過ちを認める勇気
翌朝、麒麟は始末をつけて帰っていった。
山賊たちや、サイクロプス。それらの死体を綺麗にして、焼き尽くした後で。
数人の村人に山賊の頭を担がせて、彼は大王の元へ戻っていった。
麒麟にしてみれば、自分の粗忽を確かめただけのこと。
少々手ごわい敵がいたが、あの森での日々に比べれば手ぬるい。
なぜなら、自分一人でどうとでもなってしまったのだから。
「では、一晩お世話になりました」
彼は誇示することもなく去る。
来たときと同じように、装備も何もかも外して去るのだ。
それは彼の素朴な人柄を、表しているようにも見える。
そんな彼が、本当に十二魔将なのか。
そうした疑問は、彼があっさりとあの巨体を焼き尽くしたことで、とっくに消えている。
斉天十二魔将おそるべし。
六席にすぎぬ彼であれほどならば、それをすべて従えている大王はどれほど偉大か。
もっと言えば。
大王の懐刀である十二魔将、その名を騙ることの恐ろしさもまた、彼らの心胆に刻まれたであろう。
よもや、十二魔将本人が来るとは。
その威厳は、全力で守られているのである。
「迷惑料だって、財布ごと置いていったが……こりゃああの山賊にとられたもんに、おつりがくる……ってほどでもねえのが悲しいな」
「高かったもんねえ、濃い酒」
「まあいいさ、ここまでしてもらって偉そうなことは言えねえよ」
周辺の村には、平穏が戻ってきた。
女性の尊厳は傷つけられ、多くの被害が生じたが、それはそれとして脅威は去ったのである。
これが原石麒麟の物語であるのなら、彼らは登場人物であると同時に、読者でもあった。
力なき者の願いがやんごとなきお方に届き、正義が現れ悪を断った。
心地よい読後感と共に、彼らは日常へと戻るのである。
しかし、そうではない者もいる。
英雄譚を誰よりも間近で見た、二人の少年だ。
「カリ……俺はやっぱりああなりてえ」
「うん、僕も」
颯爽と現れ、巨大な敵を討ち、驕ることなく去っていく。
それはなんとも……。
「あんな風に、恰好がいい人になりたい!」
後に彼らが麒麟の元へ訪れたとき、果たしてどのような再会になるのか。
それは、今後の彼ら次第である。
※
かくて、麒麟は主の元へ戻った。
お互いに良く知らぬ間ではあるが、あえて関わろうとは思わない。
アッカの弟子、西原のガイセイ。
彼を通してつながる二人は、やはり主従であった。
「道中聞いたのですが……先日、王都での戦いが激しすぎたため、他の部隊とはぐれたものがいくつかあったようなのです。そのうちの一つが、王都付近にいた山賊に襲われ……」
「封印の瓶が奪われた、と。厄介な……」
原石麒麟は封印の瓶を自分で壊してしまったが、自力でどうにかすることができた。
だがそれは麒麟だからである。彼以外では、収拾が付けられなかった可能性が高い。
その彼でも、一人では一体が限度だった。もしも二体いたのなら、絶対に勝てなかっただろう。
ましてや他のものでは、どうにもできなかった可能性が高い。
さりとて大将軍を動かせるわけもなく……。
「麒麟よ」
「はっ」
「まずは、始末をつけてくれたことに感謝している。少々の不手際には目をつむろう、被害がないのなら咎めることではない」
割れたばかりに見える封印の瓶に加えて、恐怖で憔悴しきってなおまともに筋の通ったことを言う山賊の男。
それは麒麟の言葉が、真実であると裏付けるには十分だった。
「たとえキンカクたち三人を向かわせたとて、どうにかできたかどうか……」
「恐れ多いことです」
「君がいてくれてよかった。さて、しかし他にもいないとは限らないな」
Bランク上位モンスター。
それは一軍に匹敵する怪物である。
ホワイトやガイセイならば何のこともないだろうが、彼らをうかつに動かすことは難しい。
一体どうすればいいのか。
「狐太郎君がいてくれてよかった」
「本当にそうですね」
いてよかった、竜王アカネ。
六体の竜を飼いならす現状では、Bランク上位が現れることもさほど問題ではない。
先日三方へ向かわせたように、信頼のおけるキンカクたちを随行させて、ドラゴンをけしかけるだけでいいのだ。
ドラゴンたちだって、格下相手なら逃げないだろう。むしろ、彼らにとっても餌である。
「それで、山賊どもはどうだった。十二魔将を名乗ったのだ、旗ぐらいは用意していたのかね?」
「いいえ。体形だけはガイセイ隊長と同じぐらいの頭がいただけで、後は僕の身代わりということになっている亜人の少年がいただけです。村人も騙せていませんでした」
Bランク上位モンスターが、どこに現れてもおかしくない状況。
それが『それで』で済まされるのだから、四冠の狐太郎様様である。
本人がどれだけ弱くとも、全役職を兼任させるだけの価値はあった。
以前にホワイトやアッカが話していたように、手分けができる、というのは戦場が大きければ大きいほど意味を持つ。
カセイを離れて国家全体へ活躍の場を移した狐太郎は、まさに三面六臂の大活躍である。
もちろん、本人はちっとも喜んでいない。
「ただ……山賊らしく振舞っていたので、抜山隊によく似ていましたね」
「ははは、そうか……笑い事ではないが、まあそうだろうな」
Bランクハンター、抜山隊。
討伐隊のどの隊よりもハンターらしい一方で、Bランクらしからぬところのある隊である。
野卑で粗暴で、金があったらあるだけ使う。絵に描いたような、犯罪者と見分けのつかない低ランクハンター。
そんな振る舞いをしているのが、抜山隊だった。
とはいえ、その実力に嘘はない。
なにせあの森を主戦場としていたのである、弱かったら生きていられるわけがない。
「しかし……そんな抜山隊に、君たちはよくなじめているね。正直、気風があっていることが不思議だ」
「……僕は、そんな大したものじゃないんですよ」
傍から見れば、麒麟たち三人は、さぞ善良に見えるだろう。
だが実際には、振る舞いだけが上品で、教養はあっても愚かだった。
はっきり言って、抜山隊の隊員と大差がない。
「僕は……僕たちは……駄目な奴でした。もっと早くガイセイ隊長に会っていれば、と思わないでもありません」
「そうか……」
この時大王は、思っていた。
(ガイセイを見習わないほうがいいと思うのだが)
もちろん口には出していないが、それでも結構真面目に案じていた。
大王は、それこそアッカの後ろについて行っていた頃から、ガイセイのことを知っている。
つまりガイセイはアッカの真似をしているのだと知っているのだが、結果的にあんまりよろしくない大人になっていた。
相性というのはあるのだろうが、もっと別の人を尊敬するべきだと思う。
「あまり踏み込む気はないが……君は、自分の過ちを認められる人間のようだ。それは、とても大事なことだよ」
「……僕も、そう思います」
二人は自分の失態を認める重要性を認め合っていた。
そして……。
その二人のいる部屋に、急報を持ち込むものがいた。
「大変です、大王陛下! チョーアンの憲兵隊に、抜山隊が逮捕されました!」
「なんだとぉ?!」
Bランクハンターとは、つまり身分の高い人間から保証をされている者である。
Bランクハンターが罪を犯せば、それを保証することが貴人に求められるのだ。
よって、抜山隊が罪を犯せば、大王の顔に泥を塗ることになる。
普通ならば、ありえないことだ。だが……。
(やりそうだ!)
(ついにやってしまったか!)
二人とも、抜山隊を信じて疑わなかった。
※
まず前提として、現在チョーアンは揺れている。
王都が落とされたこと、カセイが崩壊したこと、周辺から避難民が集まってきていること。
それで完全に普段通り、と行くわけがない。
もちろん、ジューガーの配慮によって、街の中へ人が入ってくることはない。
もともと暮らしていた人々を優先しており、人口が飽和することはなく、仕事が失われることもなかった。
少々の不便がないわけでもないが、配慮されていると実感できていた。
なによりも、大都市に暮らしている人々は、カセイやカンヨーを知っている。
どこのどんなところなの? と思っていない。
行ったことがあり、それゆえに落ちたことの恐ろしさを知っている層が多い。
そしてそんなことを一切すっとばして、状況をよくわかっていない者たちも異常だと理解していた。
ただの事実として、ここまで避難民がきていることが、既に普通ではない。
欺瞞でもなんでもなく、とんでもないことになっている、とわかるのだ。
それでも混乱が起きないのは、日常が保たれているから。
壁の外と中で、明確に日常と非日常が切り分けられている。
壁の内側が安全であると信じたがっている、そんな現実を守ろうとしている。
壁の内側にいる限り、壁の内側が大丈夫である限り自分はああならない。
そう思い込もうとしている。
そして、それを脅かすものを許さない。
※
それは、ある酒場で連続して起きていたことだった。
今まで見たことがない客が、大量に現れて、毎日のんびり酒を飲み始めたのである。
もちろん普段ならば、どこかの田舎者が現れただけだ、と思うだろう。
だが今は封鎖状態である、普通に考えればよそ者がいきなり現れるなどありえない。
「いや~~……隊長もけっこう間抜けだよな。あんなもん、そりゃあ失敗するわ」
「あんだけ来れば、そりゃあ負けるわ。勝ち目ねえわ」
「あの人、結構世間知らずなのかもな。自分の価値がよくわかってねえもん」
「まあなあ……自分を信じた結果かもな」
「あの人、自分のことはわかっていても、相手のことはわかってなかったりするしな」
彼らは金払いもよかった。
身なりはお世辞にもよくないのに、ツケもなく値切りもなく普通に払っていく。
それが、周囲からすると怖かった。
こいつらはいったい何者なのか。
神経が過敏になっていた民は、彼を憲兵へと通報してしまったのである。
「はあ……あんなもん見たら、買う気にならねえや」
「当分はいいな。麒麟もよく付き合ったよ」
「負けるとわかったどころか、負けた後も続けてたしな」
「あいつは大したもんだよ……ん?」
「市民から通報があった。お前たちのことを改めさせてもらう」
二十人ほどの男たちに対して、百人以上の憲兵が投入されていた。
相手が犯罪者である可能性が濃かったため、相手の五倍を用意した結果である。
「では、身分証明書を見せてもらおうか」
「おうよ。お前らも見せてやりな」
「そうだな~……ちょっと待てよ~~」
「どこしまったっけ……隊長から出歩くならもっておけって言われたもんな」
抜山隊の隊員は、誰一人慌てることなく身分証明書を探し始めた。
彼らにしてみれば、身分証明書の提示を求められただけなので、普通に身分証明書を出そうとしているだけである。
しかし憲兵からすれば、その所作も怪しく見えた。武器を取り出すつもりではないか、と警戒をしている。
とはいえ『身分証明書を出せ』と言っておきながら『怪しい行動をしたな!』と言い出したらハメ技なので、そこは自重している。
いくら怪しいとは言っても、いきなり拘束はしない。憲兵たちは、規律の有る組織人だった。
「ほらよ」
「うむ……改めさせてもらう」
現在チョーアンは、厳戒態勢に近い。
市民であっても身分証明書の携帯を義務付けられており、持っていない場合は街の外に出される。
もちろん、元から街にすんでいる者ならば、一々憲兵から声をかけられることはないのだが……。
それはそれとして、義務は義務。持っていなければ、それを口実に追い出すことができた。それはそれで、問題解決であろう。
「……お前達、身元は言えるか」
「書いてあるだろうが、なんのための証明書だよ」
「確認のためだ」
抜山隊の隊員は、当然身分証明書を持っている。
全員がそれを提示したので、憲兵たちはそれを検めた。
どう見ても本物である。しかし、その内容がおかしかった。
「大王陛下直属のBランクハンターにして、斉天十二魔将六席原石麒麟の部下だ。そう書いてあるだろ」
身分証明書を読んでいない憲兵たちは、それを聞いて驚いた。
真昼間から酒を飲むBランクハンターなど、どう考えても不自然である。
ましてや十二魔将に昇格した者の配下であれば、こんな風体であるわけがない。
「……どこでこれを手に入れた!」
「はぁ? そんなもん、大王様からもらったに決まってるだろうが。まさか、それが本物に見えないってのか?」
「いいや、身分証明書はどれも本物だ」
「ならいいだろうが」
「どこで盗んだ」
「なんでそうなるんだよ!」
身分証明書を携帯することや、その提示を求められる理由はわかる。
だが身分証明書を提示したのに、それを盗品だと思われるのには全員が納得できなかった。
「怪しい奴らだ……全員が抜山隊の証明書を所持しているとは、明らかに組織の匂いを感じる」
「だったら抜山隊だろうが! なんのための身分証明書だよ!」
悲しいことに、身分証明書には写真がない。
写真があっても偽造を疑われただろうが、とにかく疑われていた。
多分狐太郎が『僕Aランクハンターです』という証明書を持っていても、結果は同じであろう。
「では、同行願おうか。身元の確認をさせてもらう」
「はぁあ?! ふざけんな!」
憲兵隊に対して、いよいよ抜山隊は怒っていた。
彼らは酒場で酒を飲んでいただけなのだ、憲兵隊に連れていかれる理由などない。
大騒ぎをしていたのならそれもある程度は仕方ないが、彼らは愚痴を言いながら飲んでいただけだ。
これでは、難癖をつけられているとしか思えない。
「ケンカ売ってるのか、てめえ!」
ここで、酔っぱらった抜山隊の一人が、憲兵隊の一人の胸倉をつかんだ。
それが、決定打だった。
「……公務執行妨害だ! 総員、逮捕!」
「は、はあああ?!」
抜山隊も、山賊めいた振る舞いはするが、山賊ではない。
憲兵隊と戦ったら不味い、という認識はあった。
しかし使命感に燃える憲兵隊は、全員で酒場へ突入する。
暴れようとするもの、逃げようとする者たちを、全員逮捕していく。
「い、いでえ! て、てめえこんなことして、タダで済むと思ってるのか?!」
「俺達は大王様のハンターで、十二魔将様の部下なんだぞ!」
「てめえらみたいな木っ端どもが、捕まえていい身分じゃねえんだ!」
「おい、聞いてるのか! お前たちの顔、憶えたからなあ!」
「ふん! 不逞な輩だな! お前たちに明日などない!」
「十二魔将様や大王様の名前を出せば、怯えるとでも思ったのか!」
「身分証明書の偽装や窃盗は重罪だ! ましてやこの状況下ではな!」
「お前達には背後関係を吐かせ! そのうえで重い罰が待つのだ!」
「チョーアンを……央土を! 我等憲兵隊を侮ったな!」
市民たちは、不安におびえている。
それを肌で感じているチョーアンの憲兵隊もまた、自分たちの負った使命の重さに震えていた。
だがしかし、市民に弱いところは見せられない。
この苦境だからこそ、治安を守らなければならないと強く信じていた。
「全員逮捕……口ほどにもない連中だ! この程度の分際で、よくも偉そうなことが言えたものだ!」
「てめえ……後悔するぞ、俺達を捕まえたことをな!」
「後悔をするのはお前たちの方だ! 我等の正義に、一片の曇りはない!」
縄で縛られて尚暴れようとする抜山隊。
彼らを拘束した憲兵たちは、誇らしく胸を張りながら留置所へ連行する。
些細な市民の声から、巨悪を発見する。
常日頃から市民と信頼関係を作っていたからだ、と彼らは感じていた。
「け、憲兵隊の人だ……恰好いい!」
「やった、アイツらを全員捕まえてくれたんだ!」
「怖かったわ~~……どうせろくなやつじゃないわよ!」
「私、憲兵隊の人とお付き合いをしたいわ~~!」
「やっぱり頼りになるわね~~……」
腐敗のない、潔白な正義。
それを掲げる憲兵たちは、それが市民に伝わっているのだと、改めて感じていた。
やはり正道を歩む者には、多くの祝福がある。
この国難だからこそ、己の役割をまっとうする。
彼らは、使命感に燃えていた。
※
さて、留置所にある牢屋に、抜山隊の隊員は押し込められていた。
武装などはなかったが、それでも一応身体検査をした後で、見張りを何人も付けて監視している。
「憲兵隊長殿! 酒場で目撃されていた不審者たちは、全員逮捕いたしました!」
「うむ、よくやってくれた」
「いいえ! 己の正義を信じ、憲兵隊の正義を信じ、市民の声を信じたまでです!」
その牢の前で、憲兵隊の責任者と、現場の責任者が話をしていた。
牢に押し込められている抜山隊からは憎悪の目で見られているが、彼らはまったく気にしていない。
「それで……彼らは斉天十二魔将様の部下を名乗り、その身分証明書を持っていたそうだが」
「はい! すべて本物でした!」
「一体どうやって手に入れたのか……」
憲兵隊の責任者から見ても、牢の中の彼らは犯罪者にしか見えなかった。
少なくとも、大王から信頼を得ているようにも見えない。
昼から酒を飲み、憲兵隊にあっさり捕まったところから見ても、まったく違うことは確実であろう。
ありえないとは言い切れないが、ほぼ間違いあるまい。責任者の首をかけてもいいだろう。
「……今、このチョーアンには大王陛下がいらっしゃる。その安全をお守りするためにも、小さな兆候を見逃してはならない。真実を明らかにするためには、時に大胆な行動も必要だ」
「はっ! 肝に銘じます!」
「私が責任を取る。今後も、励んでくれたまえ」
果たして、抜山隊の証明書を持つ彼らは何者なのか。
そして、本物の抜山隊は今どうなっているのか。
憲兵たちは、厳しい目で、逮捕した者たちをにらんでいた。
「憲兵隊長殿! 現在こちらに、公爵様と大王様、そして十二魔将の麒麟様がいらっしゃいます!」
「……なんと、御自ら?」
「はい、とても慌てておられました」
伝令の憲兵が来て直ぐ後に、大王と麒麟が現れた。
三人とも汗だくで、息をとても荒くしている。その表情は、とても焦っていた。
「総員、陛下に、敬礼!」
「それは結構だ! それよりも……おお!」
敬礼に対する返礼もせず、大王は慌てて牢の中を見た。
麒麟も慌てて、中の彼らの顔を確認する。
「そ奴らは先ほど逮捕した、大王陛下の側近を名乗る者たちであり、これから取り調べをするところであります!」
「ああそうか! やっぱりか!」
大王は、とても申し訳なさそうだった。
なぜ申し訳なさそうなのか、憲兵たちにはわからなかった。
「すまない……君たちには、なんとお詫びを言えばいいのか……」
(やはり、彼らは偽物か。本物の抜山隊が襲撃でもされて、犯人を捜していたのだろう……ん? お詫び? 礼ではなく?)
牢の中を確認した大王は、大王らしくもなく頭を下げた。
彼のすぐ後ろで、麒麟も頭を下げている。
「彼らは確かに、私の部下だ!」
「僕の部下でもあります!」
にやにや、と抜山隊の面々が笑った。
逆に、憲兵たちの顔が凍り付いた。
「彼らがいったいどんな悪さをしたのだ?! 責任は私にある、被害者がいるのなら、私からも謝罪をさせて欲しい!」
「ぼ、僕も監督不行き届きでした! 以前のことを繰り返すわけにはいきません……どうか、責任を取らせてください!」
憲兵たちの顔が、一気に青ざめていく。
「私の部下が、一体どんな罪を犯したのだ?!」
「僕の部下が、一体どんな理由で逮捕されたんです?!」
「そ~だぞ~、教えてやれよ~~!」
「俺達を捕まえた理由を、サッサと言えよ~~!」
抜山隊の隊員が、口笛さえ吹きながらはやし立てる。
それに対して、大王も麒麟も怒っていた。
なぜなら、抜山隊が悪いと信じていたから。
「ふざけるな貴様ら! 一体何をしでかしたら捕まるのだ!」
「そうです、逮捕されるなんてよっぽどですよ!」
憲兵の隊長が青ざめながら答えた。
「……誤認逮捕でした」
過ちを認めるとは、かくも辛いことであった。




