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目が覚めたら色々と異なっていた

沢山のアクセス、ブックマークありがとうございます!めちゃくちゃびっくりしました。それではどうぞ!

 ふわふわと浮いているような感覚。

 ずっとこのままで居たいと思ってしまうほど気持ちがいい。

 その思いとは裏腹にだんだんと意識が覚醒していく。


 目を開けると知らない天井が見えた。

 周りを見渡しても何一つとして見覚えのある物はなかった。

 小さいシャンデリアが部屋を照らし、木製の凝った意匠の机と椅子があり、大きなクローゼットと鏡台、今寝ているでかいベッド、そして沢山の人形やぬいぐるみが部屋中の至るところに置かれていた。

 四方八方囲まれているせいで視線を感じて落ち着かないし、何よりこれだけいると軽くホラーだ。


(…何処だ?ここ?)


 勿論自分の部屋ではないし、実家でもないし、こんな部屋を持ってそうな知り合いもいなければ、そもそも親しい人もいない。

 なんだか悲しくなってきた。

 うーん、と唸っていると車に撥ねられた時のことを思い出した。


(もう死ぬのかと思ってたけど生きてたんだ。良かった)


 だが、だとしたらここは病院なのだろうか。とてもそうには見えない。

 ベッドから上半身だけ起こした状態で暫し考えていると、部屋の扉がノックされてガチャリと開かれた。


「失礼しま…っ!お嬢様!お目覚めになられたのですね!」

「…っ!」

「良かったです!一週間も意識が戻らなかったんですよ!お医者様も諦められていて旦那様や奥様も

、私たち使用人ももう駄目だと思ってたのに…!」


 その来訪者に凄い勢いで話しかけられて、頭の中は絶賛パニック中である。

 そんな状態なので話の内容など少しも理解できなかった。


「…お嬢様?先程から呆っとしておいでですが、目覚めたばかりですし体調が優れないのでしょうか?それともまだどこか悪いのですか?…少し失礼します。」


 そう言いこちらに近づいてくる彼女に対して何もできないでいると、枕元まで来た彼女が両手を俺の胸や腹のあたりに翳し出した。

 何をしてるんだと思ってたら急に彼女の両手が光り出して、その光りを浴びていると先程までのパニックや少しあった怠さが嘘みたいに消えていく。

 そして光りが収まり彼女は俺の目を見て、もう平気だと判断したのか一度頷くとまた話し出した。


「お嬢様がお目覚めになったこと、急ぎ旦那様にご報告して来ますので少々お待ちください。治癒魔法をかけましたが万能ではありませんので、安静にしていて下さいね」

「あっ…」


 そう言った彼女ーーメイド服を着ていたのでおそらくメイドだろうーーは忙しなく部屋を出て行った。

 ここまで一言も喋れなかった彼は、何処へ出しても恥ずかし過ぎて何処へも出せない一人前のコミュ障であった。


 一人になった事で漸く落ち着いた頭で先程のメイドの話しを思い出す。

 確かお嬢様って言ってたな。


(…誰に?…俺にか)


 そうして自分の身体を見下ろすと、なんだか子供のように小さくなっていた。

 手も可愛らしいサイズで綺麗な手をしている。

 ふと視界の端に線が見えて、それを掴むと頭が引っ張られるような痛みを感じた。

 やはりというか、それは髪だった。

 絹のように真っ白の髪は、背中まで伸びている。

 なんか女の子みたいだなあ。

 現実感がなく、これは夢なんじゃないかと思い頬を抓ると普通に涙が出てきた。

 痛い思いをしても得られたのは後悔だけだった。


 これが現実だと分かり、いよいよもって自分の身体をしっかり確認する。

 でもまあここまで確認すれば、こういう(・・・・)内容の小説を読んだ事がある身として察せられる部分があるが、しかしやはり最後までやり遂げねばなるまい。

 途中で投げ出すのは良くないって言うしね。


 あの「ない!ある!」ってやつが出来るかもしれないしね。

 不安の中にあるちょっとの好奇心に身を委ね、まず手を下半身に当ててみる。


「ない!」


 そして素早く手を胸に当てる。


「あ…る?えっ、ない?えっあっな、な、ない!!」


 手元に視線を向けてみるとそこにはーー断崖絶壁のまな板があった。


 まあこの身体って多分子供だろうから当たり前だな。

 それにちっちゃくてもいいと思うんだ。大きさに貴賎はないんだよ。ちなみに僕は貧乳派です。


 次は顔を見たくなったので、鏡台の前まで行く。

 そして鏡に映る少女の余りの美しさに息を呑む。


 髪は先程確かめたが、こうして鏡で見るとより一層際立つ。

 絹のように美しくさらさらとした手触りの純白の髪は、光を反射して輝いている。

 そしてクリクリとしたぱっちりお目目には、宝石のように透き通るほど綺麗な琥珀色の瞳があり、髪と合わせてまるで月のような印象を受けた。

 将来は絶世の美女が約束されていると断言出来るほどのお顔だった。


 だが今のこの姿はどう背伸びしても5、6歳くらいにしか見えない。

 それなのにこの美貌だ。将来が楽しみである。


 鏡に映る自分の美しさに酔いしれていると、ふとさっきのメイドの人が使っていた光りのことを思い出す。

多分あれ魔法だよね。本人も治癒魔法って呼んでたし。

 ってことはどう言うことだ?手品じゃないのか?でもパニックが治ったり怠さも消えた。幾らなんでも手品でそこまでのことは出来ないだろう。

 やっぱり魔法なのかな。

 でもこれまでの人生で一度も魔法が実在するなんて見たことも聞いたこともないんだよな。

 ということはもしかして此処って、


「…異世界?」


 とても可愛らしい声が出た。


 「声まで可愛いとは自分の美少女っぷりがオソロシイ」と悶えていると、唐突に強烈な眠気が襲ってきた。

 ここで寝たら紳士な床さんが厚いお迎えをしてくれそうだ。そんなことをされると顔が火照ってしまう。痛みで。

 それだけは避けようとフラフラになりながらベッドへうつ伏せにダイブした瞬間に意識が途切れた。

お読みいただきありがとうございます!なるべく毎日更新できるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!

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