1-4 ヴァルキリーシステム
そんな僕の様子を見た瑠果さんは「ごめんな、美空があんな第一印象植えつけさせちゃって。」と僕に謝罪し、伏見さんも「美空さん、高1の時にコンビニでバイトしてたら1週間後に態度の悪い客を投げ飛ばしてクビになったんだって。」と話し、美空さんは「はい、今でも納得できません。」と反応した。
そうこうしていると僕の腕時計型生徒手帳にメールが届き、開くと送り主は姉さんで「これから研究所に来て。また、他のACEメンバーの同行は自由よ。」と書かれていた。
僕は他のメンバーに「研究所に来るよう言われたけど皆さんどうしますか?」と聞くと全員「行く。」と答えた。
こうしてバスで移動し、研究所に到着した僕は「姉さん、用件は何?」と聞くと姉さんは「今日は章佳専用のヴァルキリーシステムを見てもらいたいの。」と話し、広い所へ案内する。
僕はそこに置かれていた白い鎧と武器と思われる片手剣と盾を見て「もしかしてこれが僕の・・・」と尋ねると「そうよ。これが章佳専用のヴァルキリーシステム『アーサー』よ。今格納状態にするわね。」と姉さんは言う。
アーサーの格納状態である白い宝石らしき物が埋め込まれた指輪を左手の中指に装着した僕に姉さんは「そのまま『展開、アーサー!』と叫んでみて。ヴァルキリーシステムが装着されるわ。」と教え、僕はその通りに「展開、アーサー!」と叫ぶ。
すると、先ほどの白い鎧が装着され、右手には片手剣が、左手には盾が握られた。
その姿を見た柳さんは「男なのにヴァルキリーシステムを装着できるって本当だったんだ。」と率直に言うと「何で装着できるのか僕でも分からないよ。」と述べる。
柳さんは「じゃあ次は私が装着するね。」と言い、「展開、自来也!」と叫ぶと柳さんの身体に赤色の鎧が装着され彼女の両手には苦無が握られた。
僕に対して柳さんは「これが私専用のヴァルキリーシステムの自来也だよ。スピードと分身の術が自慢なんだ。」と紹介し、伏見さんも「展開、トール!」と叫んで水色の鎧を装着し、両手持ちのハンマーを握った。
「あたし専用のヴァルキリーシステムはトール。動きは遅いんだけどこのハンマーはどんな固い岩でも砕けるんだ。」と紹介し、美空さんが「仕方ないですね。」と呆れつつ「展開、為衛門!」と叫んで茶色の鎧と手甲を装着した。
美空さんは「これが私専用のヴァルキリーシステムである為衛門です。人類最強の力士らしく投げが強力です。」と紹介すると瑠果さんが「じゃあ次はあたしが展開する番だな。」と名乗りを上げて「展開、ロビンフット!」と叫ぶと緑色の鎧を装着し、両手には弓が握られていた。
「ロビンフットはあたし専用のヴァルキリーシステム。弓で遠くから攻撃するのが得意なんだ。」と紹介すると奏さんが「みなさん、茶番はここまでにして帰りますよ。」と呼びかけ、ヴァルキリーシステムの披露は終わった。
帰路に就く中で僕は「そういや奏さん専用のヴァルキリーシステムってどんなものなんですか?」と瑠果さんに聞く。
すると瑠果さんは「奏のヴァルキリーシステムの名前は阿修羅。鎧は金ピカで阿修羅像みたく腕が8本あるんだ。」と話した。
それを耳にした奏さんは「瑠果さん、あまり物事を人に軽々しく話してはいけませんよ。」と瑠果さんをたしなめた。
瑠果さんは「はいはい、分かりましたよ。」と返事をしてそれぞれの寮に帰った。
部屋に戻ると2人はすでに戻っており「章佳、お疲れー。」と船見君が挨拶をする。
そして机に置いてある教科書に名前を書くと船見君が「なあ、ACEの青柳 瑠果って人知ってる?」と聞いて来たため僕は「えっ、いきなり何を・・・」と聞き返すと「俺、アイドルの追っかけやってるんだけど推しがいるグループが一緒なんだよ。だから俺は瑠果さんと交流があるってわけ。」と説明する。
僕はそれを聞いて「そうなんだね。」と返事をした。
すると「ねえねえ、あの時大丈夫だった?」と甘木君が聞いて来たが僕は何を言ってるのか分からなかったため「何の事?」と聞くと「学校終わったら伏見さんに連れ出されてたでしょ。あの時何もされなかった?」と心配そうにした。
質問の内容を把握した僕は「いや、特には何も。ただ単に一緒に食事させられただけだけど。」と答えた。
それを聞いた甘木君は「良かった。伏見さん、ギャルだからてっきり何かに巻き込まれたのかと思った。」と安堵したが船見さんが「おいおい、伏見はそんなやつじゃないぞ。」と甘木君の発言を否定する。
そして続けざまに「俺、あいつと2年間同じクラスだったけど弱い者いじめはしないしクラスでの雑用は積極的にやるし普通にいいやつだぞ。」と伏見さんの話をした。
それを聞いた僕は船見君に「それって本当なのかな・・・」と疑念を持つ。
船見君の言う事を疑いつつも部屋でゆっくりしていると突然僕のスマホが鳴った。
画面には「つかさ」と表記されており、「もしもし。」と電話に出ると「章君、いきなりいなくなるなんて酷いよ!」と今にも泣き出すかのような声が聞こえて来た。
この電話の声の主は幼馴染の片蔵 つかさだった。
つかさの声に僕は「ごめん、つかさ。」と謝罪したが「ただでさえ伶奈ちゃんがいなくなったのに今度は章君がいなくなるなんて耐えられないよ。」と言う。
僕には2人の幼馴染がいて1人はつかさだがもう1人は5年前に怪魔に攫われてから行方が分からない福町 伶奈だ。つかさは恐らく自分と親しい者が自分の下から離れていくのが耐えられないのだろう。
だから僕は「大丈夫、いつか会えるよ。」と慰めるとつかさは「本当?」と聞き、僕は「いつになるかは分からないけど本当だよ。僕は今、ヴァルキリー学園って所に通ってるんだ。」と説明した。
つかさは「そこって中高一貫?」と聞くと僕は「うん。」と答える。
すると「それじゃあ高校はそこを受けて合格すれば一緒になれるんだね。」と反応した。
その反応に僕は「まあ、校内ではね。」と言うとつかさは「じゃあ受けようかな。」と伝えるが僕は「そんな簡単に決めて大丈夫なの?偏差値によっては無理だと思うけど・・・」と案ずる。
だが、つかさは「大丈夫。勉強すれば何とかなるかもしれないし。」と引き下がらない。
そんな彼女に僕は「じゃあさ、9月に文化祭があるから是非来てよ。無理だったら連絡するから。」と言うと「うん、その時には行かせてもらうね。」と反応して電話を切った。
電話を終えた僕は心の中で(つかさ、何も言わずに去って行ってごめんね。伶奈、無事なのかな・・・)と心の中で思ったのだった。