英雄のいない戦場
北の戦線では、当然ながらコゴエのタイカン技は目視できなかった。
だがアカネのレックスプラズマがコンロン山に向かったこと、東から来たブゥが北まで来てセンカジとメンジュウを倒したこと。
それらに関しては、しっかりと把握できていた。
一体何が起きたのか知らない三つの軍は、大いに混乱していた。
説明を求める幕僚たちに対して、第二将軍ショウエン・マースーは丁寧に謝罪をする。
「黙っていて申し訳ない。この作戦は最重要機密として、十二魔将と我等四将軍でだけ共有されていた。万が一にも知られては困るのでな」
最大最強の敵である、西重の七将軍。
それを畳みかける広域連携について、彼は語った。
正直に言えば教えて欲しかった幕僚たちではあるが、自分達に役割があるわけでもなく、また相手に知られると非常に困ることも分かるので、黙らざるを得なかった。
なによりも、成功したであろうことを考えれば、怒る気も失せるというもの。一人でも央土軍を殲滅できる英雄が、まとめて倒れたのである。普通の人間である者たちからすれば、これほどありがたいことはない。
「ではショウエン閣下……敵の将軍たちは、これで全滅ということでしょうか」
「センカジとメンジュウに関しては、撃破が確認されています。他の五人も、そういうことなのでしょうか」
「そう考えてくれて構わない。現にこちらに、手の空いた将軍たちが来ることはなく、かといって征夷大将軍閣下が捕らえられたという一報もないだろう」
喜んでいるようには見えない顔と口調だが、それでも言っていることはもっともだ。
もしも作戦が失敗していれば、英雄の手が空いたということであり、そのまま戦場全体が崩壊している。のんきに現状確認をしている暇などない。
そうなっていないことが、敵将が全滅したことの、なによりの証明であった。
だがそれは、こちらの陣営にも言えることである。
こちらの将や魔王は、まず間違いなく敵将を下した。
にも関わらず、敵を壊滅させていない。
それの意味するところを、彼は理解している。
「正直に申し上げまして、此度の軍は若すぎると思っておりました。如何に緊急事態とはいえ、大王陛下も強権を振るわれたと……そう思っておりましたが……私が間違っておりました」
「おっしゃる通り……盤石なる準備に、大胆なる策、そして連携……脱帽するよりほかにありますまい」
そんな彼の周囲は、すっかり緩んでいた。
しかしそれは、彼らが能天気だからではなく、大馬鹿だからでもなく、戦の経験が乏しいからでもない。
むしろ彼らは、ショウエンよりも戦場を知っている。
だからこそ、彼らは緩んでいるのだ。
なぜなら、敵将は全滅したのだ。
この軍の、ではない。西重軍の将、その全員が死んだのである。
これは実質的に西重の滅亡を意味し、戦略的勝利を意味している。
ここから先のことなど、何も憂うことはない。
戦場に残った敵を片付けて、残る三つの国と話をつけるか追い返して、そのまま西重を攻め滅ぼして終わりである。
西重の大王は当然殺す。民は奴隷にするなり皆殺しにするなり、煮るも焼くも好きなようにできる。
誤解でもなんでもなく、事実そうなのだ。
相手が西重に限って言えば。
「……如何されましたか、ショウエン閣下」
「お顔の色がよろしくありませんが……一体何を懸念されているのですか」
「斉天十二魔将の、ガイセイ、ブゥ、ホワイト。このお三方は、今どうされている?」
彼の周囲も、決して無能ではない。
不穏な物を感じ取り、確認をする。
もちろんショウエンは、迅速な質問をした。
「……どうやらすでに、六席の麒麟様が救援に向かわれているようですが」
「つまり、三人とも倒れているということか……」
ショウエンは困った顔をしている。
それは『もう駄目だ』という顔ではなく、もちろん『戦後は難しくなったな』でもなく、『なんという罪深いことをしたのだろう』という顔でもなかった。
それが、彼らにはわからない。もう勝った、終わったことではないか。
「失礼ですが、ショウエン閣下……何を懸念されていらっしゃるのですか?」
「既に敵将は全滅したのでしょう? であれば、何も憂うことはないのでは……」
確かに、西重は戦略的に敗北した。
もう西重に、一切希望はない。
だが、戦術的にはその限りではない。
この戦場において、まだ西重には目がある。
「カセイでの戦争で、我らは西重に勝った。それは四席のホワイトが、キンソウを討った後も健在だったからだ。だが今回は、そうではない」
ショウエンは、まさに難しい顔をしていた。
「もしも昏が残るのならば……この戦争、ここからが本番になるぞ」
※
時間は、央土の王都奪還軍が、カンヨーに着く以前にまで遡る。
まだ生きていたチタセーは、六人の将軍たちを除く上級将校と、昏のスザクを集めて会議を開いていた。
「まずは今回、我等上層部の失態によって、こうも状況が悪化したことを詫びよう。申し訳ない」
ふだんはあえてふざけることもある老雄は、しかしとても生真面目に話を切り出した。
この場に六人の若い将軍がいないことも合わせて、スザクさえも困惑している。
なぜ彼ら六人を意図して抜きにして、スザクを入れているのだろうか。
「そのうえでだ……今回の戦争の、最悪の事態に対して話をしておきたい」
彼は謝罪をしたうえで、それに対する返事を聞かずに、一方的に話を切り出した。
「王都奪還軍との戦いにおける最悪の事態……すなわち、我等七人の将が、全滅した場合についてだ」
まさに最悪である。
ある意味、大王が死んだ場合よりも、さらに悪い。
国家の大戦力の壊滅は、そのまま国家の壊滅を意味する。
相手が一人英雄を送り込んでくるだけで、そのまま抵抗もできずに全滅する。
つまり敵からすれば、一切リスクを負わずに殲滅できるということだ。これほど簡単なことはないだろう。
それを避けるためには、最低一人でも英雄が生き残らなければならない。
「もちろん儂も、それを望んでいるわけではない。可能な限り避けるつもりであるし、それは六人の将も同じだ。相手がどれだけの戦力、どれだけの策を持ってきても、決して死ぬ気はない」
一々言う必要もないことであろう。
そもそも自分の命であるし、国家の戦力として当然の気構えだ。
しかしそれを言うということは、それが難しいことも意味している。
「だが相手は、ウンリュウの率いる軍を滅ぼした。決して侮れん強敵であり……我らを討つために、必勝の策を練っているだろう。そしておそらく、我等にそれを見破る術はない」
大将軍チタセーは、はっきりと言い切った。
「だがほぼ確実なことがある。敵の策はわからずとも、狙うところは最初から分かり切っている。我等七人を倒すこと、それさえできれば勝ちだからな」
絶対に避けなければならないことだが、敵はそれを目指している。
どれだけ頑張っても、それにたどり着いてしまうかもしれない。
であれば、それに対する備えもしておく必要があった。
「この戦場で我等七人が倒れれば、勝機無しと判断した昏は離脱し、そのまま央土が押し切るだろう。そして諸君らの考えるような、最悪の事態が訪れる」
絶望的に見えるが、しかし老雄はそこから先を見ていた。
「だがもしも、敵の主力が同様に倒れていればどうだ? 昏が残ってくれればどうだ? その場合、一気に話は変わってくるだろう」
この老雄は、自分が去った後の戦場を見ていた。
英雄たちが潰し合った、その先を見ていた。
「たとえ我らが全滅しても、諸君らが四冠の狐太郎を確保すれば、それだけで央土に勝てる」
無茶苦茶な話だった。
確かに今回の勝利条件は、狐太郎を確保し、央土へ要求を通すことだ。
膨大な悪魔を率いている狐太郎を捕らえれば、央土は大抵の要求を呑まざるを得なくなるからだ。
だがしかし、それでは央土に勝つだけだ。
他の国々には、とうてい通じる手ではない。
「閣下……恐れながらそれでは、国家が長く持ちません。央土は黙らせることができるでしょうが、北笛も南万も黙りません」
将校の一人が、極めてまっとうな指摘をする。
央土と有利な条件で和睦を結べても、北笛や南万が攻めてくればそれまでだ。
英雄が一人もいない国など、他から襲われて当然。
同盟が終わった後に、悠々と攻め込んでくるだろう。
「今回の戦争で央土の領土を与えるとしても、力の無い国は食い物にされるのが落ちですよ」
「当然の指摘だな。だがそれは、国境を接している隣国の場合だ」
国境を接している国へ攻め込むことと、国境を接していない国へ攻め込むのでは、難易度が大きく違う。
国家間の友情や条約など、破ろうと思えば簡単に破れる。
狐太郎の確保だけがその例外であり、普通はそうなるものだ。
であれば、央土との条約で、問題を解決するほかない。
「現在我らは、央土の西側を占領している。だがこれを返還し、この王都を中心とする中央部を乗っ取ればどうだ?」
無茶苦茶な力技だった。
元々西重は央土の西側へ国ごと引っ越したようなものだが、さらに内側へ引っ越していくのである。
央土に包囲される形の国土、或いは央土を防波堤にする形の国土と言えるだろう。
「……北笛や南万と、国境を接さぬようにすると?」
「そうだ」
それなりに、一考に値した。
そういう状態になれば、他国が西重に攻め込むには、央土を大きく跨ぐことになる。
もちろん央土もそれは嫌がる筈なので、実質央土が守ることになる。
普通なら央土も嫌がる用件だが、この状況なら呑まざるを得ないかもしれない。
好戦的な隣国と、物理的に縁を切る。
それができるのならまあありがたいが、また別の問題が残る。
隣人どころではない、獅子身中の虫についてだ。
「大将軍閣下……一応確認させていただきますが、それは実質的に西重を祀へ差し出すということですね?」
ここにスザクがいるのだ、他の意図は考えられない。
自分たちが全員死んだら、祀というよくわからん集団へ身売りしろ、と指示をしているのだ。
「そうなるな」
老雄は、淡々としたものだった。
「だが、祀にしても悪いことではない。まず当人たちの主目的であった冠は、ほぼ確実に手に入る。加えて英雄のいない人間の国を支配できるのだから、何も恐れることのない日々になるだろう」
「……西重にとっては悪いことだと思いますが」
「無論だ」
すべての英雄を失った西重へ、祀は好き勝手に要求をするだろう。
それこそ極めて高圧的に、実質的な支配者として搾取の限りを尽くすはずだ。
英雄以外には負けることがない、昏という戦力を背景にして……。
「だが央土に負けるよりはマシだ」
将校たちも、これには返す言葉がなかった。
「最悪の事態を想定するのに、一発逆転を狙う方がどうかしている。大体昏には大いに負担を強いるのだから、それぐらいのことは約束しなければ動いてくれまい」
要するにこの会議は、本当に最悪を想定してのこと。
七人の英雄たちが全員死ねば、本来そのまま国民が全員死ぬところを、祀に支配される程度に収められる。
一種の保険として、備えを語っているのだ。
「言うまでもないが、我等七人のうち一人でも生き残っていれば……いや、儂以外の六人のうち一人でも生き残ってくれれば、今の話はなかったことになる。だがもしもそうならなければ……」
七人全員死んでも諦めるな、手を引かないでくれ。
その指示や嘆願は、いっそ清々しいほどだ。
「どうかな、スザク殿」
「私の勝手な判断はできませんが、祀へ報告してもいいとは思います……ですが、一つだけ疑念が」
チタセーの提案には、大前提がある。
それは七人の英雄が倒れたとき、央土の主力も共倒れをしていることだ。
「策にはまって全滅する貴方達が、敵の主力を道連れにできるのですか?」
もしも主力が一人でも健在なら、それこそ勝負にならない。
昏の意思云々ではなく、戦闘をしても負けてしまうだろう。
それでは今の話も意味がない。
「最悪を想定している割に、考えが甘いのではありませんか?」
「くくく、痛いところを突く。確かにその場合は、遠慮なく逃げてくれて構わん。勝ち目のない戦いにまで、付き合わせられんからな」
普通に考えれば、勝った方には余裕があるものだ。
負けた側が共倒れまで持っていくなど、そうそうないだろう。
「だがそれこそ、儂らを舐めんでくれ。たとえ全滅するとしても……無傷では勝たせんよ」
※
西重の若き英雄たちにさえ教えられていなかった、正真正銘最後の策。
七人の英雄がこうも一気に壊滅するとまでは想定できなかったが、それでもチタセーの読みは生きていた。
カオシとヘキレキはブゥに深手を負わせ、センカジとメンジュウはガイセイとホワイトを倒した。
そしてチタセー本人は、クツロをきっちりと戦闘不能にしている。
「いやはや……広範囲長射程の攻撃を、こうも巧みに利用するとは。流石に、完全に、どうしようもないほど想定外ですよ」
アカネを守るドラゴンたちとシャイン、究極。
そして自分の配下である昏の隊員へ、彼女は悠々と話しかけていた。
「こちらの英雄は全滅しました、ですが其方の主力も力尽きたようだ。そうでなければ、私たちが無事であるはずもない」
のんびりと話をしている彼女に対して、昏のメンバーは最初焦っていた。
このままでは、勝ち残った英雄がここに殺しに来るはずだ。そうなれば勝ち目などない。
七人の英雄が倒れた今、西重側の最大戦力はここに集まっている。
であれば、英雄は真っ先にここを狙う。
だが途中で気付いた。
まだ英雄が来ていないということは、もう動けなくなっているということだ。
主力同士のつぶし合いは、戦術的には引き分けだったのである。
「つまり……まだ勝負はついていないんですよ、むしろここからが本番です」
彼女の語っている間に、北の戦場で大きな動きがあった。
それこそ遠くからでもわかるほど大きな影が、複数の箇所にいきなり出現する。
封印の瓶が央土軍のあちこちへワープで移動し、その中にいたサイクロプスたちが一斉に現れたのだ。
先ほどのように、散発的に、事故のように現れたのではない。明らかに軍事的に、大量に投入されていた。
「サイクロプス……一気に勝負をかけてきたわね!」
シャインは状況を把握した。
スザクの言っていることは、決して虚言ではない。
少なくとも西重軍は、まだ事前の戦術に則って行動している。
「今現れたサイクロプスたちも、貴方達なら一体で全滅させられるでしょう。ですが、逆に言って貴方達以外に、もう央土にAランクの戦力は残っていない。私たちが貴方がたを抑えている限り、西重にはまだ勝機がある……!」
アカネを守っている竜たちを、昏の隊員たちも見た。
よくよく考えれば、この戦場。
アカネが倒れた代わりにシャインが現れたが、それでも総合的な戦力は下がっている。
短時間とはいえ昏全員を拘束したことで、シャインも既に疲れている。
「我等はもちろん、疲れて動けない竜王様を狙います。元々それが狙いですし、卑怯ともいわないでしょう。さて……他の戦場へ救援に赴ける余裕はないでしょうね」
竜も究極もシャインも、顔を緊張させる。
彼女達の言うように、戦いはこれからが本番だった。
※
北の反対側、南にて。
完全に疲れ切っているクツロを回収した南の本陣では、彼女への治療が行われていた。
しかしタイカン技を二重に使うという暴挙で、彼女は意識の一切を失っている。
「すみません……私では、これ以上は……」
「……いや、いい。ありがとう、バブル」
バブル・マーメイドが懸命に治療していたが、とにかく疲労が濃すぎた。
かろうじて生きているだけの彼女の頭を、狐太郎は膝へ乗せていた。
そして愛犬をめでるように、優しく抱きしめている。
「クツロ、よくやってくれた」
狐太郎は、心から彼女を称賛していた。
もちろん彼女には届かないが、それでも言わずにいられなかった。
そして、他の者たちもまた、言葉にできない程敬意を示していた。
彼女の戦いは、まさに国家の命運を決するもの。
鬼の王である彼女は、確かに役目を果たしてくれたのだ。
央土の民も、亜人の勇者たちも、同じように深く感謝を向けていた。
どんな言葉を使っても、陳腐になってしまうのではないか。
どう感謝していいのかわからないほどに、彼らは感謝を示したがっていた。
ただ礼を取り、彼女の寝姿へ敬意を示す以外にない。
「……ジョーさんの作戦どおりなら、もう戦争は終わっているはずだが」
そして狐太郎は、抱えきれない程大きなクツロの頭を抱きしめながら、南の方角を向いた。
今まではクツロとチタセーの戦いによって、他の戦場などわからなかった。
だが今は分かる。東や西の戦いは終わり、北だけで戦いが起こっている。
「どうやら、相手はまだやる気みたいだ。ブゥ君もガイセイもホワイト君も、もう戦えないらしい」
彼は、あくまでも淡々としていた。並べる事実は、それに比べてとても重い。
だがそれでも、現実と向き合っていた。決して、絶望などしていない。
「ここにも敵が来る……それも、全力の敵だ」
その言葉を裏切ることなく、王都付近に巨大なサイクロプスが複数出現した。
それとは別に、狐太郎たちの更に南側に、いきなり人間の兵士たちが現れる。
それも数千人という数だ。弓兵や騎兵などで構成されており、どう見ても正規兵である。
まさに挟み撃ち、狐太郎たちを逃がさぬ構えであった。
「ひっ!」
おもわず、侯爵家の四人が慄いた。
大将軍チタセーは倒れたが、その代償としてクツロも倒れてしまった。
その状況で、Bランク上位モンスターを複数、普通の軍勢を数千相手にしなければならない。
まあ、勝ち目は薄いだろう。
「き、狐太郎様!」
思わずダッキが、彼にしがみつく。
地面に座り込んでいる彼へ、さらに抱き着くのだ。
その彼女は余りにも弱弱しく、さらに狐太郎は弱い。
だがその狐太郎の指示を、誰もが待っている。
彼は、一瞬だけ目を閉じた。
思い返すのは、空論城のこと。
初めて出会った、悪魔にそそのかされた男だ。
『もしも俺が負けたんなら! お前の奴隷にでも下働きにでもなってやるよ! 魂だってくれてやる! どうだ!』
一応は命がけ、一応は人生を賭けていた男だった。
だが彼自身でさえ、自分の命や人生にまったく価値を感じていなかった。
彼には、尊厳がなかった。
尊厳を持たないものの必死さなど、その程度だと思い出していた。
いっそ素直になって、泣き叫んで、『どうか助けてください、何でもしますから』と言おうとも思った。
だが駄目だ、それでは何の意味もない。自分の尊厳も、相手の尊厳もクツロの尊厳も守れない。
「皆さん。クツロは役目を果たしてくれました、もう戦えません」
狐太郎にとってさえ、クツロとは長い付き合いだ。
だがこんなにも彼女を抱きしめたことは、今まで一度もなかった。
「今度は、皆さんの番です。どうかお願いします」
想定外のことなど、何も起きていない。
ここにいる面々は、ダッキを除いて、狐太郎を守るために配置されている。
であれば、ただ指示を出すだけでいい。
彼らもまた、仕事でここに来ている。
「戦ってください」
座っている、据わっている男。
彼の言葉に、尊厳への敬意を見出す。
戦士たちが叫んだ、吠えた。
彼らは十分すぎるほど、過剰なほど奮い立った。
醜男たちは、天命の近衛であった。




