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いつか月を奪う   戦士  作者: 旨とら
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再勝負

 「今日こそあんた曲がった根性を叩き直してやる!」


 「チビのくせによく言うな!」


 ああ、あの二人また始まった。


 出立からフィリップとターラーは会う度にきっと喧嘩する。この数日もう何回目の諍いのか、個性がピッタリでもしくは仲がいいのか。


 「負け犬の叫び声はうるさいなぁ。」


 「一回勝っただけで調子乗るな!」


 言い争いの声が人を集まって、調査団のみんなはやっとフィリップを見つけった。


 「フィリップ!何やらかしてんだ!」


 ペトロに頭を叩かれて、フィリップはまた口論しようとする。


 「隊長!あなたはこれ本当にいいと思うんっすか。俺達この数日ずっとこのチビになめられてるだよ。」


 「そう考えたのはお前だけだ!」


 この世界の人じゃないから信用されてないのに、大人しくせず喧嘩を売って仕上がって、だからスパルタは脳筋だらけと言われるんだ。


 「いいから、さっさと謝れ!」


 説教は後にする、一刻でも速くこの問題児を連れ去るんだ。


 「異世界のおっさん、もう止めないで、いつはっきりしないとそいつ納得できないから。」


 向こうも簡単に諦めない様子。


 「上等だ!かかってこい!」


 「お前は黙れ!」


 フィリップの頭を強く叩く。


 勘弁しろ!そっちの小娘付け上がると、こっちのバカはすぐに乗ってしまう。どちらもくそガキ、マジ最悪だ。


 「止めるのを諦めよう、いっそすっきりさせるか。」


 人々が道を開けて、話したのはエロンだった。手を組んで、冷たい顔して、ドワーフの族長は飽きた口ぶりで勧告する。


 「ペトロよ、謝ったらこのまま終わると思うか?俺はそう思わないぞ。訳がない子供喧嘩を和らげるより、そいつらを実力で勝ち負け決めさせよう。」


 そこまで言われて、もう打つ手がない。謝りが受けられない今、一番いい結果はフィリップがボロ負けだ。



 フィリップとターラーは二十歩ほど向かい合って、どちも一番慣れてる武具を装備した。


 スパルタ少年は革鎧と脛当てを着て、右手は短剣、左手は小さな円盾。視野を最大するため、黒い縮れ毛を縄でしめる。学校にいた時最も気に入った装備だった。


 蛮族少女の武器は少々変わってる。右手が持っているのは匕首みたいな猛獣の爪、刃物のように太陽の光が反射する鋭い。左手には魔物の大腿骨、奇妙な形で硬そう。大腿骨頭は金属で補強し、大腿骨頚に布で巻いて、槌のように見える。足は裸足じゃなく、藤で作った靴を履いた。


 姿勢を構えて、審判のエロンが合図を出す瞬間、本番勝負だ。


 「お前らにはもううんざりだ。今回を最後の若さで軽薄なことにしろ!分かったか!」


 返事がない、納得したとは思えない。


 「まぁいいか、好きにしろ。では、始め!」

 先手必勝!


 フィリップは全力で突き進む。それを対して、向こうはただただ右手の武器を投擲した。


 不意打ちされて、攻勢が途絶える。漆黒の爪は盾に宙へ弾かれ、墜ちる前に二人はもう白兵を交えるになった。


 骨の槌が次々と叩いて、時々に蹴撃。短剣は右からの攻撃を防衛し、円盾で足を防ぐ。ターラーの攻撃は重くないが、少年は速度で圧倒された。


 ぼろが見えない、フィリップは円盾の後ろに身を縮んで、筋肉の瞬発力で相手を突き離す。少女は数歩退き、右手を挙げて、ちょうど墜ちてきた武器を受け取った。


 こんな短時間の激しい攻防、観戦の人々を驚かせた。


 「エロンさんの姪はこんなに強いのか。」

 「あの異世界のガキもなかなかやるなぁ。」


 再び腕を大きく振って、投擲した爪が円盾に挿し込む。そして迷わず、再び接近戦を選んだ。


 先手が取られても、フィリップは焦らない。このチビが速いのは予想通りだ。相手の行動を観察し、しっかり防衛する。いまは体力を温存して、反撃の機会を待つべきだ。


 ターラーは一気に勝利を掴むつもりだったが、連続の打撃は全然効かない。向こうは体を縮んで、最小限の動きで対応してる。目は諦めたとは見えない、このまま攻めても進展はないだろう。


 普通の技はもう効かないと分かって、少女は攻撃を控えた。布に巻かれた大腿骨頚を握て、防衛に適な棍棒で使う。まず慌ただしい息を整えて、体内の魔力の流れに集中する。簡単に勝つのができない今、あれを使うしかない。


 こっちの勢いが絶えた途端、短剣がどんどん刺して、盾も押して来る。脛当てが装備した足を蹴ってもなかなか効果がない、体でぶつかっても動かない。戦闘を甘く見た、体型の違いはこんなに差がつくなんで、やはりおじさんが言った通り、女は戦士になれないか。


 どんどん攻めて来る。力は明らかにそいつに比べない、武具の操りもそっちの方がうまい、もし速度も追いついたら、もう勝ち目がない。


 でも、危うかったが、準備はできた。


 息を深く吸い、魔力を靴に集中して、風が生じる。


 突然、なんの兆しもなく、少女はフィリップの目の前に消えた。


 闘いに集中してるはず、相手の姿がなくなることに困惑する。一瞬の混乱で、少年の背中が蹴られた。


 振り返ると誰もいない、その同時に右の股に痛みが感じる。耳元に風の音が騒くが、彼女の姿が捉えない。速いと言っても、これは人間ができることか。


 ふっと、髪が変な風吹かれた。左手は反射的に頭を守って、装備してる盾が一撃を防いだ。見上がると、少女は跳んでまた着地していない。好機を見逃さないと思って短剣で刺すが、その結果はあいつが短剣の上に片足で立ている。


 不思議に重さが感じない、その不思議な姿勢で少女が腰を落とし、足が腕に沿って払って来る。盾で防ぐと、差し込んだ猛獣の爪が足の指に抜かれた。


 ターラーはからかうつもりはない、そっちはかなり慎重なので手こずるんだ。この技は初めて見たはずなのに、まま対応をしている。勘が鋭いか経験が豊かか、早くしないと魔力も体力も尽くすんだ。


 思い切りもっと魔力を靴に注ぐ、全身の移動をやめ、道具の全て動きの速さに専念する。


 ありえないほどの長時間で宙に浮かんで、爪を挟んでいる足は鎌のように連続攻撃する。予想外のところに攻め、体勢を崩し、自分も見えないぐらい連続攻撃を促す。


 四段、五段、六段、七段、八段…


 必死に足を振り回して、やっと勝った。



 少年の胸元を踏んで、ターラーが笑った。初めての勝利は戦場で取ったじゃないが、悪くない。


 負け犬はそのまま置いていい、ちょっと水を飲んで休憩しよう、また道を急ぐんだ。


 勝利の喜びに浸っている少女はフィリップの企みが気づいていない。体の向きを変える途端、足が躓かれた。


 首が絞められ、短剣の先はもう目の前。



 あいつの殺意は、本気だ。



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