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スキル「ゴミ」いや、マジで (書籍化決定)  作者: 新川さとし
第7章 南部編

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第101話 みすでれくしょん

「だから! なんだって出撃できねぇんだよ」

「恐れながら、食糧が足りませぬ」


 ガチャン!


 高価なティーカップが床に叩きつけられて粉々だ。 


 もう何度目であろうかと、サンタは冷や汗しかない。


「わかってるって! それは何度も聞いた。だがな、あれから、オレがどれだけ待たされたと思ってるんだよ。三週間以上も待機だぞ! カッコつかねぇじゃねぇか」


 宿敵サスティナブル帝国を打倒せよ、と大号令を発したのは6月末のこと。


 「三日待機せよ」

 

 クルシュナとしては「今こそ雌雄を決すべし」で気持ちは満タンだった。ところが、実務レベルで見ると「食糧が足りません」である。


「そもそも、コフで食糧が足りないって何だ? そんなのボルタ裏切りのウワサよりもヤバいじゃん!」


 本来、サンタはコフ内の戦い自体は関係ない。「ボルタ謀反」の情報をクルシュナ王の耳に入れ、真偽を確かめるために飛んできたのだ。


「かくかくしかじかで、全ての情報がボルタの裏切りを示しております」


 とサンタが告げた時、話はあっさり終わった。


「そいつぁ、敵に騙されてるんだよ」


 クルシュナはウワサを一蹴した。


 サンタも食い下がる。


「兵の損耗率も低く、何よりも、サスティナブルは正面衝突を避け続けています」


 細々とあれこれ述べたが、クルシュナは聞いちゃいない。


「あのな~ 本当に裏切るヤツは、もっとこっそりやるの。こんなにわかりやすいコトをするヤツが裏切るわけがないんだよ」


 ミスディレクションっていうんだ、と肩をすくめてからの決めポーズ。


「みすでれくしょん、でございますか?」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはこのことだろう。


 意味が分からず固まるサンタに、苦い顔。


 しかしサンタだって、ただでは引き下がれない。


「これだけ怪しい行動なのですぞ?」

「だ、か、ら、だよ。裏切るつもりなら、もうちょっと上手くやるはずだ」


 マジックにおいて、タネとなる部分から注意を逸らす行動のこと。つまり、マジシャンが物をポケットにしまう時は、何か別のものを取り出してる──そんな話だ。


「裏切り行為っぽく見せてるってことは、裏切ってないってコトだよ」


 ボルタの「疑惑」は、ほとんどが敵の演出と看破した。


 その後、平然とボルタの陣幕に乗り込んで酒まで飲んでみせたのは、マジシャンとしての自分に自信があったからだ。


 ウワサは、これで一気に沈静化した。


 ともかく、今は戦いが優先した。


「そんなのはいーから、早く出陣できるようにしろ。そもそも、ここは食糧が豊富なはずだぞ」 


 クルシュナの常識では……珍しく、それは国としても常識である……コフは国内有数の穀倉地帯だ。


 折しも、イモと麦の収穫シーズンだ。略奪や焦土作戦(シェヴォシェ)によって収量が激減したとは言え、この程度の食糧供給は問題ないとサンタは考えていた。


「誠に、申し訳ございません。三伯爵家との調整に時間を取られました」


 大王の命令で、いきなり「コフで会戦に持ち込むから、お前が仕切れ」である。


 大車輪で働いてはきた。


 しかし、計算違いの連続だった。


 特に、コフ内の三伯爵家イグナツ・ヨーゼフ・バルタから「兵糧の供出ができない」と言われてしまったのが痛かった。


 このあたりは、政治的な駆け引きや、コフ内でのパワーバランスがあるらしく、話が一気にこじれた。


 先週、ようやくまとまった条件は、きわめて厳しい。


・穀倉から奪われた分の領主税(国王への分担金)を減免する。

・領内の税を国王の名の下に再徴収することを認める。


 これによって、大わらわで食糧を集め、部隊配置や進軍経路を決めるためにサンタは大汗をかくことになった。


「あと数日で出発できるって、言ったよな? そしたら、もうちょっと、もうちょっとって。これで何回伸ばしたんだよ」


 これは、サンタの補給計画が、完全に失敗したせいである。


 失敗の原因は明白。イヴープ大将からの「食糧輸送には、輸送隊の十倍の兵を投入して警備する必要があります」という進言を甘く見たことにあった。


 サスティナブル帝国は、どれほど小規模な輸送隊でも「律儀だねぇ」と、声をかけたくなるほどに、真面目に襲ってくるのだ。


 そのせいで、計算通りに食糧が集まらない。


 背に腹はかえられない。イヴープの意見を全面的に取り入れるしかなかった。


 おかげで、ようやく食糧が集まってきたところだ。


「そろそろ、カタをつけたいんだけどね。いつまでも金持ち(サスティナブル)に大きな顔をさせてたまるか!」

「誠に面目なく。申し訳ございません」


 額に浮かんだ汗をふきふき、サンタは平身低頭だった。


 そして、ようやく食糧備蓄が整ったのは、もはや7月の末となっていたのである。


 いざ「大出陣だ!」とクルシュナ王が胸を張ろうとした時……


 戦うべき相手は、あっさりと引き上げていってしまったのだった。


人の意識を逸らすことに長けているため、サスティナブル帝国側の作戦に引っかからないクルシュナ王ですが、反面「ミスディレクションだ」ということしか説明していません。これが後に響かないと良いですね。

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