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英雄連鎖

 生物として優れていることが、知性体として優れているとは限らない。また知的に優れていたとしても、状況にそぐうとは限らない。


 作戦を立てるということは、部下のレベルに合わせる必要がある。

 難しい作戦を素人に実行させようとする指揮官はバカである。


 その意味において、やはり二代目教主は優秀であった。

 彼が二体の昏に命じたのは二つだけ。


合流しないように進路妨害をしろ。

三隻の母艦を優先的に狙え。


 この理由についても、もちろんきちんと説明している。


 合流させない理由としては……。


敵は瘴気世界で合流してからこちらの本部に向かう。

敗者世界へ安全に向かえるのは、敗者世界の技術を含めて製造されたフランケンシュタインだけだからだ。

よって瘴気世界で合流できなければ、フランケンシュタインを母艦としている天帝軍だけで敗者世界へ向かうことになる。

そうなれば勝ちだ。


 母艦を狙う理由としては……。


人員を大量に、安全に移動させるには母艦が必要になる。

天帝軍も冥王軍も、単独なら冒涜教団の敵ではない。

フランケンシュタインを撃墜すれば勝利は確定するし、他二体を落とせれば相手の合流を遅らせることはできる。合流が遅れれば相手の戦力をさらに削れる。


 というものだ。

 どれも、それ自体は冒涜からほど遠い、とてもまともな作戦である。

 増殖した自分(・・)が死ぬことに何の思い入れもない二体からすれば、従わない理由のないまっとうな作戦だろう。

 戦場で敵がイラついているところを見て、それは更に深まっていた。


 最善を尽くしても敵が勝つだろう。

 負けることを確信しつつ最善の作戦を用意しているというのは、なんとも冒涜的であった。



「情報装填、肉体強化完了」

「古流最新兵器、装備完了!」

「悪鬼羅刹、転職完了!」

「丙種モンスター、人造大量殺人鬼! ここに見参!」


 雁太郎の仲間である四大殺人鬼は、アバターシステムと転職武装、キンセイ兵器を応用発展させた人造殺人鬼へと変貌する。

 先祖から受け継いだ殺人の技をもって、最新技術の日本刀でシルルに斬りかかった。


「近代大量殺人技! 仏殺神殺羅刹斬り!」


「あっ……」


 胴体が、手足が、頭部までもが鮮やかに切断される。

 通常のモンスターなら致命傷だが、エイトロールの昏であるシルルにとっては致命的ではない。


 悍ましきことに、切断面から顔や手足が生えてくる。

 それぞれに縮尺が違う、手足の長さもバラバラの、文字通りの分身となって食らいついてくる。


「やってくれましたわねぇ!」やってくれましたわねぇ!」「やってくれましたわねぇ!」「やってくれましたわねぇ!」


「ひぃいいいいいい!」


 青空の下での戦いであり、相手の顔色がいいのが救いだが、完全にホラー映画のモンスターである。ある意味無敵の怪物だろう。

 四大殺人鬼であり年頃の乙女である彼女らは思わず悲鳴を上げていた。

 みじん切りのレベルまで叩き切れば増殖も利かないようだが、相手がAランク上位ということもあって簡単ではない。


「気を付けるんだ! 防御面では脆くても、攻撃力はAランク上位! 一撃でももらったら即死だぞ!」

「それはわかってるけど~~! こんなのと戦いたくない~~!」

「指を切り落としたら、親指姫になって襲い掛かってくる~~!」

「髪切ったら、束単位で増えてきた~~! 意味ありげだったからやっぱりだし~~!」

「おうちに帰りたい~~!」

「負けたら帰れないんだぞ~~!」


 後方から応援を受けているが、心が折れそうだった。

 そのような状況であっても戦えているのは、四大殺人鬼を襲名しているだけのことはある、ということだろう。


 しかしそれも限度がある。

 ワープにより眼前へ出現したシルルに、不意を突かれてしまっていた。


「あら、こんな近くに敵が……昏、ではありませんわねえ。こちらにはいないという話ですし……」

「ぎゃ、ぎゃあああああ!」

「ヒトの顔を見て失礼な!」


 まさに事故死、全員まとめて死ぬかと思われた。


「大橋流、大槍三段技……硬質、貫通、斬撃、一触の一突き!」


 スレイプニルのラクに跨る蛙太郎が、大槍を一閃し切り裂く。

 女武芸者である四大殺人鬼をして見惚れる電光石火の早業であった。


「いきなりご挨拶な!」


 むろん、この程度で死ぬシルルではない。

 切断された部位ごとに独立し、襲い掛からんとする。

 ありえないほど迅速だが、それでも一動作要するのは当然だ。

 その一瞬あれば、蛙太郎は次の攻撃を行える。


「大橋流、木槌三段技……波動、粉砕、衝撃、大砂波!」


 持ち替えた大木槌を振り下ろすと、広範囲への打撃が発生する。

 分割していた分一層脆くなっていたシルルは、分割による復元が不可能なほどのダメージを受けそのまま死んでいた。


『キキ。この短期間で、良い武器を作ってくれたな』

「は、はい! ムサシボウ様のためですから、当然です! 強力なモンスターや魔境の素材を使いましたので、対乙種の装備に出来たと自負しております! 四天王筆頭にふさわしい得物かと!」

『……戦っているのは蛙太郎なのだがな』


 老練たるミミックのキキは、この世界で得たAランクの素材を使って武器を生産していた。

 最新技術によるインゴット化などのひと手間は借りていたが、それでも驚異的な腕前と言っていいだろう。

 威力だけならAランク中位にも匹敵する得物が、現在は怨霊の軍勢すべてに行き渡っている。もちろん最新の弟子である蛙太郎もまた、それを振るっていた。

 同じ技であっても、威力は段違いに向上している。


『さて四大殺人鬼よ』

「はっはい!」

『恐ろしいのなら下がってもよい』


 窮地を救ったばかりの四体を、ムサシボウは案じていた。


『知っての通り、我は精神的に安定している。ゆえに目の前の敵に対して、お前たちがどれほど恐怖を抱いているのかわからん。そのうえで戦えなど言えるわけもない。アヴェンジャーの二の舞を踏むわけにはいかぬ、怖いのなら……』


「大丈夫です! 頑張れますっ!」


『そうか……無理をせぬようにな』


 鮮やかにラクを操ると、さっそうと去っていく蛙太郎ムサシボウではありません

 四大殺人鬼はすっかり心酔した目で、ムサシボウを見てしまっていた。


「いや~~……尊いねえ、魔王軍四天王筆頭!」

「気を遣ってもらっちゃったよ~~! 末代までの語り草だよ~~!」

「よおし、頑張るかあ~~!」

「ムサシボウ様のためにも、ご主人様のためにもね!!」


 先ほどまで自分たちのご主人様が『勝ち目がない』と言っていたことも忘れて、四体は補充され続けるシルルに斬りかかっていた。


 士気が保たれている戦場ではあるが、ナイルを降車して自らも闇の方天戟を振るう狼太郎は、悔しそうな顔をしている。


「ナイル! 敵の出撃傾向と、現在の進路を言え!」

『当車両、およびウィッシュの進路上です。味方との接触を避けるための徐行運転を行っていますが、それでも合流地点への進路、およびフランケンシュタインの現在地への進路は妨害されております』

「外道の割に手堅い手を打って来やがる。まあそうでもないと、下も従わないだろうが……」


 二代目教主ってのは俺でも惚れないだろうな、と確信しつつ打開策を探る狼太郎。

 このまま戦っていてもじり貧であると、歴戦の猛者である彼女は悟っていたのだ。

 敵の数が有限であることは分かっていても、その数量にめどが立っていないのだから心に負荷がかかる。

 いつまで、何体倒せば終わるのか。まったくわからないまま戦い続けられるほど、全員の心が強いわけではない。一部が倒れれば、一気に崩壊するだろう。


(そうだ、目標がないと下は希望を保てない。上はこうすれば勝てる、と指針を示すのも仕事の内だ。なんとか敵の隙を探り、そこを突いて合流を……)


 狼太郎自身の目には、しっかりと希望が映っていた。

 なぜなら目の前にいる敵は……。


「五人目の英雄にして魔王軍四天王、サキュバスクイーン、太古の神、魔王の娘、羊皮狼太郎……ですわね?」

「勝利歴末期の英雄黄河の妻であり、ナイルを引き継いだ女傑」

「この冥王軍でも、冥王本人さえ従えて大派閥を形成しているとか……」

「貴方を討ち取れば、一気に形勢が傾きますわね」

「戦力不足故にナイルから降りて、自ら戦う愚かしさを呪いなさいな」


「また、色気を出す個体が出やがったな」


 複数の、それも人の大きさを保ったままのシルルが狼太郎を包囲していた。

 彼女らとて無駄に死にに来たわけではない。相手の急所、頭脳がいるのなら狙うのは当然だろう。

 それが賢明かどうかは別の話だが。


「俺が頭なのはまあ認めるが、簡単に殺せると思ってるのなら勘違いだぞ?」


「どうでしょうね。貴方に再生能力はないと聞いています」

「この数でかかれば手傷を負うのでは?」

「というよりも……私のことを舐めすぎでしょう! Aランク上位、最強種をね!」


「自分の強みを理解しているのはいいし、それを基準に物事を見ちまうのも仕方ねえ。だがな……」


 ごう、と強い光が狼太郎とその周囲を埋めた。

 明らかに有害な輝きにのまれたシルルたちは、分裂することもままならずもだえる。


「な、何を……!?」

「毒、のようなもの。カセイ兵器?!」

「そんな、明らかにパイロットごと……」


 如何に脆いとはいえ、Aランク上位モンスターであるシルルたちを悶えさせるほどの『何か』。

 カセイ兵器によるカセイ技だと確信するが、そんなものは彼女ら自身も警戒していた。

 直撃を食らってしまったのは、狼太郎もろともだったからに他ならない。

 まさかパイロットごと撃つなどありえない、そう思っていたのだが……。


「俺のことをいろいろ知っているようで、肝心なことを忘れていたな」


 肝心の狼太郎は健在だった。それどころか、先程よりも明らかに強化されている。


「俺たち魔王軍四天王は、全員が二重の特異体質。そして俺は悪魔への完全親和と際限のない強化許容を併せ持つ。つまり……悪魔属性の強化技には無敵なんだよ」

『報告いたします。カセイ技、暗黒属性過剰強化砲による支援砲撃を実施しました』

「許容以上の強化を攻撃として使用する、ルールインフレの過渡期で生まれた兵器だ。アップグレードされまくった結果カセイ兵器の装甲には効かなくなり、勝利歴末期の戦争中は搭載していなかったんだが……俺を支援するためにわざわざ乗せ直したのさ」

「く、あ……」

「物理的な攻撃力がないひねた技なんで、カセイ兵器はおろかキンセイ兵器でもノーダメで弾ける代物だが……人間大の生身には有効だぜ。相手がAランク上位でもな」


 狼太郎は確信する。

 やはり彼女たちは兵士としての練度が低く、現場の指揮官すら不在だ。

 事前の打ち合わせ通りに動いているだけであり、それどころかその場の思い付きで命令にない行動まで始める。


 確実に隙はある。だがその隙をどう突いて、合流までもっていくべきなのかわからない。

 もどかしい思いをしているのは、彼女だけではなかった。


「だあああああ! こっちはな! 早く帰ってママの〇ッパイを吸わせてやりたいんだよ! おしめが取れてねえんだよ! ウチの子はなぁ!」


 冥王軍随一の大戦力、アルフ・アーの昏、オキル。

 ベヒモス同様、単純に強い最強種である彼女にとって、この状況は雑魚が無限湧きしてくるだけのこと。

 目の前に全員出てくれば一掃してやるのに、と苛立つヤンママ。

 とんでもない暴挙の提案まで始めた。


「もういい! 強行突破しろ! 私が先導する! 前に来たら全部ぶっ飛ばしてやんよ!」

『その場合、側面からの攻撃が予測されます。巡航形態では撃墜される可能性が高いです』

「だったら! 戦争形態になればいいだろうが!」

『戦争形態は巡航形態より低速です。合流が遅くなります』

「~~~じゃあどうしろってんだよ!」


 せっかちな宇宙怪獣を、誰が責められるだろうか。

 相手の遅滞戦闘は極めて堅調に進んでいる。

 このままでは、このしょうもない作戦で敗北しかねない。

 そうでなくとも、多くの犠牲者が出かねなかった。


 どうする?


 英雄もその仲間たちも答えを求めていた。

 誰かに期待している者もいれば、自分で必死に考える者もいる。

 もちろん優秀な人材たちもそうだった。だが解決策を最初に出したのは、意外な人物だった。



『もういい、俺たちだけで行く! これ以上巻き込みたくはない……!』



 天帝軍側で戦っている寝入狸太郎。一度大きく叫んだ後で、申し訳なさで消え入りそうな声を発していた。

 彼の方針と思いは十分に伝わってくるが、だからこそ許容できるものではない。


『だ、駄目だ! 俺たちだけで行っても殺されるだけだぞ!? 俺たちはさっきから二種を相手にしているけど、分身相手だから全然減らせていない! 相手にはまだ六種も残ったままなんだぞ!』

『俺たちだけで行くっていうのは……狐太郎さんたちを置いていくってことです。俺と、昏だけで行きます……』

『そんなのは駄目だ! 逃避だ! なんの解決にもならない!』

『でも、俺の為に……俺の復讐のために……もう、これ以上……』


 泣いている声が聞こえる。

 余りにも真摯な声だが、賛同する者は……。



「よし、それで行こう!」



 アバターシステムを活用して自らも戦っていた兎太郎だけであった。



「狐太郎さん、狸太郎さん! そっちはすぐに敗者の世界へ向かってくれ! ウィッシュ! 音声入力! 今すぐ戦争連結開始! 安全装置は全カットだ!」

『ちょ、え!? そこに残って戦う気ですか!? 六人目の英雄だよね、君!? え、そういうキャラなの!?』

『了解しました、我が君(キャプテン)。戦争連結シーケンスを開始します』

『え~~!?』



 ずいずい話を進めていく兎太郎。

 やはり狐太郎は通信でそれを止めようとしている。

 どう考えても飲める提案ではないし、そもそも兎太郎が勢いで適当なことをいっているようにしか聞こえない。


 だがそれは、狐太郎が兎太郎を良く知らないからに他ならない。


「おい、狐太郎! このバカの提案に乗れ!」

『え、今度は誰ですか!?』

「俺は狼太郎! 五人目の英雄って言えば分かるか!?」

『……魔王の、娘ってことですか』

「パパを殺したことは後で話す! とにかくバカの言う通りにしろ! 責任は俺が持つ!」


 兎太郎を知る狼太郎は、既に彼の真意を見抜いていた。

 だからこそ信じていいと、狐太郎に強く推す。


『……狸太郎君、やれ! もちろん俺も、俺たちも一緒だ!』

『し、信じるんですか!?』

『俺にはわからないけど、作戦はあるんだ! それならそれを信じよう! 一緒に、命がけで戦ってくれている仲間じゃないか!』

『……はい! 行くぞ、フランケンシュタイン! 敗者の世界へ世界間ワープ! 強制執行だ!』


 シルルと戦う冥王軍からでも見える、遥か彼方に開いた空間の穴。

 ゆっくりと閉じていくそれの中へ、巨大兵器の影が突入していく。


 兎太郎の策を深く聞かないまま、天帝軍は戦力が不十分なまま敗者の世界へワープを始めたのである。

 このままでは冒涜教団の思う壺であろうに、それでも会ってもいない仲間を信じたのだ。


「はぁ……三人とも、超格好いい! 英雄だぁ、英雄だあ~~」

「ちょっと、プリンセス。色ボケしている場合じゃないでしょ!? 作戦はどうなってるの!」

「あだっ! 分かってるよ(ねぇね)。ナイル! お前も音声入力! 戦争連結を開始! 安全装置は全カット!」

『了解しました。戦争連結シーケンスに入ります』

「冥王軍、全員に告げる! 戦争連結が完了するまでナイルもウィッシュも無防備になる! 全力で護衛しろ!」


 不意を突かれたため巡航形態のまま戦っていた巨大兵器。

 それらは既に戦争形態へ向けて、変形シーケンスに突入していた。

 何が起きているのかわからないが、命令ならば従うしかない。

 混乱する英雄や仲間たちは、変形しながら高速移動する巨大兵器と編隊飛行を始める。


「……合流を諦めたってことかしら?」


 もっと意味が分からないシルルたちは、ただ茫然としていた。

 遅くなること、無防備になることを承知で変形を始めたということは、合流を諦めてこの場で戦うと決めたとしか思えない。


 ワープでここに現れ、帰る手段もある彼女らからすればもはや相手にする価値もない。

 おそらく天帝軍と戦っていたハイドランジアも、同じように考えていただろう。

 もう自分たちの役目は終わった、そのように(・・・・・)しか考えられない。


 フランケンシュタインがワープし、ウィッシュとナイルが変形を始めるとはそういうことだからだ。


 そのように(・・・・・)考えさせることこそ、兎太郎の作戦であった。


「ん、あ、あら? あれ……あら?」


 シルルたちが『それ』に気付いた時には、もう遅かった。

 彼女たちの視点からははるか遠くに開いている巨大なワープホール。

 それはゆっくりと閉じていき、元の空間へと戻っていく。


 変形シーケンスに入っているはずの両巨大兵器は……。



『空間の穴が封鎖するまで一分。余裕は一秒未満ですが突入可能です』

『事故の元となりますので、駆け込み乗車にご注意ください』



 その穴が閉じきるまえに、猛スピードで突入しようとしていた。


「あ、あああああああ!」

「ま、まずい! 追いかけないと!」


 優秀な下士官から指示を受けているわけでもなく、かといって本人たちがそこまで真面目に戦っているわけでもない。

 変形シーケンスをフェイントに使っただけの、その場の思い付きの作戦は完璧に刺さっていた。


「やっぱりだな! お前たちは隙だらけだ! さあ冥王軍! このまま突っ込むぞ! 死にたくなかったらナイルかウィッシュに入り込め! そのために安全装置を全カットしたんだからな!」

「さすが狼太郎さん! 俺の考えがよくわかりましたね!」

「ほら……惚れた男の気持ちって、伝わるじゃん?」

「勘弁してください……」


 隙を作っての強行軍。その行先にはまだハイドランジアたちが残っている。

 しかし彼女らは閉じ行くワープホールを見ているだけで、接近する巨大兵器に気付かない。


「ハイドランジア! そっちに冥王軍が向かってます! 止めて、止めて~~!」

「は、あ?」


 しかしハイドランジアたちも、そこまで士気が高いわけではなく、下士官もいない。

 事前の作戦通りに動くだけだからこそ、作戦目標を達成した後で残心する発想がない。


 戦闘体勢を解除していたため、とっさのことに反応できず突入を許してしまっていた。


『どうだ、追いついたぞ!』

『責任は負うと言ったろ? どうだ、惚れたか?』


『……これがプレイヤーじゃない、本物の英雄か』

『心強いですね……本当に、心強い人が、助けに来てくれてるんですね……』


 荒れ狂うワープ空間の中で、天帝軍と冥王軍は合流を果たしていた。


『……スザク、ここまで来たんだ。絶対に勝つ、絶対に果たすぞ!』

『ええ……どこまでもご一緒しますわ』

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― 新着の感想 ―
残ってるAランク上位の昏がすべて戦闘に向いてて戦えるとは限らないわけで、食糧も尽きてて尚更…
あれ?二代目教主って「囮単騎で危険な場所に行く」とか言ってなかった? で、英雄達の作戦は相手を振り切って敗者世界へのワープ……うわ、これ確かに冒涜的でエグいわ
他者を信じて命を預けることに関してはベテランですね主人公。
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