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ヴァルキリーアーマー  作者: 廿楽
第2章 序幕
7/11

2-3 高校生作家

 お風呂での話から数日、みんな黙っているのか僕の身の回りには女子ばかりである事に嫉妬した生徒がデマを流すといった事は特にされていない。

 部活ではいつも通り鬼人転生奇譚の続きを書く日々を送っているがある日、殆ど部活に来ない先輩が部室にやって来て「よく聞いて、私が書いてる児童書だけど今日3巻が発売されるわ。」と部員の前で報告し、全員に「全員分あるわ。1人1冊受け取って。」と言って手渡す。

 そして、僕と支倉(はせくら)さんの前に来ると「貴方たちが新入部員ね。」と声を掛け、「私は村中(むらなか) (あや)。高校生兼児童文学作家よ。」と自己紹介をした。

 僕は村中さんに「今月転入した中等部3年の酉島(とりしま) 章佳(あきよし)です。」と名乗り、支倉さんも「私は中等部1年の支倉 紗耶花(さやか)。」と名乗った。

 村中さんは編集画面を映しているパソコンを見て「へぇ、ネットで小説書いてる子がいるのね。」と反応し、鳩岡(はとおか)さんが「それ、今は見ない方がいいですよ。まだ途中らしいですし。」と言うと村中さんは「そうね。」と返事をする。

 村中さんは「取り敢えず今日はこれで帰らせてもらうわね。」と言い、僕と支倉さんに「貴方たちがどんな物語を書くか楽しみにしてるわ。」と期待の言葉を送って部室を後にした。

 部員全員に渡された児童書である「おとぎ話紀行」の表紙に書かれていた作者名を見ると見覚えのある名前だった。

 それは鬼人転生奇譚の最新話を投稿する度にコメントを送ってくれるkleur(クルール)さんだった。彼女もまた僕のファンなのだろうかと思っていたが今は続きを書くことに集中した。

 1時間が経過し、区切りの付いたところまで書き終わったため投稿し、鳩岡さんは「お疲れ様です。読ませていただきますね。」と僕を労った。


 一方その頃、村中さんは自宅で「来たわね、最新話。さあ、どんな内容かしら。」と楽しみにしてページを開く。

 そして数分後、「あー、今回も見入っちゃったわ。コメントを送らないと・・・」と呟き、「『今回も面白かったです。特にバトルシーンが白熱した模様で思わず見入ってしまいました。次も期待します。』っと。こんな上出来な小説書くなんて、(あき)って一体誰なのかしら。」と感想を入力してまたもや呟く。

 だが、「そういや今回の話、部室で見た書きかけの小説にそっくりね。それにあのプレートに書かれてた酉島君の名前って章佳だったわ。もしかして・・・」と村中さんは勘づいた。


 次の日、いつも通り部室にいると村中さんが来て「酉島君、ちょっといいかしら。話があるの。」と僕に声を掛けた。

 僕が「何でしょうか?」と返事をすると「ここだとまずいから場所を変えるわ。」と言って僕を連れて部室を出た。

 部室の外に連れ出された僕は「一体どうする気なんですか?」と尋ねると村中さんは「誰にも言わないから正直に答えて。」と言うと「鬼人転生奇譚の作者って酉島君なのよね?」と聞いた。

 その質問に安心した僕は「誰にも言わないと約束してくれるのなら正直に答えます。」と言い、村中さんが「約束するわ。」と返事をした。

 それを聞いた僕は「分かりました、言います。あの小説の作者は僕です。」と答えると村中さんは「そうなのね。あの小説の作者と会えるなんて嬉しいわ。」と感激した。

 そして僕は「こちらからも質問があります。僕が投稿する度に感想を送ってくれてるのって貴方ですよね?」と聞くと村中さんは「そうよ。」とあっさり答えた。

 その答えに僕は「やっぱりそうでしたか。いつもありがとうございます。」と感謝して部室に戻った。

 部室に戻ると支倉さんが「私みたいな子供じゃダメ?それとも村中さんみたいなえっちい体の女がいいの?」と僕を問い詰め、「私は先輩が好き。一目惚れした。」と言って僕に口づける。

 初めての感触に僕は(これって・・・もしかして・・・)と心の中で呟き、その感触が収まると「支倉さん、一体・・・」と聞く。

 それに対して支倉さんは「私はこんなに好きなのに先輩は応じてくれない、寂しい。」と本心をぶつけるが僕は「ごめん、僕は他人(ひと)に心を開けない。」と言い、前の学校でいじめに遭い引きこもりになった事やその内容を話した。

 すると、話を聞いていた鳩岡さんが「可哀そうに・・・今まで辛かったんですね。」と慰め、村中さんも「貴方、それで人間不信に陥ってるのね。でも大丈夫よ。私も人間はあまり好きじゃないわ。」と言う。

 2人に対して僕は「ありがとうございます。文芸部(ここ)でなら本当の自分になれる気がしました。」と感謝して支倉さんも「自分の感情ばかり前に出してごめんなさい。」と謝罪した。

 部活を終え、帰路についていると理事長を見かけ、「こんにちは。」と挨拶すると理事長は「まあ、他愛のない会話でもしたいから理事長室に行くのじゃ。」と言われたが僕は「何もやってませんけど?」とその言葉を疑う。

 理事長はそんな僕に対して「そんな事は分かっておる。本当に他愛のない会話がしたいのじゃ。」と反論するがそれでも僕は「本当に何もやってませんよ。」と言う。

 僕の様子に理事長は「お主の猜疑心の強さは知っておったがまさかここまでとはな。」と言い、左耳に付けていた端末を操作して「章佳がなかなか応じてくれないのじゃ。」と相談すると相手の話を聞いているのか頷くような反応をして「分かったのじゃ。」と返事をして電話を切った。

 そして、「それじゃあ応接室に行くのじゃ。」と言い、僕を応接室へと連れて行った。


 応接室にて僕は理事長と向かい合い、理事長は「どうじゃ、ここにはもう慣れたか?」と聞いて来て僕は「はい、おかげさまで。」と答える。

 僕の答えに理事長は「そうか。」と反応し、「ここからが本題の質問だがいいか?」と言い、その直後に「ハーレムは作れておるのか?」と聞いて僕を硬直させた。

 その質問をされた僕は一瞬硬直した後「な、ななな何言ってるんですか!?」と驚きを見せた。

 だが理事長は僕の様子を見て「その反応、まだ作るに至ってないな。」と面白がる。

 気を取り直した僕たちは話を続け、「確か章佳は文芸部だそうだがあそこなら案外簡単にハーレム作れるぞ。あと、ACEではハーレムを作りやすいからあとはお主の度胸次第じゃな。」と理事長は言う。

 こうして僕たちは話を終え、僕は理事長と別れた。

 理事長は僕の姿が見えなくなると「章佳・・・いつまで心を閉ざすつもりなのじゃ・・・心配でたまらん・・・」と呟いた。

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