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百鬼夜行

 さて、視点は狐太郎に戻る。


 先日狐太郎は、ゲームで優勝した悪魔に褒美をやると言った。

 各地の貴族たちが厳正に審査をした結果、数体の悪魔がその資格を得たのである。

 だがその中には、二回優勝したものがいた。


 この点は、狐太郎も驚いていた。

 ゲームをしたのは十回程度であり、しかも審査員は地区によって異なっている。

 その状況で千体も参加者がいる中で、複数回優勝する悪魔が現れるとは思っていなかった。


 ぶっちゃけ拷問なんて、誰がどうやっても同じだと思っていたのだが、そうでもなかった様子である。

 さすがに三回も優勝されると困るので、二回優勝した時点でその悪魔は以降の参加を禁止したのだが、それでも二回優勝した悪魔が三体も現れてしまった。


 考えている狐太郎に対して、ササゲが追い打ちをかける。


「ご主人様、最初のゲームでご主人様に見本をお願いした悪魔に……特別賞をあげたいの~~」


 悪魔を多頭飼いするということは、魔王を仲間にするということは、かくも恐ろしいことなのか。

 自分で『優勝したらご褒美をあげるよ』といったことに対して責任を果たすだけではなく、魔王の一存で『君の裁量で彼へご褒美を上げてくれ』と言われるのだ。


 なんでそんなひどいことを言うの? と胸が切なくなる狐太郎。

 悩んだ彼は、まず優勝者たちをササゲの側近とした。

 ササゲの側近なのだから、当然狐太郎の側近ということである。

 今まではアパレやセキトが似たような位置にいたが、この二体はルゥ家に属しているので厳密には狐太郎の部下ではない。

 一応出世のようなものであるし、ササゲも良しとしたのでこれは通った。


 問題なのは、二回優勝した三体と、ササゲ特別賞の一体である。

 いろいろ考えた結果、名前を授けることにした。

 二回優勝した三体は、南瓜(ボウブラ)南燭(シャシャンボ)南風(パイカジ)。狐太郎に対して見本演技を要求した悪魔へは、(シャベ)という名前を授けることとなった。


 これによって悪魔たちは大盛り上がりした。

 彼らの主観では、狐太郎から名前を賜ることはすごく名誉なことであるらしい。


 彼らもそれなりに常識があるので、千体分の名前を人間に考えさせるのは無理があると思っている。

 悪魔には悪魔なりに『人間に発音できない本当の名前』があるので、彼らの主観では不自由がない。

 それに狐太郎はササゲを介して命令をするし、普通の人間はまず悪魔に話しかけない。


 だがそれはそれとして、もらえるのならもらいたい。

 お手軽と言えばお手軽だが、逆説的に言って変な名前は考えられない。

 いや、変な名前は許されるが、考えなしでは許されないのだ。


 仮に悪魔が喜んでも、鬼や竜や雪女が『どうかと思います』というわけで。


 お金で動かない誰かを動かすために、彼はいつだって必死なのである。


 さて、その狐太郎である。

 普段の彼は、鵺のサカモか竜のウズモに乗って移動している。

 だがウズモは先日の酷使から日が浅いため休暇中。サカモはアッカの親族を乗せているため、やはり狐太郎は同乗していない。


 では狐太郎が何に乗っているかというと……悪魔たちのみこしに担がれているのである。

 このみこし、慣用句ではない。狐太郎の座る椅子を棒で持ち上げ、先の優勝者たちが飛行して持ち上げているのである。


 そのすぐわきにはササゲが飛んでいて、まるで悪の女幹部といった風情だった。

 ちなみに酷く美観を損ねているが、狐太郎の座る玉座にはきちんとシートベルトがついている。

 いざという時が来た際、ササゲが彼を抱えて離脱する格好になるので、むしろない方が安全なのだが、それでも断固として彼はシートベルトを所望していた。

 ぶっちゃけササゲなら狐太郎とその椅子ぐらいまとめて抱えられるので、安全性に対して影響はないと言えるだろう。


(なんか俺、凄いことになっているな……)


 いまさらだが、空論城の悪魔たちは異形である。

 アパレやセキト、その眷属たちは一応ヒト型なのだが、人間を支配する側に立って長かった空論城の悪魔たちは妖怪変化魑魅魍魎の姿をしている。

 その連中が、空を飛びながらおみこしを担いでる。はっきり言って、古典の妖怪戯画である。


 その担がれている妖怪変化の総大将が、自分だった。


(軽い気持ちでやらせたけども……これで移動ってすげえ心理的にきついな……風防も付けておけばよかったし……)


 狐太郎は冒険服を着ている関係で、ありとあらゆる環境の変化に強い。

 なので悪魔からのオーラに圧倒されることもないのだが、自分の絵面を第三者目線で想像すると恐ろしいことになっていた。


「ご主人様、どう? 案外揺れない物でしょう?」

「そうだな……ササゲに運んでもらっている時と、同じぐらい安定しているよ」


 誇らしげなササゲに対して、狐太郎は素直な心境を口にした。

 実際ササゲは何度か、狐太郎を運んでいる。悪魔である彼女は物理的に羽を動かして浮いているわけではないので、一般の鳥のように体を上下させるわけではないのだ。

 そのササゲと同類である悪魔たちもまた、よほど強い風にあおられない限り、狐太郎の乗るみこしを揺らさずに済むのである。


「すごいわねえ……このご主人様を、楽園の悪魔たちにも見せたいわ~~」

(悪魔以外から人権侵害だって言われそうだけどな……)


 椅子に座ったまま周囲を眺めれば、そこには大量の悪魔が編隊飛行を組んでいる。

 狐太郎および、そのすぐそばにいるサカモとアッカの家族を守るべく、万全の防御を敷いていた。

 Bランクという質、千体という数。これが狐太郎に従う『喜んで死ぬ兵』である。


(まあ……ありがたい)


 狐太郎が悪魔に対して心を砕くのは、やはり役に立つからだろう。

 アッカの家族から移動の護送を頼まれて、なんだかんだ言っても請け負ったのは、こいつらがいれば大丈夫だと思っているからだ。


(絵面は最悪だがな……!)


 狐太郎は、前だけを見ていた。

 風防がないので風圧が顔に来るのだが、それでも薄目で前だけを見ていた。

 なぜなら、右隣にサカモがいて、その上にアッカの家族がいるからだ。


「ママ~~、僕もアレに乗りたいよ~~」

「駄目よ! 見ちゃダメ! 指さしたら駄目!」

「呪われますよ! 下手をすれば、死ぬまであの椅子に縛り付けられるのよ!」


 無邪気な子供からすれば、狐太郎は楽しげである。

 見た目愉快な妖怪が、みこしを担いで運んでいるのだ。子供は他人がしていることを面白いと思って真似したがることもあって、狐太郎のことを指さしている。


 だがそれを、アッカの妻たちは止めていた。

 悪魔を舐めてはいけない、悪魔は舐められると怒るからだ。

 そういう意味では、悪魔は誇り高い生き物である。


 というか、見た目が怖い。

 悪魔たちからすれば狙い通りであり、狐太郎からしてみれば嫌な話だが、絵面が最悪だった。


 だがその最悪の絵面こそが、護衛としてとても正しいのだが。



 計画性のある殺人は、ある程度未然に防げる。

 だが計画性のない殺人というのは、未然に防ぐことは難しい。


 先日狐太郎がお忍び旅行中、たまたま遭遇した若手ハンターに殺されかけたように……。

 準備も何もなく、発作的に手が出てしまうことがある。


 これの成功確率自体は、とても低い。なにせ計画していない、その場の思い付きで殺そうとするのだから、警護されている状況ではうまくいかない。

 だが未然に防げない時点で、確率がどうとかではないのだ。


 うっぷんをため込んでいて、ふとしたきっかけで爆発するものは多い。

 悲しいことだが、戦時中や戦後は特に多い。

 その彼らのうち一人が爆発すれば、そのまま周囲に誘爆して、とんでもないことになりかねない。

 申し合わせたわけでもないのに、同じ志を持つものが同調して襲い掛かりかねないのだ。


 そうなったら、もしかしたら、小石ぐらいは要人にぶつかってしまうかもしれない。

 その時点で、護衛は失敗だった。


 だから、護衛は難しいのだ。

 まず何よりも計画的な殺人や誘拐を避けなければならないうえで、突発的で発作的で衝動的な犯罪も防がなければならない。


 だがその衝動的な犯行を封じ、なおかつ計画的な犯行を封じるものがある。

 うっぷんに満ちた心をへし折る、圧倒的な恐怖だ。


 雲霞のごとき悪魔の群れは、やがて大きな町へ入った。

 当然多くの人が暮らしており、その中にはうっぷんをため込んでいる者も多い。

 西重の残党であったり、その西重に協力していたものであったり、あるいは戦争で家族を失ったものであったり、戦争の徴税で家を潰されたものであったり。


 自分たちが不幸な目に遭っているのに、ものすごく偉いという人は護衛に囲まれて優雅に旅行をしている。

 悲しいことだが、人はその程度のことで暴走してしまうのだ。


 西方大将軍圧巻のアッカの親族を、元征夷大将軍四冠の狐太郎が護送するという。

 その話が町に来た時点で、多くの計画的犯行が構想され、その他ほとんどがとん挫した。

 そしてその数百倍、数千倍の突発的な犯罪者予備軍が発生していた。


 突き詰めれば、戦争が悪い。

 だが戦争を悪者にしても、罰することはできない。

 だからせめて、幸せそうな奴へ八つ当たりをして、憂さを晴らしたい。

 そう思うものが、町に潜んでいた。


 機会があれば、混乱が起きれば、それに乗じよう。

 あるいはただそれを見ているだけで、ため込んでいたものが噴き出るだろう。

 そう思う輩が、成功の是非だとか逃走経路だとか、そんなことを度外視して準備をしていた。


「やってやる……やってやる……!」


 一人の若者が、家と家の間に隠れていた。

 大名行列がこの町に入ってきて、圧巻のアッカの家族が通りがかったとき。

 燃える油の入った瓶、火炎瓶を投げてやるつもりだった。


 うまくすれば、奇跡が起きれば、当たれば全員殺せるだろう。

 そこまでいかなくても、子供に火傷ぐらいは負わせられるかもしれない。

 それが無理でも、殺意を向けられたことで、子供たちが怯えるかもしれない。


 それでいい、それで。

 自分の人生に希望を見出せない、自分なんてどうでもいいと思っている若者は、一種の陶酔と麻痺による笑顔で火炎瓶を持っていた。


 表からは見えにくい影に隠れているので、当然自分も表の光景が見えない。

 だが何か雰囲気が変わっていく、大きなざわめきが起きることを感じた。


「一泡吹かせてやる……!」


 自分がどう頑張っても、央土を倒すことはできない。

 それどころか、自分一人も救えない。

 そんな自分でも、英雄様のご家族をどうにかできると見せてやる。


 彼は卑しく笑い、火をつけようとした。



駄目だよ



 耳元で、ささやくような声がした。

 若者は、あわててそちらを見る。だがそこには、誰もいなかった。



駄目じゃないか、危ないものを持っていたら。



 てっきり空耳かと思った。

 神経過敏になって、人の声を脳内で変換してしまったのかと思った。

 だが違った。明確に、誰かが耳元でささやいている。

 そして実際に、自分の手元から火炎瓶が消えていた。


「だ、誰だ! 何をしやがる!」


 若者は慌てて周囲を見渡し続ける。

 相変わらず、背後に誰かがいる。

 だが誰もいない。まるで狐に化かされたかのようだが、あいにくここは町の中だった。


だ~れだ


 ふざけた声だった。

 正義の怒りに燃えている若者にとって、許しがたい悪党である。

 正義の行いを妨げる、悪しき存在である。


「出てこい!」


 彼は自分が犯罪を犯す直前であることも忘れて、怒鳴りつけていた。


『うん』


 その瞬間、家と家の間にある影が、すべて盛り上がった。

 影のなかに隠れていると思っていた若者を、影が飲み込んだのだ。


「ひ、ひぃ?!」


 ばくんと、大きな影が人間一人を飲み込んだ。

 まるで食虫植物のように、湿り気のある捕食だった。


 ぬたぬたぬた、ぼとん。

 謎の液体で、ぬめぬめにされた若者は、そのまま吐き出された。


「な、な、な……」


 粘液まみれにされた若者は、混乱しながらその影を見る。

 そして腰を抜かしていた。


「ぶぁあああああ」


 化け物が人間を化かすというよりも、意地の悪い大人が子供を化かすかのような、そんな所作だった。

 だがそれを見た若者は、理解した。


「あ、悪魔!」


 狐太郎が従えているという、邪悪な魔性。

 すなわち悪魔。

 千体いるといううちの、そのたかが一体である。

 その一体が、自分の前にいるのだ。


「うん!」


 まるで若手芸人が、名前を知られていて喜んだかのような、無邪気な笑い声だった。

 濁りのないそれを聞いて、若者は震える。


「ち、畜生……!」


 相手が複数の屈強な兵士なら、むしろ観念していたかもしれない。

 しかし相手は狐太郎の配下、人間に従っている悪魔である。

 一般人からすれば、野生の狼と飼い犬ぐらいに違う。


「ば、馬鹿にしやがって……!」


 何時間ももみくちゃにされたわけではない。

 せいぜい数秒粘液まみれにされただけである。

 若者は若者らしい蛮勇さで、悪魔に殴りかかろうとする。


 野生の狼に挑む素人はまずいないが、飼い犬を蹴ろうとする素人はいるのだ。

 狼と飼い犬に、大した差がないことを知らずに。


「あ……?」


 だがそれ以前の問題だった。

 不思議なことに、体が動かないのである。

 縄で縛られているとか、上から押さえられているとかではない。

 体に力が入らないのだ。


「ひゃはははは!」


 巨大な黒い筒のような姿をしている悪魔は、その円筒形の上からだらだらと粘液をぶちまけながら笑った。

 何のことはない、少々弱体化させただけである。

 筋力を低下させると言えばゲーム的だが、筋力が低下すれば攻撃力が下がるとかではなく、まず立てないのだ。


 抵抗力のない一般人では、Bランク下位の悪魔に軽く呪われただけで、赤ん坊並みに力が下がってしまう。

 大人の体重で、赤ん坊並みの力である。それでは這いつくばることさえ、できはしない。


「あははははは!」


 悪魔は何を思ったのか、その円筒形の体をぐねらせて、地面に穴を掘った。

 この穴が何メートルもある深い穴なら、生命の危機を感じただろう。

 だがこの穴は、一メートルほどもない。落とし穴や塹壕どころではない、子供も隠れられない窪みである。


「お、お前、何を……」


 本気で何をするつもりなのかわからない若者は、悪魔の行動が理解できなかった。

 だがその答えは、すぐに出た。


「ひひひひ!」


 悪魔はその若者の足を円筒形の口で咥えて持ち上げて、逆さにして窪みに嵌めたのである。

 落としたとか、埋めたとかではない。

 少したとえはおかしいが、生まれたての子猫を柔らかいタオルの上に寝かせたようなものだ。

 ただし、さかさまで、穴に頭を突っ込む形で。


「おい……おいおいおい!」


 まるで赤ん坊のようにじたばたもがく若者だが、まるで力が入らない。

 さかさまになっているおかげで、どんどん苦しくなる。

 だが死ぬほどというわけではないし、耐えられないほど苦しいわけでもない。

 だが姿勢が屈辱的であるし、何よりも身動きが取れない。

 たかが窪みにはまっただけで、もがくことしかできなくなっていた。


「あはははは!」


 自分一人さえ救うことができない。そう自認していた若者は、実際そうなっていた。

 そしてその姿を、悪魔は大いに笑って去った。


 後に残されたのは、動けないままの若者である。


「おい……おい!」


 世にも恐ろしい、放置であった。

 窪みにはまっているだけで、余りにも無防備で、しかも目立つ。

 これから自分にどんな脅威が訪れうるのか、彼は想像の限りを尽くしてしまう。


 もしも襲われたら、身ぐるみはがされたら、子供に見つかって悪戯をされたら、あるいは悪徳な憲兵に見つかれば。

 自分に何が起きるのか、自分だったら何をするか、いくらでも考えられる。


 彼は、その想像力に負けて、泣き出した。

 悪魔の悪意に、突発的な正義の怒りが屈したのである。

 もう一生、彼は正義なんて謳わないだろう。


 この騒ぎが、町のあちこちで起きていた。

 要はかくれんぼである。

 

 千体の悪魔のうち、下位の悪魔たちがかくれんぼを始めたのだ。

 人間が隠れていそうな場所に滑り込んで、隠れている人間を捕まえて遊んでやるのだ。


 殺しはしない、殺しは。

 悪魔は人間を殺すことが好きというわけではないのだから。


 それに、悲鳴がいい感じになる。

 そこかしこに隠れていた危険分子たちがひっくり返されて、子供のように泣き叫んで、その声が町のあちこちから聞こえてくるのだ。


 犯罪者予備軍たちは、イケると思うから行くのである。

 行けない、と思ったら縮こまる。もともとそのつもりだったから、口笛を吹いて『うん、今日はやめよう』とか『やっぱ無理だったか』とあっさり諦めるのだ。


 しょせんそんなものである、計画的ではない犯行、反抗など。


「……ササゲ、よくやってくれた」


 犯罪者予備軍のいる町など、悪魔からすれば餌箱である。

 それへ弱い悪魔を放った狐太郎は、言葉だけで褒めた。


 その言葉を、サカモの背中に乗っている家族たちは聴いた。

 その言葉を、そのまま受け止めたのだ。

 心の底から、狐太郎が彼らを褒めているように聞こえたのだ。


「いや、ササゲだけ褒めるのはよくないな。シャベ、空論の悪魔たちはよく働いてくれる」

「光栄の極み」


 実際の狐太郎は、苦虫が山盛りになった茶碗にスプーンを突っ込んで、自分で口に運んで、咀嚼して飲み込むかのような顔をしていた。


「さすがは悪魔……人間を陥れることにおいて、右に出る者はいない」

「何をおっしゃる、狐太郎様……貴方ほどではございません」


 みこしを担いでいるシャベは、心からへりくだった。

 やはりその言葉を、アッカの家族も聞いている。


「ええ、その通り。ご主人様より人を操れる人なんて、一大三千大千世界に一人もいないわ」

「……スケールデカいな」


 魔王であるササゲがそんなことを言っているのも、もちろんアッカの妻たちは聴いていた。

 そうよくよく考えれば、これだけの悪魔がいて、全員が狐太郎に従っているのはそういうことだ。


(私たちは、とんでもない人に頼ってしまった……!)


 自分たちの愛する夫、圧巻のアッカ。

 その後任を務めた男の恐ろしさを、いまさら知るのだった。



「……ご主人様、次はドラゴンでこれやろうよ。で、私の背中に乗ってさ、威嚇しようよ」

「何張り合ってるのよ、貴女……」

「だってさ! 新参の悪魔に体預けてるのに、私に預けないっておかしいじゃん!」

「できないことができないままで、やりたがる貴女がおかしいでしょう……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 世界最怖の個人だな、狐太郎は。
[一言] 流石天帝っ!
[良い点] 相変わらずの悪魔使いよ 残虐なことを好む配下を従えるキャラってのはそこそこいますが、それは力の差や似たような嗜好をしているからこそ従えることが出来ているわけで、自分が本気で嫌な気分になるか…
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