死を忘れるな
かくて四人は課せられた試験を乗り越え、何とか勝負の土台に立つことが許された。
この場合の許されたとは、実家、学校、そして大公である。
もちろん大公も生徒四名に直接会って面接をしたが、前回のようなことにはなるまいという判断をしていた。
彼らの生死はともかく、彼らが狐太郎の護衛になるかどうかは。
もはや、本人たちの問題になっている。
学生にとっては長い時間準備をしていた四人だが、その存在が狐太郎へ教えられたのは、他の志望者たちのほとんどが諦めた時期だった。
四人全員がクリエイト技を習得したとき、都合よく騒動も収まりを見せていたのである。
ようやく普段通りの生活ができるようになった狐太郎は、現れた大公を一人で迎えていた。
「この度はお世話になりました」
「いいや、気にすることはない。むしろ私が礼をいうべきだよ。結果としてカセイの経済は活性化した。その分問題も起きているが、衰退するよりはずっといい」
「そうですか……お気遣いありがとうございます」
「それよりもだ……あの者たちは役に立ったかな?」
「ええ、十勇士ですね? 彼らの尽力のおかげで、静かに過ごすことができました」
権力のある者は、白い物を黒いと言える。
仮に悪しきことへ手を染めている者がいても、それを糾弾することが許されない場合がある。
通常ならば警備の任務についていても、明らかに怪しいものを見逃さざるを得ないこともある。
また虚偽が濃厚であっても偉い人物の名前を出されれば、そのまま通さなければならないこともある。
そしてそうした前提がある以上、怪しい人物がいれば身元を問いただす必要があるのだ。
だが今回、ネゴロ十勇士は大公の権威を得ていた。
通常とは逆で、むしろ相手に気を使わせる側である。
もちろん権威を乱用すれば罰を受けるが、正しいことをしている限り糾弾されないというのは、理不尽な世界に生きる者にとってこの上なく楽なことだった。
「彼らの忠義は、大公様あってこそ。私も感謝しております」
「はははは! なに、当初の約束を果たしているまで!」
上機嫌に笑う大公。
なお、狐太郎が微妙に後ろ暗い顔になっていることは、流石に気付いていなかった。
「さて……今回来たのは、まさにその件だ。君の新しい護衛候補……その見込みがある者を用意した」
護衛候補ではなく、その見込みがある者。
なんとも迂遠な言い方だが、実際その通りである。
ブゥであれネゴロ十勇士であれ、いままで狐太郎へ紹介された護衛は、その時点で十分な力を備えていた。だからこそ護衛の候補だったのである。
だが今回の者たちは、まだ見込みがあるというだけだった。
「ドルフィン学園在学中……生徒ですか……」
「まだ本決まりではない。四人中三人は一応クリエイト技が使えるという段階で、とてもではないが護衛が務まる力量はない。だが……少なくとも候補にはなりえると判断して、君に会わせるということになった」
大公から渡された四人の資料、書類を読む狐太郎の顔は渋い。
バリア要員と回復要員が就任してくれるのはありがたいが、実際に来るのは早くとも来年だというし、そもそも学生だという。
当人たちの実力が抜きんでているわけでもないということで、彼が難色を示すのも無理はなかった。
「……貴族の学生さんですか」
「不満かね?」
「……正直に言わせていただければ」
中学生に守ってもらう大人ってどうなんだろう、とは思わないでもない。
ただその一方で、もうすでにブゥという年下に守ってもらっていることも事実だった。
「それに志望動機がドラゴンズランドに行きたいから、というのも……」
特に狐太郎へ不利益になるわけでもないので、生徒たちの目的も明かされていた。
なんとも荒唐無稽な目標に見えるが、微妙に現実的なのが悩ましい。
「そう深く考えなくてもいい。少なくとも私は、彼らが辞退しても咎める気はないつもりだ」
言外に、けた外れの無礼をすればその限りではない、と匂わせている。
いいや、狐太郎が勝手に察しているだけなのだろう。だが実際に聞けば、そんな返事が返ってくるに違いない。
「Aランクモンスターが跋扈するこの森で働くには、ガイセイや君のように対抗できるだけの力を持っているか、あるいはある程度の力を持っているうえで『ここでなければならない』という目的意識がなければ成立しない。そういう意味では、ドラゴンズランドに行きたいのも、立派な理由だろう」
今回多くの志望者が現れて、その都度挫折していった。
しかし流石に、全員が基準を満たしていなかったわけではない。
一灯隊に比肩する質を持ったハンターたちも、相当数いたのだ。
だがその彼らをして、この森はハードルが高かった。
一度や二度突入して帰ってくるならまだしも、ここで生活して日常的に戦うのは嫌がったのだ。
一灯隊並みの質があれば、ここで働かなくてもどうとでもなる。ならば危険度がもう少し低いところを探る、というのは賢明だろう。
「彼らも若い。君と顔を合わせたり、或いは実際にAランクモンスターを目にすることがあれば、それだけでしり込みしてしまうかもしれない。今回の顔見せは、それを確認するためでもある。合否云々は気にせず、彼らのやる気を試してあげてくれ」
大公の雰囲気は、とても朗らかだった。
どんな動機であれ、自分の国を守る気概を持った貴族の若者がいることが、それだけで嬉しかったのかもしれない。
それを見てしまえば、狐太郎も最初から断ることはできなかった。
※
大公が帰った後、狐太郎は自分の護衛と仲間を全員集めていた。
最初は四体しかおらず、その後もしばらくはブゥだけだったのだが、今はネゴロ十勇士とフーマ一族が来たことにより大所帯となっている。
並んでいる彼らを改めて見て、狐太郎は学生たちを受け入れるべきだと思ってしまった。
(やっぱり回復役は欲しいよなあ……)
Bランクにも通じるか怪しい防御役というのは、斥候がいる今となっては意味が薄いのかもしれない。だがその一方で、回復役は欲しかった。
(というか、仮に俺がこいつらだったとして……回復役の都合がつきそうなのに、審査もせずに追い返すなんてしたら……まあ不義理だよなあ)
ただでさえ斥候たちの怪我が重なっているのだ、現地で回復できれば安定感は増す。
(それに……クリエイト技が使えるようになるまで努力したのに、無下にするのもよくない……)
狐太郎もこの世界に来て長い。
この基地の基準ではなく、世界の基準としてクリエイト技を習得している人間が少ないことはわかっている。
それだけ難しくて面倒なことを、わざわざやってくれたのだ。やはり試験ぐらいは受けさせてあげたい。
「ねえクツロ、ご主人様どうしたの? うんうんうなってるけど……」
「黙ってなさい、アカネ。きっといろいろと考えてらっしゃるのよ」
アカネたちが戸惑う中でも、狐太郎は悩んでいた。
もとより合理的に考えれば、試験をしないという選択肢はない。
だがそれでも悩むからこそ、彼は周囲からそれなりの信頼を置かれているのだ。
「ああ、ごめん。呼んでおいて何もしゃべらなくて悪かった。実は……新しい護衛候補が顔見せしに来ることになったんだけども……」
狐太郎は状況を端的に説明した。
それを聞いても、全員特に拒否感はないようだった。
(まあネゴロ一族は文句言えないだろうしな)
如何に力不足とはいえ、専門家が来てくれるのはありがたい。
森の過酷さを知るがゆえに、皆が肯定的だった。
「侯爵家のお嬢さん方やお坊ちゃん方がわざわざくるなんて、物好きですねえ……」
(確かにな)
なお、ブゥは否定こそしないが、呆れてはいる模様。
狐太郎もまったくの同意見である。
「ああ、そう言えばブゥ君も貴族の当主なんだよね。爵位はなんだっけ」
「伯爵ですよ。ちょっと前は子爵でしたけど、狐太郎さんの護衛になったので一つ上がりました」
「……爵位って上がるものなのかい」
「戦争で武勲を挙げれば結構上がりますね。逆に家が困窮したら簡単に下げられるので、結構頻繁に変わります」
狐太郎のイメージでは、爵位とは先祖から継いで、子供へと伝えていくものだった。
だが少なくともこの国では、爵位とは上がったり下がったりするものらしい。
「ただ、公爵は例外ですね。アレって王族みたいなもんですから、公爵は王家の血を入れてないと名乗れません。なので侯爵家は、実質的な貴族のトップですね」
「へえ……じゃあ今度来る侯爵家の子たちは、かなり偉いと」
「……狐太郎さんは第一王女様と結婚するのが内定しているんで、ほとんど公爵なんですが」
「……そうなの?」
「そうですけど」
いつの間にか公爵(予定)になっていた狐太郎。
それを理解した彼は、しばらく思案した後改めて問う。
「それはこの状況でなにか役に立つのかい?」
「まったく」
「だろうね」
子爵から伯爵になったルゥ家当主と、外国人から一気に王族になったAランクハンター。
二人は家の格というものが、なんの役にも立たない、生のままの己が試される地に来ていることを理解していた。
(家柄だけで食っていけたらどんだけ楽か……)
生のままの己なんてどうでもいいから、楽に生きたいと思う狐太郎である。
未来の公爵だから仕方ないかもしれないが、まさに滅私奉公している最中だった。
カネも家柄も名誉もあるのに、身の安全さえおぼついていない。
むしろ名も知れぬ誰かの身の安全を守っているからこそ、その金と名誉と家柄を手に入れたのかもしれない。だがちょっと贅沢ができるぐらいの、比較的裕福な普通の暮らしと交換してほしかった。
「ドラゴンズランドねえ……あんまり面白そうじゃないから、私は行きたくないわねえ」
なおササゲは、四人の生徒の動機自体に否定的だった。
「え、ササゲはドラゴンズランド行きたくないの? なんで?」
「だって、竜が支配する土地なんでしょう? 人間が繁栄してそうじゃないし、ドラゴンが楽しく過ごせるだけで悪魔は楽しくないでしょうし……」
「そんなことないよ、きっと! ドラゴンズランドはきっと、テーマパーク的な夢の楽園だよ! 多分!」
(いや、それは流石に……伝説の土地が観光名所や娯楽施設だったら、逆に嫌だし……)
ドラゴンの巣窟が楽しくなさそうと言われて反論しているアカネだが、彼女の想像する楽園はどっちかというと人間の作りそうな楽園であった。
むしろドラゴンズランドがそういう国だったほうが、よっぽど四人の生徒にとっては幻滅だろう。
「じゃあドラゴンの自治区がどんなところだったのか思い出してみなさいよ、何が名物だったの?」
「……火山の近くの展望台にある観覧車」
「……楽しかった?」
「生まれたところの名所だと、逆に行かないじゃん」
「じゃあこっちの世界のドラゴンにも期待できないわねえ」
悪魔であるササゲは、人間が支配している世界の方が楽しいと言っていた。
それは逆に言って、他の種族が支配している土地にも興味がないということだろう。
アカネの力ない反論に対して、ササゲは取り合わない。
「悪魔には自治区そのものがないじゃん! なのになんで他所の自治区に偉そうなこと言うの?!」
「悪魔だけで自治区作ってどうするのよ。詐欺師だけで国作るようなものじゃない、学校だけあれば十分よ」
(自分の種族のことを、詐欺師って言い切りやがった……っていうか詐欺師の学校って……)
悪魔が同胞へどんな教育をしているのか、気になるようで知りたくなかった。
「ねえセキト……悪魔って学校に通うの?」
「通ったことはないですが、陛下は通われていたようですね。でも悪魔の学校は、確かにあったほうがいいでしょうねえ……私も通ってみたかった」
「セキトが通ってみたい学校っていったい……」
なお、悪魔使いも同様の模様である。
「これだから竜や悪魔は……その点鬼はとても文化的よ」
「どうせ肉と酒しかないんでしょう?」
「ち、違うわよ! 食肉用の牧場と酒造倉よ! 間違えないで!」
「同じじゃん」
「竜と違って自給自足しているのよ! 鬼の自治区はちゃんと自治してるの!」
「それって生活に必要なもので、文化じゃないんじゃ?」
「食文化は文化でしょう! それに名物ぐらいあるわよ! 土俵とか四角いリングとかコロッセオとか!」
「同じじゃん」
「全然違うわよ!」
むきになって言い合うクツロとアカネ。
果たしてどちらが悪いのか、どちらも悪いような気がするので止められない狐太郎である。
「とにかく……ドラゴンズランドはきっといいところだよ。人間と竜が共存共栄する、文化的で文明的で素敵で立派で便利で楽しいところだよ」
(竜王の語彙が貧困すぎる……)
とてもふわふわとした表現でごまかそうとしているが、たぶん本人も『竜が人間を支配する国』がどんなところか想像できていない。
何分彼女は『人間が他のモンスターを支配する世界』から来たので、人間を支配しているドラゴンがいまいち理解できていない。
如何に人語を解するとはいえ、クラウドラインたちよりもアクセルドラゴンの方へ親しみを持ってしまうのだ。
「玉手箱を作らせているんだから、文化はあるんじゃないか? それにクラウドラインたちも礼儀正しかったし、ここのラードーン達よりは文化的に振舞ってるだろう」
「ご主人様! あんなのをドラゴン扱いしないでよ!」
擁護しようとしたのに、アカネはぷりぷりと怒り出した。
やはり彼女の中でも、ラードーンはドラゴン扱いではないらしい。
(お前の見た目の方がドラゴンっぽくないんだけどなあ……)
なお、狐太郎の中ではアカネの方がドラゴンらしくない模様。
「ご主人様だって、サイクロプスと人間を一緒にされたくないでしょう?! 頭がたくさんある巨人を、人間扱いしてほしくないでしょう?! 同じだよ!」
「ああ、うん、俺が悪かった」
発情期の若者をトカゲ扱いするのは構わないらしいが、ラードーンをドラゴン扱いするのはダメらしい。
やはり倫理観とは、手探りで慎重になるべきだった。
「ご主人様。少々よろしいでしょうか」
ここで挙手したのは、やはり頼れる雪女であった。
「なんだ、コゴエ」
「その新しく来る四人ですが、悪く言えば生活が懸かっているわけではないですし、カセイを守りたいと思っているわけでもないのですね?」
「ああ、そうらしい」
「一灯隊が怒るのでは?」
「……そうだな」
コゴエの提言を聞いて、狐太郎の心中は一気に暗くなった。
(ネゴロ十勇士は生活が懸かっているし、そもそも裕福じゃないから来ても文句は言われなかった。ブゥ君の場合はまあ……事情が込み入っているけども、とくに敵視はされていない。でも今回の四人はなあ……)
ドラゴンズランドに行ってみたいので、前線基地で護衛として働く。
それは真面目で潔癖な一灯隊にとって、とても苛立たしい動機だった。
(長居するわけじゃないとしても、あとあとトラブルになりそうだ……)
※
さて、当日である。
もうすぐ見学という名目で、侯爵家に生まれた四人の生徒たちがやってくる。
狐太郎と四体、ブゥとセキト、ネゴロ十勇士とともに森へ入る予定になっていた。
危険地帯へ飛び込むのだから見学どころではないが、書面上は見学扱いだった。
そして書面上は、狐太郎の方が護衛であり案内ということになっている。
将来的には公爵だが、現時点ではただのハンター。まだ在学中の侯爵家のご子息たちを護衛にするなど、書面上許されないことだった。
というよりも、正式だろうが略式だろうが、四人を護衛に据えてしまうと責任が生じる。
狐太郎を守れなかった場合だとか以前に、現状で力不足が明らかなものをどうして護衛にするのか、という話であった。
よって今回は、狐太郎を守らなくても書面上問題ない。
「狐太郎様、今回は我が国の貴族の子供を受け入れていただきありがとうございます。私は引率という名目で四人を監督し、監視しますのでよろしくお願いしますね」
(貴女が一番怖い)
最初会った時に来ていた、貴族の服。
ランリに切り裂かれてしまった、ふわふわでふりふりの服を着ているリァン。
その彼女が一緒にいるというだけで、狐太郎は具体的な不安に脅かされていた。
「……あの、公女様、危ないですから、その……残っては?」
「狐太郎様へお荷物を預けたまま死地に送り込みますのに、どうして私が安全なところにいられましょうか……」
「そうですか……」
危険人物の傍にいたくなかったのはブゥも同じようで、安全地帯に残ることを推奨する。
しかし危険人物は固く拳を握りしめて、有事に対して鉄拳を振るう構えだった。
「ご安心ください、狐太郎様。如何に書面上は危険地帯の見学ということになっていましても、彼らは元々護衛志望。その決意を裏切るようであれば、この私が死をもって教訓を与えましょう」
(当人に生きない教訓は、見せしめって言うんだと思う)
リァンがケイやランリを殺したことを教訓にして、四人は面接などを重点的に指導されていた。
それを思えば、見せしめは成功したのだろう。尊い命は失われたので、収支があっているかはわからないが。
「やあ、狐太郎! 今回は公女様と一緒に森に入るんだってな! Aランクハンターは公務もあって大変だな!」
「え、ええ……」
そんなことを考えている狐太郎の下へ、一灯隊の隊長リゥイが現れた。
その顔には、こわばった笑みが張り付いている。
「なあ狐太郎! 一応念の為言っておくが! お前は書面上公女様の護衛じゃないよな! 公女様にもしものことがあっても、公に罪に問われることはないよな!」
「そ、そうらしいですね……」
その笑顔のまま、狐太郎の肩に手をかけた。
「おおやけには、な! おおやけには、許されるけどな!」
笑みが、一瞬消えた。
「な?」
また笑顔に戻った。
「はい……わかりました」
狐太郎の顔から、血相が消えた。
大公の娘と孤児院で育ったハンター。
生まれも育ちも天と地ほどに違うのだが、二人の思考はシンクロしていた。
まさに一灯隊魂を感じさせる危険性と攻撃性だった。
「わかってるならいいんだ! 義務がないことはわかってる! でも手が空いたらでいいから! 公女様のことも気にかけてくれよな!」
「はい……」
「いま、はいって言ったよな?」
狐太郎は思い出していた。
貴族の子供たち云々ではなく、そもそも自分自身が一灯隊から嫌われているということを。
「はいって言いました……」
「よし! じゃあ頼んだぞ! 貴族の子供は見殺しにしてもいいからな!」
何も隠せていない隊長は、張り付いた笑みではなく攻撃的な笑みになって去っていく。
「あの、狐太郎様。隊長も言っていましたが、私のことも貴族の子供も見捨てても構いませんので、いざという時は自分を大事になさってくださいね?」
「はい……」
やさしさのかけらもない公女様からの熱い許可。
それを聞く狐太郎は、改めて自分が一灯隊を苦手にしていることを自覚していた。
「……大丈夫ですよ、公女様。俺はAランクハンターですよ?」
ネゴロ十勇士とブゥ、セキト、そして四体は見た。
「自分の身も他の人も、全部守ってみせますよ!」
誰も選べないからハーレムルートを選ぶような、そんな後ろ向きな決意表明だった。
とても嫌そうな顔をしつつ、彼は己のなすべきことを宣言した。




