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 いろいろ置いておいて、この場の面々が納得したことがある。

 狐太郎を守るための四体がこんなにも強いのは、ひとえに狐太郎が弱すぎるからだと。


「……まさか死ぬなんてなぁ」


 ガイセイの素直な言葉に対して、誰もが思わず頷きそうになる。

 実際に心臓が止まっていた男へ、まさか死ぬとは思っていなかった、などとは言っていけない。


 一応とはいえ白眉隊も抜山隊も、狐太郎の護衛だったのだ。

 護衛対象が死んだのに、まさか死ぬとは、などと言ってはいけない。


「息を吹き返しました!」


 とはいえ、一応生き返ったので問題は解決した。

 これからの対応次第では、冗談だとか笑い話になるだろう。

 当事者の誰もが、現在これっぽっちも笑えていないのだが。


「よ、よかった……」


 リァンの必死の救護もあって、狐太郎は自立呼吸を取り戻している。

 それを見た四体も他の面々も、ひとまず安心であった。


「も、申し訳ない……配慮が欠けていたようだ……?」

「いえ、そんなことは、ない……のだろうか?」


 クツロと大公が謝りあうが、混乱し過ぎていまいち頭が回っていない。

 狐太郎の護衛が狐太郎を守るために全力を発揮したら、狐太郎がその圧力に負けて死んだのだ。

 配慮が欠けるとか、そういう問題ではないだろう。


「と、ともかく帰りましょう。前線基地で安静になさった方がよろしいかと」

「そ、そうだな……Aランクの証は立てたわけだし……うむ、急いで戻ろう!」


 Aランクハンターの認定試験には合格したが、狐太郎は死んでしまった。

 前後に著しい矛盾が生じない、正しい状況説明だというのは、中々狂っている話である。


「はあ……ご主人様に文字通りの心労をおかけするなんて……ごめんなさいね」


 クツロは狐太郎を軽々と、しかし大事そうに抱えた。


「まがまがしかったもんね、ササゲの魔王姿」

「魔王と同種だったな……同類なので当然だが」

「うるさいわね、二人とも……まあ私も想定外だったけども」


 他の三体も、不安そうに狐太郎を見ている。

 なにせ死ぬところというか、死んでいたのだ。不安なのは当たり前だろう。


「ササゲであれなら、私の魔王姿を見たらどう思ってしまうのかしら……今から憂鬱だわ」


 力なく気絶している狐太郎に対して、クツロも申し訳なさそうである。


 双方の共通認識に、温度差はあるのだが狂いはない。狐太郎が四体の魔王姿を見たのは、今回が初めてである。

 クリア特典であるタイカン技は、エンディングが終わった後で追加される。

 よって、四体の魔王姿を見て狐太郎が気絶しても、誰も不自然には思わないのだ。


 もちろん、誰も得をしない状況である。



 さて、前線基地へ帰還した一行は、狐太郎の復活を待っていた。

 大公も忙しい身ではあるが、試験の合格を告げるのは公務である。何よりも『君合格だからね、頑張ってね』と言い残して帰るのは不義理が過ぎる。

 とりあえず一日は待つことにして、前線基地に残ることにしていた。


 とはいえ、時間は有効活用するべきである。

 大公ジューガーは、前線基地の討伐隊に参加しているハンターの主要人物を集めて、ねぎらいの言葉をかけることにしていた。


「本来は君たち一人一人、一隊ずつ挨拶をして回るべきだった。だがそれでは十分な時間が取れるのかも怪しいのでね、申し訳ないが集まってもらうことにしたよ」


 一応は直接の雇用主に当たる大公は、当然ながら各隊の主要人物とは顔見知りである。

 少々緊張しているが、それでも特に支障なく話ができていた。


「先日はAランク5体……いや、6体の討伐をしてくれて感謝している。狐太郎君のモンスターが倒してくれたとは聞いているが、君たちの尽力がなければ討伐は不可能だっただろう」


 そして大公は狐太郎に対して感謝を述べたように、他の四隊へも等しく感謝を示していた。


「先ほど狐太郎君のモンスターの実力を見せてもらったが、Aランクに相応しいと判断させてもらったよ。新参者がいきなりAランクになれば不愉快だろうが、どうか許してほしい」


 儀礼の場ではないとはいえ、へりくだる大公など見れるものではない。

 おそらく大王が相手でも、ここまで下手に出ることはないだろう。


「その代わりとは言ってなんだが……今回の報酬には色を付けさせてもらったよ。金でごまかしているように思われるかもしれないが、受け取ってほしい。そのうえで、何か不満があれば……この場で言ってくれないだろうか」

「では! 失礼ながら! 一灯隊の隊長であるリゥイが発言させていただきます!」


 語気を強めて、不満そうな顔をして、リゥイは誰よりも先に発言をした。


「大公様! 私たちの支援している孤児院の周辺に、兵士の詰め所を複数配置してくださいましたね! 先日帰った時にそれを確認できました! どうもありがとうございます、これで孤児院の周りの治安もよくなるでしょう!」


 おそらくは、他に言いたいことが山のようにあるのだろう。

 だがしかし、第一声は感謝だった。


「私たちは中々帰れないので、こうしていただけてありがたいです!」

「気にすることではないさ、私にできる最大限の努力をさせてもらっただけだ」


 リゥイの心中は明らかだったが、それでも大公には少しだけ嬉しい言葉である。

 配慮が伝わる、というのはいいものだった。


「君たちは孤児院を守るためにここで働いているのだ。孤児院が不逞の輩に襲撃されて被害が出れば、君たちは働く意義を見失ってしまう。そうならないためには、必要なことだ」


 一灯隊は精力的に討伐をしており、そのため多くの報酬を得ている。

 これは一般的なハンターとは比べ物にならない額であり、よってその支援を受けている孤児院の財政は極めて潤っている。

 孤児たちはそこいらの貧民よりもよほどいい暮らしをしており、衣食住のすべてが十分に満たされているのだ。


 つまり、周囲から『あの孤児院には金がある』と思われているということである。

 それがどれだけ危険なのか、言うまでもないだろう。

 世の中には、他人を見下すことでささやかな幸福を得るものがいる。そして見下している相手が自分よりもいい暮らしをしているだけで、不当だと腹を立てることがある。

 見下していたはずの孤児たちが、自分達よりもいい暮らしをしている、というだけで『義憤』にかられるのは、十分にあり得ることだ。


「ただ……これが最大限の努力だということは忘れないで欲しい。これ以上は、期待されても無理だ」

「いえ、これで十分です! どうもありがとうございます!」


 相変わらず不満そうな顔をしているリゥイだが、それでも話題は打ち切った。

 隣に控えているグァンとヂャンも、同じように凄絶な顔をしたまま黙っている。


「ジョー君。欲を言えばだが……私は君にAランクになってほしかった」

「それは……過大な評価です。私にそれだけの力はありません」

「そうだな。君にはそれができなかった、それが残念だ」


 聴きようによっては、とてもひどい侮辱である。

 しかしそれを聞いても、この場の誰もが侮辱だとは思っていなかった。


「君の家がつぶれたことには、何の異論もない。君の兄は、それだけのことをしでかしたのだからね。だがこれだけ頑張っている君が、貴族に戻れないのも酷い話だ」

「いえ……そんなことは」

「甲斐のない努力を強いることほど、指導者の無力を示すものはない。君に対して報いがなければ、君だけではなく君の部下や、周囲の討伐隊の士気にも関わることだ」


 白眉隊のジョー・ホースは、とてもまじめに仕事をしている。

 それは周囲にいる面々が酷いということもあって、とても目立つことだった。

 同時に、多くの誘惑や不満を抱えているということである。


「これは、君以外の討伐隊に文句がなければなのだが、今後も励んでくれるのならばホース家を復活させてもいいと思っている。もちろん爵位は下げさせてもらうがね」

「よ、よろしいのですか?! 私がAランクならともかく、Bランクでしかないのに」

「良くはない。基本則に反する前例は、極力避けるべきだ。だが……このシュバルツバルトで長年討伐隊に参加していれば、貴族に戻れる……という例が今後続くとは考えにくいがね」


 ジョーが気にしているように、貴族でなくなった家が貴族に戻るのは、平民が貴族になり上がるよりも難しい。この国において、貴族でなくなる、という罰は相当に重いからだ。

 それだけ重い罪が許されるというのは、相当稀有なことである。本来なら、あってはならないことだと言っていい。


 その中でこのシュバルツバルトでAランクになる、というのは数少ない正当な方法の一つだ。

 しかしそれは、先天的な資質に由来することが大きく、ジョーでは到底不可能だろう。


 そのうえで、Bランクのまま貴族になれる、というのは相当無茶である。

 ではあるが、大公になら可能であるし、今後も頻発するとは考えにくい例だった。

 それだけ、このシュバルツバルトは過酷なのである。


「それにだ……欲を言えば、ホース家にはこの地を守る役割を担って欲しい」

「……それは」

「そうだ、途方もなく過酷だろう。その上、君の家は周囲から下に見られるだろう」

「……それが我が家の罪を償うことになるのであれば、お受けさせていただきます。もちろん、周囲の者が認めてくれるのなら、ですが」


 ジョーは他の隊員を見る。

 同等のハンターでありながら、優遇される白眉隊をどう思うか。


「一灯隊は賛成です」

「はい、その通り!」

「流石大公様だ、いいこと言ってくれるぜ!」


 うんうん、と一灯隊の三人は全力で頷いていた。


「正直に言わせていただければ、ジョー様こそAランクに相応しいといつも思っていました」


 率先して話し出すのは、副隊長のグァンである。


「もちろん、実力が欠けていることは承知です。しかし、アッカ様がいたときも、いなくなった後も、この前線基地を仕切っていたのはジョー様でした。それに……新参者が全員を抜かしてAランクになるのは、正直納得できませんでした」


 自分たちがAランクのハンターになりたいとか、貴族になりたいとは思っていない。

 しかしそれはそれとして、どう見ても貴族にふさわしくない人間が、するりとAランクになったら不愉快に思ってしまうだろう。

 もっとふさわしい人物がいるのなら、なおのことである。


「ジョー様の努力が報われたのなら、こんないい話はありません」

「ま、役場の連中なんぞ見殺しにしちまえよ、とはいつも思ってるけどな」


 軽口をヂャンが叩いているが、それぐらい彼らの不満も解けていた。


「私もそう思っている」


 なお、大公もかなりぶっちゃけていた。


「た、大公様……?」

「今回で役場の人間が一人も死ななかったと聞いて、とても残念に思っているよ」


 身分に貴賤の差が著しいのだが、大公と一灯隊の意見は完全に一致しているらしい。


「もうこの際全員森に突っ込ませてもいいと思っているのだがね……流石にそれは、まあ法改正が面倒そうだ。愚痴だと思って、流してくれたまえ」


 比喩誇張抜きで、この世界で役場の職員を守りたいと思っているのはジョーだけらしい。

 彼らに生きる場所はないようである。


「ともあれだ、反対意見はないようだし……正式に手続きを始めさせてもらう」


 狙った通りの結果になって、大公は安心していた。

 狐太郎に十分な実力があることはわかっていたが、実力主義を徹底し過ぎて他の者のやる気をそいでは意味がない。

 大公は狐太郎のモンスターが戦うところを見て、確信したことがある。

 彼女たちは十分強いが、過分なほど強いわけではない。


 彼女たち四体では、アッカ一人に及ばない。

 前回の襲撃の時もそうだったらしいが、Aランクが複数来たときには全ハンターに総力を結集してもらわなければならないのだ。


「ジョー君。私からも伝えておくが、君も部下たちや親族に言っておくといい」

「ありがとうございます」

「それはそれとして……ガイセイ君」

「ん? ツケのことか?」

「いや、そうではなく……正直意外に思っていたのだが、君は狐太郎君のことが嫌いではないのかね?」


 大公はやや不思議がっていた。

 ガイセイの人となりは知っているつもりだったが、狐太郎を好きになるとは思ってもいなかったのである。

 そしてそれは、同僚たちにとっても同じことのようだった。


「ん? 結構好きだぜ? 悪いかよ」

「いや、悪くはないが……良ければ理由を教えてもらえないか?」

「なんでだよ」


 ガイセイが狐太郎に腹を立てて対立するというのは、想定するうえで最悪の事態である。

 なにせガイセイはAランクに達しうる実力者であり、最悪の場合狐太郎のモンスターを殺してしまいかねない。

 そうなれば、両方を失うということもあり得たのだ。


「そもそもよ、嫌いになるような奴か? なあ、ヂャン」

「なんで俺に聞くんだ!」

「いや、お前ほら……わざわざ森の中でケチつけたりしたらしいじゃねえか。ぷふふ、恥ずかしい奴」

「うるせえ!」


 だがその懸念自体が、ガイセイには意外だったようである。


「大公様、俺はアンタのこと好きだぜ? なにせ俺たちにへりくだってるからな」

「……へりくだっているからかね?」

「そうさ、アンタは俺たちにへりくだるべきなんだよ」


 いくら非公式の場だからと言って、許される発言ではない。

 たかがハンター如きが、大公に対して『へりくだるべき』と言うのはありえない暴言だった。

 しかし、意識してへりくだっている大公自身が、その言葉を認めていた。


「でだ、俺はあいつが好きなのは、何時も怯えて周囲の顔色を窺っているからだ。あいつは、周囲の顔色をうかがうべき人間だろ? なら好きになってもいいじゃねえか」


 なんとも無茶苦茶な理屈である。

 へりくだるべき相手がへりくだっているのが好き、おどおどするべき人間がおどおどしているから好き。

 ある意味では身分のような、差別的な発想だった。


「ちっと想像してみろよ。あの兄ちゃんが、おどおどせずに堂々としているさまをよ。弱いくせに強いと勘違いして、偉くもないくせに偉ぶって、何もしてないくせに何かしているような顔をしているのをよ」


 しかし、一理ある。

 確かに狐太郎がそう振舞っていたら、さぞ腹立たしいだろう。


「想像するだけでぶん殴りたくなるぜ!」


 確かに、想像するだにおぞましい。

 もしかしたら、彼に従っている四体も愛想をつかすかもしれない。


「まあそういうこった。正直アイツに従っている四体の気持ちもわかるぜ、『ご主人様』なりに身の程ってもんを弁えてるからな。大公様も気が合っただろ?」

「……気が合うかはともかく、共感はできたな」


 狐太郎は四体からご主人様と呼ばれている。

 それは彼らの契約が、完全な主従関係にあることを示していた。

 しかしその一方で、狐太郎は彼女たちに強権を振るっていない。むしろへりくだってさえいる。

 それは確かに、大公に通じるものがあった。


「正直に言うが、ササゲという悪魔が全力を出したときは心臓が止まるかと思ったよ。狐太郎君の心臓が止まったと聞いた時は、困惑はしたが不自然には思えなかったほどさ。よくもあれだけ強いモンスターを、手元におけるものだよ」

「そうですよねえ。私も火竜のアカネちゃんが本気になった姿を見ましたけど、近くにいるだけで焼け死んじゃうところでした」


 シャインも同意する。

 アカネのタイカン技『レックスプラズマ』は、まさに世界が終わったかと勘違いするほどだった。

 流石にアレが当たれば、アッカと言えどもただでは済まなかっただろう。


「狐太郎さんが死んじゃったのも、不思議じゃないですよねえ……むしろ、今までよく死ななかったというか……今はお嬢さんが見てらっしゃるとか?」

「ああ、私の娘のヒールエフェクトは一級品だからね! リァンもお転婆だったころは、もっと攻撃的な、戦闘に役立つ力を欲しがっていたが……親としては一安心だよ」



 この世界の住人は、とても頑丈である。

 骨折しようが傷がえぐられようが、痛いだけで割と平然としている。

 しかしそれは、この世界の住人における普通である。


 狐太郎の肉体は、良くも悪くも狐太郎の常識に収まっている。

 一度瀕死になれば、そうそう意識が回復するわけもない。意識が回復したとしても、一気に復調するはずもなかった。


「うう……?」


 狐太郎が目を覚ました時、目を開けることも困難な倦怠感に包まれていた。

 体が泥のように重く、頭もうまく働いていない。


「お目覚めになりましたか?」

「あ……あ、はい……」

「私のエフェクトに酔っていますね……もう少しすれば、意識もはっきりすると思います」


 記憶の前後がはっきりしない狐太郎は、周囲を見回した。

 どうやら自室のようであるが、目の前にいるリァンのことが思い出せない。


(誰だっけ……いや、待て、確か大公の娘さんだったか?)


 記憶と言うのは、引っ掛かりがあればするすると思い出せるもの。

 狐太郎はだんだんと自分が気絶する直前を思い出してきた。


(……俺はいったいいつから病弱キャラになったんだ)


 めまいをしそうだった。

 既にめまいどころではないのだが、自分で自分が信じられなかった。

 なぜ味方のフルパワーに、全然関係ないところで突っ立っていただけの狐太郎が倒れるのか。


「あの……リァン様ですよね?」

「ええ、そうです。森で狐太郎様がお倒れになりましたので、ここまでお連れしました」

「そうですか、ありがとうございます」

「ご安心ください、試験は合格いたしました」

(それは安心していいのだろうか?)


 不合格になりたかったわけではないが、合格を喜ぶこともできなかった。

 なにせ狐太郎は、四体が魔王の姿になる度に、失神して昏倒するということなのだから。


 微妙に嫌なことは、この森を出れば問題の九割が解決するということであろう。

 ショクギョウ技の段階では、狐太郎にも特に被害はないのだ。

 Aランク複数を相手に戦うことがなければ、こんなふうになることはないのである。


「狐太郎様は……本当に体が弱いのですね」


 そしてリァンは、そんな狐太郎を憐れんでいた。


「私はヒールエフェクトで治療をしたのですが、とても治りが悪かったのです。おそらく内在するエナジーの器が小さく、受け入れることができなかったのでしょう」

(何を言っているのかはわからないけども、何を言いたいのかはわかるな……)

「もしかしたら、他にも原因があるのかもしれませんが……処置が早かったので、後遺症などは残っていません。ご安心くださいね?」

(できねえよ……処置が遅かったら死んでたってことじゃねえか……)


 狐太郎は推測する。

 以前に蛍雪隊の隊員へ治療のようなことをしたのだが、傷の治りがやたら早かった覚えがある。

 使用した薬自体に特別な効果があるのかと思っていたが、傷を負っていたハンター本人の力もあったのだ。


(多分この世界の人は、回復量アップみたいな能力を標準装備しているんだな……)


 ゲームの中には回復魔法や回復用の薬を使われた時に、その効果が上がるという特性を持つキャラクターもいる。つまり同じ回復魔法を受けても、より多く回復できるというわけだ。

 ゲームの話になってしまうが、この場合は適切なたとえ話だろう。

 この世界の人々は回復用の技を受けると著しく回復することができるのだが、狐太郎はこの世界の人ではないので回復が相対的に遅いのである。


(まあ、今更だな。どうせCランク相手でも、即死するときは即死だし……)


 非常にどうでもいい情報だったので、流すことにする狐太郎。

 どうせこの世界の人々に比べれば、自分などチワワのようなもの。それを再確認しただけなのだから、騒ぐ方がどうかしている。


(大分頭も回ってきたが……わかったことが全部ろくなことじゃないってのは酷いな……)

 

 騒ぐ元気もないが、それはそれとして落ち込んでいる。

 そんな狐太郎へ、リァンは尊敬のまなざしを向けていた。


「こんなにもひ弱なのに……私たちのために戦ってくださるだなんて……!」

(勘弁してほしい)


 もういっそ嫌ってほしかった。

 お前のような軟弱者に、ハンターは務まらないとでも言ってほしかった。


(忠告してくれる人が、どれだけありがたいのかよくわかるな……)

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― 新着の感想 ―
[一言] ぶっちゃけ魔王、勇者に普通に負けてるからね
[気になる点] >彼女たち四体では、アッカ一人に及ばない。 全力攻撃2-3回でぶっ倒れちゃうし、魔王さん微妙杉? 4体に分散しちゃったから弱体化? でも元魔王さんも魔王じゃない4体に倒されるくらいだ…
[一言] 更新お疲れ様です 相対的な虚弱キャラで草。
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