竜騰虎闘
崩壊した都市に、もはや敵兵は一人もいない。
こうなると問題になってくるのは、内在する悪であろう。
元よりすべての市民が善良であるわけもない。
そして悪というものは、決して相手を陥れるときにだけ発揮されるわけではない。
普段から仲の悪い相手が、これを機に動くのではないか。そう思ってしまうだけで、人は凶行に走る。
あるいは自分の家族が死んだのに、誰かが家族といっしょに笑っている。
それだけで、行動を起こしかねない。
人間の体に未病という状態があるように、人間関係にも未病はある。
火種があるだけで火事になることはない、普段からの積み重ねで『燃料』が蓄積し、火災に至るのだ。
普段は抑えている、どうでもいいと諦めていることも、この状況ならば、と思いかねない。
それが連鎖すれば、社会は崩壊する。そうなれば、カセイは今度こそ砕けるだろう。
兵士を動かしてそれを止めるとしても、そもそも兵士が従うかも怪しかった。
今この状況で、大公の発言にどれだけ重みがあるだろうか。
大公に従っていれば大丈夫だと、どれだけの人が信じられるだろうか。
大公の指示が正しかったとしても、大公に従ってくれるだろうか。
「小さないざこざはありますが、大きな騒動には至っておりません。瓦礫の撤去、および食料の配給は順調です」
「そうか……」
「これも閣下のご威光、普段からの善政によるものでしょう」
「心中複雑だよ、それが事実というのがね」
現在大公は、崩れかけた城ではなく、瓦礫が撤去された一区画に『本部』を置いている。
そこでは重臣たちや伝令たちが、普段よりもむしろ前向きに、精力的に仕事をしてくれていた。
彼らからの報告が嘘だとは思っていない。
もしも今そんな騒ぎが起きていれば、それこそ普通に『耳』へ入ってくる。
「この安定は、討伐隊という武力のおかげだ。前線基地に戻ることなく、このカセイにとどまってくれているおかげだよ」
何があっても彼らが倒してくれる、自分たちは安全だ。
そう信じる民たちが、この崩れたカセイに残っている。
と、同様に、もしも大公に歯向かえば、彼らが襲い掛かってくる。
最強無敵の討伐隊が、鎮圧に乗り出してくる。
大公の威信が保たれているのは、大公に忠義を誓う討伐隊の武力によるものだった。
ある意味では、見せしめだろう。もしも大公に逆らえば、十万の軍勢さえ縊り殺されるのだ。
この状況を生み出した討伐隊に、逆らう気力の持ち主などいまい。
特に戦場を俯瞰していた兵士たちほど、その傾向が強い。
張り合う気も失せる心胆の持ち主の手綱を握っているのが、正真正銘大公だと知っているのだ。
「それを含めて、大公閣下の善政でしょう」
「違いない。まったく……彼らには頭が上がらないよ」
今までは知られざる英雄だったが、名を知られた後は治安維持にも利用している。
一体どれだけ、彼らに負担を強いればいいのだろうか。彼は、現状を憂うしかない。
「これを日ごろの行いがいいから、と自分の手柄のように語れるほど、私は厚かましくないつもりだ。とはいえ今は、一つ一つ掘り起こし、解決するのみ……」
民が暴れていない、逃げていかない最大の理由は、食料が大量にあると知っているからだ。
このカセイは元々商業都市であり、商業区域の瓦礫をどかせば必ず食料が『売るほど』ある。
その上、いざという時のための備蓄用食糧庫も存在している。
それこそ、王都にも負けない規模で、膨大な食料が蓄積されているのだ。
だからこそ敵に狙われたのだろうが、一毛も奪われていない現状ではありがたいものである。
「それから……うむ、王都への伝令は送ったか?」
「はい。早朝に一団を向かわせました」
「そうか……この落とし前は必ずつけさせるが……」
その時である。
街が一気に騒がしくなり始めた。
誰かが暴れているというよりも、逃げ惑っているようだった。
「報告いたします! 巨大なモンスターが、討伐隊の布陣している方角から攻め込んできました!」
「……そうか、ならば問題ないな」
逃げているというと大げさに考えすぎな気もするが、モンスターが近づいてくれば一般人は逃げたほうがいいだろう。
相手が大物ならば、なおのことだった。
「都市の外には誰もいないのだろう。ならば一旦作業の手を止めさせればいい。しばらくすれば退治され、ことも収まるだろう」
大公自身もまた討伐隊の強さを再認識し、全幅の信頼を置いていた。
昨日の今日ではあるが、なんとかしてくれるだろう。
すこし予定が遅れるだけで、致命的な問題には至らないと思っていた。
「閣下! 報告いたします! 討伐隊が布陣している反対側から、巨大なモンスターの群れが!」
「……なんだと?」
おかしなことだった。
このカセイの近くに有る魔境は、シュバルツバルトだけである。
だからこそカセイは作られてしまったのだが、ともかく二方向からの攻撃など討伐隊も想定していまい。
いいや、それ以上に。
まさに昨日の報告が頭をよぎる。
西重は通常のモンスターを収納して運用できる。
つまり西重の軍勢の残党が、シュバルツバルトのモンスターの襲撃に合わせて……。
「く、クラウドラインや、名だたる伝説の竜たちが、このカセイの近くへ向かってきているのです!」
「……」
全然違った。
伝令兵は知らないことだが、知っている者は知っていることである。
「安心しろ、それは狐太郎君の配下だ」
「……え?」
「私も忘れていたが……そうか、修行が終わったのだな」
ドラゴンズランドの竜たちは、アカネのことを王と崇めている。
何かと祝辞をお願いしたがるが、支配者になってくれとか手足のように使ってくれとは言わない。
あくまでも遠くの親戚のような関係を維持しており、双方でそれを尊重している。
しかし、例外は存在した。
アカネに忠義をしめし、ともに戦うと宣誓した若き竜がいた。
ドラゴンズランドを治める長老の、その孫。
力不足を痛感し、故郷へ戻り牙を磨いていた雄々しき竜。
彼がついに、ここへと戻ってきたのだ。
※
「凄い……伝説のドラゴンが、こんな近くに……に、人間を守るために戦うだなんて!」
バブルが思わず独白した。
無理もないだろう、先日のサイクロプスが子犬に見えるほどのドラゴン軍団。
Aランクに位置する貴竜たちが、群れを成して虎へと向かっていく。
その姿は、討伐隊をして見ることができないものだ。
ましてや彼女が、見れるはずもない。
「……狐太郎様! アカネ様!」
大層慌てた様子のショウエンが走ってきた。
やはりと言うべきだろうか、彼も困惑しているようである。
「あ、あのドラゴンたちはもしや……あの時の」
「多分そうでしょうね……」
「うん、そうみたい……」
ドラゴンと言えども、恐怖は知っている。
人間よりも賢いからこそ、態々自分より強いものと戦うことがない。
こうして群れをつくってまで、強大な敵と戦うなどありえない。
「……アカネ。俺が言うのも野暮だけども、いざとなったら」
「うん、助けに行くよ」
その理由を知っているがゆえに、彼らは固唾をのんで見守っていた。
そんな想いを知ってか知らでか、虎と竜は衝突する。
※
ある程度間合いを詰めたところで、竜たちは大きく息を吸った。
体が膨れ上がるほどに肺へ空気を溜めこみ、そこで一旦止まる。
それが何を意味するのか、ラードーンを知るシュバルツバルトのモンスターは察した。
すなわち、ドラゴンブレス。
Aランク中位一体、Aランク下位五体のドラゴンが、一斉にブレスを吐き出した。
『るふぅおおおおおおお!』
トライホーンによる強風のブレス、グレイトファングによる牙の混じった礫のブレス、ケツアルコアトルによる雷のブレス、アシッドバルーンによる猛毒のブレス、シェルターイーターの振動のブレス。
そして、クラウドラインの放つ、灼熱のブレス。
それらが合わさった猛攻は、まさに殺意の壁が迫るようなもの。
それは自分達と反対側へ放たれていると分かったうえで、なお恐ろしかった。
討伐隊をして背筋の凍る攻撃を前に、虎たちは無防備に死ぬだけなのか。
違う。
如何にAランク上位に及ばぬとは言え、虎たちもまたシュバルツバルトでなお生存し続ける怪物。
所詮エイトロールに怯える軟弱なトカゲ如き、恐れるわけもない。
ビッグファーザーの咆哮一発。
鶴の一声ならぬ虎の怒号。それはただ一発でドラゴンたちのブレスを押しとどめる。
勢いをなくしたブレスへと、インペリアルタイガーたちが爪を振り抜く。
生み出された衝撃波が、暗雲の壁を切り裂き、そのまま反対側の竜たちへと向かっていく。
『ぬぅうううううう!』
仰いだ風など恐れるに能わず。
ドラゴンたちは自ら放ったブレスを突き破って、虎たちに食らいついていく。
『じゃあああああ!』
小ぶりな狼たちを踏み散らして、グレイトファングとトライホーンが突貫する。
グレイトファングは暴君の名を持つ虎の、その頭を一噛みで呑み込んだ。
猫が小魚の頭を噛みちぎるように、巨大な虎の頭を噛みちぎって呑んだのである。
ごりごりぐしゃり。
人間の中でも強者である、武将の格を持つものがようやく勝てる怪物を、頭から一撃で呑み込み、頭を失った体が倒れるよりも早く、ごりごりごくんと平らげていた。
トライホーンも負けていない。
横に並んだタイラントタイガーたちを、その巨大な三本の角で貫き引きちぎっていく。
四本の足で走るこの重戦車の前には、暴君の虎も張子の虎同然。まるで紙細工のように、粉砕しながら突き進んでいく。
だが、タイラントタイガーがやられていくところを見るだけのインペリアルタイガーではない。
格上だからなんだというのか、牙と角を冠する竜へと、恐れを知らずに襲い掛かる。
『じゃりゃあああ!』
蛙のような骨格を持つアシッドバルーンが、毒液を分泌する体で突撃する。
Bランク上位に位置するインペリアルタイガーの、濃い体毛に覆われた体が、一瞬で溶け墜ちた。
人間ならば希釈しても一滴で殺せる猛毒が、原液のまま体へ塗りたくられる。
格上さえも危うい毒に、格下のインペリアルタイガーが耐えられるわけもなかった。
しかし、一瞬で毒に侵されたインペリアルタイガーの体がふわりと持ち上がる。
虎になど一切思い入れのない、マトウとミノタウロス。
巨大な人型が、その手で『鈍器』を掴む。
毒など触れねばいいだけのこと、若き竜たちをまとめて吹き飛ばす。
『ぎゅあああああ!』
同格からの不意打ちに、三体の竜は大きく転がった。
荒地が巨大なモンスターによって、どんどん荒れていく。
そしてマトウとミノタウロスに後れを取ったビッグファーザーが、己の配下を殺した竜たちを食らおうとする。
その大きな口は、まさにドラゴンを一撃で仕留めるに足るだろう。
『ぶふぅああああああ!』
迸る雷雲。
クラウドラインが飼いならしている、雷や雲の精霊が嵐を起こす。
クラウドライン自身のブレスも合わせて、ビッグファーザーを呑み込んだ。
『……おおお』
しかし、ビッグファーザーはひるまない。
若い竜一体の攻撃が当たったぐらいでひるむのなら、あの森で生きていけるわけもなし。
地獄の中で生きてきた覚悟を込めて、その双眸でにらみつける。
『!』
ただそれだけで、若き竜は射すくめられた。
恐るべきはビッグファーザー、恐るべきは虎の王。
その一瞬を逃すことなく、跳ね上がり、その長い首に噛みつこうとする。
『おおおん!』
シェルターイーターが、背負った殻ごと突撃した。
己たちの主を食わせはせぬと、その尖った殻を凶器にぶつかっていく。
そして殻と毛が絡み合ったところで、己だけ離脱し、衝撃波のブレスを浴びせた。
『けぁああああ!』
まさに怪鳥の如き咆哮。
ケツアルコアトルが追撃の雷を浴びせつつ、蛇の如き体をうねらせて地面へとたたきつけた。
『おおおぅ……ぐぁあああああああ!』
この機を逃すまいと、復帰したグレイトファングとトライホーンが突撃する。
地面に埋まった虎の王へ、その角と牙をつきたてる。
しかし、虎の王はその程度では屈さない。
体から血を噴出させながらも起き上がり、二体の竜を力まかせに引き剥がした。
己の血肉ごと持っていかれたが、その程度で弱る虎ではない。
さらに猛って、毛を逆立たせた。
『ぬぅあああああ!』
その巨体に、クラウドラインが絡みつく。
短い手足の、その爪を食いこませながら、全身を使って締め付ける。
『ぐぅるああああ!』
さらに、追撃の放電。
雷の精霊を使って、拘束したまましびれ上がらせる。
これにはビッグファーザーもたまらないのか、本気の必死で抵抗する。
堅牢な竜の鱗を引き裂きながら、出血させつつひき剥がそうとする。
だがこれを勝機と見たのか、クラウドラインも必死で喰らいつく。
ここで仕留めると、確実に殺しに行く。
だがそれは、マトウやミノタウロスにとっては好機だった。
二体のAランク中位がもつれ合っているのだ、これを放置する理由などない。
両方の頭を潰してしまえと、襲い掛かる。
『ぎゃああああ!』
だがそうはさせまいと、五体の竜が食らいつく。
Aランク達の戦いは、一気に終着へと向かっていった。
そして……。
『うぅおおおおおお!』
締め落として失神させ、さらに喉笛を噛みちぎったクラウドライン。
マトウとミノタウロスを沈めた、五体の竜。
彼らは傷だらけで死にそうになりながら、勝利の雄たけびを上げていた。
※
かくて、戦いは終わった。
クラウドライン率いるドラゴンたちは、なんとか虎の群れを食い破ったのである。
血まみれでぼろぼろになった彼らは、誇るように己の戦果をアカネたちの前に並べていた。
まさに、伝説のドラゴン。
彼らの戦いぶりを見た討伐隊や十二魔将たちは、改めてAランクモンスターの脅威に震撼した。
ロバーとバブル、ショウエンと竜騎士たちは、余りの感動に目から涙をこぼしている。
そして、クラウドラインの第一声は……。
『なんで助けてくれなかったんですか……ちょっと期待していたのに……』
普通に泣き言だった。
「勝てそうだから、水をさすのも悪いかなって……」
『勝てましたけども、死んじゃうところでしたよ! 後半はもう助けてくれないんだ、自分で殺すしかないんだ、って心境になってました!』
他のドラゴンたちも同様だった。
もりもりとモンスターを食べながら、悔しそうに泣いている。
「うん、まあでもよく頑張ったよ! これで無様だったら、全員私がけじめをつけるところだったよ」
『そうですか……良かったです……』
相当無理をしていたらしく、全員が泣いていた。
やはり同格を相手に挑むのは、とても怖いことであるらしい。
ドラゴンたちが怖くて安心して泣いている、という状況に困惑する者も多い。
しかし以前に逃げ帰ったことを思えば、数段マシになったと言えるだろう。
(少なくとも俺には何も言えねえ)
少し恰好はつかなかったが、やるだけやり切った。
彼らを咎める者は、討伐隊にはいないだろう。
「で、なんでその子たちまで来たの? 貴方だけじゃなくて、他に五体も来るなんて聞いてなかったけど」
『はい。実は……』
アカネにとって今回現れた五体は、知らぬ仲ではない。知らぬ仲ではないが、知らなかったことにしたい輩でもある。
なにせ求愛行動をされたほどだ、正直思い出したくもないだろう。とはいえ、これだけ戦わせて、帰れとは言えないのだが。
『私が必死になって鍛錬を積んでいた時のことでございます。丙種のワニに食われて死にかけているところを……こ奴らは大笑いしていたのです』
「……」
丙種といえばAランク下位。
それに食われかけているところを笑うというのは、中々ハイレベルな嘲笑であろう。
『それを見たお爺ちゃんが、怒って……』
【お前たちに笑う資格はないであろう! この恥知らず共が! お前たちも一緒に行け!】
『ということに……』
(お爺ちゃんがエグイな……)
思った以上に情けない理由だった。
しかしそんな理由でもなければ、あの五体の竜がここへ来るなどありえないだろう。
納得できるだけに、狐太郎たちは何も言えなかった。
第一、ちゃんと勝ちきっているので、文句を言えるはずもない。
(一灯隊が俺を見る目って、これよりひどいんだろうなあ……)
文句は言えないけども言いたくはなる。
それが今の彼らだった。
なお、五体のドラゴンたちは、むせび泣いている。
あの時黙っていれば、こんなことはしなくて良かったのに、と。
「んじゃあさ、なんで一年の約束を破ったの?」
『それなのですが……』
神妙な顔をして、クラウドラインが答えた。
『実は、一年の約束に間に合うように出立したのですが……我等全員、猛烈な胸騒ぎがしたのです。これはもしや竜王様の身に何か起きたのではないか。そう思った我らは……』
人間よりも、よほど賢い竜。
しかしその彼らも、直感を蔑ろにすることはない。
『慌てて引き返したのでございます』
やはり竜は賢かった。
『いやあ……この光景を見れば私共も察します。どうやらすさまじい戦いがあったようですね、引き返して本当に良かった』
しかしこうも赤裸々に語られると、賢いのかどうなのか判断に迷ってしまう。
いくら悪魔がいるとはいえ、こうもあけすけに本音を言っていいのだろうか。
『アカネ様……我が身可愛さに遅れてしまい、誠に申し訳ありません』
「本当だよ」
人間の言葉なんて、ないほうがいいのではないだろうか。
討伐隊たちは、せっかく頑張った竜のことを、壮大な生物だと思えなくなっていた。
仰々しい口ぶりだが、ただ逃げただけであろう。
「か、かっこ悪い……」
バブルのつぶやきを、他の三人は諫められない。
なぜなら、本当にみんなそう思っていたのだから。
(いやしかし、これを咎める権利が、俺にあるのだろうか……俺にはないな)
「竜のイメージダウン大使なの?」
狐太郎に文句を言う権利はないが、アカネは切れ気味で皮肉を言う。
やはり遠くから眺めているのが一番なのだろう、近くで話をすると良くないことまでわかってしまう。
『アカネ様……どうぞお許しを……』
礼儀正しくても、素直でも、正直でも、謝っても。
いやあ、許していいもんだろうか、という心境である。
『これは私たち全員が決めたこと……私たち全員の責任でございます』
「庇わないんだ……」
『いえ……誰が悪いのかといえば、全員が悪い。ならば全員が罰を受けるのが道理! 私だけが罰を受けるなど耐えられません!』
「全員焼き殺そうかな……」
全員に耐えきれないダメージを与えようかと検討するアカネ。
最強クラスのタイカン技を、同種に向かって撃つべきか検討していた。
『英雄同士の戦いが終わった今、私たちが恐れるようなことなど早々ないでしょう! 乙種一体までなら私共でなんとか致しますので、御用の際はお呼びください! もちろん大百足は嫌ですが!』
頼もしいはずなのだが、逃げ腰があけすけに見えるので頼もしく思えない。
とはいえ、いい時期に来たのであろう。
もしももっと早く来ていれば、英雄たちの戦いに身を投じることになっていたのだから。
誰もが、そう思っていたのだ。
この時までは。




