嫌よ嫌よも好きの内
狐太郎たちがこの世界に来たのは、おおよそ春の始まりごろであったらしい。一行は初めてこの前線基地での冬を迎えていた。
カセイ近くでは夏に厳しさはなく、冬は降雪が多い。雪国というほどではないが、基本的には寒い場所のようだ。
しかしカセイ近くの前線基地では例年よりも積雪が多く、その周囲は前線基地の城壁がよくわからなくなるほどに積もっていた。
その原因が何なのかは誰もが知っていることだが、幸い一灯隊から苦情は来ていない。
それもこれも、火の精霊使いコチョウが尽力しているからだった。彼女は前線基地の城壁内部で術を使い、冬場であるにもかかわらず火の精霊による暖房を行っていたのである。
「こんなことを言ったら失礼かもしれませんが……怪しい宗教団体みたいですね」
「そう思われても仕方がありませんが……」
なお、燃料はモンスターの死体である。
積み上げられた大量のモンスターの死骸が、火の精霊によって燃え上がっていた。
とても当たり前だが、燃料になるモンスターなどそうそうはいない。
よく『脂肪を燃焼させる』とはいうが、実際の脂肪は火を点けたぐらいで燃えない。
モンスターも一応は生物なので、体の中に水分を含んでおり、それが燃焼を阻害するのだ。
まあ細かい理屈は置いておいて、動物の死体が薪代わりの燃料になるわけがない。
それがこうも燃えているのだから、彼女と火の精霊がよほど頑張っているのだろう。
(しかしモンスターの死体が役に立つところなんて、この世界に来て初めて見たな……普通はなんかの役に立つもんだが、今までは本当にただ殺していただけだし……)
もちろん大型モンスターを燃やしたぐらいで、街の中が全部暖かくなるわけがない。
それこそ街中に火を放たなければ、温度を維持することはできないだろう。
その点も含めて、彼女は術を使っているのだろうと思われる。想像するだに、面倒な話だった。
「狐太郎さん。私は今、修行をしています」
「え、ええ……」
「私……ここに来る前から、心の炎が消えていたんです」
(うん、消えてたな)
狐太郎が思い返すのは、弟が死んでいるにもかかわらず、周囲から責められて泣いていた姿。
狐太郎たちが、この世界の過酷さを思い知ったシーンでもある。
(失言をしただけの弟が裁判もせずに現行犯処刑されて、しかもそれが原因で学部が潰されて……それでも俺に頭を下げに来る……心が燃える方がどうかしてる)
あの状況で心が燃えていたら、むしろ異常だろう。
人の心には、時として鎮火する時間が必要なのだ。
(思えばアルタイルさんも……いや、言うまい)
なお鎮火するために自分の指をへし折るのはNGである。
周りの人の心も鎮火するので、もう少し穏やかに解決していただきたい。
「この前線基地で働き始めて……自分の卑小さを思い知るばかりでした。私も自分の力に少々の自信はありましたが、ここでは雑兵同然で……救いがあるとすれば、アカネさんのサポートをすることができたことぐらい」
なんのかんの言って、現在前線基地の戦力には余裕がある。
それもこれも、アカネと蛍雪隊のコンボが強力極まりないからだ。
それこそ最上位のAランクモンスターがやってきても、シャインが拘束して、アカネをコチョウが強化すれば、それで大体勝ててしまえる。
彼女一人が評価されているわけではないが、それでも彼女の恩恵はとても大きい。
(……最初から彼女が来ればよかったのでは)
氷の精霊であるコゴエと、火の精霊使いであるコチョウは相性が悪い。
それは事実だが、火竜であるアカネとコチョウは相性がいいのだ。
だったら最初からコチョウがここへ推薦されていれば、少なくともランリが殺されることはなかっただろう。
もしかしたら、ケイだって殺されずに済んだかもしれない。
「……」
「……」
狐太郎はコチョウの説明を聞いてその疑問に行きあたったのだが、コチョウ自身も自分の心中を言葉にして整理したことによってその事実に気付いた。
燃え盛るモンスターの死体の前で、二人は黙り込んだ。
(なんであんなのをよこしたんだろう……)
(わ、私に偵察は無理だもの……ランリの方が向いていたもの……だから私がここへ推薦されなかったのも、まあしかたがないんだもの……)
世の中には、気づかないほうがいいこともある。
(いやでもなあ……コゴエのところに火の精霊使いをよこすのに抵抗があるのもわかるっていうか……)
(そもそも私は受けていたかしら? もしもランリが次の候補だと知っていたならともかく……いえ、昔の私なら来ても辞退していたと思うし、結局は同じよね……)
二人は自己欺瞞をはじめた。
もちろん二人に選択権もなにもあったものではないのだが、それでも気付いてしまった事実をごまかすには自分を騙すしかない。
自分を納得させないと、もしもの可能性にとらわれてしまうのだ。人の心は、弱いものである。
「と、とにかく! 私は強くなるって決めました!今はエンチャントを習っているんですよ! この前線基地の内部に熱を留めるように、いろいろと仕掛けもしているんです!」
「そ、そうなんですね! なんか窒息しそうですけど、大丈夫なんですか?!」
「大丈夫! 通気もしているので!」
「それは凄い!」
二人は犬が吠えるように勢いをつけて話を再開する。
とにかくしゃべらないと、悪い考えが頭を離れてくれなかった。
お化け屋敷で恐怖をごまかすために、歌を歌う子供のようなものだった。
「……とにかく私は、冷厳なる鷲アルタイルにお会いして……その力に見惚れました。憧れたんです」
一旦悲しい過去を振り切った彼女は、美しい憧憬に浸る。
過去のすべてが、必ずしも悲しいとは限らないのだ。
(俺は自分の指を折るところしか見ていないから何とも……)
なお、狐太郎は冷厳なる鷲の残念なところしか見ていないので、自制心があるのかないのかわからないような振舞をしているアルタイルのことしか見ていない。
「私は、この地でお金を稼いで、各地の精霊学部へ寄付することしか考えていませんでした。でもそれだけでは焼け石に水、私自身が高みを目指さないといけないんです」
精霊使いの頂点は、本当に素晴らしい実力を持っていた。
精神的にも技術的にも体術としても、どれをとっても悪しき点はなかった。
見習うべきところが多すぎて、自分の至らなさに絶句した。
「いつか後輩たちに憧れられる、立派な精霊使いになるために」
「そうですか……」
なお狐太郎は、今現在自分の至らなさに絶句している。
果たして自分たちの後輩が現れたとして、憧れられてもらえるのだろうか。
もちろん役割は果たしている。
その一点だけは一灯隊も認めているので、たぶん誰もが認めてくれるだろう。
だが憧れてくれるかと言えば、否である。何一つ尊敬に値する点は見つからない。
「そ、そういえば……少し伺いたいんですが」
「なんでしょうか」
「精霊使いには、どんな資質が必要なのでしょうか」
あくまでも精神的な話ではあるが、悪魔は喜怒哀楽がはっきりしていて、なおかつ切り替えの早い人間を好む。
アクセルドラゴンやワイバーンの場合は、忍耐強さと肉体的な強さを求めていたらしい。
さて精霊は、何を求めているのだろうか。
「精霊が好きなことですよ」
「……割とシンプルですね」
「ええ、シンプルです。精霊には言葉が通じませんが、だからこそ感情がダイレクトに伝わってしまう。つまり精霊のことをうっとうしいと思っていたら、そのまま嫌われておしまいです」
シンプルではあるが、繊細な話だった。
なるほど、と納得する狐太郎だが、それを聞いてきたこと自体がコチョウには面白いことのようだった。
「狐太郎さんも、コゴエさんのことを好きでしょう?」
「ええ、一番信用しています」
「それで十分ですよ。好意といっても、幅は広いですからね」
クツロは酒と肉にだらしないし、ササゲは人間を嘲るのが好きだし、アカネは踏んづけてくる。
その関係もあって、無欲で誠実なコゴエに対して、狐太郎は一番信頼を寄せていた。
もちろん、信用ともいえるのだが。
「普通の人間なら『こいつは使える奴だ』と思われることを嫌ったりします。でも精霊はそうでもないですよ、邪険にしたり軽視しない限りは、信頼や信用さえ好意的に受け止めます」
「そういうものですか」
「コゴエさんは普通の精霊よりも反応は薄いですが、それでもちゃんと感情はあります。それはご存知でしょう」
「……そうですね」
狐太郎が納得したところを見て、コチョウは嬉しそうに笑った。
「私……昔から思っていたんです。精霊とは心を通わせることができるけど、お話ができたらもっといいかなって」
人語を解するコゴエと話をできたのは、皮肉にもそれを喜べない環境になった時だった。
だがそれでも、案外コゴエはマメに彼女へ話をしに行っていたと思う。
「話をしてわかったんです。やっぱり精霊と人間は、決定的に違うんだって……精霊はご飯も食べないし寝ないし、恋もしないんだって」
(コゴエはカレー食うし寝るけどな)
「でも、お友達にはなれるんです。それを確かめることができただけでも、コゴエさんには感謝しています」
精霊が好きなことが、精霊使いには大事。
そう語る彼女は、確かに精霊を好きなようだった。
「狐太郎さんは、ここには寄り道をしに来ただけなんですよね?」
「はい、基地の外にいるコゴエへ話をしに」
「だったら早く行ってあげてくださいよ。きっと……貴方が来ることを待っています」
※
狐太郎の着ている服は、攻撃には弱いが環境の変化には強い。
溶岩地帯でも平気であり、極寒の地でも少し冷えるだけで済む。
そういう意味では、数少ないチート能力と言っていいだろう。
もちろん、襲われたらそのまま死ぬが。
「……コゴエ」
前線基地の、城壁の外。
そこで多くの氷の精霊を相手に、コゴエは戯れていた。
ある意味雪女らしい、幽霊のような存在感。
その周囲で、多くの雪が舞い散っている。
「ご主人様」
コゴエが狐太郎に気付けば、周囲の精霊も狐太郎に近づく。
まるでスキューバダイビングで群れてくる小魚のようで、可愛らしい好ましさがあった。
「コゴエ、ずいぶん好かれているな」
「ええ、同種ですから。興味を持たれています」
「そうか……だからだろうな、雪がこんなに積もるのは」
「ええ……コチョウがいなければ、この基地も大変でした」
前線基地にも多少の雪は降りかけるのだが、それはコチョウがそらしているらしい。
というよりも、火の精霊の力が強い前線基地の内部には、氷の精霊も風の精霊も近寄りたがっていないのだ。
「わざわざ申し訳ありません、こんな雪しかないところまで。どのようなご用件ですか?」
「退屈してるんじゃないかって思ったんだけど……そうでもないみたいだな」
「いえ、退屈でした」
同種になつかれていたのに、暇だったと言い切るコゴエ。
おそらくおべっかでもなんでもなく、本心から退屈していたのだろう。
「退屈なのか? お前ってこういう寒いところの方が快適なんだろう?」
「もちろんです。人間が普段から生活する温度は、私には不快です」
「じゃあ退屈……いや、関係ないな」
「ええ、関係ありません」
雪の中で立っていて、退屈だったという雪女。
正直どうかと思うが、確かに楽しくはないだろう。
快適な温度というのと、楽しいことはまた別だ。
「それに変な言い方かもしれませんが、私にとって快適というのは好ましいものではないのです」
「……そういうものか?」
「快適というのは、突き詰めれば何も感じないということでしょう」
「……不快感がないなら、まあそういうことかもな」
「私にとってこの雪の中は、生まれた環境そのものです。はっきり言えば、これが自然で当たり前で、特に何も感じません。よって感情が動かないのですよ」
突き詰めれば、快適すぎるとすぐ飽きるということか。
まあ分からなくはない話である。もちろん彼女はわかるように話しているだけなので、実際には細かい齟齬が両者の間にあるのかもしれないが。
「感情が動かないと消える、か……」
「ええ、消えることは恐ろしいです」
彼女が掌で雪を受け止めると、その雪に無数の氷の精霊が群がる。
それは雪の精霊の、ちょっとした遊びなのかもしれない。
「人間は快適な状態になると『何も考えられなくなる』と言って喜び、楽しみ、尊びます。ですが私たち精霊にとって、快適すぎてなにも考えられなくなるというのは、恐怖以外の何物でもないのですよ」
雪女は、所詮雪でしかない。雪が降りしきる中にずっといれば、雪に紛れて消えてしまうのだろう。
「忘我の快適さを喜べるのは、肉体がある者の特権です」
「そういうものか」
「そういうものです」
不快ささえ求める彼女は、普段から不快な思いをしながら生きている。
常に熱いと思いながら、嫌々生きているのだ。
そう考えると、苦労をしょいこむ性分である。
「じゃあなんで基地の外に……って、コチョウに気を使ってるのか」
「ええ、冬場は私の力が強くなり過ぎますから。その分溜めもなく強大な力を扱えますが……退屈です」
不快さを求める一方で、他人への気遣いを怠らない。
やはり彼女は、狐太郎に従う四体の中でも特筆すべき人格者なのだろう。
「とはいえ、退屈だと思う心、退屈が晴れる時を待つ心も、適度ならありがたいのですが」
コゴエは狐太郎に寄り添い、手を取った。
おそらく彼女にとって、不快な熱さなのだろう。
だが狐太郎は、そうと知った上で軽く握った。
「適度?」
「ええ、こうしてご主人様や、他の方が話をしに来てくれることを期待するのは楽しいですし、いつか終わるのなら忍耐もできましょう」
「春が楽しみなんだな」
「ええ、冬の私は強すぎますから」
ストレス、という言葉がある。ストレスをため込む、という言葉がある。
本来ストレスとは、刺激を意味する。悪い意味、精神的な意味で多く使われるが、必ずしも悪い意味ではない。
肉体的にも適度な負荷がなければ衰えが始まるように、精神的にも適度な負荷がなければおとろえる。
ストレスとは、刺激とは、持続して同じものを受け続けることを溜めこむといい、それによる偏りこそが悪である。
もしも一切ストレスがなければ、一切刺激がなければ、それはそれで精神に悪影響を及ぼすだろう。
食事にバランスがあり、運動にバランスがあるように、精神にもバランスがいるのだ。
「……なあコゴエ、俺はお前のいいご主人様かな」
「はい」
「り、理由は?」
「適度な刺激を、何時もいただいております」
きっと自分が聞かれたら嫌だろうと思うことを、狐太郎はあえて聞く。
それをさらりと答えてくれるのが、雪女であるコゴエだった。
彼女は自分の想いを受け止める狐太郎のリアクションを見て、さらに話を続ける。
「私はササゲやアカネが嫌いですが、クツロのことは好きです。彼女のことは信頼できます」
「かなり酒と肉にだらしないと思うけど」
「それは本能ですから、仕方がないのでは。私にはわからないことですが、少なくともご主人様もそうお考えでは」
「まあそうだけども」
コゴエは食欲がないので、逆に食欲へ一種のあこがれがあるようだった。
食欲を抑えることは大変なのだろうから、それを理由に他人を嫌いになるのは良くないとでも思っているのだろう。
もちろん、大鬼という種族への理解もあるのだが。
「気の合う仲間同士だけでは、何も思わず感じません。空気のようにそこにいて当たり前の相手、同じように考えてくれる相手、何もかもを察してくれる相手というのは……思考が鈍ってしまいます」
「意識しないってことかな」
「そんなところです。私たちには意識が大事なので」
もしかしたら、哲学が好きなのかもしれない。
相手と議論を交わすこと自体、相手との意見の違いを知ること、それを何とか伝えようとすること、そのために考えて苦しむこと。
それ自体が、彼女には娯楽であり、知的な欲求を満たすことなのかもしれない。
「ササゲもクツロもアカネも……見事にバラバラで、場面場面で戦術なども考える必要があります。それを面倒だと思うかもしれませんが、私は好きですよ」
「まあワンパターンとは程遠いわな」
「逆に、アカネとシャインだけで戦うのも、どうかとは思います。やはり戦うからには、先日のように想いを巡らせないと……面白くない」
感情が乏しく、表現も積極的ではない。
しかし彼女は文字通り、コミュニケーションに飢えていた。
それが分かっただけでも、先ほどコチョウと話した甲斐はあったのだろう。
「アルタイルさんとの戦いは楽しかったか?」
「ええ……想いを巡らせ合えましたし……共通の価値観も味わえました。いつも同じ価値観の相手と一緒というのは辛いですが、たまにはいいものです」
「そうか」
「それに、学べたこともありますから」
コゴエは狐太郎の手をとったまま、彼の前に立った。
そして空いているもう一つの手も、彼に差し出す。
両手を握り合う状態になると、彼女は周囲に目配せをした。
「周囲の精霊にどう意思を伝えるのか……見本を頂きました」
「え?」
「アカネには悪いと思いますので、内緒にしていただきたいのですが」
彼女の周囲に、猛吹雪による竜巻が生じた。
それは狐太郎とコゴエを巻き込んで、上へ上へと押し上げていく。
「おおお?!」
「正直に申し上げて、時折ご主人様を抱えて飛ぶササゲが、羨ましかったのですよ」
まるでスカイダイビングのようだった。
物凄い風圧を下側から受けているが、それでも浮遊感を得られる。
狐太郎はコゴエと一緒に体を地面と平行にして、二人そろって浮かび上がった。
「な、なあこれもしかして!」
「スピリットギフト、というのでしょう。私ではなく、他の精霊の力を借りています」
「お前凄いな!」
「恐縮です。練習しましたので、この程度は」
周囲は雪だらけで、何も見えない。
自分たちがどれぐらいの高度にいるのか、狐太郎にはわからない。
「な、なあコゴエ。まさかこのまま、空の彼方までとか……」
「危ないでしょう」
「そうだよな!」
わからないのだが、コゴエが配慮できることは知っていた。
その点は、アカネとは違う。彼女が同じようなことをしたら、頭をひっぱたくところである。
「下には雪を積もらせておきますので、落ちても問題ないですが……そもそもそんなに高くまで浮かべていませんよ。精々ご主人様の身長程度です」
「思いのほか低空飛行だな」
「積雪は十メートルほどですが」
「……ま、まあまあ低空だな」
さくさくのふかふかとした雪だったとしても、十メートルも積もった雪の上に落ちたらどうなるのか。
確かめたいようで、確かめたくないところだった。
「それにいろいろと考えたのですが、ササゲと違って私が飛ぶとなれば、周囲は雪だらけです。飛んでも楽しくはないでしょう」
「見晴らしは最悪だろうな」
「ええ、ですが……」
まさにスカイダイブ。
コゴエと手を取っている狐太郎は、コゴエと一緒に風と戯れていた。
「たまには、いいでしょう」
「ああ、そうだな。ずっとだときついけど、たまには……」
「たまには、で構いません。楽しみにしながら、また練習しておきます」
狐太郎とコゴエは、雪と風だけの世界で、強い風圧を受けながら手を取り合っていた。
冬が終われば、雪は解けて、精霊たちも消えるだろう。
だが、消えないものはあるし、消えて欲しくないものもある。
消えることを恐れる心さえ、大事な不快感だった。
次回は単発です
アッカの話です