好きなことを仕事にすれば、一生働かずに済む
雑に言うと、イベントをクリアしたら装備が強くなった、である。
本当に雑だが、文章にするとそうなる。
もちろん麒麟たちは、素直にそう報告していた。
(なにがどうなった?!)
王都に戻ってきた麒麟から報告を聞いたジューガーは、何が何だかわからない気分だった。
おかしい、ちょっと森の不審な死体を調べに行ってきたら、冗談のように強くなって帰ってきた。
今まではBランク上位に勝つのがぎりぎりだったはずなのに、Aランク下位に余裕を持って勝てるようになりました、というのは強くなり過ぎではないだろうか。
「すまないが、意味が分からない」
「そうですか、では詳しく報告いたします。僕の生まれ故郷には伝説がありまして、遠い昔にある国で優れた武人たちの武器が保管されていたのです。全部で九百九十九本あったのですが、それら一つ一つに武人の魂が封じられていました。その武人たちに認められれば強大な力を得られるのですが、相応しくないと判断されたものは殺されるという……そんな伝説の武器なのですが、はるか昔にアカネさんやクツロさんたちが倒した魔王の部下であるムサシボウと言う男に奪われていたのです。もちろんずっと昔の話でして、ムサシボウが死んだ後は回収され、各地で保管されていたはずなのですが、なぜかあの森に現れたのです。なので私はこれを倒し、伝説を達成したことによって、強大な力を得たのですよ」
ちゃんと説明しようとする麒麟。
もちろんちゃんと話しているのだし、専門用語も特にないはずなのだが、大王は困っていた。
「狐太郎君、私にわかるように説明してくれたまえ」
「……そうですね」
狐太郎自身きちんと把握しているわけではないので、少し困っていた。
だが説明しろと言われれば説明するしかない。
「まず、原因となっていたのは怨霊でした。私たちの故郷の武器が、大量に山積みになっていまして、それが本体になっていたのです。なぜそれがそこにあるのかは、周囲に誰もいなかったのでわかりませんでした」
「ふむ」
「その怨霊たちの行動原理は、モンスターを倒すことと、モンスターを倒せる強い戦士に力を託すことでした。なので近くにモンスターがいるときは、モンスターを殺して回っていたわけです」
「ほう」
「麒麟君がその怨霊と戦って勝利した結果、怨霊たちが麒麟君へ力を託したということです。もちろん怨霊は消えています」
「そうか」
(獅子子さんに言わせればいいと思うんだが……)
要点を分かりやすく伝えるのには、時系列を丁寧に説明しないほうがいいこともある。
丁寧とわかりやすくは、まるで別のことなのだから。
「まあ悪いことではないな……しかし究極といい君たちといい……他にも多くが流されてきているかもしれないな。何かあれば、また頼むこともあるだろう」
※
かくて、今回の騒動は幕を下ろした。
被害らしい被害がなかったことが、せめてもの幸運だろう。
やはり早期発見、早期解決が大事であった。
だがしかし、大王の懸念ももっともである。
今後のことを考えれば、さらに恐ろしいことへ発展してもおかしくなかった。
狐太郎と四体の魔王は自室に戻り、作戦会議を始める。
「まさか私たちの世界のアイテムが、祀とか昏とかとは別で来てるとはね~~」
「そうね、Aランク上位モンスター程じゃないけど、強力な怨霊だったし」
アカネとクツロは、思ったことを口にした。
彼女たちの意見は、間違っていない。
「つまり……祀と昏が今後も持ち込むのは普通にあり得るってことね」
「そうだな、だがAランク上位モンスターより強い兵器など、我らの世界にはないな」
それを聞いて、ササゲとコゴエも共感していた。
「そうだな……」
それを聞いて狐太郎は頷く。
つまりこの事件が明らかになるより前から危険性はわかっていたし、この世界へ危険な兵器が流れてきても英雄かAランク上位にやられて終わりということだった。
(……じゃあどうでもいいじゃん)
悩んでいたのが馬鹿に思えてきた。
少なくとも狐太郎の把握している範囲において、この世界のパワフルさを越えるものはない。
ある意味当たり前だが、祭や昏がやったように、アイテムを現地の勢力に提供するのが関の山と言うことだ。
そして現在、央土周辺の勢力は、全部まとめて疲弊している。
それこそ死人が生き返るとか、そういう規模の何かが無い限り、央土の脅威にはなりえない。
もちろんまた三つの国が協力して襲い掛かってくればその限りではないが、もう今更だろう。
よって、脅威ではあるが、現在の狐太郎たちがどうにかできる枠の内側に収まるのだ。
あるいは、狐太郎たちが何もしなくても、現地の勢力が何とか出来る。
侵略的外来種というのは、その先が弱くないと成立しないのである。
「ところでさあ、ササゲ。今回のことで私気になったんだけど、魔王軍に居たときって誰の部下だったの?」
「あら、それ私も気になるわね。ムサシボウの部下じゃなかったんでしょ? 私の先祖……かどうかは知らないけど、亜人の群れはムサシボウが従えていたらしいけど」
四体の魔王も同じ結論に至っていた。
どうせ対症療法しかできないので、話題を切り替えることにしたのである。
「……嫌なこと聞くわね」
なお、聞かれたササゲは余り楽しそうではない。
「ササゲ、言いにくい理由でもあるのか」
「あのね、コゴエ……あの時の私は、まあ……下っ端だったのよ。今みたいに、たくさんの大悪魔を従えて、平悪魔たちに崇拝される存在じゃなかったわ」
いろいろあって、ササゲは魔王である。
冠を頂いているだけではなく、国中の悪魔を率いていると言っていい。
それは人間の感覚から言っても、自尊心を満たすに足る状況だろう。
だからこそ、屈辱の歴史を他人へ語りたくない、という気持ちもある。
魔王様の下っ端時代、と言うのは同僚にも言いたくあるまい。
「でも今は魔王様なのよ、魔王様! その私の情けない時代なんて、話したくないわ」
「まあ、でもいいじゃん。今は私たちだけなんだし」
「見栄なんかはらなくてもいいでしょ」
「あまり強要はできないし興味もないが、長引かせるほどでもないと思うぞ」
(そういえばこいつら、基本的に王だって自覚はあるんだよな)
割とどうでもいいことを、今更思う。
狐太郎の主観において、彼女達が王でなかった時代はわからないのだが、彼女達は同胞に対して居丈高になりやすい。
王であることを根拠に奴隷のようにこき使うことはないが、それはそれとして同種が恥ずかしいことをしていると怒ることが多い。
自分たちが種族の代表である、という認識が強いのだ。
それが『周りが自分たちを王だと扱うから』なのか『冠自体にそういう効果があるのか』まではわからないのだが、とりあえずそう振舞っている風潮はある。
もちろん、実害などまったくないのだが。
(アカネが俺を背中に乗せたがることに比べれば、大したことじゃねえよなあ)
「ねえ、ご主人様は私の過去に興味ある?」
考え事をしていると、ササゲが質問を投げてきた。
どうやら彼女は、狐太郎にアカネやクツロを諫めて欲しいらしい。
「ないわけじゃないけど、わざわざ聞き出すほどでもないかな。話してくれるのならともかく、無理強いはしたくないし」
「それはそれでムカつくわね」
素直な気持ちをぶつけると、素直な気持ちが帰ってきた。
やはりコミュニケーションは、素直な気持ちだけでは成り立たないのかもしれない。
「まあいいけど……口外しないでね」
「大丈夫だよ、話す相手いないし」
「そうね、貴女の過去を知りたがる人なんてそんなにいないでしょ」
「……貴方達が知りたがったんでしょうが」
矛盾している二人の話だが、ササゲも言いたいことはわかっている。
悪魔がどこからきて何をしてきたかなんて、この世界の住人は知りたがるまい。
それこそササゲの配下である悪魔たちが、少し興味をもつぐらいだろうが……。
空論城の悪魔たちが狐太郎へ従っているのとは違い、相手が魔王だったので従っていました、というので興味もすぐ無くなりそうである。
(だが俺の褌もそうだが、秘密ってそういうもんだよな……)
ササゲだけが恥じている状況を、狐太郎は笑わない。
大体そもそも、そんなに面白い話とも思えない。
「私の上司は……魔王軍四天王、人殺雫、エンシェントウンディーネ、ローレライ様よ」
「ああ、あの影の薄い」
「他の三人に比べてパッとしないことで有名な」
「これだから、後世の奴らと話をするのは嫌なのよ……」
(まあ確かに……5の主人公であるプリンセスと、あのアヴェンジャーに比べれば影は薄いだろうな。俺もあんまり印象に残ってない。ムサシボウは知らないしな)
四天王筆頭であり、魔王に次ぐ実力者であり、人間から武器を奪って操ったムサシボウ。
四天王唯一の生き残りであり、勝利歴において黄河の妻となり、カセイ兵器の主となったプリンセス。
そして、最も有名な四天王である、不忠大逆アヴェンジャー。
その三人に比べて、一番弱く、なおかつパッとしない殺され方をしたローレライ。
なるほど、彼女達の歴史において、そう評されるのも不思議ではない。
だがそれは後世の話であって、当時を知る者からすればまったく話は違うだろう。
「魔王軍内部でも、人間の側でも、あの方が一番恐れられていたわ。だからあんな不確実な殺し方をするしかなかったのよ」
「私たちがここに来たのと同じランダムワープだっけ?」
「違うでしょ、あの魔王はここへ来させようとしていたじゃないの。ある程度指定している分、魔王のタイカン技の方が上でしょ?」
魔王軍四天王、ローレライ。
彼女の記述は少ないが『ランダムワープで追放された』ということになっている。
これを聞くと『じゃあ全部それでいいじゃん』と言うことになってしまうが、よほど弱いモンスターならまだしも、強いモンスター相手にこれをやるのは度胸がいるだろう。
パラダイスの世界では、瘴気がない。
その分モンスターたちは弱いのだが、だからこそ逆に行動制限がないともいえる。
魔境に戻らないと死ぬこの世界のモンスターと違って、いつまでも居座れるのだ。
場合によっては、平和な時代になってから……と言う可能性もあるわけで。
本当に、苦肉の策なのである。
「ムサシボウ様は味方にはお優しかったし、魔王様を諫めてくださることもあったわ。プリンセス様は魔王様にぞっこんで、他には興味がなかったし……アヴェンジャーは、ほら、新入りだったから、あんなことが起きるまでは評価も何もなかったのよね」
畏怖を込めて、ササゲはささやいた。
「でもね、ローレライ様は違うのよ……それはもう、恐ろしかったわ……!」
まるですぐそばにその四天王がいるかのような、そんな恐怖さえ匂わせていた。
「あの方は……魔王軍を、仲間を喜んで粛清する。それどころか、粛清すること自体が目的だった。いつでも溺死させる相手を探している、そんなお方だったわ……」
(そんなのが上司なのか……)
悪魔は約束を破った相手を、喜んでなぶる。
だがローレライは殺すこと自体が大好きで、何時でも殺す口実を探している。
ある意味無差別で、ある意味勤勉で、ある意味公平な粛清者だったのだろう。
「確かにあの方は、他の四天王に比べて何枚も劣るわよ。でもそれは……決して……あの方の恐ろしさを弱めることにはならない。あの人がいなくなって、魔王軍でさえも安堵した者が多かったわ」
誰よりも危険な人物が、規律を守っていた。
それは魔王らしいともいえるし、それだけの人物から主と認められていたということでもあるのだが、やはり恐ろしいことだろう。
「……魔王様は、たしかに偉大だった。それは魔王様に従う者たちが優秀だったことも含めて、ね」
恐怖はあるが、悪魔を恐怖させるのは凄いことだ。
それを認めたうえで、彼女は話を結んだ。
「それでも、負けは負けだけどね」
ササゲは、少しだけ魔王軍時代の気持ちを思い出していた。
本来なら、負けるはずはなかった。相手はBランク上位が精々なのに、こちらにはAランク中位へ届くものまでいたのだ。
それで負けたというのは、それこそ……。
やはり、相手にとって都合のいいことが起きすぎたのだ、という負け惜しみが滲むことだった。
※
遠く南万の地にて。
ミルクを飲みながら窓の外を眺める、狼太郎の姿があった。
もちろん本来の姿ではなく、ある程度自制の利く姿になっている。
それでも外を眺める姿には、見た目不相応の品があり、それこそ大人に見えるところがあった。
「すみません、今よろしいですか?」
そんな彼女へ、声をかけるものがいた。
七人目の英雄、蛇太郎である。
食堂車で狼太郎が一人になっているところを見て、声をかけようと決心したのだ。
「ナンパか?」
「いえ、違います」
「そうか……ナンパじゃないのか」
なお、狼太郎は傷ついていた。
「勘違いされると困るんだが、俺だって別にお前と結婚したいとか、積極的に恋仲になりたいと思ってるわけじゃないんだぞ」
(思ってなかったのか)
「だがなあ……こうも魅力がないとか、面倒に思われるのはなあ……」
どうやら彼女も、自己矛盾に苦しんでいるらしい。
ある意味人間らしいが、その人間らしさが極端になっているともいえる。
「で、なんだ」
「すこし、伺いたいことがありまして」
さて、チグリスとユーフラテスは、長命なエルフである。
だが彼女たちは、さほど人生経験が豊富ではない。
一応は魔王軍に属していたが下っ端で、さりとてエルフの重役だったということもない。
これはインダスも同じで、太古のことを聞かれても詳しいわけではないのだ。
しかし、狼太郎は違う。
まさに生き字引、多くのことを知っている者である。
「その……他の四天王のことはどう思われていたのかな、と」
「……あん?」
確かに魔王軍四天王本人と話ができるのなら、聞きたくなることでもあるだろう。
だがしかし、蛇太郎が興味本位で聞く、というのは少しだけおかしなことだった。
「まあお前の事情は察するに余りあるけどよ、期待には沿えねえぜ」
「理由をお伺いしても?」
「ぶっちゃけ俺、昔は魔王一筋で、他のことに興味なかったし」
「……ああ」
今の狼太郎がある程度他の者とコミュニケーションをとれているのは、ちゃんと惚れた者がいないからである。
思いが通じ合った者がいればよそ見をしないが、その分そのものにぞっこんになる。
(つくづく面倒な生態だな)
魔王はともかく、黄河という男はよくも生涯をこの生物と共にできたものだ。
そういう意味でも、黄河は英雄だったのだろう。絶対に真似できない、したくない人生である。
「もちろんまあ……ほかの三人が負けたことには思うところもあったが、これだけ時間が経てば許せるようになるしな。大体、死んでる連中を呪っても仕方ねえし」
「……そうですか」
どこかで、ほっとしているような蛇太郎。
彼は答えを聞けなかったが、聞きたくない返事ではなかったことに安心していた。
「おい、蛇太郎。それ、俺が預かろうか」
その安心している彼へ、狼太郎は踏み込んだ。
「お前にEOSを持つ資格がないとは言わねえが、ぶっちゃけ重いだろ」
魔王軍四天王の生き残り、狼太郎。
確かに彼女なら、魔王の宝につぶされることもないはずだ。
元よりカセイ兵器を乗りこなす彼女である、大して心理的な負担も感じないだろう。
「お断りします」
だがしかし、蛇太郎は断言した。
それこそ、睨み殺す勢いである。
「私は、これを、絶対に、誰にも渡しません」
その眼には、冷たい殺意があった。
「たとえこの世界の人類全員が人質になっても、何億もの人を見殺しにすることになっても、絶対に誰にも譲りません」
「そうか、悪かったな」
だがしかし、狼太郎はそんなことで動じる女ではない。
断固たる殺意さえも受け流し、笑って済ませていた。
「悪かったついでに、ちょっと思い出したことを教えてやるよ」
「……」
「ムサシボウは、いい奴だった。死んだときはみんなが泣いてたし、俺もちょっとは残念だった」
お詫びのように、おぼろげな印象を語る狼太郎。
本当に印象になかったので、昔の記憶をかき集めて評していた。
「アヴェンジャーは、まあ新顔ってこともあってあんまり一緒にいなかったしな。まあアイツは特に人間を憎んでいたし、ムサシボウと一緒のことが多かったんだが。あいつなら、もっと違うことを知ってたかもな」
「……」
「ローレライは……あんまり得意じゃなかったなあ」
ちょっとだけ嫌そうな顔をして、狼太郎はローレライを評した。
「アイツ、敵も味方も溺死させるのが趣味だったんだが……いや、趣味っていうか、仕事っていうか、趣味を仕事にしてたんだが……」
「彼女については、あまり資料がないそうですね」
「ああ。みんな怖がってな、記録にも残したがらなかった。でも俺にとっては、母親代わりでね。俺を育ててくれたのは、ローレライだった。その分しつこくてな……魔王様より私が好きよね、とか……まあ言って来たな」
くい、とミルクを飲む。
「思えば、あの人がいれてくれたミルクは、まあ悪くなかったな」
「そうですか……」
遠い年月を越えて自分の好物の、好きになった理由を思い出す。
それもまた、人間らしいことであると言えるだろう。
「お前もどうだ」
「……ええ、一杯だけ」
※
さて、南万と西重、そして央土は基本的に政治形態が同じである。
王がいて、その配下に英雄がいて、重臣がいて、という定住民族らしい体制と言えるだろう。
それに対して北笛は、まず一族がある。各一族ごとに長がいるが、同じ北笛の民の中でも争いは絶えないし、北笛の王と呼ばれる者も北笛のもめごとに首は突っ込まない。
一族がいて長がいるのなら、まずその単位で何とかすべき。そうした考え方であり、非常に遊牧民族らしいと言えるだろう。
では、東威は?
実はこの国、歴史の深さだけなら央土さえも大きく超えている。
だがその一方で、政治はぐちゃぐちゃである。
北笛でさえ、今回の戦争では国家一丸となっていた。
だが東威には、まず国家の統一的な指導者が不在なのだ。その上でいくつかある勢力ごとに長がいて、しかもその長たちは同じ縄張りを主張していて……。
まあ要するに、一応統一された国家があるのに、まるでまとまりがない。
一つの街を指さして、この街はどこの勢力下なのだと聞いても、聞かれた側も困るのだ。
一つの街に三つ四つの勢力の息がかかっており、しかも一応は共存しており……。
とまあ、なんとも混乱しやすい政治になっている。
だが流石に、もっとも栄えている都はその限りではなかった。
水の都、ベネ。
内堀や外堀があるだけではなく、都の中にも水路が張り巡らされている、極めて治安のいい、栄えている都である。
周辺には田畑もあり、この都だけでも自給自足ができるという。
もちろんどの勢力もこの都を欲しがっているのだが……。
ただ一つの勢力が、ずっと独占していた。
そのはずだった。
「あらあら、うふふふ……思ったよりも大したことがないのねえ」
水路の一つに、とある高貴なるお人が沈められた。
抵抗もできないまま、あっさりと殺されたのである。
「これで、この街は私の物だわ……そうすれば、ここの英雄も私に従わざるを得なくなる……!」
美しくも歪んだ顔は、魔女と呼ぶにふさわしかった。




