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第6話 スキル・レベル3

 50騎でスタートしたゴールズだけど、希望者は、その三倍いたのだと教えてもらった。


 初めて率いるなら50が限度だろうという、エルメス様の配慮でメンバーを厳選した結果だったらしい。


「もはや人数を絞る必要はなかろう。何しろ建国以来の大英雄なのだからな。むしろ大人数に早く慣れてもらわねばならん」


 というわけで、一気に200人になったよ。


 一口に「200人」って言っても、これヤバいよ!


 各学年2クラスぐらいの中学校の全校集会なら、そのくらいじゃん? だけど、武装した戦闘力のある大人と馬が揃うと、遠くから見ても、全く違うんだよ。


 大迫力。


「200人の騎馬隊なんて、戦場を一気に変えられる戦力ですね」


 あまりの迫力に、そんなことを言ってみたらエルメス様が、またまたジト目だよ。


「ショウの場合は、戦場ではなく、戦争を変えるのであるから手がつけられぬな。我は戦場を支配するのが精一杯であるぞ。はっ、はっ、はっ」


 笑いが、今までよりも虚ろな感じだよ。


 なんか、すんません。


 ……と、ともかく、部隊編成だよ。


 副長のノインはそのまま。50人の4部隊に分けた。それぞれの長として若手三羽ガラスのフュンフ、ゼックス、ツェーンを抜擢。それだと、中隊長達組が若すぎるんで、渋い中年、ツボルフを中隊長にした。


タイガー中隊  …… フュンフ

クォーツ中隊  …… ゼックス

エメラルド中隊 …… ツェーン

ジェダイト中隊 …… ツボルフ


 それぞれの小隊長は、お任せだよ。何でもオレが決めれば良いってモンじゃ無いからね。


 200人からの独立部隊・ゴールズだ。替え馬やら荷役やらをいれると馬だけで500頭近い集団の移動となる。


 これはヤバい。この迫力はヤバい。


 トロット(速歩)で歩ませながら、振り返ると、隊列の最後が見えなかった。


 うわっ、マジでヤバい。なんか語彙がないけど、それしか思い浮かばないんだよ。


 と、ともかく、シードに向かう道すがら、いろいろと考えることがあるよ。


「まずはステータスの確認か」


 実は、レベルが上がっていた。ステンレスの物干し竿を出した時に、例のぴこーんが聞こえたからね。


 ようやく確認できる余裕が生まれたんだ。



・・・・・・・・・・・

 


【ショウ・ライアン=カーマイン】

オレンジ・ストラトス伯爵家 長男

サスティナブル王国 子爵位保持 昇爵予定?

ゴールズの長(NEW!)


レベル  11(NEW!)

HP  256(NEW!) 

MP 1024(NEW!)

スキル ゴミ(レベル3)(NEW!) 

【称号】

無自覚たらしの勇者・バットマン危機一髪

美少女取り放題(「美少女総取り男」から昇格)

若き英雄(「王国の若き英雄」から昇格)

馬驚かし男(NEW!)・定置網殺戮者(NEW!)

煽りの達人(NEW!)・奇跡の人(NEW!)

征服者(NEW!)


★☆☆☆☆ ゴミをMPと引き換えにランダムで呼び寄せられる

★★☆☆☆ 見たことのあるゴミを指定して呼び寄せられる

★★★☆☆ 理屈として存在しうるゴミを指定して呼び寄せられる←今、ここ

★★★★☆ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

★★★★★ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

・・・・・・・・・・・

 

 「美少女取り放題」ってのは、称号なのか? しかも「美少女総取り男」から昇格って何だよ?    


 称号が何かの役に立っているとは思えないから、おそらく、ネタ表示なんだろうなぁ。まるでおちょくってくるみたいなヘンな称号なんてやめれば良いのに。

 

 びこーん

 

 ん? なんだ?

 

《表示についてのクレームは受け付けていません》

 

 え? 誰かオレを見てるの?

 

 ぽこーん

 

 また、来た。

 

《見ていません》

 

 まさかの、返事が来たよ! しかも、ちゃんと見てるじゃん!


 いったい、どんなシステムなのかはさておき、理屈として存在しうるゴミって、使い方次第で、この世界全体を滅ぼせるんじゃね?

 

 細菌兵器の研究所の廃棄したシャーレとか。そこまで行かなくても麻疹の患者の使ったティッシュだって、こっちに来たら立派な生物兵器だ。


 冗談抜きでシャレにならないモノがたくさんある。なんだったら、よその国の王都に潜入して放射性廃棄物を出してくれば、死の都が……


 ぴこーん


 えっと、また?


《システムからのお知らせです。スキル「ゴミ」において、核物質関連・この世界に存在しない有害な細菌等の微生物や微生物的存在・兵器や武器類・毒性の強い化学物質は指定できません》


 ぴこーん


 続けて鳴った。


《補足します。通常、固定されて使用される機械類も呼び出すことができません》


 あちゃー 先読みされた。古い高炉を呼び出しちゃえば、話が早いと思ったのに。


 このシステム、なかなかヤルな。


  ぽこーん


 ん? なんか来た。


《ありがとうございます》


 礼儀正しいな!


 とは言え、システムと遊んでいる場合じゃない。それに、制限があっても、使い道を考えると万能に近いスキルになってる。


 たとえば東京都庁が、災害用の倉庫に置いている「備蓄食料」の年次更新に伴う廃棄分は、年間で「白米(個食)約500箱1箱当たり50食分」、だとか「ショートブレッド(個食)1700箱 1箱当たり100食(1食当たり6本)分(600本入り)」なんてのがあるんだよね。もちろん、受け取る人はいるけど、書類上は「廃棄」の扱い。


 これを出すのがMPわずかに3で済むんだもん。


 このスキル、マジでヤバッ。


 一度出した食料は、持ち運ぶのを2日分だけにして、今からでも作付けを増やすようにと言葉を添えながら、行く先々の村に配布しながら移動していくわけだ。


 となると、小さめの村なら数ヶ月分の食料を配布されるわけで「近隣で分けるように」と言い残して出発するけど、仮にため込んだとしてもオレ達の知ったことじゃない。備蓄の期限は数ヶ月残っているのが基本だから、ムダにすることもないはずだ。


 それに、移動中に小集団を見つけたら手持ちの分を渡していくことにした。2日分を持たせるのは、この時に渡すため用だよ。

 

 渡された方は、最初怖かっただろうね。


 なにしろ、いかつい騎馬集団が見えたと思ったら、逃げる余裕もなく、強面のオッサン、兄ちゃん達が強襲してくるw


 逃げられるわけもなく「命ばかりは」って頭を下げて拝んだところに「これを差し上げる」と無理やり食料を大量に押しつけられるんだもん。


 もう、わけが分かんない感じだろう。


 いや~ 行きがかり上、コイツを出すところは見せないにしても、ゴールズのメンバー全員がオレのスキルを「なるほど」って思っちゃってる。もう、今さらだよ。


 そしてね、備蓄食料は都庁だけじゃないんだよ。六本木にある、某巨大なビルシティには6万食分の備蓄があって、5年期限と2年期限のモノを順次更新してる。


 つまり、1回で「万」のオーダーで食事が手に入るのと「粉ミルク」が入っているのがポイントだ。この世界のお母さんの栄養が不足したら、母乳が出なくなるのは当然なんだから。


 各中隊から「衛生小隊」をいくつか作らせた。各村で乳児と妊婦さんを見つけ次第「水と哺乳瓶の煮沸から実際の作り方と栄養の意味まで」を親に教えるようにさせたんだ。


 お母さんだけじゃなくて男親にも教え込むのは大事なこと。「教育」は赤ちゃんの命を左右する決定的なポイントとなるからだ。親のどちらかが無理解だと、絶対トラブルになって、赤ちゃんの命が危うくなる。


 悲しい教訓があるんだ。


 昔、アメリカがアフリカの難民キャンプに粉ミルクを援助したことがあった。


 現地の人は「粉ミルク」を使うどころか見るのも初めてだった。


 だから、汚染された水で作ったり(そもそも、それしか手に入らなかったのもある)、少しでも「食い延ばそう」として薄めて与えたりした結果、ムチャクチャ、グレートに悲惨な結果を出しまくったのは国連レベルの悲痛な教訓となっているんだよ。


 細菌とか栄養の知識が無いと、下手な援助は死を招きかねないってのが事実ってこと。知識は命を助ける! あるいは「無知は死を招く」が基本だ。


 だから、衛生小隊への教育は徹底したし、彼らは行った先々で大人達に、まず手を洗うことから徹底して教育した。「命がかかっている」のだから、当然のこと。

(普通の石けんももれなく付けておいたよ)


 粉ミルクは赤ちゃん一人が、これから1年半、十分に飲めるだけの量を渡す。哺乳瓶は予備も渡して、粉ミルクのプラスアルファを含めて村長に預けたよ。多胎出産や、途中でダメにしちゃう人だっているに決まってるからね。


 それと大事なコト。


「子どものために与えたミルクを奪った者、誤魔化した者には天罰が下るであろう。ただし、神の思し召しが下る前にゴールズが不届き者を抹殺する」


 そんな意味の言葉を村の目立つところに掲げて、村長にも民に徹底するように命じたよ。いやぁ、ほら「ゴールズ」って権威ができてきちゃったし、なによりも騎馬集団の強面が言うんだから効き目はすごいよ。


 拒否どころか、渋る様子を見せる村長が一人もいなかったらしい。


 まあ、こんだけやっても誤魔化す人やら「この後に妊娠した人」まで手が回らないけど、それは割り切るのが大事だ。


 全部を救うことができないけど「だから全てを諦める」よりも「できることをヤッておく」のは、大違いだからね。


 一連のことで助かった命は後で計算したら「5千人以上」になった。食料が渡されて母乳が回復した人もいれたら、もっとになるはずだ。後々、そうやって助かった赤ちゃん、子ども達は「ゴールズ・チルドレン」と言われるようになったんだけど、それは遠い未来のこと。


 とにかく、できることをやりながらだから、なかなか移動速度も上がらない。でも、国境を越えるとサスティナブル王国側の村や町は撤収済みな分だけスピードがあがったよ。


 ローディングから取り残された人々に水と食料を与える程度で、我々はシードへの回廊を横目に、次第に移動スピードを上げた。


 土手の向こうがどれだけ悲惨なことになっているのかは、垣間見なくても十分にわかる。だって、暑さが残っている気候の中で、耐えがたいほどの臭いが「見なくてもわかる」レベルで事実を示していたんだから。


 我々が包囲部隊に近づくと、真っ先にブラスコッティさんが出迎えてくれたんだ。


 スキルレベルが久し振りに上がりましたが、レベルアップ条件は見当がおつきになりましたか? いわゆるEXPERIENCE(経験値)が必要なのですが、同じモノを何度出しても、経験値は上がらない=違ったモノを呼び出すと経験値が貯まる という仕組みでした。だから、レベル1の時はランダムに出た分だけ経験値が貯まりやすく、比較的、簡単にレベルアップしました。レベル2になってからは、意図的に出せる分だけ「有用なモノ」を優先しました。使い勝手は良くなったけど、経験値がたまらないということでした。

 今回は「ステンレスの物干し竿」や「アクリル絵の具」など、多様なモノを出した結果、レベルアップにつながったようです。


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