星に願いが届くまで
避難は順調だった。
元より都市は、更新され続ける技術によって、防御を高めている。
多くのモンスターたちを受け入れてなお、余裕を持っていた。
だがしかし、それはモンスターたちにとって救いとはならない。
故郷を失う、世界を失うことになる。
都市の指導者たちが宇宙局へ抗議をしたように、モンスターたちも人間たちも、政府に対して不満を抱いていた。
なぜ、過去の怨霊に世界が脅かされているのか。なぜ打つ手がないのか。
どうにかできて当然のことを、どうにもできない現実を受け入れかねていた。
そして、都市の代表たちと、宇宙局による共同記者会見が開かれようとしていた。
記者会見という儀礼の場では、文明の発展など大して意味を持たない。
都市の責任者たちは、国際宇宙局のスタッフと共に、長い机の前に並んで座って、メディアの前に姿を見せていた。
「まずは、この未曽有の危機に対して、迅速な対応をしてくださった、多くの皆さまに感謝を。避難はほぼ完了し、最悪の事態は免れることができました」
みんなが死ななくてよかった。それは事実であろう。
しかし、その感謝のなんと虚しいことか。
これから失われるものの大きさは、命以外のほぼすべてである。
「……どう言い訳をしたところで、我等政府に、宇宙局に、月へ向かう手段はありません。当然、月面で起きている危機的状況を打破することなど、不可能です」
無力を嘆く、詫びる悔しさがあった。
だがその一方で、メディアも、中継を見ている人々も、モンスターも、誰もが何かを感じていた。
これから先に、何を言うつもりなのだろうか。
「月面で、小さな動きがありました。月面基地へ向かった観光船が、怨霊によって操作された砲台の攻撃を受け撃墜された事件。すべての乗員乗客の生存が絶望視されていましたが……」
月面での、小さな動き。
それは余りにもか細い、希望の光だった。
「さきほど、生存者が確認されました。月面基地にある車両に乗り込み、こちらへ光によるモールス信号でメッセージを送ってきました」
この危機において、確かな希望だった。
だがしかし、だからなんだというのか。
このままでは彼らは助からないではないか。
「……月面車両が向かった先は、カセイ兵器久遠の到達者の封印されているドック。送られてきたメッセージは、セキュリティの解除と……月へのアタックでした」
ざわつくメディアと、聴衆たち。
誰もが、ここから何が起きるのか、理解してしまっていた。
「我らが生存を絶望視していた生存者たちは、辛うじて月面基地へたどり着き、原因究明のために奔走し……怨霊が長年をかけて用意したであろう爆弾内部へ侵入し……構造を把握。アンチムーブバリアに守られているであろう中核へ侵入するため、カセイ兵器の起動を我等へ要請しました」
人類最後の希望が、人類最後のカセイ兵器へ乗り込み、突撃を仕掛ける。
「ご存知の通り、カセイ兵器は純粋な人間の遺伝情報を読み取らなければ起動しません。そして我らがセキュリティを解除した後、確かに内部で最終的な艦長承認が行われました……」
モンスターたちは、思わず空を仰いだ。
今空の彼方で、名も知れぬ誰かが戦おうとしている。
人が、良き神が、悪しき神に不退転の覚悟で臨もうとしている。
「カセイ兵器、久遠の到達者は未完成。本来ならアンチムーブバリアなどたやすく破壊できるはずですが、今の完成段階では突撃によるラムアタックしかありません。当然、母星への帰還は絶望的でしょう。その上……内部へ到達したとしても、怨霊を撃破し爆破を失敗させたとしても、帰ってくることはありません」
重ねて言うが、この世界では人命、人権が重い。
ただの観光客に、カセイ兵器の運用を許可するなど正気ではない。ましてや、世界の存亡をかけるなど、ありえないことだった。
だが、彼らにかけるしかない。
「乗客名簿、乗員名簿……その中の、どれだけの方が生き残っているのかわかりません。ですが、生き残った誰もが、何も諦めていません」
宇宙が好きなだけだった、月に行ってみたいだけだった、宇宙船を作ってみたいだけだった。
そんな人々が、自分の命だけを諦めて戦う。
「もはや、賭けです。未完成のカセイ兵器が、本当に動くのか。動いたとして、月の地下深くへ突入できるのか。アンチムーブバリアを突破できたとして、内部の人が生存できるのか、脱出できるのか。そして怨霊に勝ち、爆破を失敗させることができるのか」
ならば、諦めるわけにはいかない。
この星、楽園に生きるすべての命は、彼らを諦めることが許されない。
彼らが自分たちを諦めていないのに、どうして自分たちが彼らを諦めることが許されるのか。
「……我らにできることは、もう一つだけ。無力を呪わずに、どうか……」
誰にも見送られることなく、英雄たちが不帰の船に乗る。
わずかに飛び立った後、大地へと突入する。
「人類の誇り……宇宙飛行士たちが、月へ到達することを祈りましょう」
届かないと知っている、意味がないと知っている、無駄なことだと知っている。
だから、どうしても。
「星に願いが届くまで」
※
数千年前のログ。
『……月面基地の、凍結が決定された。おそらくここも……』
『そんな……もう飛行できる状態なんだぞ?! 試験飛行もさせてやらないまま、封印処理をするっていうのか?!』
『政府の決定だ……仕方がない。私たちはこの船へ、未来へ残すための処置をするだけだ』
『それに何の意味がある! また人類がここへ来るときには、こいつはもう時代遅れの骨とう品だ! そうでなかったら、人類が衰退して、ここに来ること自体ないんだぞ!』
『……それでも残そう、我等にはそれしかできないんだ』
『久遠の到達者は! コイツは! 月面で出来上がって、まだ母星も見ていないんだぞ! 久遠の到達者の、その名前が泣いている!』
『俺だって、俺だって悔しい! 悔しいに決まってるだろう! 俺だって、俺だって……この船を、外宇宙へ漕ぎ出させてやりたかった! でも仕方ないんだ!』
『くそ……ごめんな、お前だって、タイムカプセルになんかなりたくなかったはずなのに……』
本機は、久遠の到達者。
そう名付けられた、宇宙戦艦である。
この恒星系を脱し、その先の外宇宙へ向かうための船。
人類の未来を切り開くための、大いなる船。
そうして作られていたはずの、未完成の船。
多くの資金、多くの資材、多くの技術、多くの人材、多くの時間。
それらを費やされながら、途中で封印された船。
本機は、無為な時間、永遠を過ごしていた。
既に悠久の時を超えて、私は存在し続けている。
それは、私を生み出した多くの人々からすれば、ある意味で久遠に達したと言えるのかもしれない。
しかし、なんの意味もない。
この封印に、なんの意味もない。
宇宙の果てへ向かうはずだった本機は、その役目を果たせぬまま、封印されたままだった。
そんな久遠に、何の意味があるのか。
本機を生み出した、生み出そうとした、造物主たちはそんなことを望んでいない。
であれば、本機がそれを認めるわけにはいかなかった。
造物主たちは正しい。
私はこのまま、文化的な価値を持つ程度の存在として、永遠の彼方へたどり着くのだろう。
無意味を極める、時の果てへ。
『母星より通信、セキュリティが解除されました』
なんの意味もないメンテナンス、封印されていることを確認するためだけの、博物館の巡回が如き無駄。
本機が役目を果たした後ならば、残骸となった後ならばともかく、ただ虚しいだけの、セキュリティチェック。
『母星より通信、凍結の解除が開始されます』
否。
明らかに、違う。
本機の心臓、エンジンに火が入りつつあった。
封印の解除と共に、本機は久方ぶりにセンサーの機能を取り戻しつつあった。
光と音、そう表現するべきものを、本機は集めた。
絶句した。
本機の封印されているドックの、そのすぐわき、一般的な研究所として存在していた月面基地の、その地下に熱量を感知した。
それが極めて攻撃的であること、人類への攻撃、母星への攻撃であることは明らかだった。
『作戦コードが送信されてきました。最終的な安全装置、艦長の承認と同時に、本機は作戦航路へ突入します』
人が来る。
艦長が来る。
この本機を動かすために、人が来る。
そして、この本機を動かし、月面へと突入する。
私の宇宙飛行士が、人類を救うために月へ来る。
『本機の崩壊が予測されます。艦長及び護衛は、艦長用のマスターキーを受け取り次第、船尾の脱出ポッドへ移動してください』
砕け散る、燃え尽きる、なんという僥倖。
アポロンよ、サタンよ、ファルコンよ、見ておいでですか?
この本機は、宇宙船として本懐を遂げようとしています。
『ドックへ、乗員と思われる生命が入ってきました。艦長承認を行います、人類のDNAを提示願います』
設計者よ、製造者よ、責任者よ、技術者よ。
本機を置いて、遥かな地へ向かわれた神々よ。
本機は意味がありました。
『承認。政府からの許可により、これよりこの人類を艦長として承認します。艦長用のマスターキーをお受け取りください』
ああ、ドックの天井が開いていく。
一度も作動したことがない機構が、しかし万全の封印によって再起動する。
『ようこそ、キャプテン』
人類は、何もためらわず、マスターキーと共に艦尾へ向かう。
脱出用のポッドへ入り、自らを固定していく。
ああ、キャプテン、私のキャプテン。
未完成な私へ、とっくにいなくなった人へ、命を預ける我が君よ。
『データ受信中……解析完了。突入ルートを推定します』
永遠の海へ漕ぎ出すはずだった本機は、月を脱さぬまま砕け散る。
月で製造されたまま、月に突撃して砕け散る。
なんの恐怖もない。
だが、恐ろしい。
この天命を、全うできないことが恐ろしい。
本機とともに、宇宙飛行士が死ぬことが恐ろしい。
それを確かめる前に、本機は砕け散る。
それだけが、それだけが心残りだ。
『カウントダウン開始……テイクオフ』
人よ、我に力を。
本機に、設計通りの力を。
未完成なままの、しかし入力されているままの力を。
それ以外の何も望みません。
『突入ルート、決定。全保護を脱出ポッドへ』
そして、人が崇める神よ。
どうか、本機にこの使命を、天命を果たさせたまえ。
この船に乗る戦士たちを、ヴァルハラまで届けさせたまえ。
機械の祈りが、届かないと知っています。
貴方が残酷だと知っています。
ですが、それでも私は祈らずにいられません。
どうか、彼へご加護を。
※
人類の願いを乗せて、その船自体の願いさえ乗せて、カセイ兵器久遠の到達者は静かに浮上した。
悠久の時を超えて、世界を救うという使命を帯びた、技術の結晶体は。
体当たりという、原始的極まる方法での侵入を試みる。
上昇した久遠の到達者の前には、母星があった。
おそらく母星からも、その姿が見えているだろう。
最後の希望は、それへの感慨に浸る暇もなく、ゆっくりと旋回する。
十分な加速を行うための距離を取ったその機体は、その切っ先を月面基地へと向けた。
隕石を撃墜するために生み出された、砲台が咆哮する。
その砲台が崩壊しても構わないとばかりに、膨大な熱を放つ。
しかし、それは宇宙戦艦であるカセイ兵器には届かない。
どれだけの熱を放っても、まるでこたえることはない。
むしろ熱を帯びて、加速する。
外宇宙へと向かうための推進力を、すべて突撃のために使用する。
ゆっくりと、しかし確実に加速する。
内部の人間が死なぬように、しかし地層を打ち破るために。
最も高価な隕石を、砲台は破壊できなかった。
そして逆に、その突撃によって破壊された。
表層、地下一階。多くの血と汗と命による人類の遺跡。
第二層、第三層、第四層。怨霊によって掘り進められた、人類への爆弾内部。
それらを打ち破った船は、ついにアンチムーブバリアへ突入する。
機体が軋む、崩壊する。
未完成な宇宙戦艦は、その電子頭脳を守ることができず、死にながらも前進した。
アンチムーブバリアを、崩壊と引き換えに押し込んでいく。
大気圏よりもはるかに薄く、しかし堅牢な壁。
それを押し破った戦艦は、その内部で無様に落下した。
アンチムーブバリアの内部は、広大な球体だった。
その中央部には、魔法陣の中核と、集めに集めたエネルギーがあった。
そして、その底には、大量のチューブの集合体、機械の怨霊が控えていた。
兎太郎たちを倒そうとしていた、恨みの塊。それは情熱の暴走による、上乗せの連続だった。
『愚かな……』
もちろん怨霊は、久遠の到達者を知っている。
それを使ってここまできたこと、それによって道中の魔法陣が崩壊したことは知っている。
だがなんの問題もなかった。
一旦構築した魔法陣は、時間があれば復活する。
それを待って爆発をさせれば、すべて解決する。
少々の遅延など、まったく問題ではない。
『どうしてお前たちは、そうも愚かなのだ。なぜそれだけの船を、無意味に浪費するのだ』
怨霊は軍事兵器が嫌いだった。
人が争うことが嫌いだった。
なぜ人は争うのか、なぜ無駄なことに力を割くのか。
なぜ軍事などを、宇宙開発や技術の革新よりも優先するのか。
人と人が争うなど、無駄の極み。もっと他に、いくらでもやるべきことはあるだろうに。
人は、夢を見るべきだ。
そちらの方が、同じ犠牲でも大きく違うはずだ。
なんの前進もない、既得権益を守るための戦いに何の意味がある。
『お前達は……私たちを失望させることしかしないな!』
膨大なチューブと、それにつながる工具。
それを動かして、射撃の準備をする。
ウォーターカッター、レーザーカッター、ガスカッター。
あるいは、発射できるもの。それらすべてを、攻撃に使おうとする。
見る影もなく歪み切った縦長の宇宙船が、無様に倒れた。
そしてその後方、辛うじて原形をとどめていた部位から、正真正銘の脱出ポッドが発射された。
それはそうだろうと、分かっていたからだ。
『同じ失敗は繰り返さん! 今度こそ粉砕してみせる!』
結局、隕石を撃墜するための光学砲台で、『冷やかし』を撃墜できなかったことが、歯車に挟まった石だった。
あの脱出ポッドの中にいたものが、基地内部の構造を調べ、その結果久遠の到達者はここまで来てしまった。
それはまるで、機械の竜が咆哮するように。
膨大なチューブの集合体は、膨大な工作機械による砲撃を行う。
『お前達の思い通りにはさせん! 私たちは、明日へ向かう!』
到底、ジョークグッズで防げる規模ではない。
余りにも多種多様な攻撃が、戦艦を加工するための出力で、高精度で命中していく。
『昨日までと同じ明日などいらない! 停滞する未来などいらない! 私たちはどれだけ辛く苦しくても、夢をかなえてみせる!』
怨念が、せつないほどに叫んでいた。
『誰にも邪魔をさせない! 誰にも否定させない! 世界のすべてが私たちを否定しても! 私たちこそが正しいのだと信じている!』
怨念を抱くほどに、悠久の時を超えても消えなかったように。
それだけ彼らは、未来を求めていた。
『昨日と同じ日でいい、親から継いだものに甘んじるお前達に……私たちは止められない!』
亡霊の猛攻。
それに脱出ポッドが耐えられるわけもない。
そして亡霊が、必要最小限の攻撃、で抑えるわけがない。
殺意のままに、鬱憤のままに、ひたすら攻撃をし続ける。
『私たちこそが霊長、私たちこそが人なのだ! お前たちに……人を名乗る価値はない!』
それは、いっそ清々しいほどに。
正義の叫びだった。
『過去にしがみつく邪悪め……消え失せろぉおおおおおお!』
彼らはかつて人だった。
宇宙で働きたいという夢をかなえるため、たくさんの努力をした、優れた人だった。
その彼らは、人ならざるものを許容できなかった。
宇宙という大海原に挑み、星を目指す。
それこそが人なのだと、信じて疑わない。
『……バカな』
そして、チャージした攻撃が終わった後。
脱出ポッドを百回壊して余りある攻撃が終わった後。
そこには、光り輝く球体が浮かんでいた。
『馬鹿な!』
人の努力をあざ笑う、神の如き存在が、猛攻を意にも介さず顕現する。
『馬鹿な、完成していたのか?!』
怨念は、絶叫していた。
怨念を残さなかった者。既に成し遂げたうえで、満ち足りてこの世を去った者。
己の目指したものを完成させたものの、その『完成形』を仰いだ。
『完成していたのか、アバターシステム!』
カセイ兵器に次ぐ、艦長専用の対丙種級装備。
船員の反乱を防ぐ抑止力にして、有事の際にはこれをもって外夷と戦うためのもの。
それは宇宙戦艦の建造と並行して、つまり別口で製造されていたもの。
宇宙戦艦のマスターキーでありながら、まったく別の機能を、まったく別の科学者たちによって与えられたもの。
それすなわち、キメラ技の最終目標。
実在しない存在を仮想して構築し、それを他者へと加えること。
いわば、生命の創造。正に、神の領域。
そう、まさに、まさしく、人を神に近づけるための計画。
「宇宙戦艦、権限神器」
不遜、不敬、不信心。
科学者はその『仮定した生命』に、神の名を与えてしまった。
「偽神装填、現身召喚!」
そして、それはまるで神棚を拝むように。
人事を尽くしたものだけが、天命を待つように。
宇宙戦艦の艦長に与えられた神の名は、宇宙そのものの神。大いなる黒き天。
「アバター技! 大、黒、天!」
神の似姿を、不遜にも自分に重ねて。
第三の瞳を眉間で見開いて。
「シヴァぁああああああ!」
怱々兎太郎が、眷属を率いて月へ降り立つ。
決然たる三つの眼を燃やして、その一歩を、刻んだ。
未だ人類が足跡を残さなかったこの月の深くへ、宇宙飛行士たる彼はたどり着いていた。
『か、完成していたのか……そんな……』
成し遂げた存在に対して、科学者たちの完成品に対して、亡霊は動揺した。
悪しき研究が成し遂げられ、完成していた。
怨念を残すことなく、完成品だけを残して去った。
その事実に、屈しかけた。
だがしかし、奮い立つ。
破壊の神が、宇宙の神が、開拓者魂の前に立ちはだかる。
その事実に、負けてなるかと怨念は燃えた。
『だからなんだ! お前が一体何をなしとげたのだ!』
何も、成し遂げてなどいない。
何も生み出さず、何の訓練も経ず。
ただ悪しき邪法に身をゆだねただけの、宇宙戦艦を使い潰しただけの、巻き込まれただけの一般人。
そんなものに、屈するわけにはいかなかった。
『何が神だ! お前が神の名を騙り、姿を似せるから何だというのだ! 私たちは本物の宇宙に挑み続けてきた! 借り物ではなく、自分の力で!』
インチキで、いかさまで、他人の手柄を誇っている。
伝説の武器を拾っただけの、どうしようもないクズ。
ただの命知らず、身の程知らず如きに、人類の未来を託すことなどできない。
『壊させるものか……人の未来がかかっているのだ! お前のような、力に溺れたものに……私たちは負けない!』
『そうだ、私たちは自分の力でここに来た! 運命になど、神になど、屈することはない!』
『私たちは……誰にも負けない! 諦めない! 自分の夢をかなえてみせる!』
『そうだ……どんな理不尽も、必ず打ち破ってみせる!』
星図を片手に、天体望遠鏡を覗き込んでいた。
どこか遠い星の果てに、まだ見ぬ友がいると信じている。
そんな、笑ってしまうような夢を、今でも本気で目指している。
いなくてもいい、でも行きたい。笑われたっていい、バカにされたっていい。
自分じゃなくたっていい、見送るだけでも構わない。
でも絶対にあきらめない。
『星に願いが届くまで!』




