火花を散らす
平和は尊い。
確かにそうだ、少なくとも戦場のほとんどの者がそう考えている。
戦争など、ごめんだ。
この戦場に立つほとんどの者が、戦争を嫌がっている。
むしろ、他の誰でもない自分が死ぬのかもしれないのだから、彼らこそが嫌がるだろう。
よほど武勲を求めるもの以外は、心のどこかで戦いを嫌がる気持ちがある筈だ。
だが、戦うのだ。
社会の基本は、助け合い。
拡大し発展した社会は、やがて分業する。
本来は自分が全部やらなければならないはずが、やがていくつかの仕事を他人へ任せてしまう。
楽しい仕事ではない、嫌な仕事を。
兵士も、軍人も、将軍も、結局は同じ。
彼らは他人から『戦う』という仕事を、押し付けられている。
※
この度の大戦争、その総大将は四冠の狐太郎ではあるが、しかし実際に策を練ったのは第一将軍であるジョー・ホースであった。
シュバルツバルトの討伐隊の実質的な主であり、管理者。全員から一目置かれている彼は、やはり大王からも信が厚かった。
強いは強いが、それだけではない。彼は正しい男であった。正義の男ではないが、正道の男であった。
だからこそ、この度の『頭がおかしい作戦』を提案しても、誰も咎めなかったのである。
もしも他の誰かが同じ作戦を立てても、その指示に従っていたとは思えない。
「……老将チタセー、やはりそう来たか」
実質の最高指揮官である彼は、王都からあふれてきた西重の軍勢をきつくにらんでいた。
地上から昇る流星のように、六つの英雄たちが飛び立ってもいるが、それは彼の担当ではない。
向かってくる、十二万の軍。王都にて鋭気を養った、遠征の疲れも抜けきった、殺気の有り余った兵士たち。
王都を守る軍を破った、この国に仇成す者たちである。
「想定通りの、大敵だ」
彼の周囲には、白眉隊時代からの側近に加えて、新しく参じた老兵の軍師たちが控えている。
彼らは向かってくる、普通に布陣して、普通に進軍してくる敵を、厳しい目で見ていた。
「奇策に惑わされず、定石を打ってくるとは見事の一言。流石は老将……手強い!」
家老という言葉がある、大老という言葉がある。
老とは、決して悪い意味ではない。
今目の前に展開されている通常の軍もまた、一切蔑みの余地がない。
想定出来ているとはいえ、それが安易とは限らないのだ。
「……王都奪還軍、第一軍! これより進軍を開始する! 全員に告げよ、敵は強大であるとな!」
布陣を遠くから見れば、ある程度は敵の傾向を読み取れる。
現在敵の陣形は、何一つ面白くない正統派の陣形。
リゥイ達に勝るとも劣らぬ実力を持った若武者たち。黄金世代と呼ばれる彼らが一人一人、各々の配下を率いて隊を組み、それが更に中隊を成し……軍となっている。
本当に、ただそれだけの陣だった。
だからこそ、恐ろしい。一灯隊が無数に現れ、白眉隊に率いられているようなものだ。
王都が陥落するのも当然であろう、これでは大王が率いてもなお勝てるものではない。
(獅子子君が確認した限りでは、前回の戦いでは若い将が代理を務めていたそうな。彼の判断も、間違いではなかった。だが……上手くやろうとした。この敵にそれは無い)
想定外の奇策に対して、適切な策を練り実行する。
それは上手くいけば、状況を解決できるだろう。
だがそれには、遊びがないのだ。
それでは、想定外に潜む更なる想定外に対応ができない。
裏の裏には、裏一枚では対応できない。
犠牲が出るとしても、定石で対応する。
使い慣れた定石ならば、定石が破られた時も更なる定石で対応できる。
なぜなら定石とは、破られた後のことも既に想定されているのだから。
(そして、今回第一軍にある裏の札は、遊軍は……麒麟君が率いる抜山隊、これ一枚。しかも第二軍との共用……これは苦しい、と言わざるを得ない。であれば定石を打ちあうだけだが……)
定石と定石の打ち合い。それは双方が崩れぬように戦うということであり、突き詰めれば単純なぶつかり合いである。
前線には、両軍の死体が並ぶだろう。両軍の屍を踏み越えながら、両軍の血の混じった水たまりで足を汚しながら戦うのだ。
(心苦しい……!)
アッと驚くような奇策、計略、神算鬼謀。
それを指示できる身なら、どれだけ気が楽か。
到底、通じる相手ではない。
逸るまい、焦るまい。
既に相手の将は、腰を据えている。
「全軍進軍せよ! しかし、走るな! 叫ぶな! 槍を手に、盾を手に、腰を据え、歩いて向かえ! 息を切らすな! ただ整然と戦え!」
鬼畜の所業だ。
いっそ叫んで立ち向かわせれば、恐怖を紛らわせることができるだろうに。
だが相手もそうしてくるのなら、とにかく崩れぬように戦う他ない。
「この戦い、崩れた方が負けだ! 心胆を見せろ、侵略者を下し、堂々と凱旋する!」
王道の戦い、それは血まみれの戦いだ。
犠牲、犠牲、犠牲。
もううんざりだ、と相手が逃げるまでの根競べ、我慢比べ。
心苦しいにもほどがある。
だが、ここで投げることはできない。
ここで大任を投げ出すことは、狐太郎へのこの上ない裏切りとなる。
(この反対側で……君は、間違いなく英雄と戦っている! 私はその影と戦っているだけだ……退けるわけがない!)
※
若き竜たちは、人間の群れの手前、整然としているつもりだった。
しかしながら、接近してくる気配へ緊張が隠せない。
如何に小さいと言えども、格上の存在から力を継承しているモンスターたち。
それを相手にするなど、正直逃げたいほどだ。
だがしかし、自分達の先頭に立つのは、竜王アカネである。
決然として、戦う構えを見せる彼女を置いて、逃げ出す。
賢い竜としては、それをやりたいところだ。もちろん実行すれば、それこそ凄惨なことになるだろうが。
(はあ……アカネ様、逃げるって言ってくれないんだろうな……)
賢いからこそ、豪胆さが恨めしい。
ある意味この場の誰よりもまともなドラゴンたちは、己たちの王に対して細やかながら恨みを抱いていた。
しかし、英雄の相手をしなくていい。それも事実である。
あの大百足を単独でどうにかする怪物と、戦わなくていいのは本当に救いだった。
それを思えば、まあマシだった。
少なくとも、アカネがいれば、アカネが何とかしてくれる。
その安心感が、彼らにはあった。
もちろん、アカネはそんなことなど考えていないのだが。
(クツロ……ご主人様をお願いね)
※
東に陣取っている悪魔たち。
彼らは悪魔らしくもなく武者震いをしており、やはり遊び心を置いている。
元より命など惜しまぬ悪魔ではあるが、命よりも大事な遊び心より、さらに狐太郎を大事に思っているのだから異常だ。
それを成したのが、あの狐太郎である。まったくもって、最強の悪魔使いであった。
(そしてそれに巻き込まれた僕……)
その最強の悪魔使いから、悪魔の運用を委託されている、斉天十二魔将三席ブゥ・ルゥ伯爵。
もとよりこの国の貴族なので、この国の危機には立たなければならない。
しかしまさか、千の悪魔を率いて、孤軍奮闘することになるとは思わなかった。
周囲には一人も人間がいない。いるのは、闘志を燃やす悪魔だけ。
「逃げるとか言わないわよね?」
「言いませんよ。それに……僕もまあ……やるだけやらないといけませんし」
退く道はない。それは彼も理解している。
狐太郎の側近中の側近である彼は、やはり覚悟を決めていた。
覚悟を決めなければ、逃げ出したくなるような男ではあるけども。
「……ササゲ様は、その、やっぱり心配ですか」
「ええ……相手は英雄だもの」
気を使われたササゲは、素直に心中を明かす。
人の愚かしさも、今は呪わしい。だがここで役目を放棄することは、悪魔である彼女には無理だった。
いや、狐太郎の部下である彼女には、無理だった。
(クツロ……もしもの時は、恨むわよ)
※
コンロン山の山頂では、現在猛吹雪がうなっていた。
山頂に雲の傘が、というレベルではない。すっかり山頂は暗雲に包まれ、その中を雪がふぶいている。
精霊使い達は、正直に言えば戦いにもならないと思っていた。
如何に大将軍たちと言えども、この極地では耐えきれないと思っていた。
もちろん英雄ならば山ごと吹き飛ばすことも可能だろうが、それを防げるほどに、今のコゴエは力を増している。
彼らが接近してきて、直接叩いてくる。
それだけが勝機だが、それは不可能なはずだった。
だがしかし、流星のように気配が接近してくる。
楽観していた精霊使い達は、やはり忌々しそうに顔をしかめていた。
やはり、やらなければならない。
できれば戦わずに済ませたかったが、それは無理だった。
であれば、最善を尽くすしかない。
大百足と戦った時よりも、さらに増大している自分たちの精霊。
それを制御しつつ、英雄との戦闘に備えていた。
もちろんコゴエも、いつでも戴冠できるように構えている。
だがその一方で、心は下界に向いていた。
「……やはり、ご心配ですか」
「もちろんだ。だが、問題ない。クツロに託した以上、私は自分の役目をこなすだけだ」
コチョウの気遣いに、彼女は淡々と、長々と答えた。
嫌な話だが、危険地帯へ狐太郎を置き去りにして戦うことは、討伐隊にとってたまにあることだった。
だからこそ、今回の作戦も妙な既視感と共に許可されたのである。
結局、いつもと変わらない。
いつもと同じように、命がけだった。
そんな主が、誇らしい。
そんな主を守る友たちが、頼もしい。
だがそれでも、彼女の心は凪いでいる。
寂しい、不安。それがどうしても、心から去らない。
(どうか、ご武運を)
そしてそんなことはお構いなしに、敵の気配が急接近してくる。
彼女の戦いもまた、もうすぐであった。
※
開戦を宣言した老将チタセー。
彼を見て、キンカクたちやダッキは、否が応でもギュウマを思い出していた。
無論ギュウマを討った憎い敵であり、ギュウマよりもさらに歳を重ねている。
驚嘆すべきは、それでもなお現役だということ。
あのギュウマ率いる十二魔将と戦い、さらにあのアッカとさえ戦って、なお生き残った大将軍。
大将軍として戦ってきて、まだ死んでいない。その事実に、歴戦の雄どころではない脅威を感じる。
対して、亜人たちは。
亜人の勇者たちは、やはり初めて英雄を見た。
おとぎ話で語られる、伝説神話の怪物怪異。
それらを葬り去る、亜人の勇者をはるかに超える最強の戦士。
それが、目の前にいる。全身が震える一方で、心はどこか弾んでいた。
これが、最強の戦士。
下劣さも、弱さも、言い訳もない至上の益荒男。
その堂々たる振る舞いには、敬意を感じずにいられない。
ただ老いただけ、ただ長生きしただけでは、到底到達できない境地である。
そして、その前に立つのは、己たちの誇りであった。
「ご主人様、お下がりください」
女の身でありながら、男にも負けぬ巨躯。
見ほれるような筋肉を備え、幾多の戦いを越えた傷を刻まれた皮膚。
角をとがらせた、太い女。
鬼の王が、一体で英雄に向かう。
「ああ、分かってる……クツロ」
「はい」
「……頼む」
「……ええ」
クツロは悟っていた。
目の前の老いぼれが、今まで戦ったどんな怪物よりも強いのだと。
何時だったか、自分が辛うじて倒したガイセイよりも、さらに上の実力者だと。
「……ふふ」
鬼が笑う。
鬼が、笑うのだ。この状況で。
「我こそは亜人の王、鬼の王、魔王燕! 冠頂く四体の王、その一角なり! 征夷大将軍、四冠の狐太郎、その冠が一つなり!」
見得を切る。
金棒を向ける。
「御老人! 主命につき容赦はないぞ!」
この世界で一番強い生物へ、亜人風情が立ち向かう。
「ほざけ小娘、とっとと冠とやらを被るがいい」
「応、応、応! 人授王権、魔王戴冠! タイカン技、鬼王見参!」
巨大化する、異形に転じる。
より強く、より大きく、より太く。
怪物の王は、膨れ上がって英雄を見下ろしていた。
だがこれで勝てるわけもない。
相手は英雄、最強の戦士。
魔王になっただけで勝てるのなら、世話はない。
「鬼が笑うぞ、鬼が泣くぞ、鬼が叫ぶぞ、鬼が来るぞ!」
どこか楽し気でさえある、技の予兆。
力が溢れて、風となって嵐となる。
力、力、力。
「鬼が怒るぞ、鬼が怒ったぞ、鬼が怒ってしまったぞ! さあ逃げろ、逃げろ、逃げろ……鬼の怒りは止まらぬ!」
鬼の王のタイカン技。
「タイカン技、鬼面赫神!」
力が噴火した。
他に言い表しようもなく、魔王となったクツロが、その体が溶岩のようになっていた。
「見たか、鬼の王の威容!」
煙が、熱気が上がる。
それは亜人の勇者たちをして、恐れ多いという他ない威容。
先ほどまでよりも、段違いの迫力を見せる。
巨体はそのままに、しかし圧が増しに増している。
「さあ鬼の王の英雄退治……とくと御照覧あれ!」
百人でも持ち上がらぬような、巨大な金棒。
それを軽々と振り回して、鬼の王が前に進む。
この荒れ果てた土地で、その足跡が刻まれる。
永劫の先にまで残る恐竜の足跡のように、一歩一歩が大地に刻まれていく。
「それが全開か……思ったよりも小さいな、これでは小山さえ跨げぬわ」
最強の生物は、泰然としている。
見上げる怪物を、小さいと断じる。
「小娘……似合いの花を添えてやろう」
ぱちり、ばちり。
火花が散る。
まるで花火が炸裂するように、彼の掌で炸裂が起きている。
「ボムクリエイト、ジニア」
老雄、チタセー。爆発属性を操る大将軍である。
そのクリエイト技は、発動すると同時にクツロの巨体を覆った。
「ぬぅううううう!」
冬の入り口、真昼に、荒野に、花火が咲いた。
色鮮やかな火の粉の花弁が、クツロの全身を包んで離さない。
「……い、いつまで続くんだ!」
基本的に、爆発属性の攻撃は一瞬しか発動しない。
その一瞬でエナジーを消費しきるからこそ、瞬間的に高い力を発揮できる。
だが大将軍の放つそれは、灰さえ残さぬ勢いでクツロを覆い続けた。
その火花一つ一つに、途方もない熱が込められている。
その熱に耐えながら、亜人の勇者たちは慄く。
「このまま、消し飛ばす……!」
花火は、続く。
十秒か、二十秒か。
容赦なく、徹底して攻撃が続く。
そして、花火が動いた。
否、花火に包まれたままの大鬼が動いた。
「おお……」
亜人たちが、感嘆する。
骨まで砕き焼き尽くす爆発の中で、亜人の王は前に進む。
あくまでも泰然と、金棒を振り回しながら、一歩一歩前に進む。
「ぬう……!」
「シュゾク技、鬼の金棒」
爆発を受けながら、クツロは金棒を振るう。
それに対して、チタセーは受けを選んだ。
(鉄壁城金……いかばかりか!)
余裕があるうちに、あえて受ける。
タイカン技なる物には効果が期待できないと言っていたが、果たしてこれはどうなのか。
わからぬからこそ、全力で受けつつ確認する。
「ボムエフェクト、エキノプス!」
指向性を持たせた爆発。
それによって、爆風による風圧の盾を生み出す。
クツロの体が大きければ大きいほど、その風圧を受けて吹き飛ぶだろう。
「んんん!」
爆風は発生した、風圧はクツロに届いた。
何よりも、彼女を覆う爆発は持続している。
だが、彼女の金棒は、防御に徹しているチタセーを叩いた。
「!」
奇妙な感覚を覚えた。
力で負けているのに、威力が薄い。
押し込まれているのに、ダメージが少ない。
(ありがたい……感謝するぞ、スザク……!)
信じがたいことに、この鬼は確かに己の力を越えている。
老いてなお英雄である男を、この鬼は超えている。
だがそれでも、耐えられる。
このアイテムは、確かな助けになる。
「シュゾク技、鬼拳一逝」
そう思った刹那、全身に拳が襲い掛かった。
弾かれて、吹き飛んだ。
(……!)
何が起きたのか、彼にはわからなかった。
抗えぬ何かによって、押し飛ばされた。
ダメージは少ないが、まるで踏みとどまれていない。
手足が、宙をさまよう。
耳も目も、目まぐるしく変わる光景をとらえきれていない。
「んんんん!」
爆発に包まれたままのクツロは、きりもみ回転しながら吹き飛ぶチタセーを、跳躍して掴んだ。
チタセーが掴まれて圧迫されることは当然だが、それよりも爆発に巻き込まれることを意味している。
「お、おぐぅああああ!」
自分の爆発によって、自分がダメージを受けている。
若いころの失敗が、脳裏に浮かぶ。それほどに懐かしい痛みが、体を襲っていた。
(ま、不味い!)
当然だが、チタセーの爆発は、意図しなければ、自分さえ攻撃する。
爆発属性の危険性を知るがゆえに、彼はとっさに解除する。
「ふん!」
火花に包まれていたクツロが、再びその姿をさらす。
だが何の変化もなく、掴んでいた男を、そのまま地面へたたきつける。
「ボムエフェクト、ペンツィア!」
だがそれは、百戦錬磨の英雄に、次の行動を教えるものだった。
皮肉ではあるが、攻撃の意図が、そのまま彼に自分の状況を教えたのである。
一瞬前に自分が吹き飛ばぬよう爆発を抑えながら、しかし即座に自分ごと爆発する。
それでもクツロは拳を振り抜くが、しかし空振りする。
爆発によってクツロは吹き飛ばず、チタセーも吹き飛ばぬ。だが地面が吹き飛んでいた。
たたきつけるべき地面が、喪失していたのである。
「ふん!」
空を切った、その隙にチタセーは脱する。
そして身をひるがえしながら、なんとか着地した。
「この老いぼれ一人殺せぬとはな……鬼の王とやら、ずいぶんと温い」
「……ふぅん、なるほどなるほど、何か持っているわね」
両者は、理解した。お互いの状況を、把握した。
そして、その戦いを見ている者たちは、見ているだけでも息がつまりそうだった。
「一寸法師の針、頼光の星兜、桃太郎の黍団子……人間らしいわねえ」
「卑怯だとののしるか?」
「こっちも王冠を使っているしね……ふふ、私は鬼らしく戦うまでよ」
両者、己の役割を脳裏で再確認した。
そして、相手の役目も確かめた。
ならばどうして戦うのか。
結果が見えているのなら、そこに至るまでもあるまいに。
もういいと投げ出さないのはなぜなのか。
(アカネ、ササゲ、コゴエ……安心して、私はやり切ってみせる!)
(ギョクリン、ウンリュウ……見ていろ、この老いぼれの花道を!)
彼らの命は、彼らのものではないからだ。
彼ら自身が、それを捧げたからだ。
(ご主人様……貴方を守る!)
(陛下……この老いぼれに最後の力を!)
ささげた相手が、泣いてくれる。
そのために、彼らは戦うのだ。




