人の踊るときは勝手に踊れ
短いですが投稿です。
「ありがとう。では、早速行きましょう。お手をどうぞ、イルメラ嬢」
「あの…その…えぇ……」
そうニコッと微笑んで手をこちらに差し出してくる王子。
いや、今の「はい」は「はい?」だから決して「はい」ではないが?
この状況に、何を考えてるのか自分でも分からなくなるくらい混乱していた。
というか何でここに王子がいるの?しかも貴方ってば今日はまだダンスしていませんでしたよね?俺のところに真っ先に来ちゃったの?周り、特に女の子を見てご覧なさい?ポカンとしたり、凄い形相で睨んでくる子の二択しかいませんよ?これ、どうしてくれるんですか?
などまだまだ言ってやりたいことはあったが、言えるわけもないので仕方なくその手を取った。
そもそも王子の誘いなんて、断ったら家族にも迷惑掛けちゃうし。
コソコソ話しているのかわざと聞こえるように言っているのか分からないが、さっきから「殿下へアピールもしていなかったくせに」だとか「私たちに挨拶もなしに…」などと言った話しが聞こえてくる。
別にそういう決まりもないはずなんだが。
郷に入っては郷に従え的なやつかな。
勝手にやってろください。
ダンス用の空間へ着くと、王子がこちらへ振り返り自然な感じでダンスの構えを作ってくれた。
踊っている今もこちらに合わせてくれたりと、かなり紳士的な対応をしてくれている。
ダンスの才能もあるんだろうけど、それだけじゃこんなにできるわけないし、それ以上にきっとすごく努力したんだろうな。
そういうことができる人ってかっこいいと思う。
俺は、才能に頼ったり途中で諦めたりせずに、必死に努力する人が好きだし尊敬もする。
その裏で頑張ったことをひけらかさず、こちらを気遣うなんて普通の御令嬢なら恋に落ちるであろう。
ふと昨日読んだ小説を思い出した。
確か王子と伯爵令嬢の話で、こんなダンスをしているシーンもあったなあ。
パーティーで令嬢たちに囲まれるのが嫌になってこっそり逃げていた王子が、たまたま近くにいた主人公である伯爵令嬢を見つけたんだっけ。
他の令嬢たちと違って自分にあまり関心を持っていないように見える彼女が気になり、ダンスを申し込んだって話だった。
ここから二人の恋が始まるんだよなあ。
……。
…………。
なぜ今思い出したし!
さっき睨んできていた令嬢たちって固まってたし、もしかして王子に迫っていたよな。
しかも、そう言ったグループは会場の至るところに見られる。つまり王子は逃げていて、それを探していたんじゃないだろうか。
そして、たまたま近くにいた王子に関心を示していない伯爵令嬢の俺。
なんか偶然で片付けて良いのか分からないくらいの一致率なんですが!
やばい!
なんでか知らんが急に恥ずかしくなってきた!
顔に熱が集まるのが分かる。
「きゃっ!」
そんな状態だったからか、ステップを失敗してしまい後ろへ倒れそうになった。
まさか自分の口から可愛らしい悲鳴が出るなんて…。
思わず目を瞑ってしまったが、腰に手が差し込まれ途中で体勢が止まった。
びっくりして目を開けるとすぐ近くに王子の顔ががが。
色々いっぱいいっぱいだった俺は、「もう逃げる」とばかりに意識を手放した。
というか王子、子供とはいえ一人分の体重を支えるとか、あんた本当に六歳児か?
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