第一話【思わぬ出会い。】
今年も夏が終わり、秋が来た。
この時期になると必ず、彼を思い出す…。
今頃、あの人は何をしているのかな?
彼と初めて会ったのは七年前。
大学入学と同時に始めた一人暮らしの家で出会った。
その頃の私には夢があり、そのために大学に入った。
その夢とは、保育士である。
小学生の頃に両親と行ったショッピングモールで迷子になった私を
助けてくれた大人を見て
いつか私も人を助ける職業に就きたいと思ったのがきっかけだ。
がむしゃらに勉強を頑張り、念願の大学に入り、保育士になる夢の
第一歩を踏み出すことが出来た。
しかし、想像した以上に保育士の勉強は難しくて大変だった。
家でも必死に勉強をしたが、なかなかうまくいかず、心が折れかけていた。
そんな時、彼が私の目の前に現れた。
~~諦めちゃダメだよ、陽菜ちゃん。
急に聞こえてきた声と名前を呼ばれたことに驚きながらも、声がした方を振り向くと
見知らぬ男の人が立っていた。
(泥棒!?警察に電話しなきゃ!!)
しかし、ある事に気が付いて通報するのをやめた。
(彼が少し透けている?幽霊?私は霊感がある?)
私は物凄く困惑していた。
彼は明らかにこの世の人間ではなかったのだ。
そしてもう一つ気づいたことがあった。
何故、彼は私の名前を知っているのか?
私の名前は陽菜乃
家族からは陽菜と呼ばれている。
彼も同じく私のことを陽菜ちゃんと呼んだ。
恐る恐る、彼に聞いてみた。
――なぜ私の名前を知っているのですか?」
彼は少し驚きながら答えた。
~~陽菜ちゃん、見えるの?なぜ知っているかはまだ内緒。
いたずらに笑う彼を見て少しときめいてしまった。
まだ内緒?どういうことだろうか。
困惑が止まらなかったが、悪い幽霊ではないことは分かった。