夢のメイドさん
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夢の世界というのは、意外と狭量なのかもしれない。
この世界を知り始めた蛇太郎は、漠然とそう思った。
傷ついた四体のモンスターへ、店売りの使い切り回復魔法を処方した彼は、納得しかねる顔でメイド喫茶に入った。
よくよく考えてみれば、飲食店の多い通りに入ったのだから、飲食店に入るのは自然なのかもしれない。
だがそんな自然さを、蛇太郎は求めていなかったわけで。
ビルのワンフロアを借り切っている、ある意味普通のメイド喫茶。
その中に入った蛇太郎は、マロンと一緒に四体の『着替え』を待っていた。
ごく普通のテーブルと椅子で、ちょっとだけ高額であろう、飾りのついたジュースがテーブルに置かれている。
もちろん『メイドさん』の用意したものだが、蛇太郎はそれを蛇のごとく睨むばかりで、手を付けようとしない。
もしや毒が、と疑っているわけではない。衛生面を不安視しているわけでもないし、ヨモツヘグイを警戒しているわけでもない。
はっきり言って、気味が悪かった。
昔話風に言えば、雪山で迷っていたらお屋敷に迷い込んだようなもの。
入らずにはいられないが、出されたものに手を出しかねる心境であった。
「どうしたんだい? お金は気にしなくていいんだよ。この世界のお金は、僕が持っているからね」
「いや、そういうことではなくて……」
蛇太郎は、自分の中の想いを言語化しかねていた。
口下手で、引っ込み思案で、しかも人を傷つけまいとしている男である。
彼は口から出す言葉を慎重に選んでいた。
だが思い浮かぶことが多すぎて、言語が混じっていた。何を言っていのかわからない。
しかしよほどの男でもない限り、この状況では蛇太郎と同じような反応をせざるを得ないのではないだろうか。
夢の世界を守るためにメイド喫茶に入って、巨大隕石と戦うために四体のモンスターをメイドにしているのだ。
悪夢のような、虚実の入り混じった状況である。
ある意味、夢のような出来事である。
「職業に貴賎がない、ということを知った上でのことなんだが……」
蛇太郎は散々迷った挙げ句、一番の疑問を口にした。
「メイド喫茶にいるメイドさんは、あくまでもウェイトレスであって、メイドではないのでは?」
自分でも馬鹿なことを聞いている自覚はあったが、一番の根源的な疑問はそれであった。
メイドという職業に就くのならば、メイド喫茶に行くことはあるまい。
「何を言っているんだい、給仕と家政婦で仕事の内容に大きな差はないだろう?」
そんな疑問への回答は、ややずれたものであった。
しかし言われてみれば、と納得しかける説得力があった。
食堂で働く給仕と、豪邸で働く家政婦。
なるほど、さほど差がない……ような気もする。
仕事の内容を箇条書きにすれば、大差がないだろう。
ウェイトレスだって掃除はするであろうし、メイドだって食事の配膳をするはずだ。
であれば……。
(いやしかし、その場合はウェイトレスの職についたと考えるべきでは?)
マロンの回答によって、全く新しい疑問がわきあがってきた。
相当どうでもいい疑問だが、なかなか正答に至れない疑問であった。
いやむしろ、どうでもいい疑問だからこそ、正答に至ることができないのかもしれない。
しかし、根源的に疑問がわく。
(メイドって、強いのか?)
メイドが戦うという状況を、蛇太郎は想像できなかった。
いや、逆にできたのだが……。
(これが夢の世界か……)
今更ながら、自分がなんとなく、の世界に来たことを理解していた。
これがカルチャーショックというのなら、まさしくという他ない。
(新しい世界に来たことで、新鮮な驚きを得る……違う、こうじゃない)
口に出さないだけで、文句たらたらの蛇太郎。
ジュースに手を付けていないのは、彼なりの抗議なのかもしれない。
(それにしても……ここは学校と違って違和感がないな)
実際にメイド喫茶へ入ったことがない蛇太郎なのだが、彼が知識として知っているメイド喫茶と誤差がない。
ある意味当たり前だろう。接客を受ける側からすれば、遊園地やレストランは現実でも『夢の世界』だからだ。
迷惑な客がいないとか、接客態度の悪い店員がいないぐらいだが、それも普通といえば普通だ。
(いや……モンスターがいないな)
やはり、モンスターがいないことに違和感を覚える。
バリアフリーが定着して、あらゆるサイズのモンスターが生活できるようになっている社会に馴染んでいる蛇太郎としては、人間だけを想定している内装が奇妙に思えた。
(聞くところによると、人間のメイドさんから『おかえりなさいませご主人様』と言ってもらうことが快感だというモンスターもいるとか……)
一時は各モンスターの団体から問題視されていたほどだが、都市を管理している人間たちは『どうでもいいよ……』と冷ややかだったという。
風俗的に問題があるのならともかく、そうでもないのならどうでもいいのだろう。
まあ実際、どうでもいいといえばどうでもいいわけで。
「お待たせしました、ご主人様!」
そんなことを考えていると、着替えてきたらしい四体が戻ってきた。
再三言うが、蛇太郎はモンスターと共存する社会の住人である。
モンスターがメイド服を着ていても、ああバイトしているんだな、としか思わない。
夢の世界の住人である四体に対しても、やはり特別な反応はしなかった。
全員が挨拶をしてきたのに、なんのリアクションもなかったのである。
「も~! ご主人様ってば反応悪い~!」
そんな蛇太郎へ、グリフォンのリームはじゃれつく。
椅子に座ったままの蛇太郎を立たせて、その腕に絡み付き、さらに他の三体のところへひっぱっていく。
その強引さに、蛇太郎は抗うすべを持たない。
「せっかく女の子がお着換えしたんだよ? ほめてあげないとかわいそうだよ」
(着替えただけなのか……)
真面目に世界を救うつもりな蛇太郎は、その戯れに乗り切れなかった。
おかしい、彼女たちはさっきまで隕石と戦って、危うく死にかけたのではないか。
体が治ったからと言って、そんな簡単に復帰できるものなのか。
もちろんうじうじ悩んでいる場合ではないのだが、かといってこうも楽天的だと困ってしまう。
だが困っている場合ではないことも確か。彼女たちが自分を守るために戦ったことを思い出し、自分を奮い立たせていた。
「あ、ああ……リーム、とても可愛いよ」
「え~? 本当に~? お世辞じゃなくて?」
お世辞抜きに発言をするとなると、まず手を放してほしいのだが、それを言ったらどうなるのかわかっているので嘘をつく。
「うん、本当だよ」
限りなく白々しかった。
純粋な白ではなく、塗りたくったとわかる白さだった。
少なくとも蛇太郎は、「うん、本当だよ」という言葉を使ったことがない。
詐欺初心者の常套句めいたものであり、真実などどこにもない。
それが証拠に、彼は一切具体的なことを言っていない。
可愛いよという言葉以外に、何も知らないのかもしれない。
あるいは、そもそもよく見ていないのだろう。
ちなみにリームの着ているメイド服は、とても「キャラ的」だった。
スカートの丈が短く、しかもへそが出ている。
彼女はグリフォンなのでへそは毛深いのだが、そうでなければお腹を冷やしそうだった。
仕事着ではなくキャラのコスプレ、という雰囲気が強い。
「あ、あの……私はどうでしょうか?」
次いでアルトロンのラージュが聞いてくる。
引っ込み思案のような振る舞いをしている割に、積極的で困らない。いや、困っているかもしれない。
「似合っているよ」
よく見ていないのに似合っている、というのは面倒に思っているからか。それともメイド服の機微がわからないからか。
あるいは真面目な彼は、メイド服で世界を救う戦いに臨みたくないからか。
「あ、ありがとうございます……!」
いや、真実は違っていた。
(趣味が悪いな……)
単に彼の美意識において、ラージュの姿が「奇妙奇天烈」だったからだろう。
彼女のもう一つの頭、長い首から生えているドラゴンの頭にも、腕カバーのような服が着せられている。そこに沢山のリボンが施されており……。
アルトロンの文化がどんなものかわからないが、蛇太郎の持つ美意識からするとデコり過ぎという雰囲気なのだ。
その部位以外は割とベーシックなメイド服なので、なおのこと台無し感がある。
雑に言って、バランスがとても悪い。
(しかし、着飾るときは竜の首を飾りたてるのが、アルトロンなのかもしれない……そもそもおしゃれは本人の自由だし……)
別に服装の審査をしているわけではないので、アクセントが強すぎるね、とか評価してもしかたない。
よって蛇太郎は、細心の注意を払って雑に評価したのだ。
「あらあら……二人のことはずいぶん褒めるのね~。出遅れたという感じがあるわ~」
そんな蛇太郎へメイド服を着たスライム、ポップがしなだれかかってきた。
弾力のある体がしなだれかかるので、まるでウォーターベッドをかぶったかのような感触がある。
(それ自体はいいが、なぜのしかかってくる?)
スライム差別をする気はないのだが、スライムからのボディタッチ、スキンシップには困惑していた。
知性あるスライムの考えを否定する気はないが、人間の文化、蛇太郎自身の倫理観も尊重してほしいところである。
「……ん? このメイド服はもしかして……靭性繊維でできてるのか?」
「あら、お目が高いわね。素材からこだわったオーダー品よ」
不定形で、しかも下半身がどっぷりとしているポップ。
彼女が着ている服は、とても伸縮性の強い、ゴムのような糸で編まれている服だった。
「そのうえ、特別な仕様もあるの。それは見てのお楽しみね」
(なんで変なところだけ現実に則しているんだろう)
既知の高度な技術が使われている衣装、というのもロマンなのかもしれない。
しかし高度な技術の使われているコスプレ衣装を見ていると、やはり思うところがあるわけで。
「ご、ごほん!」
そんなことを考えていると、阿修羅のヤドゥが咳払いをしてきた。
もちろん彼女なりの、自己アピールであろう。
(べたべただな……)
やはり人間は分かり合える相手を尊ぶのだろう。
蛇太郎はヤドゥのいじましさに安堵さえ覚えた。
「ヤドゥも似合っているよ」
「あぁ……ご主人様……光栄の至りでございます」
(オーバーだな……)
その安堵は、一瞬で失われた。
ただ口で接客してくるだけならまだしも、本気で感涙にむせび泣かれると困る。
「貴方様の下僕になることができて、本当に良かった……」
温度差が著しいを通り越して、為替レートの深刻な差が生じていた。
これはもはや貿易摩擦で外交問題である。
蛇太郎が与えた言葉と、それに対する反応に差がありすぎた。
(彼女はどんな人生を送ってきたから、こんなに喜ぶんだろう)
さて、そんなヤドゥのメイド服であるが……。
一際、コスプレ感が強かった。
なにせメイド服なのに、肩や胸にプロテクターがあったのだ。
背中には武器を背負っていることも含めて、武装メイドという風情なのだが……。
(武装メイドってなんだろう……)
蛇太郎は自分の脳裏に浮かんだ単語へ疑問を抱いた。
さっきのマロンの言葉に重ねるなら、武装ウェイトレスだろうか。
どのみちおかしい、しかしそもそも戦うわけで。
(普通にキンセイ兵器で武装すればいいじゃん……)
身もふたもないことを考えてしまう蛇太郎。
だがみんなの夢が集まった世界では、蛇太郎のほうが異端だった。
※
目立つことと馴染まないことは、また別の話である。
四体のモンスターを連れて歩く蛇太郎は、しかし逆に羞恥しなかった。
自分の後ろを見れば、本当のメイドのように従者としてついてくる四体がいる。
日常風景の中で、コスプレしているモンスターを率いているのだが……。
お祭りのように陽気な雰囲気の町の中では、あまり浮いていなかった。
「……マロン」
「なんだい」
「俺が間違っていたような気がする」
蛇太郎はキンセイ兵器についてさほど詳しくないので、彼の考えたことが正しいとは限らない。
だがそのうえで、蛇太郎は自分の誤りを認めていた。
この街中を、キンセイ兵器で完全武装して歩くなど、想像するだけで無理があった。
もちろんある意味正しい行進なのだが、それをやるには蛇太郎は心が弱かった。
「……わかってくれてうれしいよ」
「分かり合えるっていいもんだな」
微妙に含みのある間を持たせたマロンは、明らかに蛇太郎と分かり合えていない。
恥を知っている蛇太郎は、明らかに外聞を気にしすぎていた。
夢の世界なので気にしているのは蛇太郎だけなのだが、彼のモラル、マナー意識の高さが面倒くささにつながっている。
「……ご主人様! お客様がいらっしゃいました!」
「は?」
突然、蛇太郎を抱えて飛び下がるリーム。
何事かと思っていると、彼の立っていたところへ数体の隕石が落下してくる。
隕石型モンスターの奇襲に、彼女が対応したのだった。
「えへへ、どう? ちょっとはメイドぽかった?」
「メイドっぽいかどうかはわからないけども、助かった……!」
メイドっぽい臍だしのミニを着ている彼女だが、その性能は確かだった。
多分だが、これを狐太郎が見ていたら……まあ、うん、だった。
やはり斥候、物理アタッカー、魔法アタッカー、盾役の編成は大正義である。
四体という縛りなら、その崩れにくさは鉄板というほかない。
「ま、マロン、マロンはどうした?!」
目の前には、六体もの隕石。
自分と変わらず無力なマロンは、いったいどうなっているのか。
彼の安全を確かめるべく、周囲を見渡す。
「僕は大丈夫だよ!」
そのマロンは、盾であるポップのそばに隠れていた。
おそらく彼女に守られていたのだろうと、蛇太郎でも理解できる。
「それよりも……!」
「ああ……」
なかなかにハードなエンカウントである。
一体でも仕損じれば、先ほどのように強力な攻撃が繰り出されてくる。
それが、六体。もしも職業の儀式を経ていなければ、とっくに逃げているだろう。
「みんな……頼む!」
インプットワンドへ活力を込めながら、蛇太郎は四体へ頼んだ。
普通に考えれば、先ほど追い詰められた怪物との再戦である。
彼女たちがまともなら、耐えきれるものではないだろう。
だがそれを乗り越えられるのは、やはり……。
彼女たちが、この世界を守るために戦っているからだろう。
「行くよ……メイド技!」
四体の中では最速を誇るリームが、やはり最初に攻撃を仕掛ける。
メイドへ転職した彼女が放つメイド技、それはいかなる威力を発揮するのか。
「クイック、カテーシー!」
スカートの裾を軽く持ち上げてのあいさつ、カテーシー。
その動作によって一旦停止した彼女だが、直後に消えるように動いた。
まるで居合抜きのようだった。静から動の切り替えによって、すべての隕石が防御もできないままに切り刻まれる。
「えっと……それなら次は私ですね……メイド技、インセクトキラー!」
しばらく困ったようにふるまっていたラージュだが、体中に傷を負った隕石たちへブレスを放つ。
集束したブレスではなく、拡散性の強いブレス。六体まとめて包み込む霧状のブレスは、切り傷へ染み入るように体を劣化させていく。
まさに害虫駆除、その前段階。
虫を弱らせる噴霧が、隕石たちを脆くする。
「あらあら、いい感じじゃない……これなら仕込みは十分ね!」
もとより隕石たちは、戦闘が始まって時間が経過すれば、それだけで勝ちを狙える。
一体でも生き残ればいいと、分散しようとした。だがそれはかなわない、インテリジェンススライムのポップが体を変形させ、六体を縛り付ける。
体の変形に合わせて、服までも伸縮する。
彼女の伸びた腕は、同じように伸びているメイド服に包まれたままだった。
「ごみはまとめて掃除するものよね? メイド技、ダストバインド!」
ポップの腕だけなら、拘束に向かなかったかもしれない。
だがキンセイ兵器にも使われる靭性繊維は、いったん伸びて縮み始めると強い摩擦を発揮する。
わかりやすく言えば、脱しにくい縄になったということ。
文字通りまとめて拘束された隕石たちは、もがいても脱せない。
ただでさえダメージを負い、防御力が低下している状態である。
これで拘束されていれば、威力重視の大技で、まとめて始末されかねない。
「ふ……メイドだけに、配膳ご苦労。ここまでお膳立てされれば、あとは私が!」
阿修羅のヤドゥが、背負っていた巨大な武器を掲げる。
それは六刀流ではなく一つの武器だったが、それでも三面六臂の彼女にしか使えない代物だ。
あまりにも巨大な、剪定用の鋏。
戦闘に用いるにはあまりにも粗雑な、しかし暴力的な代物だった。
六つの腕をすべて使って挟み込む、その斬撃は……相手が固定されているのならこの上なく有効だ。
「メイド技……!」
メイド。
それはかわいらしい服を着ている、「あなたの従者」。
時に従順で、時に毒舌で、時にかわいらしい侍従。
献身的に主へ仕える彼女たちには、多くの夢が詰まっている。
時に本職の兵士よりも強いとされる彼女たちは、まさにロマンそのもの。
「リーフシザース!」
隕石が滅亡のロマンだというのなら、メイドこそは日常のロマン。
いつでもそこにいて、有事の際にも決して後れを取らない。
すなわち……押して押して押しまくる、攻撃特化の職業である。
※
六体の隕石は、鮮やかに片づけられた。
目覚めとともに夢が消えるように、そこにいたことさえ残さぬままに、かけらも残さず消えていった。
「……すごい」
鮮やかに片づけた四体を見て、蛇太郎は思わず漏らした。
己の指揮するモンスターが、職業を得て強化され、苦戦していた相手に勝利する。
成長の快感に、彼は震えざるを得なかった。
勝利の決めポーズとして、カテーシーをしている四体が、まるで伝説の戦士のように思えてきて……。
正直、たまらなかった。
「……どうだい、楽しいもんだろう?」
その感慨に震える蛇太郎へ、遊びを教える大人のように近づくマロン。
「……なんか妖精っぽくなってきたな」
「まあね。だって君、今にも投げ出しそうな雰囲気になっていたし……」
蛇太郎はマロンの笑いに安心を見出していた。
それこそ、自分の好きなゲームを勧めて、それを本当に気に入ってくれたことに安堵したような、そんな笑いがあった。
「楽しんでくれたほうが、僕だって安心だよ」
「……不安にさせたんだな」
よくよく考えれば、目の前の彼に責任があるわけではない。
ふざけているようでも、それはこの世界における最善だったのだ。
やはり反省した蛇太郎は、今後も頑張ろうと思って……。
「じゃああの子たちをハグしてあげてよ」
「……なぜ」
「彼女たちに人格を認めるなら、一生懸命頑張ったところをほめてあげないと」
マロンは子供へ犬のしつけ方を教えるように指示をするが、やはり蛇太郎は困っていた。
確かに彼女たちが「究極のモンスター」なら、ほめてあげれば喜ぶだろう。
だがしかし、ヒト型をしていて、高い知性を持っている相手へ、ハグをするというのは彼の倫理観としてアウトだった。
のちに本当の究極のモンスターの主となる若き英雄は、それを跳ね除けるだけの強さを持っていたが……。
蛇太郎はそこまで強くなかったわけで……。
「……わかりました」
未だ英雄ではない彼は、彼女たちへハグすることにしたのだった。




