最終話【約束を果たすとき】
……彼が成仏してから数か月後……
私は大学を卒業した。
就職先の保育園も決まっていて新たなスタートを切った。
新たな生活は全てが刺激的で忙しい毎日を過ごしていた。
しかし、彼を忘れたことはなかった。
毎日家に帰ってすぐその日の出来事を今までのように報告した。
届かないと分かっていても
そうすることで彼を近くに感じていつもの私に戻ることが出来た。
辛いことも乗り越えることが出来た。
彼が居なくなってもなお、彼に助けられるなんて…。
……それから30年が経った
私は50代になり、保育園の園長をしている。
まさか私が園長まですることになるとは思っていなかった。
しかし、私はもうすぐ死ぬ。
数か月前から体調が悪く、先日、病院を受診した際に
悪性の腫瘍が見つかった。
気づくのが遅く、末期になってしまっているらしい。
もう治療法がなく、ただ死を待つだけになってしまった。
しかし、私は死ぬのが怖くない。
数年前に共に旅立った両親の元へ逝くことが出来る。
それに彼との約束もある。
生涯の終わりまで子供たちに携われることを嬉しく思う。
あの時、彼に出会い、夢を叶えられたからこその人生だから。
それから数ヶ月の日々が過ぎた。
そろそろ限界が来た。
じきにお迎えが来ることだろう。
保育園の子供たちや先生方から寄せ書きを貰ったが
彼たち、彼女たちの夢を叶えてあげることは出来ないだろう。
私は本当に幸せな人生でした。
そして彼女は静かに旅立った。
私の名前は陽菜乃。高校生だ。
そう、無事に生まれ変わることが出来た。
前世の記憶も彼との思い出もしっかり覚えている。
彼との再会を楽しみにしながら
二度目の高校生活を送っていたある日
クラスに転校生がやってきた。
~~初めまして。○○から引っ越してきました。
斎藤幸彦と申します。
彼を見た瞬間、衝撃が走った。
間違いない。彼は前世で出会った私の大好きな幽霊だ。
彼は私に気づくと満面の笑顔を見せた。
運命なのだろうか。
彼は私の隣の席になった。
休み時間、同級生が話しかけてきているのを無視して
彼は私に話しかけてきた。
~~陽菜ちゃん、やっと見つけた。