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OPセレモニー

最近狐太郎君本編をやってないな~~。

そろそろ最後の大物であるダークマターを出そうかな~~と思っていました。

ですがこのままだと『なんで三人を出したんですか』になるんで、狼太郎編です。


狼太郎君が終わったら、いよいよ狐太郎君に視点が戻ります。

 狼太郎とその仲間たち、および兎太郎とその仲間たち、そして蛇太郎の一人は、辛くもAランク上位モンスターノットブレイカーを退けていた。

 しかしその代償は大きく、移動拠点であるナイルの装甲が一分破損してしまった。

 現在南洋の孤島で緊急停車し、修理をしている次第である。


「カセイ兵器には自己修復機能があると聞いていたのですが、これは無理なんですか?」

「無理じゃねえが、自己修復に任せていたら何十年もかかるぞ。それに自己修復ってのは戦闘中の応急処置で、基本的に脆いんだ。本格的に直すんなら、ドック行きだな」


 流石はAランク上位モンスター。

 倒されはしたものの、深い傷をカセイ兵器に刻んでいた。


 ナイルを形成している車両の一部に、大きな穴が開いている。

 それこそ、物資の出し入れができそうなほど、途方もない大きさの穴だった。


 それだけのダメージを装甲が負えば、フレームもまた大きく歪んでいる。

 このまま走行することなど、到底不可能であろう。


「まあ幸いと言っていいのか、肝心な車両は無事っつうか、そこまで大きく壊れてないからな。まずは大破した車両を切り離して、分解して分別してから、工作車両で材料としてリサイクルする。それで新しく車両を生産する感じだな」

「……流石のダメージコントロールですね」

「列車だからなあ」


 これが自動車などであれば、一部が大きく壊れれば、全部壊して新しく作り直す必要があるだろう。

 しかし列車という構造は、最初から切り離せるようになっている。

 一両が完全に壊れても、他の車両への損傷は軽微で済むのだ。


「工作車両が無事でよかったぜ。まあ工作車両は主動力車両並みに頑丈に作ってるから、そっちを狙われてれば無傷で済んだかもしれねえが……」

「それを言い出してもキリがないでしょう。それに、あの不意打ち……主動力車両でも耐えられたかどうか」

「だな。常時無敵化できれば一番なんだが、魔力も電力もバカ食いするからなあ」


 やはりあのイカの恐ろしいところは、上空を走っているのに襲い掛かってくる射程距離と精度だろう。

 何時どこから襲い掛かってくるのかわからない。

 それに生物である以上、何体いても不思議ではないのだ。

 あのイカが二体同時に襲い掛かってくるのなら、それこそ一巻の終わりである。


「まあいい。とりあえず分解するところから始めるか。おい、兎太郎! お前のところのモンスターは力があるだろ、手伝え!」

「うっす! お任せ! よし、お前ら! 今日中に片づけるぞ!」

「片付くわけねえだろ! 修理の完了まで、半年はかかるぞ!」

「えっ……えっ?!」

「なに驚いてるんだ!」


 列車を構成する車両のうち一つが壊れて、それを独自で新しく作り直す。

 むしろ半年で済むほうが驚きであろう。


「こう、ぱぱっと直らないんですか?! カセイ兵器なのに?!」

「おまえさっきまでの話聞いてたのか?!」

「だってこのナイルって、何度も改修された最新鋭のカセイ兵器なんですよね?!」

「ここまで壊れたら、普通にロボットかオートマトンかアンドロイドの自治区に持っていくよ! 持っていけない状況なんて想定してねえよ!」


 普通の車も、タイヤがパンクしたときに備えて、スペアタイヤぐらいは搭載しているだろう。また、交換するための工具ぐらいもあるはずだ。

 だが、ドアがぶっ壊れたのでスペアのドアと交換する、なんて状況は想定していまい。

 そんなことをするとなれば、それこそキャンピングカーのようにコンテナを牽引することになる筈だ。


 当然、このナイルも自分の在庫を大量に抱えているわけではない。

 如何に最新鋭とはいえ、想定していない状況には弱かった。


「え~~……がっかり……」

『申し訳ありません』

「謝るなナイル! 世の中を舐めてるガキに謝るな! 兎太郎も世界を救ったからっていい気になってるんじゃねえぞ!」


 期待を裏切ったことを謝る、ナイルの音声。

 しかし謝る必要はないので、狼太郎はむしろ兎太郎を黙らせていた。


「お、お二人とも、作業に入るほうが大事では」


 先輩二人の醜い争いに、蛇太郎はなんとか声をかける。

 二人とも功績が多大なので、声をかけることもためらわれていたが、第三者が口を挟まないと話が終わりそうにない。


「蛇太郎……そうだな! よ~し、お前ら! 頑張るぞ! 俺も手伝うから、この車両を分解するんだ! 続け~~!」

「……調子のいい奴だ」


 なぜか兎太郎が仕切り直し、何故か先陣を切って列車に入っていく。

 その後ろ姿には、不安しか感じられない。


「すみません……ご主人様が、ご無礼を……」

「わ、私たちも頑張りますから!」

「ええ、本当にすごい頑張りますよ!」

「だから、勘弁してください~~!」


 彼のモンスターたちも、謝りながら続いていく。

 どのみち必要な作業ではあったのだろうが、なぜかこんなにも心が揺さぶられてしまう。


「まったく……狗太郎(・・・)もそうだったが、ご主人様が馬鹿だとモンスターが損をするな」

「狗太郎……四人目の英雄ですか」

「……よく考えたら、俺は五人目なんだよな……あいつの後輩か」


 駄目なご主人様のために頑張る四体を見て、狼太郎は同情した。

 その一方で、四人目の英雄に関しては軽蔑の念を向けているようだが。


「ちらっと話したが、俺は馬太郎と猫太郎、狗太郎には会ったことがある。あいつらは元の世界で元気にやってる。だが……一人目と同じように、名前が分かっていないのは……」

「三人とも、名乗り出ていないからですね?」

「いや、狗太郎は違う。あいつは名乗り出たがっていたが、アイツのモンスターたちがそろって止めたんだ」


 七人目の英雄である蛇太郎は、当然過去六人の英雄たちの逸話を知っている。

 彼らが何をしたのか、どんな影響を後世に残したのか、何もかも知っているのだ。

 その一方で、全員の名前を知らない。そして自分の名前もまた、後世に残っていないと知っている。

 七人の英雄たちは、それぞれの理由で名を残さなかったのだ。


「勘違いするなよ、アイツのモンスターたちも、やったことに恥はねえ。ただ……狗太郎はバカだからな、周りからちやほやされると、身を持ち崩すと思ったんだろう。あの兎太郎を見ていると、大正解だって思うよ」

「……そうですね」

「ま、やる気があるのはいいことだ。俺らも片づけに参加しよう。その前に……雨で濡れないように、テントの設営だな」


 ここは南の遠洋である。

 当然雨は降るだろう、穴が開いているので壊れた列車の中も濡れてしまう。

 内部が水浸しになってしまうし、中での作業も滞る。先にそれを防ごうということだった。


「わかりました」

「……あいつはおかしい気もするが、お前やたらと俺達に従順だな」

「六人目と五人目の英雄は、それこそヒーローですから」

「お前だって英雄なんだろう? その対甲種魔動器を見れば、俺にだってわかるぞ」

「や、やはりご存知で……」

「まあな」

「……俺は、そんな大したものでは」


 七人目の英雄である蛇太郎の物語は、当然彼だけしか知らない。

 彼よりも前の時代である狼太郎も兎太郎も、彼が何者かなのか知りもしない。


 そして、七人いる英雄たちも、功績は大小バラバラである。

 七人目である彼の功績は、彼自身の評価において、大したものではないらしい。


「……作業に入るぞ、無駄話はそこまでだ」

「はい」

「続きは、終わってからだな」

「……はいっ」


 雨を遮るテントの設営。

 それは雨だけではなく、風との闘いでもある。

 大きな風が吹くと、テントのような風の影響をもろに受ける構造物は、それこそ吹っ飛んでしまう。

 もちろん彼らの時代だと各素材が高性能なのだが、それでも柱をしっかりと固定する必要はあった。

 足場の固定には、まず片づけからである。

 狼太郎と蛇太郎は、もくもくと作業を始めていた。


(俺が、五人目ねえ……馬や猫、狗に会った時はこうなるなんて思ってなかったが……)


 狼太郎は作業しつつも心の中で、自分が英雄たちに列せられることになったきっかけを思い出していた。


(そう、あれは……なんてことのない新聞記事を読んでいる時だ)



 一人目の英雄が、復活した魔王を討ち。

 二人目の英雄が、究極のモンスターを倒し。

 三人目の英雄が、先祖返りたちの目論見を潰し。

 四人目の英雄が、過去からの刺客を破壊した。


 それから時間が過ぎて、モンスターと人間の共存する楽園は、今日も平和である。


 人間の住む都市には多くの人々がモンスターと共に過ごし、各モンスターたちに与えられた自治区ではモンスターに主権が与えられ、思い思いの生活を営んでいた。


 だが、事件が起きないわけではない。

 何時の時代も、バカは湧くものである。


 とても些細な新聞記事を、狼太郎が読んでいたところから、物語は始まる。


「ふん、どこのバカだ」


 荒野を駆ける、万能走破列車ナイル。

 まったく揺れのない食堂車両で、彼は新聞を読んでいた。


『新人類の再来か?』

『昨日の朝。人間に飼育されているモンスターが、先祖返りと思われる男性から暴行を受けて、近くの警察に逃げ込みました』

『その暴行犯はそのまま確保されましたが、取り調べ中に脱走しております』

『付近では警戒を呼び掛けています。くれぐれもご注意を』

『その暴行犯は「モンスターを殴って何が悪い」という主張をしており、新人類のような危険思想を持った集団の構成員ではないかと疑われ、現在捜査中です』


 小さな事件だった。

 力を持て余した先祖返りや、あるいは強力なモンスターが、やらかしてしまうことである。


 悲しいことだが、よくあることだ。

 逃げられたことは残念だが、死者が出なかったことは幸いである。


「おっと」


『ドワーフ鉱山にて、アルコール祭が開催されます』

『最近では高級品となった、手作りのお酒が格安で楽しめます』

『ビールやワイン、米酒などだけでもなく、各種のお料理もそろえられております』

『注意事項』

『大鬼やそのほか亜人の、大勢の大柄なお客様がいらっしゃいます』

『当イベントの主催者は、このお祭りの間に起きる安全を保障せずにおりますので、ご了承の上でいらっしゃってください』


「何度見てもバカなイベントだ」


 食堂車のテーブルと言えば、普通はそこまで大きくない。

 しかしこのナイルは、大鬼のような巨大な体を持つモンスターも想定しているため、比較的大きい。

 幼い姿の狼太郎には、少し大きすぎるテーブルだ。

 彼はそのテーブルの上に置いてある、小さめのカップに入ったホットミルクを飲む。

 砂糖などはいれていないので、甘くもない。


「まあ何が馬鹿なのかと言えば……」


 彼は車窓から、外を見た。

 そこには、大きな車や飛行機、或いはケンタウロスのような走るのが速いモンスターたちが、大勢いた。

 彼らはナイルが目指す場所へ、大急ぎで向かっているのである。


「そこに行く、俺達もバカってことだ。今のご時世、酒なんていくらでも買えるだろうに」

「そうおっしゃらないでくださいな。皆さん、ああやって旅行する口実を探しているんですから」


 しゃなりと、一人の女性が現れる。

 男性を誘うような、薄い夜の服を着ている彼女は、狼太郎の前に座った。


「皆で大騒ぎをするのが好きなんですよ、わかるでしょう」

「……だとしてもな」

「じゃあ今からどこかへ行きますか?」

「やめておく、チグリスとユーフラテスに恨まれたくない」

「私も結構好きなんですよ、バカ騒ぎを見るの」


 ナイルの車窓からみる人々は、とても楽しそうで。

 それを眺めていることは、決して悪くない。


「ご主人様も、お好きでしょう」

「ま……大事件が起きるよりはな」


 他人事だから、見ていて楽しい。

 二人はのんびりと、熱狂する人々を見ていた。


「ううん……いい天気ですねえ。お祭り日和って感じで、さわやかな朝です」

「いよいよ年に一度のお楽しみですね!」


 エルフのチグリスと、ダークエルフのユーフラテス。

 共に余所行きへ着替えて、これからお祭りで遊びますよ、という服だった。


「毎年行ってるのに、なんで楽しめるんだ?」

「毎日じゃなくて、毎年ですから!」

「金曜日のカレーと同じですよ、体が一年を調整してくれるんです」


 二人とも楽しそうで何よりである。

 この一年で飲む酒を、すべてこの祭りで買うつもりのようだった。

 二人とも酒が好きではあるが、それほどたくさん飲むわけではないので、普通の人間が想像する一年分には程遠い。


 それはそれで、品の良い楽しみ方なのだろう。

 狼太郎は、それをとがめる気にはならなかった。


「もちろんご主人様もご一緒してくれますよね?」

「ナイルと一緒に残るなんて無しですよ?」

『どうか、私にお気を使わず』

「……わかってるよ、ナイル」


 不承不承受け入れる。

 このやり取りも、毎年している気がした。

 まあ、嫌いではない。


 ただ、好きになれないこともある。


「ドワーフ鉱山、アルコール祭りか」


 デフォルメされたドワーフの絵が描かれている広告。


「趣味の悪い話だ」



 ドワーフ鉱山、アルコール祭り。

 デフォルメされたドワーフの絵がそこかしこに描かれており、マスコットのように着ぐるみまである。


 当然だが、ドワーフ鉱山という名前の通り、鉱山地帯である。

 酒の原料はこの近くで取っているわけではなく、ただ単に各地で作った酒をここに集めているだけだった。


 ここでやっているのは、単に『ドワーフは酒好き』という伝説に基づいたものである。


 そう、伝説だった。

 とっくの昔に、この世界のドワーフは絶滅している。

 人間との生存競争に敗れ、この世界に一体も生き残っていない。


「……かつてドワーフを皆殺しにして手に入れた鉱山も、今やイベント会場か」

「そんな無粋なことを言っても始まらないでしょう? 別に生き返るわけじゃなし、ここの人たちが殺したわけでもないんだし」

「まあな」


 ドワーフ鉱山ということで、鋲が打たれた革製の兜を誰もがかぶっている。

 もちろん狼太郎も、子供用の兜を借りてかぶっていた。


「それに、安全のための配慮でもありますし」

「ならヘルメットを配れ、まったく」


 インダスは吸血鬼であり、太陽には極めて弱い。

 そのため外部で活動するための、遮光スーツを着ている。

 バイクのライダースーツのようなもので、彼女の趣味によって蝙蝠やクモの巣が描かれている。


「……お前のその恰好が、一番浮いていると思うけどな」

「でも石は投げられないでしょう」

「まあな」


 確かにインダスの格好は浮いている、彼女と同じ格好の者はいないだろう。

 だが周囲を見れば、あまりの多様さに目がくらむ。

 あまりにも多くのモンスターがごった返していて、逆に不安になってくるほどだ。

 大きいモンスターが、小さいモンスターを踏まないか、正直ひやひやしてしまう。


 もちろん狼太郎も子供なので、周囲には気を使う。

 大きい方は踏まないようにして、小さい方は踏まれないようにしないといけない。

 それでも楽しめるのは、祭りという場所と、全体が広く作られているからだろう。


「ねえねえご主人様! 新作のフルーツを使ったお酒ですよ!」

「どっちがいいと思いますか?」

「両方買え」

「そんな~~! ご無体な~~!」

「いくらご自分がお酒飲めないからって、適当なのはどうかと思いますよ~~!」


 チグリスとユーフラテスは、当然ながらこの世界で唯一のエルフとダークエルフである。

 その特徴的な長い耳や、顔立ちなどはそのまま、一切隠していない。

 にもかかわらず、誰も何も言わない。おそらくコスプレか何かだと思われているのか、単にそういうこともあると思っているのか。


「ふん……じゃあ甘い方だ」

「ええ? どっちも甘いですよ~~?」

「ホラーマンドラゴラとナパームスコヴィルなのに~~……」

「それ甘いのか?! そもそもそんなもんで酒作れるもんなのか?! 口に入れて大丈夫なのか?!」


 世界の進歩についていけそうになくなっている狼太郎。

 果たして奇抜を追求したお酒というのは、本当に美味しいのだろうか。

 作っている方も美味しいと思っているのだろうか。


「……もう去年と同じのを買え」

「ええ~~?」

「それ、去年も言いませんでした~~?」

「なんか怖いんだよ! 得体のしれるものを買え!」


 恐怖におびえる狼太郎の咆哮。


「いいじゃないですか、危ない遺伝子組み換え魔術とかじゃなくて、魔法遺伝子組み換え技術ですよ」

「どう違うんだ!」

「全然違います~~。ほら、パンフレット!」


 チグリスから渡されたパンフレットには、遺伝子組み換え魔術と魔法遺伝子組み換え技術の違いについて書いてあった。

 それはもうコミカルな絵とともに、なにやら訳の分からん文章が書かれている。


「……わからん」

「分かり合いましょう!」

「私たち、仲間じゃないですか!」

「……これの理解に労力を割きたくないというか……」


 熱いチグリスとユーフラテスだが、対照的に狼太郎は困っていた。

 興味のないことを押し付けてくるのは、仲間と言えるのだろうか。

 さりとて仲間の言うことに耳を貸さないのも、仲間と言えない気もする。


「まあまあ、お祭りは始まったばかりなんです。これは帰ってから読むとして、お酒は一本ずつ二人で買いましょう」

「じゃあそれで!」

「ご主人様、ちゃんと読んでね! あとでクイズしよう!」

(結局両方買うし、結局これは読むのか……)


 インダスがまとめてくれるのはありがたかったが、このままだと他にもたくさんのパンフレットを読むことになりそうだった。


「そろそろうるさくなるころじゃないか? 大鬼や他の酒好きが騒ぎ出すのは、毎年のことだからな」

「そうですねえ」


 祭りの始まりと同時に入場した一行だが、そろそろ人も増えてきた。

 けがをするのを嫌がっている人は、もうすでに帰ろうとしている。


 しかし喧嘩を見に来ている者もいる。護衛のモンスターに盾を装備させて、完全防御の構えで観戦しようとしている。

 君子危うきに近寄らずというが、まさに彼らは馬鹿なのだろう。


「酒好きが暴れるところを見に来る奴ってどうなんだろうな」

「あらあら、良いじゃないですか。さっきも言いましたけど、暴れるのが好きな人もいるんですよ」

「さっきそんなこと言ったか? 多分言ってないぞ」

「あらあら?」


 狼太郎は、自分の腕時計に話しかける。


「ナイル、会話のログを確認したい」

「そこまでしなくても……」

『----』

「ん? なんで話が」


 その時である。

 とんでもない音がして、悲鳴が響き渡った。


「ああ、喧嘩が始まりましたね。ねえチグリス、見に行く?」

「あのねえユーフラテス、そうやって喧嘩を見に行く人がいなくなっているうちに、他のお店を見に行くんだよ」

「そうね、じゃあそうしましょうか」


 喧嘩自体は毎年のことである。

 だが、その音がどんどん激しさを増し、さらに各所で増え始めていた。


「……おい、おかしいぞ。ナイルと連絡がつかないうえに、いろんなところから悲鳴が上がってる」

「……田舎だからなんじゃ?」

「いくら田舎でも、無線通信がつながらないなんてあるか! とにかく、騒ぎを見に行くぞ!」


 嫌な予感がした。

 狼太郎は、焦燥して走り出す。


「……あの、ご主人様。私が抱えますね」

「……おう」


 だが足が遅かったので、インダスに抱えられていた。


「三人とも急げ! すげえ嫌な予感がするんだ!」

「カシャ」

「カシャ」

「写真撮ってる場合じゃねえだろうが!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだかんだでそれぞれの主人公事に主人公らしい魅力があって良い
[一言] 面白いんだけど狐太郎以外の主人公が全く魅力がない
[一言] 大和朝廷が山に住む者たちを鬼として討伐して金属資源を手に入れたのと同じように競合する種族を滅ぼしてるんですね。(あれは鉱山開発で川の下流が汚染されてって説もありますが) 人造種を作るほど一度…
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