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スキル「ゴミ」いや、マジで (書籍化決定)  作者: 新川さとし
第8章 西の漫遊編

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第2話 かいじんの活躍

 母親はとっさに、子どもたちを抱え込んだが、それだけのこと。恐怖で足がすくんでしまった。


 父親は、できる限り声を抑えて「何が用かね?」と声を出しつつ、妻子の前に出る。


 壁に掛けてある自衛用の斧は入り口の横。


 侵入してきた者達の後ろになることに歯噛みする。


 何とかして、あれを手にしなければ!


 震える身体を、侵入者に見せないようにしながら、村長は平然を装わねばならない。


「食糧を分けてほしい」


 案外と、普通の言葉だった。


「ついでに、そこの女と、そっちの娘。ちょっとばかし世話を焼いてもらおうか」

「おいっ!」


 村長の家に押し入ってきた男達。剣を手に迫るが、先頭の栗毛の男は落ち着いている。後ろの左の男は小柄の赤毛。落ち着きなく、家の中をキョロキョロとしている。


『一番、不味いのは、この焦げ茶色の髪の男か』


 焦げ茶男の目は、自分の後ろにいる妻子に注がれている。


 ゾワリとした嫌悪感。


『先頭の男は比較的まともそうだが、どうなる?』


 「女が」と言葉にした焦げ茶男の目からは正気が失われている気がした。


『どうにかして女房子どもを逃がさないと。どうしたらスキが作れる?』


 代替わりして村長になったばかりの男は、冷静に侵入者を値踏みし、それが最近噂になっている脱走兵と判断した。


 そこまであくどいことはしないが、食糧や、場合によっては飼葉を要求してくる。


 三々五々、近隣の村にも現れたというウワサは聞いていた。


 最初の三人までは、むしろ積極的に助けてきたが、生活だって苦しいのだ。


『ただでさえ今年の税はキツかった。あれを「もう一度」なんて無理』


 敵国に「税」を奪われたから再徴収だという無体なお触れが出たのは先月のこと。


『いくら大国に攻められたからだと言っても、オレたちには何の関係もないのに』


 村民に勧めて、2回目のイモも植えたが、秋イモは実が小さい。「いくらかでも足しに」なればいいが、期待は薄い。


『何とか年を越せるかどうかだ。他人を助ける余裕なんて、まして敗残兵を助ける余裕などないぞ』


 どうせ助けるなら、子どもの頃から助け合ってる、村の仲間を助けたい。

 

「食糧は差し上げます。娘は、まだ十を数えたばかりです。お許しを」


 来年のことの前に、今は「この場」だ。


 その時、焦げ茶男が、先頭の男の肩をグイッと引いた。


「先に、オレはあっちの女をいただいとくぜ」


 焦げ茶男が出ようとしたのを「待て」と留めようとした。しかし、その手をガシッとはね除けてしまった。


 並ぶと、焦げ茶男の方が、体付きが全体にガッチリしている感じだ。


「おい。なるべく静かにお願いする約束だぞ」


 だから、やめろと栗毛の男は言った。


「うるせぇ。じゃ、そっちは任せたからな。おらぁ、おんなぁ! こっち……」


 次の瞬間、何かが起きた。


 全員が、それだけを認識できたが、何が起きたのかわからない。


 ただ、焦げ茶男が床に倒れている。


 しかし一同の目が注がれていたのは、目の前に出現した「エキセントリック」だ。


「乱暴は許さない」


 二枚貝がパカッと開いたような頭をした()人が、ものすごく静かに、そしてシブい声で、正論を吐いたのだ。


 侵入者も、そして家族すらも、その変化に付いていけない。


「て、てめぇ! 何しやがる、怪しい奴め! 何モンだキサマ!」


 と、侵入者(栗毛の男)は言った。


「私は、ハマグリ男……だそうだ。名誉ある身。そなたたちこそ何者か。婦女子に狼藉を働こうとは不届きであろう」


 奇天烈な外見の――オーロラピンクのマントまで着けた――自称・ハマグリ男のド正論に、侵入者は顎が外れんばかりにあんぐりだ。


 いや、村長までもが、その外見に目を奪われて「これは助けなのか?」と呟く始末だ。


 この場で、一番最初に「我」を取り戻したのは、十歳の娘。


「オジサン、ありがとう」


 ハマグリ男は、頭の二枚貝ごと振り返ると、娘に貝殻を揺らして答えて見せた。どうやら「どういたしまして」的な仕草らしい。



――それは、音声を消すと「これから、お嬢ちゃんを誘拐するからね」のシーンにしか見えなかったのだが――



『背中を見せた! 隙あり!』


 赤毛の男は、背中を向けた乱暴者=ハマグリ男を敵と認定したのだろう。背中に向けて問答無用。


 敏捷な動きで斬りかかる。


「てやっ!」


 気合いもろとも切り捨てた……はずだった。


 シュン


 空気が震える音が聞こえた気がした次の瞬間、男は剣ごと前のめり。地面にめり込んでいた。


「ふむ。鼻血も許さんぞ。血を見せるなとご命令だからな」


 全員が「血を見せるなって意味が違うと思う!」と突っ込みたいところだろう。


 しかし、侵入者からしたら単なる邪魔者。


「わ、わけのわからんことを! この、怪しい奴め!」


 そう、叫びながら、侵入者の男は全力で剣を振り下ろし……ている間に、ハマグリ男の拳が腹にめり込んでいる。


「安心せよ、床を汚さないように考えてある」


 ハマグリ男が、村長の妻に向かって優しく語りかけた。

 

 どうやら、胃の腑を避けて殴ったとでも言っているのだろう。


 三人目が倒れて、ようやく、村長は気が付いた。


『礼を、ともかく、礼を言わねば』


 どれだけ、怪しい身なりでも侵入者を退治してくれたのは事実なのである。


「ありがとうございました」

「礼にはおよばぬ。騎士として弱き者を助けるは、我の務めゆえ」

「え? 騎士?」


 思わず、非礼な問い返しをしてしまったが、ハマグリ男()()は気にも留めぬように、一歩脇に寄って頭を下げる。


 軽いノリで手を繋いで入って来た二人。


「いー ですねぇ。どうもー」


 何とも軽い調子の男?と少年風の骸骨である。


「「「え?」」」


 一家が目を丸くしていると、次に入ってきたのは、女。


 そう、いかにもラスボス的な風情を持った、ファントムの長が扮する「女幹部」である。


 髪の毛を赤と青と緑に染めて数え切れないほどにジャラジャラと悪趣味なアクセサリーを着けた、あまりにも怪しい女。


「あ~ら、ころあい、だった、かしら~」


 あまーい調子で、どこかしらからかうトーンのセリフを吐きながら「真打ち登場」という感じなのだ。


『『『あやしすぎる!』』』


 村長一家は、ゆっくりと入って来た女?に目を奪われたのである。


 侵入者を退治してくれたハマグリ男の仲間だというコトだけは理解したが、何をどうすれば良いのか、村長はちっともわからなかったのである。


 どーすんだよ、これ!


 そのセリフを誰が言ったのか、誰も知らない…… 知らないって言ったら、知らないのだ!



カイは真面目です。真面目ったら、真面目なんです!

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