの人に聞こえてたら、恥ずかしいな。
「待って!!」
久しぶりの大声に息を切らしながら理由を話した。
昼休みが終わろうとしている最中、やけに私の声だけが響いた気がした。
「……まだ…蓮さんのこと……知りたいです。」
蓮は驚いていた。
きっと、私が大声をあげる人に見えなかったからだろう。
申し訳ない気持ちが、胸の奥でじわりと広がった。
胸が少し締め付けられる。
でも、聞かないといけない。
そう思ってしまった。
私が気持ちを伝える前に蓮は言った。
「どうして?」
私は深く呼吸した。
気持ちが先行して話してくれない。
そんなのは嫌だから。
「……蓮さんの過去を知ることで、自分の今後を考えようと思いました。」
蓮は少し視線を落とした。
考えてる。
そう感じ取った。
そしてついに口を開いた。
「……長くなるから、今度の土曜日に一緒に遊ばない?」
一瞬で胸がざわめく。
駄目か、そう思った。
入学式の日を思い出す。
話しかけたグループに嫌な目をされたこと。
仲間に入れてくれなかったこと。
後でいい?
後で、何て来なかったこと。
その記憶が、私の身体を震わせる。
信じて大丈夫なのか?
"裏切られる"――その言葉が頭のどこかをかすめた。
蓮はその様子を見ていたのか、スマホを開いて言った。
「LINE登録しよ。」
「場所決める時間ないし。」
私は涙が溢れた。
悲しいからじゃない。
嬉しいからだ。
言葉は驚きと混じって出なかった。
けど、頷くことは出来た。
スマホのLINEを急いで開く。
蓮の気持ちが変わる前に。
その気持ちが、胸の奥を急かした。
蓮はその様子を見て笑っていた。
そして言った。
優しく、寄り添うように、微笑みながら。
「焦らなくてもいいよ。」
「私、授業に遅れる常習犯だし。」
私を落ち着かせるための冗談だろう。
その優しさが心にしみた。
愛情を家族以外から感じるのは、久しぶりだったから。
LINE登録を素早く済ませたあと、解散して授業に向かう。
出来るだけ急いでいたが、遅れても良いと思った。
こんなに気持ちが跳ねているのは、初めてだったから。