去るもの追わず
モンパラ7が終わったので、いい加減ドラゴンズランドに突入します。
いやあそれにしてもモンパラ7は……長かった!。
展開の都合上仕方なかったのですが、書いていて大変な話が多かったです。
本来なら、最終章だけではなく、それまでの前振りも読者の皆さんに楽しんでいただきたかったのですが……。
それができないというのは、作者である私の力不足です。
本当に申し訳ない……。
モンパラ569は短くまとまりましたし、モンパラ1、2、3、4、8、10、11は最終章だけかけばよかったのですが……
モンパラ7だけは……7だけはがっつり書かないと『ダメ』だったんです……!
そうじゃないと、いきなり出てきた味方に裏切られるという、シュールギャグにしかならなかったんです……!
できるだけ薄っぺらで中身のない、ガワだけの味方を書いたうえで、それにおぼれている主人公を書きたかったんです……!
だってそうじゃないと、せっかく思いついたシナリオが無駄になっちゃうから……!
だってこんないいシナリオ、思いついたらちゃんと書かないと……書かないとダメじゃないですか!
読者様からも狐太郎君と同じように、虚無的ないいシナリオとおっしゃってくださいましたし……書けてよかった……本当によかった!
いやしかしまあ……単行本に換算して36冊分読まないとたどり着けないオチ……。
書く私はもちろん大変だったのですが、皆さんがここまで読んでくださらなければ、それこそコンテンツエンド。
ここまで拙作に付き合ってくださり、誠にありがとうございます。
これより第三部最終章、『タッチダウン』開始いたします。
いよいよ最終部となる第四部へのプロローグ、この章を書いたらまたしばらくお休みをいただこうかと……。
追伸
コングラチュレーションとかオールステージクリアとかサンキューフォアプレイングは、最後の最後まで入れるかどうか悩みました。
でもこれを書いたら……きっと皆さんの脳が揺れる、そう思ったら書かずにいられませんでした。
西重が他の三か国を巻き込んで始めた、央土との大戦争。
それは央土に甚大な被害をもたらしていた。
一応は勝利した央土だが、各地の被害は甚大。
その戦争の傷は、いまだに深く刻まれている。
特にひどいのは、当然ながら西側である。
だが西側には健康な奴隷が一国分いるので、彼らの労働力によって改善の兆しを見せていた。(奴隷の労働環境は改善の兆しを見せない)
それに次いで酷かったのは、北笛の侵攻を受けた北側である。
さらわれていた女性たちは帰ってきたが、彼女たちが帰った故郷のほとんどは略奪された後の凄惨なものだった。
もはやどこもかしこも復興不能、遅々として再建はすすまず……ということはなかった。
実際のところを見ると、いわゆる主幹道路、その近辺は既に復興が完了している。
それに次ぐ形ではあるが、魔女学園のスポンサーとなっていた貴族たちの領内もまた、大いに復興を遂げていた。
理由は簡単である。
狐太郎傘下のモンスターが、そこを優先して復興作業を行ったからだ。
片や屈強とはいえ人力オンリー。
もう片方はAランクのドラゴンとBランク悪魔の群れ。
そりゃあまあ目覚ましいだけの差が出るだろう。
もちろん主幹道路付近が復興したのだから、そこから枝分かれする各地も復興していく。
主幹部分の復興に使われるはずだった労力や資材が、そのまま別のところで使用されていく。
つまり、狐太郎の配慮によって、北側は大いに救われていた。
もしも狐太郎が何もしていなかったら、と思うと、北側の貴族たちは背筋を震わせる。
そう……ドラゴンズランドの貴竜と、空論城の悪魔たち。そして帰ってきた女性たち。
狐太郎からの助力を得てなお、ここまで状況が酷いのだから。
そして、なまじっか狐太郎の助力が伝わっていたからこそ、その恩恵を受けられなかった者たちは怒っていた。
来れば全部解決してくれるというドラゴンと悪魔が、自分たちのところに来なかったのである。
これでは普段以上に、やる気が起きないだろう。
悪魔が来たところの領主たちは、悪魔の悪夢にうなされるが……。
悪魔が来ていないところの領主たちは、領民が反乱する夢にうなされ、実際似たような現実にうなされるのだった。
彼らは狐太郎の助力を求めていた、その声は大将軍であり狐太郎と会ったことのあるガクヒに届いた。
だが……北笛の大王たちがさんざん狐太郎へ迷惑をかけて、そのたびに狐太郎が解決していたので、とてもではないがそれ以上に頼むことができなかった。
というよりも、頼んだとしても狐太郎が嫌がるとわかっていた。その場合、無理なんか通せないわけで……。
仕方なく、というと語弊があるが、狐太郎と少し派閥の違う麒麟たちへ頼みに来たのだった。
大別するとアッカ派に属する彼らへ頼むのは気が引けたのだが、そんなことを言っている場合ではない。
ガクヒは恥も外聞も投げ捨てて、民の為に頭を下げに来たのだった。
そしてもう帰るか、という気分になっていた麒麟たちは、結果的にオフになっていたわけで……。
まあそこまで頼むなら、と請け負ったのである。
※
央土の王城にて、楽園の面々は勢ぞろいをしていた。
狐太郎、アカネ、ササゲ、コゴエ、クツロ、究極、絶望、麒麟、獅子子、蝶花。
そろそろこの国を離れる予定の面々は、とりあえず情報を共有することにしたのだ。
「ガイセイ隊長とホワイトさんは、ここの守り……というか陛下の守りがあるので動けないんですよ。あのお二人とナタさんがそろわないと、また攻め込まれかねないので……」
「実際、北笛の王様が二人も俺のところに来たしね」
「そうなんですよ……だから僕らだけでも動こうかなあと……」
麒麟と獅子子、蝶花の三人は、ものすごく嫌そうな顔をしていた。
たとえるのなら、退職前の有休消化中に、いきなり呼び出されたようなものだ。
それはもう、ものすごく嫌そうな顔である。
その一方で、吸収形態の究極は割と楽そうな顔をしていた。
「それなんだけど、僕も一緒に行くことにしたんだよ。僕とノゾミちゃんがそろっていれば、殲滅する任務だけならこなせるしね」
「……私がお役に立てるなら」
なお、ノゾミはいろいろと複雑そうな顔をしている。
「私がお世話になった北笛の人たちが、さんざん荒らしたところに行くんですよね……私はほぼ関係ないんですけど……気が重いです」
「大丈夫! 僕たちのことなんて、この世界では全然大したことないから!」
(いやなフレーズだな……)
気落ち気味のノゾミに対して、わりと酷いことを言う究極。
まあ実際、そんなところかもしれない。
「行きたくないなら行かないほうがいいんじゃない? 究極だけでも大抵の相手には勝てるし、最悪でも殺されないでしょ」
「私もそう思うんですけど……究極さんに強く誘われまして……」
クツロからのもっともな提案は、ノゾミ自身もわかっている様子である。
だが唯一の同族である究極から強く推されたことで、ノゾミは動くと決めたようだ。
その決断を聞いて、究極は実に誇らしげである。
「そりゃあ僕だって、現地に行くことが楽しいとは思ってないよ。でもね、ここにいたっていいことはないし、いろんなところに行った方が勉強になるのさ!」
どうやら実体験をともなったアドバイスであるらしい。
自分の経験を後進に伝えられると思って、それはもう楽しげだった。
「現地に行って、困っている人の役に立って、罵倒される……それも経験だよ!」
「そうですよね、困っている人がいるのなら……罵倒?!」
「そう、罵倒!」
面食らっているノゾミに対して、究極は言葉を続ける。
言葉の間違いではないと、彼女は誇らしげに再度言ったのだ。
「僕が初めてホワイトに会ったときね、近くの村が悪魔に襲われていたんだよ。僕とホワイトで倒したんだけど、被害がすごくてねえ……」
(なんかどっかで聞いたような話だな……よくあることなのか?)
(聞いた覚えがあるような……どこだったかしら?)
(あれれ……なんだろう、すごくひっかかるような……)
(つまらないことする子もいるものねえ……きっと生まれたてだったんだわ)
(もしや……いや、言うまい……)
彼女が楽しげに話しているので口を挟みにくかったが、狐太郎たちはもやもやを抱えていた。
「それでねえ、その時助けた女の人が、ホワイトのことをひっぱたいたんだよ。なんでもっと早く来なかったんだ、この役立たずがって」
「それは……!」
ノゾミは、おもわず体をこわばらせた。
もしも牛太郎たちが、自分の大切な人たちが、同じような目にあっていれば、と。
それを想像するだけで、体が震えた。
「僕は思わず文句を言おうとしたんだけど……ホワイトはそれを止めてね」
もちろん究極も、現場では怒っていた。
だが今の彼女は、実に誇らしげである。
「格好良かった……」
その感嘆に、ノゾミは共感できない。
だが狐太郎たちも麒麟たちも、その誇らしさが分かる。
「それは、プロですね」
「ええ、立派なプロだと思います」
「そうだろ?! 僕もそう思った……」
究極は、真摯な顔でノゾミを見る。
「ノゾミちゃん。君の大切な人は、今もきっと人助けをしていると思うよ。でもねえ、困っている人っていうのは……ただ漠然と困っているんじゃない。愛する人を失って、苦しんでいるんだ。その人の命を助けたって、心は救えない。だから君の大切な人も、きっと、助けた人から心無いことを言われていると思う」
「……そんな、いえ、そうでしょうけど」
「でもね!」
ともに、英雄に愛されたモンスター。
究極は、力強くその手をとっていた。
「君の大切な人は、きっとそれでも怒ったり反論なんかしない!」
「……!」
「むしろその気持ちに寄り添って、おとなしく打たれているはずさ! それでも腐らずに、きっと頑張ってるよ! そうじゃないか?」
ノゾミは、その言葉を聞いて震えた。
確かに自分の大切な人が、助けた人から怒りをぶつけられたら悲しい。
だがその大切な人が、怒ったり反撃したりしたら……それはもっと悲しい。
むしろ自分の信頼する大切な人は、それでも頑張っているはず。
そうであってほしいと、勝手に思うのだ。
「これもホワイトからの受け売りだけど……尊敬している人に理想を求めるなら、自分もそうしないとね!」
「……はい」
きっと彼らは、安易ではない道を選んでいる。
ならば自分も、安易ではない道を選ぼう。
助けてくれた人に感謝を伝えることもできない、そんな境遇の人たちの渦中に飛び込もう。
そして、そこで何を言われたとしても、いつか会える大切な人たちに胸を張ってこう言いたい。
自分は、頑張ったと。
「一つ訂正が……私の大切な人は、私の英雄は一人じゃありません。五人です」
「あ、そうか、そうだったね……ごめんごめん」
ノゾミ曰く、八人目の英雄として数えられるであろうメンバーは五人いたという。
その五人全員が、彼女に気を使っていたそうだ。
「魔境を一度灰とか砂漠にしてもらえば、当分モンスターは湧かないそうですし……彼女たち二体がいれば、僕も楽ができそうですね。その分他の仕事ができるかと」
「ああ、この二体はそれ向きだよね……」
「ええ……ということで僕たちは北側に行きますから……その、迎えの船が来た時は寄ってくださいね」
釘を刺す麒麟の顔は、物凄く切実で、真顔だった。
「僕たちを置いていったら、どんな手段を使ってでも呪いますよ……」
「うん……まあ、そんなことはしないよ。というか、君の所に来る可能性だってあるじゃないか」
「どうでしょうねえ……いやまあ、そうですけども……」
現在結果として、時と空間を越えて、二番目と三番目と八番目と九番目のラスボスがそろっている。
ちなみに十一番目のラスボスであるスザクとも、遭遇自体は既にしている。
だがいきなり彼の目の前に現れた、ということはない。
あくまでも結果的に、流れとしてここに集まっただけだ。
それが狐太郎に寄せられた結果……というには、初期地点がバラバラ過ぎた。
麒麟や究極と遭遇した後狐太郎のところに行く、という可能性もないではない。
あるいはこの場の面々が王都を留守にしている間に、王都で待っている……という可能性もあった。
まあそれを言い出せば、迎えの船云々も妄想のようなものだが……。
(イベントが片付きつつあるな……)
なんかもう、ぞわぞわが収まらなかったわけで……。
※
さて、いよいよ出発の日である。
王都近郊の荒れ地に、ウズモが頭を下ろして待機している。
その顔のすぐ前に、狐太郎とその仲間、および側近であり護衛たちがいた。
『あの~~……一応、一応なんですけどね……なんか故郷に行くのを期待している人がいるとか……』
そしてそのウズモは、ややひげを揺らし、その大きな目を左右に動かしていた。
『竜王様、申し上げておくんですが……我らの故郷、そんな面白いもんじゃないですよ? 貴竜が多いってだけで、あとは餌が豊富ってだけで……なんも面白いことないんで……』
(気分を下げてくるけど、言いたいことはわかる……)
ウズモの言いたいことは、狐太郎や楽園の魔王たちにはわかる。
バブルたちの主観をウズモにコンバートすると、『日本には日本人がたくさんいるんですね、楽しみ~~!』って言っているようなもんである。
いやいや、日本人はそんな大したもんじゃないから。
過剰な日本人下げされても困るけど、過剰な日本人への期待をされても困るから。
ということだろう。
「まあ、それは大丈夫だよ。少なくともバブルちゃんやロバー君は、貴竜のことを近くで観察したり、その生活習慣を見るだけで満足するから……」
『よくわかりませんねえ、そんなもん見て何が楽しいんですか?』
「……まあ、気持ちはわかるよ」
たとえば江戸時代の庶民の生活、のような歴史的資料はある。
それ自体は時代が変われば大いに価値を持つし、それなりには面白い。
だが当時の人間からすれば、何が面白いのかわからないだろう。
「じゃあこう考えてよ。今回の戦争で、君たちは大いに活躍しただろう? それに復興作業も手伝ってくれた。だから竜王であるアカネも一緒に戻って、君たちの帰郷に花を添える」
『……』
「そんな帰郷、一大イベントだ。見学したくなるだろう?」
『なるほど……それはアリですねえ!』
若い雄であるウズモは、帰ったときものすごくちやほやされることを想像して、悦に入っていた。
それに同行できるのは名誉、というと悪くなさそうである。
『では私が故郷に凱旋したことを、彼女が後世に伝えると、そういうことですよね?!』
「まあ、そうなるよ。いや、普通に」
『そうですかそうですか……悪くねえなあ……』
にやにやしているウズモ。
なお、王都やその付近において、彼の評判はあんまりよくない。
(ウズモ君……君は過剰に『ムカデ退治の猛者だぞ』と宣伝していたからありがたみはなかったし、長老であるおじいさんをみんなが見たから『クラウドラインの中だと小物じゃん』ってバレてるけどね……)
そんな残酷な真実を、狐太郎はこらえていた。
実際彼は命がけで戦ったし、その後も復興作業を頑張ったのだ。
その実績をなかったことにはできない。
「……まあウズモからすればドラゴンがいっぱいいるなんて大したこと無いでしょうけど、私たちからすればきっと楽しいわよね。竜王であるアカネも一緒なんだし……」
「だそうだが……アカネ、お前自身はどうだ? 以前はいろいろ言っていたが、ドラゴンズランドに期待していることはあるか?」
ウズモの言葉を聞いたうえで、クツロはドラゴンズランドにそれなりの期待をしていた。
それに対して、コゴエはアカネへ問いを投げる。
果たして竜王アカネは、ドラゴンズランドに何を求めるのか。
「とりあえず臭くなかったらそれでいいかな」
アカネの期待は、とんでもなくハードルが低かった。
「ぶっ殺すわよ」
その低すぎるハードルを聞いて、ササゲがキレかけた。
どう考えても、悪魔の自治区である空論城との対比である。
「いやでもさあ……亜人の自治区は、全然臭くなかったじゃん。これでドラゴンの自治区……じゃなかった、国が臭かったらやだよ私」
「いつまで引きずってるのよ! それにあれは、悪魔に支配されている人間たちが臭いのであって……」
「でも臭かったじゃん、管理できてないじゃん」
「……この!」
本気で軽蔑しているアカネと、本気で怒っているササゲ。
その二体を見て、狐太郎は思った。
(悪魔といえども、不潔とか不衛生とか、臭いと思われるのは嫌なのか……)
珍しく悪魔に共感できた。
確かに狐太郎としても、あの街はかなり嫌だった。
「ねえご主人様……空論城の悪魔を帰す時、臭くするなって命じてくれないかしら」
「なんで俺が言うんだよ……自分で命じてくれよ……」
「あいつらはご主人様を崇拝しているから、その方が喜ぶわよ」
「嫌だよ!」
ササゲからの要請に対して、狐太郎は断固たる拒否の姿勢をとった。
「俺が命じたら、あの悪魔たち未来永劫掃除し続けるだろ?!」
狐太郎は知っている、悪魔がどれだけ約束を重んじているかを。
そして自分という人間に対して、どれだけ心酔しているかを。
もしも狐太郎が『掃除していろ』と、特に期限も決めずに命じれば……。
彼らは自己の尊厳や存続さえ放り出して、嬉々として掃除し続けるのだ。
もし万が一、狐太郎がタイムワープをして一万年後の世界とかに行っても……。
空論城では、元気に掃除している悪魔がいるのだ。
そんな心酔、重すぎる。
「嫌だよそんなの! 重すぎるよ!」
「あんなに格好良く『俺にすべてをささげろ、これは命令だ』って言ったじゃないの!」
「もう契約解除だ! これ以上は雇用を維持できない!」
「絆は永遠なのよ?!」
「だからそれが重いんだって!」
狐太郎は王都奪還戦の戦力として悪魔から協力を集めたかっただけで、この国の悪魔を未来永劫支配下に置きたいわけではない。
言い方は酷いが、用が済んだので契約を解除するだけだ。
今回の場合契約の期限を切っていたわけではないのだが、狐太郎は空論城の悪魔たちの絶対的な主だったため、契約を切るのも自由なのである。
まあ、契約を解除するからと言って、好感度が下がるわけではない。
仮に『じゃあまた部下になれ』と言われたら、いつでも請け負ってしまうだろう。
なんなら、部下にならなくても大抵のお願いは聞く。それも大喜びで。
「まあ待ちなさいよ、ササゲ。貴方の気持ちもわかるけど……私だってそんな無期限の命令は嫌よ。ご主人様がそんなことを言いだしたら、普通に嫌うわよ」
「私も同感だ。これ以上ご主人様に、余計な心労をおかけしたくない」
「……それが悪魔と契約するってことなのに」
クツロとコゴエが諫めたので、ササゲはなんとか飲み込んだ。
悔しそうにチラチラ見てくるが、それに狐太郎は取り合わなかった。
(これからの一生、『ああ今も、俺の命令に従っているんだろうな……』なんて思って生きていくなんて嫌だ……死ぬ時も『これでもう誰も、あいつらの命令を取り消せないんだなあ』なんて思うわけだしな……)
はあ、とため息をつく。
(それこそモンパラ7のアヴェンジャーじゃあるまいし……長命種に対して期限のない命令はできねえよ……)
何事にも、区切りは必要だ。
いつまでもあいまいに、いい加減にすることはよくない。
少なくとも、やりきった者にはそれが必要だ。
狐太郎は、改めて侯爵家四天王を見る。
「いよいよだね、ロバー……ああ、夢のドラゴンズランド……」
「ああ、感無量だ……今日まで頑張ってきたかいがあったな……」
バブルとロバーは、いよいよ出立が迫って興奮気味である。
その一方で、残る二人は……。
「なあマーメ……あの二人は大願成就なんだろうけども……俺たちの護衛任務は続くんだよな……」
「そうね……狐太郎様がこの国にいらっしゃる限りは……いえ、最悪ずっと一緒という可能性も……」
区切りを得られない、キコリとマーメ。
二人はこれからの楽しい旅よりも、その先を見据えてしまうのだった。




