天使の中身はセブンティーン
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「おはよぉ、まーしゃ…?」
それはまだ完全に夜が明けきっていない早朝。
使用人はひっそりと、それでいて手早く朝食の準備や、主人の予定の確認や連絡事項を伝える朝礼のようなものを始めているが、貴族の方々が起きてくるような時間ではない。
そんな中、目をこすりながら寝間着姿で使用人の待機部屋の扉を開いたのは、この邸の1人娘であり、邸中の人間がそれはそれは大事にしている、まさに宝物のような女の子だった。
そう、私だ。(ドーン!)
「まぁ!!!!リリーシュ様!!どうなさったのですか!?」
おそらく朝礼の最中だったのであろう。
皮張りの使い古された手帳をポイッと投げ捨て、驚くべき速さで女の子に駆け寄るのはマーサ。
私付きの「専属侍女」とかいう立場だそうで、メイドさんのリーダーみたいな感じらしい。
マーサはよほど焦ったのか、靴が片方脱げかかっているがそんなことは微塵も気にしていないみたい。
「まーしゃ…。りり、はやい?」
「早起きすぎるくらいです!どうされたのですか?眠れませんでした?」
生まれたその日に邸中の人間をKOした私、リリーシュは2歳になっていた。
まだ舌ったらずだけど少しずつしゃべれるようになり、移動速度は遅いけどある程度動けるようになっていた。
そして実は私ことリリーシュ。何の因果か分からないけれど、どうも転生者のようです。
この精神体?がめざめたのは、つい最近のこと。なんか言ったらマズそうなので誰にも言ってない、私だけの秘密。
今は「可愛い可愛い」言われているけど、「怖い!気持ち悪い!」とか言われたら悲しいし、下手すると「悪魔の子」みたいになって捨てられちゃうかもと思うと、どう考えてもカミングアウトすべきじゃないと判断した。
多分元々は17歳くらいだったんじゃないかな。制服着て学校に通っていたような記憶がうっすら残っている。
いやー、自覚したのが2歳でよかったよね!さすがにこの精神を持ちながら授乳されるのはなかなかのキツさがあるよね。
「リリーシュ様…?あれ…?寝てらっしゃる…?」
あと、おそらくここは前とは違う世界かなと思ってる。だって、電気が見当たらないんだよね…。
ロウソクとか使ってるの!「お嬢様」と呼ばれて大豪邸で暮らしているのにロウソクで暮らしているなんて、なんだかチグハグでしょう…?
でも服とかは前世で目にしてたものよりずっと品質が良さそうなんだよね。レースとかすごい繊細だし、家具もすっごく装飾が細かくて重厚感があるの。
あとね、馬車とかもあるの!剣も!!ヨーロッパみたいじゃない?よく小説とかゲームに出てくる中世ヨーロッパの世界観なのかな~と思ってる。
コレが誰にも言えない私だけの秘密。
でもただの学生だったから特別な知識なんて持ってないし、科学だとか物理だとかも全然分かんない!だから知識チートとかするつもりもない(というかできない)。
中身17歳ってバレないようにひっそり平和に暮らしたい!できれば好みの男性と結ばれてみたい!それだけが私の今の目標なの。
「リリーシュ様…?」
あ!やばい!返事するの忘れてた!!