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5話:現状確認

 



 あれから夕食を食べてないことを思い出して、2人で適当な店で食事をしてハンクさんの経営している宿屋に向かう。


「おお、アルか。遅かったな」


「ちょっと緊急のクエストが入ってな」


「そうかそうか。ん?珍しいな、お前が誰かを連れてくるなんて……おいおい、聖女さんじゃないか」


「さっきのクエストで色々あったんだよ。悪いけど、もう1つ部屋を取りたい」


「ああ、勿論いいぞ。うちはまだまだ宿屋としての稼ぎは微妙だからなぁ。稼がせてもらうぜ」


 ハンクさんから鍵を2つ受け取る。


「ああ、そうだ。朝飯はどうする?」


「あー、じゃあ頼む」


「わかった。聖女さんもゆっくりしていってくれよ」


「ありがとうございます」


 受付から泊まる部屋の前まで向かう。


「さっきの人はハンクさんですよね?」


「知ってたか」


 有名だったから知っていてもおかしくないか。


「当然ですよ!あの頃のライズでハンクさんとレイナさんのパーティを知らない人なんていません!」


 いつも落ち着いた印象のアリシアが興奮したように語り、少し驚く。


「ここ、レイナさんもいるし後で話を聞きに行ってみたらどうだ?喜ぶと思うぞ」


「れ、レイナさんもいるんですか!?」


 アリシアが目を煌めかせて言う。


「あの2人結婚したからな。なんだ、ファンだったのか?」


「ファンと言うよりも、憧れのお姉さんだったので……私も将来あんな風になってみたいなぁ、なんて思ったりしてました」


 照れたように頬を掻く。

 そういえば当時レイナさんに憧れてお姉様だなんだのと言ってる人達がいたな。

 ハンクさんは男連中から兄貴って言われていたっけ。まあ、本人はげんなりとしていたが。

 そうしていると部屋の前に着き、アリシアに鍵を片方渡した。


「それじゃ、荷物置いたらこっちの部屋に来てくれ」


「はい。また後で」





 部屋の中で荷物の整理をしたり、魔法石や矢の数を数えているとドアがノックされた。


「空いてるから入っていいぞ」


「失礼します」


「散らかってて悪いな」


「大丈夫です。あの、ここって宿屋ですよね?こんなに私物があってもいいんですか?」


 部屋の中には武器の手入れ道具や持ち歩く予定のない袋が大量に置かれている。


「ちゃんとハンクさんから許可はもらってるから大丈夫だ。言ってしまえば貸倉庫みたいな感じだな。それにライズに滞在中はよっぽどの事がない限りここに泊まるようにしているしな。」


 レイナさんが魔法石を売っているから経営的にも大丈夫なんだろう。

 あれ、でも俺以外に買ってるのあんまり見ないな……まあ、うん、多分大丈夫だろ。


「じゃあ、スキルの話をするか」


 アリシアに椅子を勧めて、俺はベッドに腰掛ける。


「まず俺から話そう。知っているだろうが俺の紋章は【狩人】。固有スキルとして罠を作成したりする事ができる」


「あ、だからライトさん達が急に転んだり落とし穴に落ちたりしていたんですね」


「そうそう、周囲の物体を使って罠を作るから森の中では有利に戦える。俺もストックしてるしな」


 やや大きな袋に腕を突っ込んで丸太を取り出す。

 この世界にはアイテムボックスが広く普及している。流石に値段はするが、俺は物が多いから複数買って重宝させてもらっている。

 特殊な宝石に特定の魔法を使って加工する事で色々なものをアイテムボックスへと変化させる事ができようになった。魔法の力って、すげー!

 とはいえほとんどが袋の形状をしているから他の形状はあまり見たことがない。やっぱり袋が一番物を入れるイメージがしやすいんだろうな。

 冒険者として一番身近なアイテムボックスはギルドで貸し出しているの討伐、採取対象を入れる用の物だ。

 大型の、例えば今日のライト達の持ち帰ったドラゴンとなるとかなりの値段になる。


「便利なんですね」


「まあな。でも魔力の消費量によって規模や作用する範囲が変わるし、地形を理解してないと上手く罠も設置出来ないから難しいぞ」


「なるほど……」


「他には追跡や相手に少し気付かれにくくなるスキルとかもある」


 ライト達を追いかけるのに使っていたスキルだ。

 他にも夜目が効いたり、やばいスキルもあるがこれらは黙っていてもいいだろう。特にやばいの。


「まあスキルはこんなもんだな。魔法は初級魔法程度しか使えないから魔法石に頼ってる」


 初級魔法はその名の通り、ちょっとした火が出せるとか水が出せるとか程度の魔法で、一般の人でも使える人がいる。


「それで次は使ってる武器だな」


 すぐ横に立て掛けている片刃の剣を手に取る。


「片刃の剣なんて珍しいですよね。何かあるんですか?」


「……こだわりだ」


 当然嘘だ。だがこれは言えない。いやマジで絶対に言えない。恥ずかしいし。

 転生してきて最初に武器を選ぶことになった時に「やっぱ刀でしょー」と思い、東の方に刀っぽいのがあると聞いて楽観視しながら武器屋に行くと武器屋の店主のガントンさんからきっぱりと無理の言われた。しかし、何度も何度も頼み込んで作ってもらう事には成功した。だが強度は低いし、前世で見たようなしなやかさがまるでなかった。

 結局詳しい作り方なんて知らないから諦めるかと思っているとガントンさんからこの片刃の剣を貰って「これで我慢しろ」と言われてからずっとこれを使い続けてすっかり慣れた。

 まあ流石にランクが上がったりすれば最初の素材では脆く、材質を変えたりして打ち直してもらっている。

 いや、これ便利なんだよ。薪作る時に背を石で叩けるし、峰で殴れば打撃になるから。


「そうなんですね。そういえば槍や弓も持っていましたけど、どこに持っているんですか?」


「この腕輪の中だな」


 腕輪から弓を取り出す。


「内側に宝石を入れて簡易的な武器庫にしてる。便利だぞ」


 金額は購入当時の俺が全力で働いた時の3ヶ月分だ。両手首にあるから6ヶ月分か……。


「俺は1人だからとにかく色んな備えをしとかないといけなくてな。どんな時でも対応出来るようにしているんだ」


「凄いですね……尊敬します!」


 アリシアからキラキラと星が飛んでくるのを幻視する。それを手で払いつつ咳払いをした。


「俺はこんなもんだ。次はアリシアの番だぞ」


「わかりました。私の称号は【聖女】です。スキルは精神へ作用する状態異常を無効にしたりできます。スキルはあまりありませんが、魔法は光魔法と神聖魔法と回復魔法と支援魔法と防御魔法が使えます。あ、後ウルさんから教えて貰って水魔法も少し使えます」


 まあ、イメージ通りって感じか。


「アンデッド相手に心強いな。あいつらはちょっと苦手だ」


「あはは……実は私もあまり得意じゃないんです」


 やっぱりそうだよなぁ。だってゾンビだし。アニメとかじゃないからすげぇリアルだし。


「武器はこの杖だけです」


「前線に出ないだろうし、そうだよな。でも自衛は出来た方がいいぞ。何か短刀とかでも持つか?」


「そういう時は杖でこう……えいっ、てします」


 ぶんぶんと杖を振るう。魔力で強化すれば普通に痛そうだが心許ないな……。


「このくらいでしょうか。アルさん程あまり何か持っている訳でもありませんし」


「わかった。じゃあ明日は早速簡単なクエストを……ってその前にパーティランクの査定か」


「アルさんはソロランク7ですよね?私が5ですからどうなるんでしょう……」


「最低でも5だと思うぞ。明日になれば分かるんだ。今気にしても仕方ないぞ」


「……そうですね」


「よし、もう寝よう」


「はい、明日は何時にしますか?」


「あー、そうだな……アリシアはいつも何時に起きているんだ?」


「7時には起きてますね」


「じゃあいつも通り過ごしててくれ、朝飯になったら俺が呼びに行くから」


「わかりました」


 アリシアが部屋から出ていく。

 俺もシャワーを浴びて、その後はお楽しみだ。情報は掴んである。





「ふぅ……」


 お風呂から上がってベッドで横になる。

 今日は色々あって疲れちゃったなぁ。ライトさん達は大丈夫かな。私はアルさんと上手くやっていけるかな。なんて色んな事を考えて、結局寝付けなくなってしまった。

 そんな時だった。隣の部屋の窓が開いた音がして、土を踏んだ音が聞こえてくる。

 窓に近寄って顔を覗かせると、アルさんがコソコソのどこかへと向かっているのが見えた。


「どこに行くんだろう……」


 気になった私は寝付けないのもあって、薄い寝間着の上に上着を羽織って後を追いかけた。





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