争いの裏で笑う者
一周年突破です、今度は嘘じゃないです。
央土の王都奪還軍が勝利し、西重軍は消滅した。
その一報をチョーアンへもたらしたのは、狐太郎に従うモンスターであった。
「ということで! 凄い戦いでしたけど、勝ったのは央土です!」
「いや~~、どっちも全員死ぬまで戦いそうな感じでした。参加せずに済んでラッキー!」
「やっぱり魔王様は大変ですねえ。私、魔王にならなくて良かった~~」
現在チョーアンを守る戦力はほぼいない。その状況で狐太郎が寄越してきた使者は、単独でもこの街を落とせる怪物だった。
適切に、迅速に情報をもたらしてくれた。それに感謝を示したいジューガーだが、流石に少々ためらってしまう。
(お前が戦えよ……)
Aランク下位モンスター、鵺のサカモ。
変化する能力を持ち、三体に分身することで実力を隠すこともできるキメラ。
同ランクの中では弱い部類に入るらしいが、下に位置するサイクロプスの一体ぐらいなら食い殺す怪物でもある。
狐太郎は飯炊きや足として雇っているが、戦えば麒麟やノベル、ダイやズミインの上である。
だが本人の意思を尊重し、狐太郎は彼女をただの連絡係として使っていた。
「……そうか」
一緒に話を聞いている重臣たちと同様に、ジューガーも素直に喜びきれない。
一体のままだと長く魔境から離れられないことは承知しているが、もう少し取り繕って欲しかった。
もしも彼女が国民なら、それこそ殴り殺しているところである。だが彼女は、国民でもなければ人間でもない。
(もしもそれを言えば、お前が戦えよ、と言われるだろう……)
何よりも大王自身、現地で剣を振るわないことを恥じている身である。
彼女がどれだけ強いとしても、この国のこととはほぼ無関係。狐太郎の個人的な部下でしかない彼女へ、戦いを強制することは躊躇われた。
「あ、ああ、そうか……わかった、ありがとう。魔境へ行って、ゆっくり休んでくれ」
「はい、承知いたしました!」
「やった~~! もう帰って寝よっと!」
「めっちゃ疲れたね~~!」
とことこ去っていく、軽業師のような恰好の三体。
そんな後ろ姿を見ていると、やはり怒鳴りつけたくなってしまうのは人情か。
だが相手はAランク、命が惜しいので重臣たちも黙っている。
「まあとにかく……勝ったのはいいことだ」
大王は玉座に座ったまま、腰を抜かした。
まるで態度の悪い子供のように、ずるずると椅子の奥から尻を動かしていく。
「おっしゃる通りでございます。これでひとまず、国内の憂鬱は去るかと」
「西重は実質的に崩壊、他の三か国も攻めあぐねているようですし、このまま終わりでしょう」
「一時はどうなるかと思いましたが、新しい将たちによって国家を救われましたな」
新しい将たちを快く思わない重臣たちも多いが、流石にこの状況では心の底から褒めていた。
もしも王都奪還軍が敗北すれば、いよいよ央土は崩壊である。少なくとも大国としての体裁を保つことはできまい。
二心の有る臣下たちも、央土に滅んでほしいとも、西重に勝ってほしいとも思っていないのだ。
それに、王都に親戚が残っている者もいる。王都に残っていた者たちが解放されると知って、胸をなでおろしていた。
「ああ、まったくだ。彼らにはなんと礼を言っていいのかわからんな」
とにかく、勝ってよかった。
個人としては、死地に送り込んでしまった友人たちの無事が嬉しい。
私人としては、怨敵が死んで嬉しい。
大王としては、国家が残ったことが嬉しかった。
だが素直に喜びきれない面もある。
「……だが、死に過ぎたな」
大王のしみじみとした言葉を始まりとして、全員がしばらく黙った。
前回の戦争では、比較的犠牲者が少なかった。だが今回の戦争では、多くの兵士たちが王都の土になったという。
国家のために命を散らした彼らに対して、誰もが黙とうをささげた。
まず祈らねばなるまい、生存を喜ぶ前に死者を悼むべきだった。
無邪気に喜ぶのは、それこそ民だけで充分である。
「しかし、ナタ様はなぜ戦場に現れたのでしょうか」
黙とうが終わった後に、重臣は疑問を口にした。
今回の戦争で決定打になったという、大志のナタの登場。
彼は央土の英雄であり、元々王都を守る十二魔将の一人。
その彼が戦ってくれたこと、それ自体は驚くに値しない。
問題は、南で戦っていたはずの彼が、なぜ今王都に来たのかということだ。
大急ぎでここに来たサカモは、ナタについてはよくわかっていなかったらしい。
ナタ本人もかなり参っているようで、話を聞くどころではなかっただろうが。
「ありえないとは思いますが……恩師や盟友の死によって動揺し、命令に反して王都へ来たのでは……」
ありえないとは思いますが、という前置きに何の意味があるのか。誰もがその可能性を現実視している。
普通に考えて、命令に反するには十分すぎる動機だ。
狐太郎たちにとって王都や十二魔将はどうでもいいことだったが、ナタにとっては重大ごとである。
暴走したとしても、情状酌量の余地はあった。
「いや、それはあるまい。もしもその気なら、とっくにそうしているはずだ」
大王ジューガーは、あえてありえないと言い切った。
既に彼の元には情報の伝達を終えている。その時は王都へ向かいたがっていたが、きちんと釘を刺していた。
それからしばらくの間、ずっと彼は動かなかった。健気にも、役割を果たしていたのである。
にもかかわらず、知らせてもいない開戦のタイミングで、態々来るだろうか。
ある意味美味しいタイミングだったが、彼はむしろチタセーたちと戦いたかったはずだ。
「南方前線で何かあった、と考えるべきだろう」
「……南万が引いたと?」
「ありえなくはない。ナタとカンシンの二人が全力を尽くしていれば、撤退させることは可能だ。あるいは、南万でなにかが起きたか」
もうこの時点で彼らの興味は、西重以外か戦後へ移っていた。
無理もないだろう。英雄云々を抜きにしても軍のほぼすべてを喪失した国など、まったく問題にならない。
極めて常識的に考えて、もうまな板の上の鯉だった。もはや西重に対しては、一々考えを巡らせる意味がない。
カンヨーへ移動した後、ゆっくり相談すればいいことだ。
そう、結局は想定された状況そのもの。
ナタが西重の兵を一方的に、何も言わずに殺しつくしたのと同じだ。
『戦う力が無くなれば、こちらが土下座をしても叩頭をしても、和睦の余地はなくなる。陛下のおっしゃったように、一方的に殴り殺してくるだけだ』
もう西重相手に、悩む必要などない。
そして西重自身に、できることはなかった。
※
央土の西側を占拠している、西重。
現在も西重の民は、豊かな土地での暮らしを満喫していた。
三万の兵が戻ってきたことで治安も戻り、彼らは常に王を称えていた。
そのうち王都に残った兵も帰ってくると、家族たちは信じて疑っていない。
そしてその一方で、カセイに攻め込んだ兵たちの遺族は、戦争の続行を訴えていた。
彼らは被害者であり、犠牲者の親族だ。
家族が殺されたのだから、殺したものを見つけ出して裁くべきだと叫んでいる。
それは、まあ正しいだろう。
それもまた、国民の声である。
だが彼ら彼女らは知らないのだ、西重の兵がもう三万しか残っていないこと。
大将軍やそれに近い力を持った者たちが、もう一人も残っていないことを。
平和を保障する武力が、一切残っていないこと。
それを彼らが知るには、まだ時間が必要だった。
「……コンコウリ」
「おお、陛下。よくぞいらっしゃいました」
そんな中西重の大王コホジウは、自ら軟禁を命じたコンコウリの屋敷へ自ら足を運んだ。
思い詰めた顔の彼に兵たちが逆らえるわけもなく、彼はあっさりと中へ入ったのだ。
もちろんコンコウリは、彼を温かく迎えた。
ワインボトルとグラスの描かれた、安い絵の飾ってある部屋ではなく、もっとしっかりとした応接室で彼の応対を行う。
とてもではないが、敵国と密通していると自白した男の振る舞いではない。
もちろん、自分のことを軟禁しろと言った男への振る舞いでもない。
大王と重臣のそれでもない。
どちらかといえば、年齢の差を越えた、親しい友のようであり……。
「ふふふ、暗い顔をなさっていますが、なにやら嫌なことでもあったのですかな? 大王陛下が不景気な顔をしていれば、それだけで誰もが不安に思うでしょう。いつも泰然とするように、私はお教えしたはずですが」
「……カンヨーを占領していた軍が、負けた。全滅したらしい」
葬式の際に、無理に慰めようとしている老人のようだった。
「ずいぶんと、情報が早いですな。それとも、もうずいぶん前にそうなっていたと?」
「祀から、最後の義理だと言って連絡が入った。おそらく本当だろう……」
盗人だと自己申告もしてきた祀である、その言葉は普通なら信じない。
しかしこの状況では、真実だと受け止めるほかない。
そもそもそれさえ、事前に想定されていたことなのだから。
「それは……残念でございましたな」
「……」
著しい温度差を、コホジウは感じていた。
コンコウリがあえてそうしていることはわかるが、苛立たしくさえある。
まるで隠居を決め込んだ老人が、現役世代の愚痴を聞いてやっているようであった。
「他人事だな」
「他人事ですので」
もとよりコンコウリはまず引退を表明し、それを受け入れてもらえなかったので敵と密通していると告白したのである。
彼にとって西重の現政権など、もう袂を分かった関係なのだろう。むしろ、こうして応対をしていることが不自然である。
「いっそ、国民に自決でも命じるか」
「それはようございますな、真っ先に貴方様が殺されるでしょうが」
「そうだな……国民に殺されるのなら、それもありか。多少は国民も、気が晴れるだろう」
万死に値する。
その言葉が軽く思えるような、余りにも残酷な状況である。
国民が全員自殺したほうがマシ、それが現状だ。
そうなるかもしれないと分かったうえで踏み切ったのだから、本当に救いようのない上層部である。
「何がいけなかったのか、考えている。もちろんお前の言った様に……結局は最後の決断、判断に誤りがあったのだろうが……」
もう手遅れだが、だからこそ考えてしまう。
一体何がいけなかったのか、と。
「そういう問題ではありませんな。大王陛下の手落ちではありますまい」
「……ではどういう問題だ」
「敵が多くて強かった、それだけです」
古今東西、史実物語を問わず、大国と小国の戦争は多く存在している。
当然ながら、小国が大国を打ち破ることもある。場合によっては、滅ぼすこともあるだろう。
それらには、とても単純な共通点がある。
大国側が腐敗していて、無能な人間ばかりか、無能な人間が有能な人間の足を引っ張っているか、どちらかだ。
汚職が蔓延し、兵士たちに給金が支払われず、民が搾取され愛国心がなく、誰もが保身を考えて正確な情報を上げない。
そして上層部は互いに気を使う余り、適切な手が打てない。
そんな状況で、小国が内部の抵抗勢力や他国と手を組みつつ、腐敗した国家を撃破する。
それが王道という物だ。
逆に言うと、大国側がまともなら、小国に勝ち目などない。
小国側が何をしても、どう頑張っても勝てないのだ。
相手が強いということは、それだけで勝ち目の一切を奪ってしまうのである。
「東威から警告されていた圧巻のアッカが、想定の倍は強かった。最大の敵と思っていた十二魔将が、実はもう一組あった。まあそれで勝てるわけがありませんな」
わかり切っていたことではあるが、敗因はそれである。
敵が思ったよりもずっと強かった、それはどんな作戦の失敗よりも確実な敗因だ。
「神の視点を持たぬ我等では、すべてを知ることなどできません。ましてやもしもの可能性など……」
「……」
だん、とコホジウは膝を叩いた。
自分の拳を握りしめて、痛いほどに自分の膝を打ったのだ。
ただの自罰である。
「相手が強ければ、何をしても無駄だと?」
「それはそうでしょう」
「大国が大国としてある限り、小国には勝ち目などないと?」
「それはそうでしょう」
相手が思ったより強かった、本当にそれだけが敗因ならば。
そんな相手に立ち向かったこと、立ち向かわせたことは罪深い。
「結果が出た後でなら、なんとでも言えるのです。私も、貴方も」
チタセーもウンリュウもギョクリンも、誰もが最善を尽くしただろう。
それで勝てないのなら、それこそ敵が強かっただけだ。
西重の大王は、今更ながら小国であることを嘆いた。
「我らの大敵、央土。思った以上に広かったですなあ」
当たり前だが、央土も西重も、お互いを良く知っている隣国同士である。
ある日いきなり央土が現れたとか、ある日西重がいきなり現れたとか、そんなことは一切ない。
にもかかわらず、西重は央土を見誤ったのだ。
だがそれを笑うことはできない。
やはり人類の歴史を紐解けば、圧倒的に強いと知っている国に挑み、滅亡寸前まで戦ってしまった国などいくらでもある。
強いとは知っていたが、まさかここまで強いとは。
そう嘆くのは、よくあることであった。
「コンコウリ、私は死ぬ。いや、殺されるだろう」
「そうでしょうな」
「私は敵にも味方にも恨みを買い過ぎた、それも正当極まりない恨みだ。誰に殺されそうになっても、抵抗する気はない。いや、捕まりそうになっても、辱められそうになっても、何をされそうになっても抵抗する気はない」
「さようで」
「だがお前は……抵抗しろ、逃げろ。密通していたというお前を恨むものも出るだろうが、それでも生きて国を売れ」
コホジウは、そう命じた。
これに対してコンコウリは、茶化さずに静かに頷くことで応じる。
そしてここから先の会話もまた、主従のそれであった。
「コンコウリ、お前は和睦を結ぶべきだと言っていたな?」
「もちろんでございます」
「この結果になった以上、私も偉そうなことは言わない。だが……可能だったと思うか」
一光年先の星の輝きは、一年前に発された光であるという。
実際に事が起きても、それが目や耳に届くのには、ラグがある。
そして今この西重では、既に希望の星が爆発したと知らぬまま、爆発した光が届くまで希望を抱いている人々ばかりだった。
つまり彼らにとってはまだ、カンヨーでの戦争は始まっていないも同然である。
そのうえで、戦争の継続を訴える声が絶えない。
「戦争で死んだ兵たち、その遺族の声が無視できたと思うか? 彼らが国境で何かを起こすとは思わなかったか? 今よりももっと悪い状態で、再び戦争になるとは思わなかったか?」
西重の民は、然るべき報いを求めている。
親しい家族を殺した央土へ、正義の刃が下されることを期待している。
それを西重の政府に、強く求めている。
もしも政府がそれに応えなければ、彼らは自ら行動に移しただろう。
「和睦は、現実的だと思うか」
もっともである。
十分に想定しうる、和睦した場合の最悪のシナリオだった。
もちろん、コンコウリがそれに気づかぬわけもない。
それを分かったうえで、コホジウは問うのだ。
「ああ……陛下」
それに対して、コンコウリは無力を嘆いた。
「戦争は全部そうです」
コホジウはそれを聞いて……。
「……」
しばらく黙った。
そしてコンコウリへ背を向けて歩き出す。
「歴史が、央土が、他の国々が……政治家が、戦術家が、一般市民が……今回のことを知ることになる、すべての人々が、私を評するだろう」
毒も刃も、或いは自分の首を絞めてくるであろう手も。
如何なる殺意も受け入れる覚悟を決めてしまった彼は、それを後悔していた。
この王を、自ら殺してしまいたかった。
自死でも自決でもなく、自裁や自殺という言葉がふさわしかった。
「それよりも先に、私は自身の評価を定めた。おそらく誰もが、同じように評価するだろう」
コンコウリの目から、こらえていたものが溢れてきた。
わかり切っていたこと、知っていたこと、当然のこと。
コホジウもコンコウリも、決して誤解などなかったのに。
それを、一般的と思うかどうか、ありふれていると思うかどうか。
そこに決定的な齟齬があった。
この戦争、このまま終わらせれば遺恨が残るぞ。
そうですね、どの戦争もそうです。
つまりは、そういうことで……。
コホジウは、コンコウリは、それを今語り合った。
経験を経ることで成長をすることは、彼も同じ。
本当に今更だが、コホジウは若すぎた。
※
ナタの登場によって、完全に撤退したスザクとミゼット。
捨て台詞さえ残さぬ、惨めで見事な、合理的撤退。
それは二体にとって、とても辛いことだった。
不利な相手と、ひたすら不毛な削り合い。
その上勝敗が決してもなお争わせ、最終的に全員逃げた。
欲をかいた結果がこれである。
スザクはミゼットを含めて、全隊員へ謝罪をし、その上で祀の元へ報告に向かった。
何を言われても、彼女は受け入れる気だった。
今まで偉そうに振舞って、結果がこれである。
隊員に無理を強いた結果と考えれば、成果は余りにも遠い。
「昏隊長、スザク。ただいま戻りました」
彼女を待っているのは、彼女に比べて明らかに劣る者たち。
祀と呼ばれる、亜人と思われている者たちだ。
彼らはそろって彼女を迎えていた。その雰囲気は、余りにも堅い。
「お預かりしていた隊員、欠員なく帰還しました。ですが……」
彼女は、沈んでいた。
何の成果もない帰還、それは彼女にとって一つの残念な意味も含んでいる。
英雄、チタセー。
できるのならば、彼にも報いたかった。
「私の無能により、成果はありませんでした。私の作戦指揮に、皆は忠実に従い……多くの傷を負いました。どうぞ、沙汰を」
それに比べれば、自分が罰を受けることはさほどでもない。
自分たちは失わずに済んだ、決定的な損失はない。
自分が罰として死刑を命じられたとしても、彼らが守りたかった西重の大王の無念さには比べようもない。
「スザク……」
「はっ」
「まずはよく戻った。あの戦場、あの戦力……お前やミゼットでも、厳しいものがあっただろう」
祀は冷静だった。
いつもと、何か変わっているということはない。
だが、何かを押し殺している、という雰囲気はあった。
この迂遠な話し方は、つまりそういうことである。
「そのうえで、あえて言おう。お前が隊長を続けるかどうかは、まず他の隊員の話を聞いてからだ」
「承知いたしました」
不満などない。
隊長が適任かどうか、隊員が決める。とても当たり前のことだ。
おそらくミゼットが就任するだろう、降りても不安はない。
「増員が可能になったのでな……!」
ここでようやく、スザクは気づいた。
祀たちが、全員笑っているのである。
祀がこの状況で笑う理由など、彼女は一つしか知らない。
「ま、まさか……祭の宝、瘴気機関が完成したのですか?!」
膨大な人間の魂、それも熱狂の魂を材料として、ようやく出来上がる祭の宝。
すなわち、瘴気機関。まさに革命をもたらす、魔王の宝であった。
「その通りだ。これで保留にしていた、テラーマウスやベヒモスも昏として生み出せる……」
「ついに……ついにあの問題が解決したのですね!」
「そうだ!」
スザクは落ち込んだことも忘れて、祀たちと一緒に歓喜した。
「我々は、無限の食料を手に入れた!」
機関がもたらすもの、すなわち産業革命、農業革命。
国家に繁栄をもたらす祭の宝、その機能の一つ。食糧問題の解決であった。
「そして最後の一つ、葬の宝の在処もわかった!」
「なんと!」
「憎たらしいことに他の英雄共と合流しているが……七人目の英雄、冥王が見つかった!」
世界を滅ぼす力、世界で最強の力、Aランク上位モンスターや英雄さえも倒すための力。
相手が強ければ強いほど効果を発揮する、甲種魔導器EOS。
その所有者、蛇太郎。
「奴は、南万にいる! 戦力を整え次第潰すのだ、天帝と合流する前に!」
次の標的は、彼であった。




