男子高校生の再会
家に帰ってきた俺らは今後の話し合いをするためにテーブルを囲んでいたはずなんだが、俺とリンカが対面して座るかたちで放置されていた。
「すごいにゃ!サマンサの家広いし綺麗にゃ!」
「そうでしょ?私の自慢の家よ!オリビア2階も案内するわね」
ドタドタと音を立てて階段を上っていく2人の背中を見て思わずため息が漏れる。
「広いのは確かだが、綺麗は・・・な?」
数日前に初めてこの家に来た時のことを思い出して苦笑いする。サマンサとオリビアが和気藹々と家の中を行ったり来たりしている間もリンカはだんまりと俯いていて、話しかけるのが躊躇われる雰囲気だ。
「リンカ、聞きたいことがあるんだが」
「何ですか進さん」
「お前の職業、転生者なんだってな」
まあ本人の口から聞かなくても、あの人だかりは本物の充分な証明になるだろう。俺の言葉を聞いたリンカはあからさまに動揺しているようだが、俺には分からないことがある。
「そのことについてと、今後についての話がしたいんだがその前に」
「その前に?」
「サマンサ、オリビアとアイス買ってきてくれないか?」
「アイスにゃ!?」
「ああ、人数分。食べながら話そう」
サマンサたちにお金を渡してお使いに行かせようとするとリンカが立ち上がって
「私も一緒に」
「いや、リンカは俺と相談することがある」
リンカの腕を掴んで引き留めると、抵抗するつもりはないらしくそのまま元居た席に腰を下ろした。
「よくわからないけど、行ってきます!」
「行ってくるにゃー!」
2人で話をするためにアイスを買いに行かせたんだ。今しかチャンスはない。玄関が確実に閉まったのを確認して俺はリンカに言い放つ。
「リンカ、俺の部屋行くぞ」
「え、部屋ですか!?」
「いいから、ほら」
サマンサたちが万が一早く帰ってきても俺の部屋なら会話を聞かれてしまうことはないだろう。これからリンカがパーティーに入って共に戦っていくためには、出来ればあの2人にはまだ話したくない。ややこしくなるしな。
俺の部屋として割り当てられたサマンサの家の二階突き当りの部屋。扉を閉めリンカの方に向き直る。
「単刀直入に言うけど、お前の名前リンカじゃないだろ」
「何言ってるんですか、私はリンカですよ。そうに決まって」
「奈央」
俺が食い気味にその名を口にすると心底驚いたという風にリンカ、いや、奈央は動きをとめる。
「覚えてたの・・・?」
「いやー、もしかしたらと思ったけど。お前見た目も性格も変わりすぎだろ!」
奈央は俺の幼馴染の名前だ。幼馴染と言っても高校は違うところに通っていたから、俺が知っているのは中学の時まで。中学生までの奈央はお世辞にも明るいとは言えないような子でいつも1人で本を読んでいるイメージだったんだが、その面影はなくはきはきと喋る性格、眼鏡を外し短くなった前髪の下にはこんな美人が隠れていたのか。
「いつ気がついたの、見た目じゃ絶対わかんなかったはずでしょ!」
「さっき、人だかりが出来たとき女の子にサインしてたろ?」
「したけど、それが何?」
奈央は全然わかっていない様子だったから、俺は少し昔話をすることにした。




