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身代わり少女の生存記  作者: K.A.
前日譚:初等部2年
39/88

後日談、日常

 大暴れの体育祭を終えて、イベントが終われば始まるのは日常だろう。じゃなきゃ困る。

 まず、体育祭の話のオチとしては、私たちの目論見通り新たなルールが設けられることになったのかは、結局よく分からなかった。何せ行事のことなので、ちょっと大きめの会議にかけられるらしい。

 ただし採点は大荒れ。三大ルール(時間内に終わらせる、危険なことはしない、ダンスである)の全てを破っていないものだから取り立てて失格になる要素もない。しかし演目としては最初のハトダンのダンスすらも含めて、全団が力を合わせた一つの演技であったため、あれを各団に分けて点数をつけていいのかという論点で大の大人たちが顔を突き合わせて揉めに揉める。

 結局全団同点、そしてゼロ点。結果だけ見るとどの団にとってもなんの旨味もない結果だが、誰も文句はなかった。むしろこの結果を望んでいたところまである。

 そしてあれだけ大それたことをして、競技としてはめちゃくちゃなことをした二年生たちだったが、意外と怒られなかった。各団長に厳重注意がされたらしいが、それも絵の具を使ったパフォーマンスによりグラウンドが汚れてしまった件だけだ。

 なまじっか演技としての芸術点が高かったため、保護者からのウケもよく、(多分王妃と第一王子が絶賛したため、それに追随する人が多かったけど)学園としても叱れない様子だった。

 だった、のだが。


「なんか、アル俺らのこと避けてね?」

 授業の最中、そう私に囁いたのは隣の席のリゲルだった。

 そう、授業中。現在はマーズ先生の生物の授業中である。まあいいけどさ、マーズ先生授業がゆっくりだし、雑談に付き合う余裕くらいはある。

「やっぱり?私の気のせいかと思ってた」

 囁き返すとリゲルは真剣な顔をして「ああ、確実だ」と頷いた。

 そう、最近アルに避けられるのである。まあアルに限らずスペードの生徒にだけど、よく話すアルに避けられると言うのは悲しかった。彼のことだから何か事情があるのだろうと思うと余計に。

「アジメクはさ、なんでだか知ってる?」

「うーん……。オリダンの協力要請した時のことはもう謝って許してくれたから多分違うと思うけど……」

「よく許してくれたな。言質捏造したのに」

「うん、『覚えとけよ、一生忘れないからな』って許してくれた」

「それ許してねえよ」

 まあ、それは冗談として。でもその後のオリダン練習などでも普通に話しかけられていたからそのことでまだ怒っているというのはない気がする。彼もそう根に持つタイプでもないし。

「じゃあ、体育祭で何かやらかしたのでは?お前たちが避けられるようになったのは体育祭の後からでしょう?」

 そんなコソコソ話に入ってきたのは、リゲルの反対側の隣の席のカノープスだ。いやお前は勉強できるんだから授業中もちゃんと話を聞けよ。

「この内容はもう予習済みです。そしてきっと一生知ることがないと思いますが、勉強ができる人は勉強はしません。俺が勉強をするのはそれが趣味だからです」

 ……特殊な趣味をお持ちで。

「それにしてもカノープスは真面目だからこういう時目くじらを立てるタイプかと思ってた。この前ダイダンの団室で怒ったくせに」

「ええ、団則で団室での他の生徒の迷惑になるような騒音を立てることを禁止してますので」

「……?授業中の私語はいいのか?」

「団則で禁止されてないので」

「…………ソッカ」

 ちなみにダイダンの団員のこういう考えはそんなに珍しくない。ダイダンは頭でっかちというか常識のない人間が集まりがちだ。でも成績は上位に固まっているしダイダン主催のテスト前勉強会はかなり捗る。

 だけどなんというか、アホ。

 多分在籍中に一番大人たちを困らせるのはクロダンだろうが、卒業してから一番周りを振り回すのはダイダンだと思う。彼らは天然で天才肌で秀才でバカなので。そして人間関係や一般常識を学ぶ学び舎で一般非常識を力一杯学んでくるので。

 まあ彼らの輝かしい未来は置いておいて。とにかくカノープスの黙認は得られたわけだ。これでチクられる心配はない。

「カノープスはどう思う?なんか理由とか知ってる?」

「いや、そんなことは全く。というかあいつが避けてるのはクロダン生徒に限ったことです。あなたたちが原因でしょう」

「そう?」

「はい、確実です」

 確信を持って頷くカノープスに悲しい気持ちになる。最近アルは私たちを避ける代わりにカノープスのところに行ってるので、情報の説得力がかなりある。

「アル、私たちに関して何か言ってた?」

「そうですね。お前に関してはしてやられたと言っていましたよ。とんでもないハニトラを受けたと。まあ特に悪感情を抱いているようではなかったですが」

「はにとら?」

 知らない単語に首を傾げると二人から信じられないものを見るような顔で見られた。な、なによ。

「自覚なかったのか?」

「よくわかりませんが自分の体は大事にしたほうがいいのではないでしょうか」

「え、そもそもそのはにとらって何?」

「……なるほど」

「……ごめん、クロダンの参謀くんには俺から言っとくな」

「え……?」

 リゲルには謎に謝られた。だから結局はにとらって何よ。ハニートーストみたいな感じ?それともニトログリセリンみたいな感じ?

「だからはにとらって……」

「はい、先生、はい!」

「ほら、アジメク授業中だぞ」

 なんだ急にいい子になりやがって。さっきまで全然話聞いてなかっただろ。まあ授業も気づいたら雑談タイムに入っていたからいいけどさ。

 へぇ……人工妊娠って双子になることが多いんだ。一つ賢くなった。

 すっかり真面目に授業を受け出したリゲルと私にカノープスは言った。

「話ができないのなら、手紙でも書いてみたらいいんじゃないですか?それぐらいなら届けますよ」

 なるほど。


 リゲルと一緒に手紙を書いてカノープスに渡せば、返事はすぐに帰ってきた。

『悪い。スペードの先輩にクロダンの家の子と遊んじゃダメって言われてて』

 私は密かに孤児院にいた頃のことを思い出していた。ごめんね、お母さんにダメって言われたから遊べないのって泣きながら言われた記憶。

『だから先輩たちを説得したらまた話しかけるから。ちょっと待ってほしい』

(…………)

 彼が先輩を説得するのは案外すぐのことであったが、その間しばしの間秘密の文通は大いに盛り上がり、直接話せるようになってからも手紙を書きあう遊びが流行ったのは言うまでもない。




『パパへ

 先日は体育祭に来てくれてありがとう。私は今日からアルと文通をすることになりました。何書こうかな?』


『娘へ

 体育祭お疲れ様。とてもやんちゃしてたけどすごかったね。たくさん練習もしたんでしょう。面白かったです。ところで「アル」って第二王子のことですよね?毎日会っているクラスメイトと文通するんですか?』

前回の体育祭で力尽きたので今回は短いです。すみません。三日後から夏休みなんで(世間的にもここら辺から夏休み?)なので許してもらおうと思ったんですけど、次回も短いのでカサマシのために登場人物紹介でお茶を濁します。

ちょくちょく活動報告でも上げてますので、それとの重複になるかも。


スピカ(2A・♧・魔法クラス):本作の主人公。主にシリウスとシリアスを作っているようで食べているのはシリアル。何言ってんだろ。常識人みたいな顔をしているが図太く面白いことが好き。まあ、クロダンだからしょうがない。好きな食べ物はマールス。兄が美味しいと言ってくれた顔が忘れられないから、かな?

アジメク・ガクルックス:少女。公爵令嬢。彼女の登場は1話目にして出てきた回数は少ない。スピカと似ている?まあまあ似てるね、ってくらい。なのでスピカが屋敷の中で彼女のふりをするときは身長も盛るし化粧もしている。学園ではそういう細工をするのは難しいのでしないけど。彼女も好きな食べ物は酸っぱいもの。体調が許せばお酢をラッパ飲みする派閥に属している。


アルクトゥルフ・ヘリオス(2A・♤・魔):通称アル。実は第二王子。彼は実は当初からオカンキャラで行くつもりだった。しかし初等部にしてオカンとはいかにと思って中途半端。多分年を重ねて開花するタイプのオカン。質の良いツッコミ。好きな食べ物はクリームパン。実は彼の初クリームパンは兄が買ってくれて一緒に食べたものであるがアルは覚えていない。

カペラ・アダーラ(2A・♡):侯爵令嬢。初めての女友達。気弱な泣き虫キャラでスタートし、現在主人公に若干塩である。つまりかなり仲良くなった。好きな食べ物はガトーショコラ。ちなみにこれは季節毎に変わるので多分次はマカロンとかになるし気分によっても違うので贈り物は花とかがベスト。好きな花はたんぽぽ。特に綿毛が好き。

リゲル・メンカル(2A・♧):常識人枠であり愉快犯。上下にいる兄弟に揉まれている分常識はあるが、特に危険がなければアクセルにしかならない男。まあクロダンなので仕方ない。騎士の家の生まれで、騎士になると言われて育ってきた。割と上の年代のものと比べても強い。将来有望。好きな食べ物は肉。特に歯応えのある鶏胸肉をパサパサになるまで火を通してもらうのが好き。料理人からは嫌われる。

ベガ・ポルックス(2A・♧)姉御肌のいいやつ。でも楽しいことは好き。まあクロダンだからね。彼女も騎士の家の生まれで、赤子の時から剣を握ってきた。三人の兄がおり、最強の専属メイク係を学園に連れてきている。好きな食べ物は肉って言ったりカルパッチョと言ったりとかなりコロコロ。ただ渡して一番嬉しそうなのは可愛いケーキかな。

カノープス・アルビレオ(2A・♢):カペラちゃんの婚約者。まあ今のところ婚姻は絶望的。好きな食べ物はカペラちゃんの褒めたもの全て。多分一番はカペラちゃんの触れたものとか。


プロキオン・ガクルックス:アジメクの父。かなり苦労性である。イケダンディなおじさま。話すのが圧倒的に苦手。魔法士として王宮で働いている。好きな食べ物は焼きそばパン。学生時代よく買っていた(よく食べていたとは言ってない)。

トリマン:顔を変える魔法を使える。実はこれの応用?で体を乗っ取り、病を治しとやっているので仮初めではあるが不死。すきな食べ物はお袋の味。お袋いねえけど。

レグルス:兄上。やべーやつ。最近の魔法クラスでのブームはフェンシング。これなら非力な俺たちにも……彼らは魔法で身体能力を向上させるということを考えていない。怪我を作ってすぐシリウスに怒られる。好きな食べ物はマールス。出会わせてくれたから。


シリウス:最強で最恐で最凶な男。多分次期魔王。現在ただの気の良いおっさん。知らんけど。嫌いな食べ物はマールス。出会わせてしまったから。

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