ちゃんと可愛かった
話が終わるとアツシは言った。
「どこに行こうにもその格好じゃ悪目立ちをするだろうから、服を買いに行かないかい。」
よし、良い質問だ。ここは俺の腕の見せ所だ。俺は当然こう答えた。
「いっいえ、服だなんて結構です。私なんかにお金を使わないでください。」
アツシは照れてこう言った。
「君なんかじゃない、君だから買うんだ。今も可愛いけれど、身なりを整えればもっと可愛くなると思うよ。」
良いセリフだ、感動的だな。だが俺には無意味だ。言われる立場だと物凄くかっこ悪く感じる。しかし、俺はこう答える。
「アッアツシ様がそうおっしゃるのなら」
なかなか良いじゃないか。これこそアツシ君が求めていたストーリーだろう。
「じゃあ、行こうか。」
アツシは俺の手を握って外へ連れ出した。しばらく歩いたが会話はない。アツシは手を握りながら、感極まっていたのがよくわかった。でも、少し気まずそうだった。店に着いたが、店員の目が冷たい。でもすぐに笑顔になって
「いらっしゃいませ、お連れの方のお洋服でしょうか。」
と、応対してくれた。
アツシが店員に俺に似合う服を選んでくれと言ったので俺は店員と試着室に行った。店員が何枚か服を持ってきて着替えさせてくれた。俺は初めて自分の素顔を見た。確かに可愛かった。長い黒い髪の可愛い15歳くらいの女の子がそこには居た。まぁ、髪が黒いのはわかっていたがここまで自分が可愛いとは思わなかった。年齢もおそらくの年齢なので確証はない。男子大学生の俺が一目で少女の年齢がわかるわけがない。店員はカーテンを開けてアツシに俺の姿を見せた。
「凄く可愛い」
思わずアツシは呟いた。俺に見惚れているのがよくわかった。
「これ買います。後何着かもお願いします。」
着る度にアツシは見惚れていた。正直に言ってキモかった。