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第3話 これがうわさのゴールズだぜ!

 9月28日 


 シュモーラー家の陣幕には、ご当主様が不在であっても、専用の豪華な椅子が置いてある。


 神聖なるその椅子を前にして、現地指揮官を任されている本領・家宰トーナンは騎士団長のユーキに進捗状況を尋ねた。


 家宰が指揮官を、というと普通は驚かれる。しかし他家のやり方はともかく、シュモーラー家ではこれが普通だ。分家の中から優れた者を家宰とすることで、当主のいない時の防衛について指揮権を一元化するやり方が定着していた。やはり王都から遠く離れた領地を持つ分、いろいろとやり方を考えてきた結果だ。


 「家宰が軍事まで」とギョッとされても、ことシュモーラー家では「軍事ができるからこそ家宰となれる」が当然とされているのだ。


 だから、平時ならともかく、今は騎士団長と言えどもトーナンの配下である。


「シードの周りは、ほぼ図面通りに完成しました。内側の3メートルの堀、外の3メートルの壁、それを支える外の土盛り。全て大丈夫です」

「土盛りの底辺は確保されているね?」


 仕事は、そういう微妙な確認をしておかないと、何かと支障が出る。「例の件」は円満に解決したことになっているとはいえ、ガーネット家と組んだ仕事にミスをしたくなかった。


 おそらく、その辺りの機微もユーキはわかっているだろう。


「はい。底辺が10メートル。ただし、一部山地を利用していますので、それ以上になっている部分はありますが、指示通り、土手の上は馬で通れる強度を確保しています。こちらは私自身が点検済みです」

「わかった。国境までのガイド柵はどうだね?」

「そちらも、ほぼ完成です。現在強度確保と、堀と土盛りの確保をしている最中です、簡単な柵だけならアマンダ王国側に現在1キロ踏み込んでいます」


 ユーキは、作戦卓に広げられた地図を指示棒で示す。


「アマンダ王国側の土盛りによる柵強化については、大規模な兵員投入が難しいため間に合うかは微妙です」

「国軍総司令から依頼された内容に対しては十分でしょう。それから、商人役は?」

「昨日、最後の回収を終えました。投資額とピタリなので問題ありません。これでシードの柵内から主な木は8割方、伐採されたことになります。残りも隙を見て少しずつ」


 報告を聞きながら、国軍総司令から聞かされていた詳細な指示と、その悪辣なやり方に驚きと、そして一抹の忌ま忌ましさを感じているトーナンである。


「シードの周りの木を自分たちで切り出させて、こちらの壁に利用する。そのために大金を払う。しかし払った大金は、わずかばかりの食料と水を与えることで全部回収してしまう。良くできた作戦だよ」

 

 しかも意図的に川を汚すことで、今では飲み水も買わなければならないようにしてしまった。


 人間は「定期的に手に入る」と思っていたモノが入ってこなくなった時の衝撃が、初めから無かった時よりもデカいということを、常識人であるトーナンはわかっているつもりだ。


 そして、次にあるのは「交渉」である。連中に通告するのだ。その使者はガーネット側から出ているはずだ。


「ローディング本隊は、後どれほどで届くのだ?」

「ガーネット騎士団の働きと思われる補給基地、補給線への攻撃で彼らへ渡る食糧が途絶えています。その分、途中の街に寄る必要があるからでしょう。予想よりも遅く、あと1週間程度かかるとのことです」

「わかった」

「こちら側は?」

「はい、すでに全ての村の食糧は回収し、井戸は石で埋めてあります。使えるモノは何もないようにしました」

「わかった。となると、ウチに入ってくるまでは遅れ、こっちに来たら一気にくるな。よし、国境を越えたら追い立て尻尾切りをする準備だ。そこではアマンダ王国側との戦いもあり得る」

「はい。あらかじめ、騎馬、及び兵員を準備します。左がシュモーラー家、右がガーネット騎士団の持ち場になるように調整済みです」

「よし。他に気付いたことは?」

「回廊部分を通って持ちこまれる補給はいかがいたしますか?」

「どの程度持ちこまれている」

「馬の背に乗せられている程度が、数日に1回」

「アマンダ王国側で、発見できたときは摘発。回廊内では手出しをするな」

「わかりました」


 常識人であるがゆえに、間もなく起きる阿鼻叫喚の事態を想像するのを拒否したいトーナンだった。


 

・・・・・・・・・・・

 9月29日


 朝一番でやってきたのは、サスティナブル王国で木を受け取る係だった、あの人の良い間抜けな下士官だった。いくぶん戸惑ったような顔をして「交渉したい」と申し込んできたのだ。


 ガヤ自らが応対した。


 開口一番、彼は言った。


「諸君、ひどいではないか」


 怒りではなく、困惑を浮かべている。


「ひどいとは?」

「諸君が可哀想な立場だろうと、いや、それはこっちの決めつけであるので仕方がないが。君たちは商人が来ているのを黙っていた」

「言う義務はないはずだ」


 ガヤはピシャリと決めつける。


「はぁ~ 確かに義務はないと思うが、そいつらはサウザンド連合国の手の者でな。昨夜、全て捕縛したぞ」


 ガヤは衝撃を顔に出さないようにするのに努力が必要だった。


 商人の話が出た時点である程度は予想したが「全て捕縛」ということは、二度と買えないと言うことでもある。既に、今日の分の伐採作業に取りかかっているが無駄になるかもしれない。


「こちらとしても、今さら戦いなど起こしたくないのだ。だからこそ柵を作ってきた。それは理解してもらえるね?」

「こちらは戦うのを避けるつもりはないが」

「やめてくれ。こっちがその気になったら、君たちが聖地だと言っている例の建物も燃やすことだってできるんだぞ」

「そんなことをして見ろ! 直ちに報復するぞ」

「報復して、それで聖地は蘇るのかね? 君たちはそれで良いのかね?」


 お人好し風の顔が、さらに困った顔になっている。


「そんなことはさせない」

「君は元軍人のようだ。外にいるのはシュモーラー家とガーネット家、そしてサスティナブル王国軍、あわせて5万だ。いくら君たちが死に物狂いでも戦いにならないだろう」

「最後の一人まで戦う」

「戦うのは良いけど、燃やされたら困らないかな?」

「……」

「我々としては、初めから、こんな遺跡などなかったことにした方が早いのだ。ただ、それはお互いに良くないんじゃないかね?」

「だから、なんだ!」

「我々は平和的な解決の道を探している。そちらが手を出してこなければ、我々も手を出したくないんだよ。だから壁を作ったし、堀も掘った。もう、ずっと、こっちからは手出しをしてないよな?」

「しかし、包囲しているではないか!」

「それは、君たちがここにいる以上仕方ないだろ? それに、君たちがアマンダ王国に戻るというなら止めない。ちゃんと囲みは開けてある。ただ、サスティナブル王国側に出てきてもらっては困るんだよ。そこで協力してほしい」

「協力だと?」

「アマンダ王国から、ここまでの道には両側に柵を付けてある。その内側に、ここみたいに堀を作りたいんだ。君たちから攻撃してこないなら、堀があっても問題ないはずだ」

「そっちには、何の得がある」

「大勢の人がやってきて、我が国にあぶれ出されたら困る。ローディングとか言うのが終わったら無事にアマンダ王国側にお帰りいただく。その保証だ。お互いに無益な人死にが出てもこまるだろう。そちらは、女子どもと年寄りが大半なんじゃないかね? 軍人なら死ぬ覚悟もできるが、子どもに死ねというのが君たちの正義かい?」

「お前達が殺さなければ!」

「サスティナブル王国にフラフラ出て来なければ何もしない。だから出て来ないようにしたいだけなんだ。ただ、それだけのことだ。だから協力してほしい。タダとは言わない。君たちが商人から受け取っていた程度の食糧は渡そう」


 そこから、意外にもしたたかに交渉ぶりを発揮して、柵の内側に堀を掘る契約が結ばれたのである。


 契約が結ばれた後、お人好し風の顔を一変させて、引き締まった軍人の顔で陣地に戻ってくるところを現地司令官ツヴァイと副指令のアハトが恭しく出迎えた。


「お疲れ様でした。アポローニアーズ様」

「首尾はいかがでしたか?」


 下士官風の装いをしていたのはガーネット家の四男(長男と次男は病没済)であった。


「坊さんの方じゃなくて、軍人君が出てきてくれた分、やりやすかったけど。あ~あ、舌先三寸で、相手に自分の墓穴を掘らせるのも、気分の良い仕事じゃないねぇ」


 ガーネット家が他の家と交渉ごとをするとき、欠かせない人材であった。


「めっそうもない。あれは予防措置の一部ですので」

「ははん。オレも時間のあるとき、回廊は全部見たんだよ。あれ、わざと途中で2箇所狭めてあるよね? そして狭めある片側が山だから、あそこで回廊が遮断しやすくなってる」


 何とも返答しかねている二人を見てアポロニアーズは「ま、いいさ。あれも例の麒麟児の設計?」と首をかしげた。


「基本的には、そうなります。現地での工夫は任されておりますので、そこはシュモーラー家のトーナン様がどう処理したかですが」

「ふぅん。まだ12歳なんだろ? すごいね。で、アッチの方はどうなってるの?」

「今のところは、把握できませんが、バッカニアーズ様は、最終的な補給作戦を終え、間もなく引き上げてくるはずです」

「ってことは、最終段階か」

「はい。間もなく天国に行くはずの地獄が出現することになりますね」

「わかった。すまないけど、オレは一足先に領地に戻るよ」


 それはかねてエルメスに言われているとおりだ。一箇所に当主と嫡男、そして「その次」の男子が固まっていること自体が異例なのだ。


「お疲れ様でございました」


 アポロニアーズは「じゃ、シュモーラーの爺さんのところに挨拶してくるんで。頼んだぞ」と馬に乗った。


『ここで生まれる怨嗟の声は、どれほど離れれば聞こえないんだろう』


 アポロニアーズは頭に浮かんだ、そんな声を静かな微笑みで打ち消したのである。




・・・・・・・・・・・

 10月3日


「なんか、あそこ襲われているみたいですよ」


 ノインが指さしたのは、街道からずいぶんと外れた森のセトギワの場所だ。


「よし、行こう」


「ゴールズ、目標、前方の山賊! 襲われている人達と、ちゃんと見分けろよ!」

「「「「「「おぅ!」」」」」


「ひゃっほぅー!」


 先頭で突っ込むオレの左にはアテナが、いつも通り槍を構える。


 駆け抜けざま、三人ばかり、首を狙って吹っ飛ばした。


 群がる賊の間を駆け抜けててからターン。アテナの槍にも血糊が付いている。


「ひとつ」


 アテナが報告してくる。


「OK、合計4つか。もう一回行くよ」

「承知」


 最近になってようやく、向かってくる槍や刀でも「届くものと届かないもの」を見分けられるようになってきたんだ。


 その分、槍を届かせれば良いんで効率が良くなった。


 いや~ いくら「悪い奴」が相手でも、ホントは人の殺し方に「効率が良くなった」なんて考え方をしちゃいけないんだけどね。


 でも、放置してたらコイツらが「良い人」を殺しちゃうに決まってる。情けなんて無用だよ。


 刀を突き出してくる男のカブトを穂先でカーンと突き上げれば、そのまま後ろに吹き飛ぶ。死んだかどうかはわからないけど、馬体突撃の形になるから、しばらくは戦闘不能のはずだ。


 クルン。


「二つ」

「よし、あわせて3つか」


 どうやら、大勢は決したみたいだ。


 襲われていた側にも兵士がいたらしい。


 こちらが騎馬で裏を突いた分、敵はあっと言う間に崩壊。30人ほどいたけど、一人も逃がさないよ。


 いつもの「槍刺し確認」は、みんなに任せて、オレは襲われた人達の前で馬を下りる。


 オレは槍を鞍に付けて手ぶらだけど、スッとアテナが黙って後ろにいてくれるのは心強い。


「ご無事でしたか」

「ヘータイが助けられるなんて、面目ねぇ」


 頭を下げてくる40がらみの男が、リーダーっぽい。


「しかし、民もいるようですが?」

「ああ、この人達を助けたつもりだったんだけどね。オレ達の持っていた、わずかばかりの食糧を狙ったんだろう。結果的に巻き込んじまったみたいで、悪ぃことをした」

「いえ、この方達がいなければ、きっと、連れ去られて、ヒドい目に遭っていました!」


 若い娘だ。手を引いている小さな子と、後ろには足腰も弱った年寄りもいた。


「本来なら私も追いかけるべきですが。この子たちを見捨てていくなんて、とてもできなくて」


 ローディングに参加する途中、年寄りとチビが動けなくなって置き去りにされ、姉ちゃんが残ったって感じみたいだな。子どもを置き去りにするなんてことを喜ぶ神様がいるなんて思えないんだけどね。もしも、そんなのを喜んでたら、むしろ「邪神」ってやつじゃん。


 って言葉は胸にしまって、いつもの、怪しい優しさで顔を満たす。


「大丈夫ですよ。あなたの優しい心を、主は、きっとご覧になっていらっしゃいます」


 うん、カミサマなら、きっと見てるよね? 見えてないなら、カミサマじゃないってことでOK~ あー ゆー JASIHN(邪神)? ってね。


「ありがとうございます、ありがとうございます」

「とりあえず、よかったです」

「あのぉ」

「はい? なにか?」

「間違っていたらごめんなさい。ひょっとしたら、みなさんはゴールズ?」

「おや、聞いたことがありましたか」


 ニッコリして見せたら、横の兵士まで嬉しそうにしたよ。オッサンの喜び顔なんて誰トク、なんていわないけどさ。


 最近、立て続けに、助けた人から「ゴールズ」って言われている。少しずつ、名前が広がっているらしい。


 ともかく、オレ達は街道から外れた場所にある廃屋…… いや、おそらく数週間前までは使われていたはずの農家に、この人達を連れていったんだ。


 その庭でたき火を囲んで夕食にご招待だ。


「どうぞ。一緒に食べましょう」


 本日のメニューは、撃ち落とした鳥をまるごとダシにしたスープに、例の災害備蓄食料の山から取り出した「お赤飯」だよ。ホントは一箱が50人分だけど、だいたい二人前食べるからね。今回は三箱分作ってるよ。ちなみに、段ボールの中には、取り分け用のパックも、紙製の匙まで入っている優れものだ。


 普段は、水も備蓄水を取り寄せてるから我々は補給なしでも何とかなってる。今日は「お客さん」がいるので、この農家の井戸水を煮沸して使ってる。それ以外は全部、自前だよ。いつもなら、インスタントコーヒーも付けちゃうんだけど、さすがに今日はつけられない。


 そして、こっちが、アマンダ王国側の兵士に「補給」してあげるのも、何度目だろうと思う。


 目の前にいるアマンダ王国の輜重兵達はボロボロだ。補給任務に就いたところを「敵」に襲われ、物資の大半を焼き討ちされてチリヂリに逃げた人達の一部らしい。


 さすがエルメス様。いくら輜重隊とその護衛だって言っても、三倍近い敵を平気で蹴散らしてるw


 10人ほどのアマンダ王国の兵士達と、取り残された家族達11人にゴールズが世話を焼いている形だ。


「たくさん食べてくださいね」

「すまねぇな。兵士のオレ達が世話になるなんて」

「何を言ってるんです。食べて、ちゃんと民の世話をお願いしますよ。オレ達にできることだって限度があるんですから」


 そう言って硬いクラッカーを渡すと、兵士は熱心にスープに浸しては囓っている。おそらく、荷役の馬に積んである補給用の食糧を守り抜いて、自分たちの食べる分は、すべて無くしてしまったに違いない。


 人の良さそうな兵士達だった。


 子ども達や年寄りは、案外とウチの連中の外見を怖がらなかった。子どもを育てたことがあるせいかノインは子どもの扱いが上手いし、年寄りのあしらいも慣れたもの。


 子ども達は、みんなと混ざって食べてる。娘さんも「ゴールズ」を聞いてから、安心した表情になったのがハッキリと分かるよ。


 ウチらは山賊みたいだけど、娘さんに手を出すことはないのは評判になっているおかげだろう。


 その分、娘さんからの純粋な好意の目を向けられて、みんな嬉しそうだ。そりゃ、アテナがいるって言っても、絶対に手を出せない相手じゃ「潤い成分」がたらなすぎるよね。


 おっと、兵士のお相手がオレのお仕事だよ。


「すまんな。最近は、軍の補給線がズタズタにやられている。グラから来たんだが、都もひでぇもんだ」

「え? まさか、王都がですか? そんなにヤバいんですか?」

「あぁ。大きな声では言えないが、今、暴れ回ってる連中が一度に押し寄せてきたら保たんだろう。もう王宮には文官と警備の兵、それに集まっている枢機卿の警備が少しいるだけだ。かくいうオレだって、今までは王宮の門番ばかりだったんだぜ」


 何、その耳寄り情報……


「枢機卿様がいらっしゃってるのですか?」

「中央司祭様は全員、それに教区の枢機卿様も何人かが王宮にいらっしゃるという話だ」

「そうですか。いいなぁ、枢機卿様か。一度お目にかかりたいものです」


 間もなく会うつもりだけどw


「君たちくらい活躍していれば願い出てみたらどうだ? ひょっとしてお目通りくらい叶うかもしれないぞ」

「いえいえ。めっそうもない。我々は、そのようなお願いをするつもりはありません」


 お願い、じゃなくて、強制するわけなので。


「ウワサ通り謙虚なんだな。それに、民には手を出さないというのは本当だったんだな」


 その目は、娘の方に向けられている。ノインはいつの間にか、チビちゃんを膝の上に座らせて上機嫌だ。


「神様がご覧になっておりますから、どうして、そのようなマネができましょう」

「まるで司祭様と話しているみてぇだ」

「いえいえ。我々はやるべきことを、一生懸命ヤルだけですから。それよりも気になるのは治安ですね」

「最悪に近いと思うぞ? 空き家になった貴族の家が年中火事になっているらしい」

「となると、こんなことはしてられないです。明日の朝、一番で王都に向かいます」

「グラに行くのか?」

「だって、独立部隊・ゴールズを、きっと待っている人がいますから。たぶん、今がその時なんですよ」

「あぁ、そうだったな。君たちは、そうやって人を救ってきたんだってな。オレの叔母の一家も世話になったことがあるらしい。恩を返すどころか、オレまで世話になってしまった」

「いえ。グラが危ないという貴重な情報をくださいましたから。オレ達にとっては、何よりも貴重です」


 いや、マジで。

 

「ということは、君たちは王都を守ってくれるというのか?」

「申し訳ないのですが、王をお守りできるかどうかはわかりません。しかし王都に住む民は守ります。きっと我々を待っている人がいるはずですから、参上しないといけません。それが我々の使命なので」

「そうか。君たちは徹底して弱い人達の味方をしてくれるんだな。すまねぇなぁ。見たところ若いのに。オレたちゃ、そんな若いあんた達に頼らなきゃいけねぇなんてよ」


 寂しそうに肩を落とす兵士。


「大丈夫ですよ。オレ達が必ず…… ま、悪いようにはしませんので、任せてください!」



・・・・・・・・・・・



 10月4日の朝、グラのあたりの小高い山10箇所で、赤い煙が立ち上ったのを目撃した人々は「すわ、どこかの襲撃か?」という騒ぎになったのだという。



 10月6日。


 この日、自身が率いる「ローディング」と共に、マヌス枢機卿はサスティナブル王国側へと初めて足を踏み入れたのである。


 見送るアマンダ王国側の軍は2千人と少し。大半が懸命な補給活動を続けてきた者達だ。


 それを静かに見守るサスティナブル王国側の兵。合わせて騎馬2千 歩兵8千。


 それぞれの陣営に急使が派遣されている。


 しかし、その急報をアマンダ王国の現国王であるイルデブランド3世が目にすることは無かったのである。




 ゴールズは、スキル「SDGs」のおかげで「無補給長期作戦」が可能になっています。クリスマスシーズンにあった「鳥モモ」なんてモノもあるし、デザート類も充実しているせいか「普段よりも美味いものが食える」となかなかに評判がよろしいです。むしろ、馬用の飼料が足りないため、現地でパンなどと物々交換しています。

 エルメス様達は前進補給基地で最後の補給を行った後「赤い煙」が立ち上がるのを知って突撃してくる手はずです。赤い煙は、ショウ君が前世で買った車の発煙筒です。中古で買ったら、使用期限が切れていたので買い換えました。その時は「余計な出費が~」と腹を立てていました。中古車をお買い求めの時は、パンク・リペアキットとか発煙筒なんかの小物類も、地味に金を取られませぬよう、ご注意を。


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