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糸が残った操り人形

無印 ラスボス 魔王

割とスタンダードな二つの形態を持つラスボス


2 ラスボス 究極のモンスター

クソゲーでありワンパターン


3 ラスボス 原石麒麟 甘茶蝶花 千尋獅子子

勇者パーティーと言った編成だが、タンク役がいないのですぐ落ちていく。

「まあそうだろうと思ったが……直接言われるとショックだろうな」


 あんまりショックを受けていないホワイトである。

 ホワイトは彼女と長く旅をして、実戦も重ねていた。

 その都度思ったのが、『かみ合わせ』である。

 状況がかち合えば強いのだが、そうでもなければBランク中位か下位程度である。

 もちろんそれでも十分強いのだが、どう考えても無駄が多すぎる。

 これだけの技術力があるのなら、普通の戦闘能力に振ったほうがどう考えても強い。


 現に、特に尖ったところのない麒麟のほうが、よほど普通に戦える。

 もちろん彼自身も元の世界ではトップクラスだが、この世界では英雄と呼べるほどではない。

 だがそれでも、たくさんの便利な技を覚えていて、基礎能力が高いというのは大正義なのだ。


「……しかし、彼女のような凄まじい能力を持ったモンスターが量産できるとは、君たちの故郷は一体……」


 だが大公からすれば、Aランクハンターの攻撃を受けても無傷というモンスターが、生贄をささげるだけで作れるというのは脅威だった。

 というか一体に無理やり三体分の機能を押し込めているからこうなっているのだし、各形態を別の個体に分ければ、もっと強いのが作れるだろう。

 それを思うと、麒麟や狐太郎の生まれた国が恐ろしかった。


「いや~~……昔は確かにすごかったらしいんですけど、最近はそうでもないんですよ」

「なぜ?」

「いろいろ理由はあるんですが、まず、周りの国も同じぐらい強かったんで、戦争が激しくなり過ぎたんですよね」


 麒麟はあえて事実を伝えた。

 遠い世界のことです、ということを抜きにしても、十分通じることだからだ。


「そこで昔の人がお互いに軍縮しようという約束をして、それからは強い武器やモンスターを作ることが禁止されたんです。だから彼女のようなモンスターを作るのは、もう許されていないんですよ」

「少なくとも、大量生産はされないということか……」


 言い方は悪いが、過去の遺産を使っているだけの時代である。

 もちろん多くの技術は進歩しているのだが、軍事兵器の生産は禁じられているので、強力な兵器はもう生み出されていないのである。

 よって過去の兵器の方が強いという、逆転現象さえ起きているのだ。

 だからこそ、新人類のような『ただの先祖返り』でもテロを起こせた、と言えるのだが。


「まあ作ろうと思えば作れるんですが……その必要性がほぼないというか……」

「平和で羨ましい限りだ。しかし……そうなるとますます哀れだな」


 大公は、『究極のモンスター』を哀れんだ。

 今彼女は、自分の出生を知って大いに落ち込んでいる。


 製造方法やら製作者はまあ覚悟できていたのだが、その製造目的と発注者がえぐすぎた。

 知るべきではなかったのだ、ホワイトの言う通り。


「僕っていったい……」


 一体何のために生まれてきたんだろう、と自問することさえ無駄になった。

 彼女は『顧客の要望を全部叶えたら半端になった失敗作』だったのだ。これより残酷な真実など、そうそうないだろう。


 傷を癒した彼女は、物凄く落ち込んで部屋の隅に座っていた。


「ごめんなさいね、私たち人類が愚かだったばっかりに……」

「ええ、貴女は何も悪くないわ。悪いのは私たちよ……だから、いつまでも落ち込んでいないで、ね」


 蝶花と獅子子は、彼女を慰めていた。

 彼女たちとしても無関係ではないので、一人の人間として、一人の女として慰めるしかなかったのである。


「うう……二人とも……ありがとう」


 果たしてこんなに優しくされたことがあったのだろうか。

 ホワイトとは親しかったと思うが、慈愛を注がれたのは初めてな気もする。

 彼女は泣きじゃくって、二人の胸に飛び込んでいた。


「しかし……名前、どうしようか。まさか『究極のモンスター』なんて呼ぶわけにもいかないし」


 なお、ホワイトは別のことで悩んでいた。

 もうとっくに『真実を知ったら傷つくんだろうなあ』と思っていたので、今更嘆いてはいない。


 彼には教養があり、恵まれない出生があると知っている。

 世の中には『夜の仕事でできた望まれない子供』や『貴族が手を出してできた父親のいない子供』という、悲しい生まれの子供がたくさんいる。おそらく、野犬隊にもそんな境遇の子がいたはずだ。

 順番は前後しているが、彼女はそれと同じなのだ。それが彼女の救いになることはないが、彼女だけが特別不幸というわけではない。


「それはそれで大事だが……ますますもって、ノットブレイカーを倒したものが、君たちの国の住人である可能性が高まったな」

「そうだなあ……それも、狐太郎と同じで、英雄と呼ばれるような奴らだ。何しに来たんだか、まったく……」


 果たしてどんな目的でここにいるのか。

 狐太郎に対しては聞くことがなかったが、その彼らには聞くしかないだろう。

 大公とガイセイは、未知の脅威に対して緊張していた。


(おそらく、僕たちや『究極のモンスター』と同じように、望まずに来てしまったんでしょうねえ)


 なお、麒麟は何となく察していた。

 もしもその英雄たちに目的と言えるものがあるのなら、それはおそらく『元の世界』に帰ることであろう。

 麒麟たちは元の世界に居場所などないが、その英雄たちにはある筈なのだから。



 さて、それからしばらく後のことである。


 究極のモンスターがある程度落ち着いた後で、一行はシュバルツバルトに戻った。

 そう、戻ったのである。


「……ついに、ここに!」


 ホワイト・リョウトウは、再び前線基地に訪れていた。

 かつて狐太郎と一緒に試験を受けて、脱落した彼。

 ただ怪我をして、ただ実力が足りぬ現実に挫折して、ただ落ち延びたこのシュバルツバルト。


 彼は再起を誓い、ここを目指した。

 大きく力を蓄えて、多くのモンスターを倒して、この魔境でも後れを取らぬだけの自負を得た。

 彼の今日までの日々は、すべてここで戦うためだったと言っていい。


 それが報われる瞬間だった。

 ホワイトは、万感の思いで基地に入っていく。


「……ホワイト、君のパートナーが落ち込んでいることを、どう思っているかな?」

「蝶花さんと獅子子さんがいてよかったよ。俺だとうまくいかなかった。なにせ俺は男だからな」

「そうだけども!」


 上機嫌すぎて、究極のモンスターが落ち込んでいても気にしていなかった。

 あるいは、蝶花と獅子子がいたので、自分が出るべきではないと思ったのかもしれないが。


 蝶花と獅子子が、今も究極のモンスターに寄り添っている。

 両脇を固める形で、彼女と一緒に歩いていた。


「まずは整理をつけろ。いくらでも待ってやる」

「それ、優しいつもり?」

「今のお前が、普段の振る舞いに耐えられるとは思えないんだが?」

「……」


 究極のモンスターとは、つまり第一義として『男』に対する態度というものが大事にされている。

 今まで彼女はホワイトを慕い、彼に対して本能(プログラム)のままに接してきた。


 だがその本能が、本来は下種な男のための振る舞いだったと知れば、何もかも拒否感が生まれる。

 なまじ彼女がまともだからこそ、直ぐに受け入れることはできない。


 ましてや、その振る舞いをホワイト以外にもしてしまったらどうなるか。

 彼女は、自分の本能を受け入れられまい。


「お前にはずいぶん付き合ってもらった。今度はこっちが付き合う番だ」

「それって」

「既にガイセイには話を通してある。その二人にはしばらくお前と一緒にいてもらうつもりだ」


 蝶花と獅子子は直接的な戦闘能力こそ乏しいものの、この基地では強いとは言えない抜山隊の支援を行ってきた者である。

 その二人が抜けた穴は、決して小さくない。


「その穴は俺が埋める。当分はお前に残ってもらって、俺が森に入ることになるだろうな」

「ふふふ、まるで奥さんみたいだね……うっ」


 いつもの軽口だが、彼女はそれにさえ拒否感を覚えた。

 自分の行動や思想のすべてが、誰かの意図そのものであることに拒否感があるのだ。


 なんとも皮肉なことに、彼女は既に自分を生み出した諸悪の根源を、我知らずに殺しつくしている。

 製造者たちであるシルバームーンの構成員は彼女を生み出すための贄になり、彼女を製造するように命じたスポンサーは食料になっている。

 まさに、人間の愚かさの極みだった。彼女は人間の愚かしさが生んだ怪物であり、その人間たちは誰かを傷つける前に彼女によって殺されたのである。

 というか、彼女は何もしていないのに、勝手に自滅したのである。


 それは、ある意味救いだろう。なにせのうのうと生きていて、今も同じことを繰り返しています、ではないのだから。

 わざわざ殺しに行く必要がない。


 だがそれでも。

 操り人形であることを自覚した彼女は、自分が今でも操られていることに耐えかねていた。

 人のために生み出されたのだろうとは思っていたが、その人間が最悪すぎて拒否してしまうのだ。


「……お前は、さっき自分で言っていたことは覚えているだろう。お前と俺の二年ぐらいの時間は、嘘でもなんでもない」

「……そうだけど」

「ならいいだろう、ちょっと落ち込んでおけ。俺もそうだったが……すぐに立ち上がれなくてもいいんだ」


 ホワイトは挫折を知っている。

 他でもないここで、挫折を何度も経験している。


 そのあと、立ち上がれなかった自分を知っている。

 立ち上がった後で、叱咤を求めた自分を知っている。

 立ち上がる前に叱咤されても、何もできなかったはずの自分を知っている。


「ホワイト……」

「俺はお前に会えてよかったと思っている。お前がいたから、あの時悪魔を倒せたと思ってる。お前の価値は、もうお前自身が作ってる。だから……だから大丈夫だ、俺の時よりは落ち込まずに済むさ」


 落ち込んだとき支えてくれるのは、自分が成したことだ。

 自分がやってきたことで誰かが幸せになっていれば、自分は価値があるのだと思える。

 自分で自分に価値を見出せるのなら、人は決して折れたりしない。


「結婚してくれ……うっ……ううぅ……」


 愛を告げることにさえ疑問を抱く。

 今の彼女は、本当に自己矛盾に陥っていた。


「獅子子さん、蝶花さん。本当にお願いしますね」

「ええ、任せてちょうだい」

「大丈夫よ、いきなり知ったわけじゃないんだから」


 二人にすがる形で、究極のモンスターは去っていく。

 二人の部屋で、のんびりと時間を過ごすのだろう。


「あの、ホワイトさん」


 その三人を見送るホワイトに、麒麟が話しかけた。


「僕のせか……故郷の人間の悪業を、貴方に背負わせてしまいました。彼女が出会ったのが貴方で良かったと思います」

「そうか?」

「ええ……彼女には自我がある、自分の尊厳がある。だからこそ……悩んで迷うんですよ。それは大事なことです」


 むしろ、あれを聞いて『そうなのか、それはそれとして今まで通り振舞うよ』という方がよほど悲しい。

 一秒も迷わずに『でも僕がホワイトを好きな気持ちは嘘じゃないから、今まで通りにするよ』と言い出そうものなら、いよいよ気持ちが悪いだろう。

 彼女は嫌なことを知ったのだから、きっちり傷つくべきなのだ。それが正常な反応であろう。

 それができないことの方がかわいそうだ。


「まあ、僕たちが言っても説得力はないと思いますけどね」

「そうなのか?」

「ええ、僕や獅子子さん、蝶花さんは……それを大義名分にして、散々無茶……いえ、犯罪を犯しましたから」


 シュバルツバルトの討伐隊は、実力さえあれば前科を問わない。

 しかし麒麟たちは外国人であることを除けば、そこまで悪人であるようには見えない。


「正直信じられないな。お前もあの二人も相当育ちがよさそうで、実力もあって、犯罪なんかするようには見えないんだが」


 才能があるホワイトだからこそ、実力があるということは努力家とイコールであると知っている。

 いくら弱点を知っているとはいえ、究極のモンスターをあっさり一人で倒したことも含めて、彼は明らかに実力者だった。

 であれば、相当頑張ったはずである。ホワイトの基準では、まともに頑張って成果が出せている人間は、犯罪に手を染めないはずだった。

 Eランクハンターが強くなかったことが、その証明である。


「……僕も、例のスポンサーを咎められません。世の中には……優れているだけでは飽きてしまう者がいるんです。優れた者になるためにどれだけ努力を重ねても……それが惜しいと分かっていても、手放してしまう者はいるんです……大げさかもしれませんけどね」

「いや……ま、その通りだな」


 ホワイトは自分の過ちを認め、麒麟の過ちを認めた。

 悲しいことだが、人はなんにでも飽きてしまう。

 今でこそ強くなったことに興奮しているホワイトでも、いつかはアッカのように大したことだと思わなくなるのだろう。

 もちろん、飽きることと、刺激を求めて悪しきことに手を染めることは、まったく別なのだが。


「でも良かったんですか? いきなり会った僕たちに、あのモンスターを預けて」

「俺が傍にいるよりはいいさ、見ただろうあの反応を」

「……そうですね」

「もちろん金は払うし、顔は毎度見に行くよ。ずっと会わないのも、ずっと一緒なのも、どっちも辛いからな」


 いつかこうなるだろうと思っていた。

 だから止めたし、心の準備もできていた。

 だから、いつかの野犬隊へのアドバイスのように、適切に考えられる。

 もちろん、それが他人まかせだとは知っているけども。


「……いや、違うな」

「やっぱり、自分で?」

「いや」


 ホワイトは、まだ彼女に名前を与えていない。

 というよりも、彼女がそれを受け取っていないからだ。


 だがそれでも、彼女のご主人様であることに変わりはない。


「アイツのこと、お願いします」

「……ええ、お預かりします」


 毅然として、ホワイトは役場に向かう。


「本当なら、俺は一時抜山隊の預かりって形で、討伐隊に参加できると思う。だが俺は、まず雪辱を果たそうと思う」

「ええ……僕にはできなかったことです」

「俺は、それをしに来たんだ」


 彼女を大事に思う気持ちもある。

 だがこの気持ちにも嘘はつけない。


 やはり自分は薄情者で勝手だ。

 そう思いつつ、高ぶるホワイトは前に進む。


 するとそこには、何時かの彼がいた。


「やあ、久しぶりだねホワイト」

「ジョー先輩……」


 実力だけなら、もうとっくに追い越したはずの先達だった。

 あの時、特に助けてくれたわけでもない人だった。

 だがそれでも、彼が笑っていると、少しだけ嬉しかった。


「立派になったね、君の話は聞いていた」

「そ、そうですか……やっぱり、悪魔退治ですかね?」

「ああ、もちろん。こんなことを言ったら嫌味に聞こえるかもしれないが」


 以前は、自分が森に入ることへ難色を示していた。

 そして実際、まったくもって実力不足だった。


「君が立派になって戻ってきてくれて、とても嬉しいよ」

「……!」

「贔屓にはできないが、それでも良ければ……試験を受けるかい?」

「はい!」


 彼は、以前と変わらぬ役場に入る。

 ここに来るために、彼は安寧を、妥協を排除し続けてきた。

 そして白眉隊の隊長さえ超える力をえて、ここに来ている。


「俺はホワイト・リョウトウ! 討伐隊の試験を受けに来ました!」



 一方そのころ、ガイセイは狐太郎の家に来ていた。


「まあそんな感じでな。究極ちゃんの方はウチの蝶花と獅子子が預かってて、兄ちゃんの方はジョーの旦那のところに試験へ行っているよ」


 カセイで、大公の前で、或いはシカイ公爵の領地で、何が起きていたのかを教えていた。

 それは、この森から出ていない狐太郎にとっては、壮大すぎる話だった。


「合格してからこっちに来て、お前たちにお礼を言うらしいぜ」

「そ、そうですか……」


 ガイセイは軽く話したが、聞いた面々は少なからず混乱していた。


 なにせ元の世界で起きていた大事件を、こんな形で聞いたのである。

 それはもう驚きであった。


「究極のモンスターね……大鬼である私にとっても無縁ではないけども……」


 労働力や戦闘能力を求めて、品種改良を繰り返されてきた大鬼クツロ。

 その彼女をして、金持ちの自己満足のために作られたモンスターというのは、怖気が走る存在だった。


「酷いよ……それは本当に酷いよ……」


 アカネも同様である。それほどに、最初から尊厳を奪われ切った存在だった。


「まったく……人間らしい事件ね。頭がいいのに、バカなことをするなんて」


 悪魔であるササゲは、ただ嘆くばかり。

 人間の賢さも愚かしさも愛する彼女だが、これはいただけなかったようだ。


「せめて、人の手で解決されたことを良しとしよう。ことが明るみになり、誰もが知っているということは、人間が正義を失っていない証拠だ」


 無関係だったはずの麒麟たちが、その大事件の詳細を知っていること。

 雪女のコゴエは、その点に救いを見出していた。


 なお、狐太郎。


(俺のところに直接来なくて良かった……)


 モンスターパラダイス2のラスボスの姿は、彼も覚えている。

 もしも彼女が目の前に現れたら、正気を保てていたかわからない。


(RPGのラスボスの中でも、屈指の可哀想なキャラだもんな……)


 3のラスボスである麒麟たちは、全員そろって究極のモンスターを知っている。

 それ自体は、時系列的におかしくない。だが1の主人公ということになっている狐太郎は、知っていると絶対におかしいのだ。

 少なくとも四体は、なぜ狐太郎が知っているのか疑問に思うはずだった。


(というか、ノットブレイカーとかいうAランク上位モンスターを倒した奴らがいるってことは……8以降はやってないからわからないけども、5、6、7の主人公勢の誰かか、全員が来たってことか? 薄い本に長年君臨してきた5の主人公と、実写映画化された6の主人公と、煙将棋みたいなストーリーを地で攻略した7の主人公か……)


 7のストーリーを思い出して、陰鬱になる狐太郎。


(ゲームのレビューを思い出すな……)



『モンスターパラダイス7は、モンスターパラダイス2の正当なる後継者である』


『なぜ2の後継者なんぞ作ったのか、私にはわからない。このシナリオを作った奴は、もしかしてゲーム自体嫌いなのだろうか』


『ネタバレは避けるが、2と違ってブラックジョークさえない。明確に加害者と言えるものさえいない』


『そして主人公の取るべき選択が、あまりにも悲壮すぎる』


『もしかしてこのゲームは、社会実験なのだろうか。ゲームという二次元を通して、三次元の私たちを攻撃しているのではないだろうか』


『ファンタジーで存在している、悲しい感情を相手に与える攻撃とは、このストーリーのようなものではないだろうか』


『もはや、このゲーム自体が、プレイヤーへの攻撃である』


『だがそれでも、最後まで手が止まらなかった。このシナリオは、痛々しすぎて、一気に読まなければ精神が保てなかった』


『このゲームには、満足感も達成感もない。クリアしたものを不幸にするという製作者側の鉄の意思と、虚無感だけが残るだろう』


『絶対にお勧めできない名作、としか言えない』


『少なくとも、お子さんが欲しがっても、親御さんやお爺さんたちは止めるべきだろう』



(会いたくねぇ……)


 子供向けゲームなのに、大人がやっても心を折られるシナリオだった。

 特に最後の最後まで、何一つ救いのない終わりだった。

 それを人生として歩み切ったものなど、もはや英雄さえ通り越した何かである。


「……ま、まあ! とにかく、強い人が来てくれて良かったよ! うん! そ、そうなんですよね?!」

「ああ、アイツは強かったぜ」


 良かったことを探す狐太郎。

 そう、ホワイト・リョウトウのことも忘れてはいけない、忘れたら問題だった。


「いやあ、強くなっておいてよかったぜ。いっぺん負けて逃げた奴に、追い抜かれたんじゃあたまらねえからなあ」


 新しいライバルの登場に、ガイセイも張り切っている。

 笑っているが、目は真剣だった。


「良かったなあ、狐太郎。これでいつでも引退できるぜ」

「は、ははは! そうですよね!」


 戦力が増えて、出番が減る。

 それは確実に、いいことだった。


「大変です、狐太郎様!」


 その時である。警鐘が鳴り響き、部屋の中にネゴロ十勇士が入ってきた。


「基地の外で、ラードーンとエイトロールが乱闘を! このままだと突っ込んできます! ジョー殿と新入りが抵抗していますが、まるで抑えられず!」


「……みんな、行こうか」


 狐太郎の戦いは、まだ始まったばかりだった。

4 ラスボス カセイ兵器『純血の守護者』

ラスボス限定装備の餌食 実質イベント戦


5 ラスボス 世界を滅ぼした獣×5 世界を滅ぼした獣・融合体

ラスボス限定アクション 実質イベント戦


6 ラスボス フロンティアスピリット

ラスボス限定装備の餌食 実質イベント戦


7 ラスボス 主人公の選択によって変わる

倒した敵との共闘で倒す 実質イベント戦

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにラスボスでコレはダメだなぁ(笑) ゲーム後のエクストラボスなら良くある話なんだけどさ。
[一言] >薄い本に長年君臨してきた5の主人公 ハーレム主人公かと思ってたら、チョロインだった。
[一言] ジョーさんとホワイトくん、ラードーンとエイトロールの乱闘に巻き込まれてたわ ホワイトくん、二度もハンター試験中に狐さんのモンスターに救われることになったら……気まずい、もの凄く気まずい
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