男子高校生と謎の少女
意識を取り戻した俺は、何故か外にいた。
「え、何。今度は外なわけ…って?!ちょっと待て!!!」
「えいっ!!!」
「痛っ!!?」
とき既に遅し、鈍い音を響かせて振り下ろされた杖は俺の腹部へクリーンヒット。
少なくとも、思わずさけぶくらいには痛かった。
ズキズキとした痛みに耐えながら、再び薄っすらと目を開けると、見たことのない少女が立っている。
どうやら俺を殴ったのはこいつらしい。
なんか恨まれるようなことしたっけな…いや、してないはずだ。
「あら、なんだ。生きてたのね!揺すっても反応がないから叩いちゃったわ!」
「…」
あなたのその一撃で死にかけましたが?
まあ、色々言いたいことは山積みなんだが、外にいるんだということを思い出して、慌てて辺りを見回した。
生まれてから約17年、初めて経験した、
『開いた口が塞がらない』
ってこういうことか。
部屋の面影はまるでなく、一面草原。
誰もいない広大な大地の真ん中に何故か俺は放り出されていた。
「聞いてるの?顔色悪いけど、大丈夫?」
「う、うわっ!?」
パニック状態で突然声をかけられたものだから、とっさに差し出された手を叩いてしまった。
初対面で、しかも体調を気遣ってくれている相手に対してこの振る舞いは最低だな。
「す、すいません!!びっくりして…あなたは何も悪くないのに」
オロオロしながら謝罪の言葉を述べる。
すると当然だが、すこし怒ったような口調で少女は答えた。
「ちょっと…それはないんじゃない?」
「は、はい」
「謝れば済むと思ってるわけ?」
「いえ…、ごめんなさい」
はい、怒らせてしまった。俺が全部悪いです。
土下座でもしようかな…そう思った時だった。
「私にだって名前ぐらいあるわ!それなのに、あなたなんて失礼じゃない?」
「へ?」
想像を遥かに超える、変化球な解答が飛んできた。
ということはつまり、俺が手を叩いてしまったことに怒ってたんじゃなくて、名前を呼んでもらえなかったことに怒ってるってこと?
何だそりゃ。
「私の名前はサマンサ・レミファニール!覚えておきなさい!」
「え、あ、はい」
きっとこの子は天然さんなんだな。全力で喉元まで出かけた言葉を呑み込む。
「あなたも名乗りなさいよ、それがマナーよ!私だって名乗ったんだから!」
勝手に名乗ったんだろ。
突っ込みどころが満載過ぎて、どこから指摘すべきことやら。
「お、俺の名前は佐藤進だ」
俺が名前を教えると、ちょっと上から目線の少女は元気に言った。
「進ね!覚えたわ!」
満足そうな笑顔を浮かべているサマンサと名乗った少女は、凄く整った金髪美女だった。
なんで今の今まで気が付かなかったんだろう。
幼気な声とルックスのギャップ、まるで妖精のような、はたまたどこかの国のお姫様のような…ん?
変態さながらの目つきで、サマンサの容姿を舐めるようにして見ていたのだが、ふと違和感を覚えた。