2-4 初陣
翌日、部活に行こうとすると生徒手帳にメールが届き、開くと「今すぐACEの部屋に来て下さい。用件は怪魔についての特別講座です。以上」と書かれていた。
僕はそれを怪しみつつも指定された場所へ向かうとそこには机と椅子が1セット置かれておりその正面にあるホワイトボードの近くに奏さんが立っていた。
奏さんは僕を発見すると「お待ちしておりました。特別講座を始めますよ。」と言って僕を出迎えた。
「まず、怪魔ですがネコ科を模したキャッツ種、イヌ科を模したハウンド種、大型の陸上生物を模したヘヴィ種、今挙げた3つのどれにも当てはまらない陸上生物を模したランズ種、鳥類を模したバーズ種、水棲生物を模したアクア種、昆虫を模したインセク種、爬虫類を模したレプター種、両生類を模したアンフィ種、極地の動物を模したポーラ種、恐竜を模したダイナ種、空想の生き物を模したフィク種があります。」と奏さんは僕に怪魔について教える。
そして、「酉島君のヴァルキリーシステムであるアーサーは守りが良ければどんな怪魔にもバランス良く立ち回る事ができますが油断は禁物ですよ。どんな怪魔にも長けている所はありますから。」とアドバイスを送り、僕は「分かってます。」と返事をした。
その後も「では、次は対怪魔戦におけるチームでの立ち回りですが酉島君には前衛として頑張ってもらいます。」と奏さんが言うと「えっ、ちょっと待ってください。僕には前衛なんて・・・」と僕は弱気になるが奏さんが「気持ちは分かりますがアーサーは盾を使って守りつつ剣で戦う戦法が主体なんです。受け入れてください。」と説得する。
それでも戦うことに恐怖を感じる僕は「それって死ねって事なんですか!?」と言うと奏さんは「貴方は大切な仲間です、そう簡単には死なせません。」とまたもや説得する。
僕が「本当ですか?」と聞くと奏さんは「本当です。」と答える。
奏さんの言葉に僕は「もし本当だったら命を保証してくださいね。」と言うと奏さんは「大丈夫です。例え貴方が戦えなくなっても他の5人が貴方の分まで戦いますから。」と安心させるかのように説得する。
それを聞いた僕は「じゃあよろしく頼みますよ。」と応じた。
すると、警告音が鳴り響き、「怪魔出現、場所はエリアG-12、手の空いているヴァルキリーシステム装着者は至急出動せよ。」とアナウンスが聞こえた。
奏さんは僕に「ここから近いですね、行きますよ。」と言い、駆け足で外に出た。
外に出ると奏さんは「展開、阿修羅!」と叫んでヴァルキリーシステムを装着し、怪魔が出たと思われる方角へ飛んで行った。
僕も「展開、アーサー!」と叫び、ヴァルキリーシステムを装着してから奏さんを追いかけた。
柳さんたちも合流し、怪魔が出たエリアに到着するとそこには蜥蜴に似た姿を持つ生き物が3体いた。
まず、美空さんが前に出て蜥蜴のしっぽを掴んでジャイアントスイングを出そうとすると瑠果さんが「美空、それだと周りの人に当たるかもしれないだろ。」と止める。
それに対して美空さんは「でもこれが地形に影響を及ぼすことなくダメージを与えられますけど。」と反論する。
反論された瑠果さんは「でも万が一周りに損害を与えたらどう責任取るんだい、そういう向こう見ずな所がいけないんだよ!」と美空さんを叱るが美空さんは「なぜ貴方はいつもそうやって私の邪魔をするんですか!?」と叫んで瑠果さんを殴った。
またもや些細な事で喧嘩になった2人を伏見さんが「2人とも任務中に喧嘩は駄目ですって!」と宥め、その間に僕達3人は怪魔である蜥蜴に分担して攻撃する。
僕が剣で尻尾を斬りつけ、柳さんが手裏剣で離れて攻撃し奏さんが8本の腕を自在に操り怪魔を殴り続ける。
一方その頃伏見さんは未だに喧嘩が止まない2人を宥め続けていた。
だが、その最中に1体の怪魔の攻撃を受け、喧嘩していた瑠果さんは「どうやら、一時停戦する必要があるようだね。」と呟き、美空さんも「そうみたいですね。」とそれに応じて戦いに入った。
「まずはあたしが行く。だからどいてな。」と僕たちに促し矢を放つ。
そしてその矢は怪魔の眼球に突き刺さりもう一発放つとそれも反対側の眼球に突き刺さった。
これを6回行い3体全ての怪魔の両眼を封じた。
そしてこの攻撃に怪魔は痛いとでも訴えているのか叫び声をあげた。
美空さんは「無駄な悪あがきはよしてください。」と言って怪魔うちの1体の身体を掴み、飛び上がってから何かの構えを取って降下し、左の太ももを使って怪魔の体を折り曲げる。
これは生身の人間が喰らうとほぼ確実に骨折すると思われるから威力は相当なものだろう。
だが、怪魔はまだ動ける状態だったため美空さんが困惑していると伏見さんが「ここはあたしが行くね。」と前に出て「やぁーー!」と叫びながら刑事ドラマでありがちな人を殺すシーンのように怪魔の頭部をハンマーで叩いた。
これによって怪魔はハンマーで叩かれた場所や眼球から血と思われる液体が滲み出た結果失血死と思われる死に方をしたため残りの2体が両目が見えない中攻撃しようとしているが勿論目が見えないため攻撃は当たらない。
そんな中美空さんは僕が尻尾を斬りつけていなかった怪魔の尻尾を掴んで上下に振り回し怪魔の身体を地面に叩きつける。
そして上に放り投げて自分も飛び上がり怪魔より高い高度に辿り着いたらボディドロップを浴びせた。
元々大柄なうえにヴァルキリーシステムでさらに重量が増しているためかなりの重量級となっている美空さんの重さと落下した時の重力が加わったため耐えることが出来ず怪魔は息絶えた。
そして残り1体の怪魔は僕と柳さんで応戦しており僕が盾で守りつつ柳さんが苦無で攻撃するといった戦法で戦っている。
怪魔の目は瑠果さんが放った矢で潰されているため視界は無いといったも過言ではない。
その結果攻撃は殆ど外れており大きい物音を出さなければ気づかれることはまず無いだろう。
柳さんは分身を出して怪魔の身体をひっくり返して「酉島君、やっちゃって。」と僕にとどめを刺すことを促した。
それに対して僕は「本当に僕がやるの?」と聞くと柳さんは「そうそう、その剣で心臓を思いっきり突き刺しちゃって。」と言う。
柳さんの言葉に僕は意を決して怪魔に近づき心臓の場所を教えてもらいながらその場所に剣を突き刺した。
奏さんは3体全てにとどめが刺された事を確認し、学校に報告した。
そして十数分後、怪魔が回収されて行き僕が「やりましたね。」と口にすると奏さんに「はい。初陣はどうでしたか?」と聞かれ、僕は「まあ、正直に言うとちょっと怖かったです。」と答えた。
それを聞いた奏さんは「ですがこれからもこんな戦いが続きます。宜しくお願いしますね。」と言い、僕は心の中で(先が思いやられる・・・)と呟いた。