昇る朝日と機械仕掛けの神
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なんでもそうではあるが、人は目印を求める。
東に行けとか西に行けとか、右に行けとか左に行けとか、道に沿えとか川沿いに行けとか。
そんな具体的で単純な指示でさえ、戦闘中でなくとも従うのは難しい。
ましてや戦闘中、戦争中、それも敗走して壊乱していれば、従うことなど不可能だろう。
だからこそ、文字通りに旗を求める。
「通達! 通達!」
軍旗を掲げた騎乗兵が、小さな銅鑼を鳴らしながら戦場へ叫んだ。
Aランクモンスターの出現によって、敗走しつつあった兵士たちはそれへ注目する。
「本陣より指示を伝える! 総員! 退避せよ! この旗に続け!」
全員敵に突撃せよ、という指示であれば、絶対に従わなかっただろう。
だが退避するので旗を掲げている騎馬に続け、というのであれば話は違う。
誰もが泣きそうになりながら、必死でそれに続く。
「大将軍閣下が、現在敵を押している! 閣下が戻るまで、何とか逃げ延びるのだ!」
包囲していたはずが、打ち破られた。
ここまで苦戦するなど誰も覚悟していなかったがゆえに、逃げろという指示に喜んで従う。
逃げても怒られない、命令に従っただけ。誰もが旗を追う、その追う背を、さらに別の兵が追うのだ。
まさに敗走である。しかし仕方がない、そう、仕方がない。
生き残った兵士たちは、ほとんどが雑兵。兵役で来ただけで、元は一般人である。
彼らはその命令を疑うことがない。仮に疑う者がいても、それを誰かに確認できない。
そもそも、各地の指揮官もそれに従っていた。この状況では、誤報だったとしても『気付かなかったふり』をするだろう。
「総員退却せよ! 大将軍閣下が戻るまで、なんとしても生き残るのだ!」
大将軍という絶対の存在に対する、絶対的な依存。
大将軍が率いる軍なのだから、大将軍に全部任せればいい。
各指揮官たちは、Aランクモンスターの出現によって、普段からある甘えを露出させていた。
「退け、退けぇえええ!」
逃げるしかないからこそ、本陣の指示に従ってしまう。
疑っても信じてしまうし、なんなら遅いとまで考える。
「さあ、ついて来い!」
その騎兵が老いたハンターであり、その着ている鎧が奪ったものであったとしても。
それに気づけるものなど、どこにいるだろうか。どう考えても、絶対に騙される。
「……さて、ここまではジョー殿の指示通りか」
敵を誘導する蛍雪隊の隊員は、作戦の成功を理解していた。
ここまで戦場全体がかき乱されて、本陣が機能を停止していれば、集団心理に従うしかない。
後は適当なところで近くの騎兵に旗を渡して、『逃げ遅れがいないか確認する』とでも言って離脱すればいい。
あるいは普通に逃げても、追いかけられることはなさそうであった。
「……あとは、あの大将軍たちを倒せるかどうか、か」
※
「敵が逃げていくな……よし! では総員本陣へ帰還する!」
斉天十二魔将三人、Aランクハンター格を三人、Bランクハンター四隊、Aランクモンスター三体、王女一人、Aランクハンターの指揮を担ったジョー・ホースは、息を荒くしながら判断を下した。
後半はほとんど走っているだけだったが、そもそも道中走り続けていた。精強なる白眉隊をして、疲労が隠せない。
「速足で続け!」
「はい! わかりました~~!」
普段の姿に戻ったアカネも、彼に続いている。
というよりも、すぐそばを並走していた。
「お見事な指揮でした……ジョー殿」
「いえ、私など……結局、皆が強かったというだけですから」
同行していたドッカクの賞賛にも、彼は謙虚だった。
包囲が解けたカセイへ戻ることなく、一旦であれ本陣へと向かう。
現地へ到着するまでの短い間で立てた作戦ではあったため、細かいところまでは詰められなかった。
カセイがどうなっているのかわからなかったので、とりあえずことが済んだら本陣へと集合する運びにしていた。
もしも連絡を取り合うことができれば、また別の場所へ集合していたかもしれない。
だが今は、本陣を目印にして白眉隊は駆けていた。
「そうですな……確かに誰もが、非常に強かった……」
やはり寡兵を分散して十万の軍勢に突っ込ませる時点で、作戦がめちゃくちゃすぎた。
もっと言えば、狐太郎のモンスターを、一体も彼の元に残さなかったこともおかしい。
その作戦に全員が従って、全員が成功させている時点で、全員異常だった。
精神も実力も、完全に異常だった。
結局十万からなる軍勢を、千以下の寡兵で蹴散らしきってしまった。
(やっぱり討伐隊はヤバいな……本当に俺達十二魔将より強いぞ……)
助太刀として参戦したドッカクだが、ほとんど仕事がなかった。
もちろんいるだけで意味はあったのだが、流石は白眉隊、全員が強い。
「……ササゲ、まだ頑張ってる。もしもの時は、私も行かないと」
そして、最後の手段として配置されたアカネは、なおも続く戦いに目を向けていた。
Aランク上位モンスターさえも葬る怪物たちの、真っ向からの三対三。
この戦争の最初から始まっていた戦いは、ようやく最終盤へと向かっていた。
※
ノイズ、雑音。
この戦いの場において、目の前の相手への集中を乱す何もかもが、完全に雑音である。
たとえ仲間がどれだけ倒れても、たとえ自軍がどれだけ削られても、たとえ本陣が乗っ取られたとしても。
それを感じ取ることは、どうしてもノイズだった。
「くそ! くそ! くそ!」
若き左将軍、クモン。
彼は目の前にいるブゥへ、炎の矛を打ち込みながら、しかし焦燥に焼かれていた。
味方が壊滅し、さらに窮地へと暴走していることを感じているため、目の前の相手に集中しきれなかった。
「慌ててますね……」
「当たり前だ!」
「そうですよね」
「ぶっ殺す!」
「う、うわああ……!」
禍々しさの塊であるブゥは、しかし覇気をまったくもっていなかった。
荒々しいクモンの攻撃に耐えつつも、しかし表情は気が抜けていた。
「てめえ……邪魔すんな!」
「ええ? 攻めてきたのはそっちじゃあ……」
にもかかわらず、クモンは叩きのめしきれなかった。
慌てて雑になっていることは否めないが、中々隙を見出すことができない。
戦場全体への戦術眼だけではなく、目の前の相手への戦闘眼も持つ彼は、しかし崩れ切らないブゥに苛立ちを隠せない。
「俺は! お前を殺して! あっちを助けに行かないといけないんだよ!」
「だから攻めてきたのはそっちじゃないですか」
クモンの武技は、戦場の武技である。
クリーンなファイトなどどこにもなく、極めて荒いラフなものだった。
まさに戦場で研磨された戦いの技、それを以て彼は左将軍まで上り詰めた。
だがしかし、それがブゥには通じない。
目つぶしや前蹴りなどの無作法な技を使っても、却ってこちらが反撃を食らっていた。
「この……悪魔使いが! 自分の力なんぞ持ってないくせに……!」
クモンの想像する通り、ブゥはほぼすべての戦闘能力を他者に依存している。
ブゥがもしも自分一人の力で戦えば、それこそ蛍雪隊の隊員にも負けるだろう。
セキトはともかく、アパレやササゲも、自分で契約を交わしているわけではない。
「将軍の戦いに、入り込んでるんじゃねえよ!」
「僕も入りたくないんですよ……」
「だったら出ていけ!」
「貴方が出て行ったらいいじゃないですか」
こんな相手に、勝てないことが呪わしい。
嫌々戦っているブゥを、切り伏せられないことが許せない。
なぜ自分は、こんなやつに手こずっているのか。
「ファイヤーエフェクト……ソル!」
自分の後方から炎を放出し、速度を得る。
一瞬の加速によって間合いを詰めて、渾身の拳を叩き込む。
「へぐぅ?!」
ブゥの顔をとらえた、入った、当たった、畳みかける。
彼の体は、まるで型稽古のように、淀みなく次の行動へ移る。
「このっ!」
「無駄だ!」
ブゥもとっさに距離を取ろうと、前蹴りを打つ。
それを腹で受け止めると、さらに前へ出て押し込む。
「お前の攻撃は! 軽いんだよ!」
元より、街の喧嘩自慢。
拳の間合いならば、むしろ殴ったほうが強い。
「ファイヤーエフェクト! ソール!」
「ギフトスロット、レギオンデビル……エバーデ!」
ブゥは体を鎧で覆い、防御に徹する。
亀のように受けへ回った彼は、当然ながら反撃ができなくなった。
「おおおおお!」
「いだだだだ!」
燃え盛る炎を纏って、クモンの拳がブゥの鎧を砕いていく。
同等の相手との戦いにおいて、審判のいない実戦に於いて、亀の構えなど悪手の極みだ。
クモンは一瞬でも早く友軍を救うべく、一気に畳みかける。
「あだだだだ!」
防御していても、痛いものは痛い。
亀に徹しても、同格の相手の猛攻では防ぎきれるものではない。
彼の鎧は、砕けて剥がれ、消えていく。
「い、痛くないんですか?! その拳、壊れちゃいますよ!」
「知ったことか!」
「こ、この鎧を……素手で壊すなんて……!」
ブゥには信じられなかった。
この防御を、力づくの連続攻撃で突破されるなど。
クモンの持つ勢いに、彼はついに呑まれてしまった。
「ぐ、ぐ、ぐぅ……も、もう……だ、駄目かも……!」
「てめえは……てめえは一体何なんだよ!」
戦場で多くの敵を葬ってきたクモンは、目の前の相手が信じられなかった。
ここまで自分を手こずらせたくせに、気が弱すぎる、軟弱すぎる。
こんな輩のせいで、多くの仲間が倒されたことを思うと、とてもではないがやっていられない。
悔しい、悔しすぎる。
栄達、栄光を求めて戦場に参じた、多くの戦友たち。彼らが今、どれだけ倒れたのか。彼らが今、どれだけ生き残っているか。
それを考えるだけでも悲しいのに、自分の敵がこんな奴で悔しすぎた。
「てめえなんかのせいで……てめえのせいで……!」
痛みではなく悔しさで、目から涙が滲む。
しかしそれは、彼の拳を妨げない。
ついに鎧が砕け散り、腕によるガードもはじけた。
後はもう一度、その顔面に一発入れるだけだった。
「死ねええええ!」
握りしめた拳を、全力で振るう。
それで頭を砕いて、御終いだ。
「ああ、痛かった……」
そのはずだった。
しかし、ブゥは平然としていた。
拳を避けたわけではなく、防いだわけでもない。
もちろんクモンは、しっかりと攻撃をしたつもりだった。
彼は何が起きたのかわからずに、自分の手を見て……。
手がないことに、今更気付いた。
「あ?」
幻覚ではないか、と思った。
自分の両腕が、肘の少し先でちぎれていた。
よく見れば、両腕とも皮一枚だけつながっていて、ぶらりとぶら下がっている。
「死んじゃうかと思いましたよ……」
ブゥは、まったく驚かなかった。
そのまま鎧を完全に解除して、方天戟を構える。
「ギフトスロット、レギオンデビル……アビューズ」
悪魔の力を込めた長柄の武器が、茫然としていたクモンへ迫る。
「ファイヤークリエイト、プロミネンス!」
とっさに出た技は、全身から炎を噴出させる防御技。
それによって受けきろうとするが、しかしガス欠のようにちまちまとしたものだった。
そして、『これっぽっち』も痛くないままに、方天戟が体を切断していた。
「ふぅ……凄い疲れました……」
この世界の住人は、圧倒的に頑丈である。
だからこそ、胴体を斬られても、しばらくは意識があり生きている。
もちろん、直ぐに死ぬのだが、大将軍に近い力を持つ彼にとっては長すぎる時間だった。
「貴方、教養が足りませんね。悪魔使いと長く話すなんて、完全に悪手ですよ?」
見下しながら、ブゥはため息をつく。
なんのことはない、ブゥの攻撃が痛くなかったのは、麻酔がかかっていただけなのだ。
攻撃をかすらせるたびに、少しずつ呪い、痛覚を下げていった。
それを決定づけたのは、質問へ答えさせたこと。
『い、痛くないんですか?! その拳、壊れちゃいますよ!』
『知ったことか!』
ただでさえ戦闘中で興奮し、元より痛みや疲れを感じていなかった。
そのうえで悪魔の呪いにより痛覚が下がり、問答をしたことによって『自分の拳が壊れても気付けない』状態にまでなってしまった。
それでも、もう少し持てば、それこそブゥを殺せたかもしれない。
その程度には、彼もブゥを追い詰めていた。
だがそれも、もう過ぎたことである。
「クモン……!」
その死を、キンソウも見ていた。
自分よりも一枚上を生き続けた、切磋琢磨してきた好敵手。
恵まれた生まれではなかったが、腐らずに鍛錬し、少なからず尊敬していた男。
彼が、すぐそばで死んだ。
「プッシュエフェクト、スラッシュハンマー!」
それは、特大のノイズであった。
友との思い出が脳裏を駆け巡った一瞬、その無防備をホワイトは見逃さなかった。
極めて出の早い技が、キンソウの体を吹き飛ばす。
「ぐぅ!」
実力では、ホワイトよりもキンソウが勝っていたのかもしれない。
故に一度クリーンヒットをもらっても、立て直せたかもしれない。
しかしそれは、クリーンヒットが一度であった場合だ。
「がっ……!」
同等同格の戦いは、つまり削りあい。
小さなミスの積み重ね、大きなミスの一撃。
それらが重なって、決定的な差を生む。
「い、インパクトクリエイト……!」
「プッシュ、プレス、アース! トリプルスロット!」
味方の身を案じ続けた将軍と、目の前の相手と戦い続けたハンター。
その心の違いが、この状況を生んだ。
「ポール!」
「レクイエ……ム……」
圧縮された土の柱が、キンソウの頭上へと落下してくる。
それを防ごうとしたキンソウだが、重なったダメージによって対処が遅れた。
頭が首が、背が腰が。
それらの骨が悲鳴を上げつつ、彼は屈しながら地面へと埋まっていく。
(だ、大将軍……大王様……)
仲間を想う気持ちが、敗因だった。
それを分かったうえで、彼は最後まで仲間を想っていた。
(クモン……ごめん……)
勝利とは、目の前の相手を殺すこと。
その基本を忘れた彼は、詫びながら、生きたまま、地面へと埋まった。
そして、生きたまま地表に出ることはないだろう。
「ブゥ、お前に先を越されたうえに、それが決定打になった……負けた気分だ」
「それじゃあ勝ってきてくださいよ……正直、魔王の姿に疲れました……もう戦えません」
互いの勝利をたたえ合うこともない。
疲れきった二人は、憎まれ口をたたく。
そのうえで、最後の一人を見た。
「ふぅう……はぁあ……」
「ぜぇっ……ぜぇっ……」
己の両腕であったはずの二人が殺されたにもかかわらず、満身創痍にも関わらず、ガイセイと互角以上に戦っている男。
大将軍ウンリュウ。彼はまだ燃えていた。
なるほど、ジョーの言うとおりである。
これを倒すのは、極めて至難だ。
まさかここまで来ても、倒れる見込みがないとは。
「ブゥ! お前はもう戻っていいぞ! ホワイト、お前もあっちに行きな!」
「そうさせてもらいますぅ……」
「ああ、戻ってきたときには始末しておけよ」
クモンを倒したブゥは、狐太郎たちの待つ本陣へ。
キンソウを倒したホワイトは、一塊になって逃げる敵へ。
それぞれ、消えるような速さで向かっていった。
それでもなお、大将軍はガイセイを見ている。
「……なあアンタ、もしかしてクモンってのは、弟子かなんかだったのか?」
「ああ、私が鍛えた。同じ属性だったのでね」
「そうかい……」
ガイセイは、アッカを思い出した。
クモンとウンリュウが、似た関係なのだろうと、少しだけ浸った。
だがそれでも、お互いにお互いだけを見ていた。
「ずいぶん余裕だなあ、アンタ。弟子が殺されたのに、全然動じねえ」
「決まってるじゃないか、勝った後で泣くよ」
「ふぅう……旦那、格好いいぜ」
互いに、勝たなければならない身だった。
だがしかし、敬意はある。敬意を抱かなければ、勝てない相手だ。
「……まったく、思わぬ敵に遭遇したものだ」
ウンリュウは、まだ力尽きていなかった。
ウンリュウは、まだ燃え尽きていなかった。
まだ彼は、勝利を諦めていない。
「おかげで部下を失った……」
ガイセイに勝ち、ホワイトを追い、ブゥへ向かい、全員殺す気だった。
他の誰もを殺し、そのまま故郷へ帰って、大王から沙汰を受ける気だった。
「私一人で、全員殺すことになるとはね……!」
最後まで、何も投げていなかった。
「まだ終わらないとも……始まったばかりだとも!」
「いいやあ、終わりだ。人生なんてそんなもんだ、いつだっていきなり終わっちまう」
奇しくも、ではない。
二人とも、同じ技を発動させる。
それは、エフェクト技ではなく、クリエイト技でもなく、エンチャント技でもスロット技でもない。
ましてや、ギフト技でもデット技でもない。
「ファイヤー……」
「サンダー……」
それは、ただの力技。
膨大なエナジーを実体化させたうえで、切り離して停滞させる。
そのうえで、自らにエナジーを込め、切り離した力と合流させる。
「アルティメット!」
「アルティメット!」
エフェクト技と、クリエイト技の同時使用。
膨大なエナジーを持つものにしか使えない、後先を考えぬ最終手段。
悪すぎる燃費、長すぎる予備動作。
それと引き換えに放つ、限界を超えた異常火力。
握りしめた拳に、迸るのは炎と雷。
互いに助走をつけて、目の前の相手だけに、それを直接叩き込む。
「栄光の始まり!」
「終幕の天空神!」
笑う二人は、己の勝利を疑わず、ただ思いっきりぶん殴った。
最大規模の衝突が、今更のように天蓋を焼く。
雪に覆われていた戦場が、一瞬で乾ききる。
カセイの城壁のほとんどが崩壊し、内部でも家屋が崩れていた。
「アッカの旦那、大公の旦那……悪いな」
満足げに、二人は立ち尽くす。
「カセイを死んでも守るって約束は……果たせなかった、ぜ……」
彼の視線の先には、崩れた大都市が見える。
彼の目には、勝利とは程遠いものが映っていた。
「……申し訳ない、大王様」
大将軍は、今更のように詫びた。
「私は……もう……」
彼の目は、もう何も映さない。
「貴方の力には、なれないようだ」
二人は、倒れなかった。
何もかもが砕けた後で、しかし二人は立ったまま決着を迎えていた。
「……ウンリュウの旦那、アンタは」
西重国大将軍ウンリュウ、戦場にて果てる。
諸国に名をとどろかせた英雄は、最後まで国家のために、大王のために、勝利のために尽くしていた。
「いいや、ああ……ああ……」
彼を誉める言葉を、ガイセイは持っていなかった。




