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いつか月を奪う   戦士  作者: 旨とら
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旅途中

 太陽が昇りつづ、もうすぐ正午になる。ドワーフの里へ向かう人々は足が止まって、いまは昼ご飯の休憩時間だ。


 ハスルンカは土鍋に水を注いで、持っている最後の乾燥野菜を入れる。


 「ハスルンカ君、今日も一緒に昼ご飯食べないか。」


 アテナイのペトロ今日も話をかけてきた、後ろは数人の調査団隊員が付いてる。


 この十数日、調査団の奴はずっとハスルンカと一緒に行動する。いや、しつこく付き纏っている。隊長のペトロをはじめ、この世界についてきれないほど質問をし続いている。


 「ハスルンカさん、時間があったらまた色々教えてください。」


 隊員達も媚びるように笑顔満面ながら寄せ集まって来た。



 旅が始まった日からずっとこんな感じなんだ、正直言うとちょっと気持ち悪い。が、異世界人に見張る役は自分が引き受けたから、今更文句は言えない。


 でも、自分が当たり前と思ったこと、まさか異世界人達はこんなに興味をそそるなんで。この日常はまた十数日続くと思うと、やはり後悔してしまう。


 元々向こうの世界について役に立つ情報を聞き取るつもりだが、毎回毎回立場が逆転される。二十人の異世界学者に対して、こっちは自分ただ一人。何かを教えてあげったら、すぐ夢中になって人の話を聞かない。この変人集団と比べ、戦士と自称するフィリップのほうが話しやすい。学者って何なんだ?


 「みんな本当に体力いいですね、今日も朝食抜きでしたっけ。」


 空笑いで挨拶しながら指で土鍋の下の柴を指す、しばらくして、柴は煙が出てきて、燃え始めた。


 「おおおおおお…」


 もう何回目しきりに驚嘆したが、魔法を見せる度に調査団の連中はきっとこの反応だ。


 「何回も何回も見たんだが、やっぱ凄いなぁ…」


 ますます燃え盛る焔を見つめて、ペトロはつぶやきながら蹲った。


 「確かに指に向けられていたところから燃えたんだ…でもなぜだろう…指で指すだけでこうなるか…」


 他の隊員達も体をしゃがんで見学して、逆に調味料を入れようとするハスルンカのほうが邪魔に見える。


 見るだけが物足りないみたい、ペトロが一本の柴を引き抜いて、もっと近く観察する。


 「ハスルンカ君、君さっきはどうやってこの柴を燃えさせたのか。木の中の火元素を引き出すか、あるいは大気に散乱してる火元素を柴に付けたのか。」


 また聞いたことがない言葉がしてる、引き出すってなんのこと?長命種だけどエルフ実は頭がよくない種族だぞ。


 「つまり君はものの内側にあった火を動かしたのか、それともものの表面に火を塗ったのか。」


 「いや、普通に燃やしたい所に魔力を集中して、燃え!と思っただけです。」


 当たり前すぎて逆に上手く説明できないか?エルフの情報量が全くない答えにちょっとがっかりした。でも探究心を持つ者として、ペトロはそう簡単に諦める訳にはいかない。


 「ハスルンカ君、頼む、もう一回、本当に最後だから、もう一回だけ。」


 「えええ…でも同じのこと見せても…」


 「ハスルンカさん、いや、ハスルンカ先生。お願いします。もう一回でいいんです。」


 隊員達もおもちゃを求める子供のような顔して頼み始める。やかましいだけと、彼らの要求を満足させないとこの状況はずっと続くんだろう。いいから、もういいから服を引っ張るな。


 「本当に最後ですよ。早く昼ご飯を作らないと俺今日も茹で野菜しか食べられないですから。」

と、言って。ハスルンカは手を開いて、魔力を駆動する。手のひらの少し離れた所にだんだん水が集まって、落ちないように浮かんでいる。


 「おおおおお…」


 「炎が出た時きっと手品と思ったが、今回は水元素なので本物だと確信した。」


 ペトロと団員達は目を瞠って、水の集団を鑑賞するように観察する。


 「これはどんな原理ですか、見たことがない聞いたこともないんです。」


 「これはこれは…おもしろい流れ方ですね…」


 一番上の端に水が湧いて、次に湧いた水に縁までに推される。一番下の底に着いたら、見えない力に受けたみたいに内側に入って、また上から湧いてくる。


 「まさか泉の流れを全体的に観察する機会がありますとは…」


 「いつもの水と比べてちょっと青くに見えるなぁ…これが水元素元々の色か…でもどうやって宙に浮かぶかなぁ…」


 「この現象が現すには…」


 「…」


 異世界人の呟きの声が小さく、疑問が泉のように心の底からどんどん湧いてきた。自我が未知に埋もれ、深い考えに落ちていく。その静かになった彼らを見て、ハスルンカは自分がまたやらかしたと気づいた。


 調査団に水の魔法を見せるのは今回は初めだ。柴に火をつけて料理するのはそっちの世界にもあんまり異ならないみたいが、異世界人にとって魔力で水を集まるのは想像もつかないことのようだ。

何やったんだ俺のバカ!更に好奇心を掻き立てたらどうするんだ!



 このままじゃいつ経っても終わらないんだ、注意したほうがいいか。


 「あの…これ、魔力を出し続けなければならないんです。結構疲れるんです…」

 「…」

 「…」

 

 無視された!


 「…」


 「もしかしたら、魔法はエーテルによる他の四元素を操る技かもしれない。」


 ハスルンカに長すぎる沈黙の末、ペトロが自分の考えを述べた。隊員達が驚愕の顔をして、大声で騒ぎ始めた。


 「あのアリストテレスさんが考えたエーテルですか?」


 「でも、天上界しか存在しないと言いましたが…」


 「いや、アリストテレスの理論もあくまでも仮説なので。もしも、月下界にもたくさんエーテルが存在したら…」


 「それは大発見です!おめでとうございます先生!」


 「ワシさっきが言ったのも仮説に過ぎないだけど…」


 「もう十分凄いです!おめでとうございます先生!」


 新世界が見つかったそのもので、調査団の連中は大歓声を上げ、恥ずかしいと思うのはこいつらに囲まれたハスルンカだけか?



 「ハスルンカ君、ごめん、つい夢中になてしまって…」


 満足した様子に、ペトロが謝った。ようやくこの状況から解放できるようだ。


 「気になるのはあと一つだけ、この水、一体どんな味するだろう…」


 隊員達はこの最後の要求に驚かせた。


 「先生、それを飲むつもりですか!」

 「やめてくだざい!純粋の水元素ですよ!」

 「飲んだら大変のことになるかもしれません!」

 

 「だから飲むべきじゃないか。学者として。」


 ペトロに叱れても、隊員達はまた止めようにしてる。


 「やはり危ない過ぎます。」


 「せめてフィリップに先に飲ませて。」


 いまさら気づいて、ペトロは見回す。見当たる所どこもあの問題児の姿が見えない。


 「あれ、フィリップはどこにおる?」


 ちょっと遠く、人が集まるの方向から喧嘩の声が聞こえて、調査団団長は嫌な予感がする。



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