男子高校生のパーティー募集
「パーティー作らないか?」
サマンサを支援職にしたのは別に嫌がらせのためじゃない。どう考えても俺らだけじゃ戦力不足だからだ。少なくともあと1人はいてほしいよな。
そうと決まれば、まず仲間を集めるところから始めないと。
「パーティーって一緒に戦う仲間よね、楽しそうだわ!作りましょう!」
「よし、じゃあ貼り紙をしなきゃな」
「貼り紙?」
「ああ。神社の掲示板にいっぱい貼ってあっただろ」
受付の順番を待っている時にたまたま見つけた掲示板、これを利用しない手はないと思っていたのだ。他のパーティーがどんなことを書いているのかも確認してきたし俺らでも作れるだろう。
サマンサの家に戻ってすぐに俺らは作業に取り掛かった。書いてある内容はパーティーによってまちまちだったが、あんまり凝ったものを作っている暇はないし最低限度のことだけを書けばいいや。
「本気で魔王退治考えてます。現在のパーティー構成は冒険者と支援職の2人ですっと・・・」
「こんなのでちゃんと集まるのかしら」
「大丈夫だろ、知らんけど。時間を書いてっと」
その日のうちに再び神社へと出向き、俺らは当日を待つのみとなった。正直一日で集まるのかって不安はあるが、今なら勇者登録のために訪れる人が多いため目にもつきやすいだろう。
あまりよく眠れないまま迎えた待ち合わせの日当日。俺はサマンサと共に神社の正面にある飲食店へと来ていた。Happy momentなんて名前だし、イメージは都会にあるお洒落なカフェを思わせる店内なんだが・・・ただの飲み屋だ。向かいに見える神社には昨日に負けず劣らずの人々が溢れかえっているが、まだ日も暮れていないのでこの店はすっからかんだ。
「うわー、まだあんなにいんのか。待ち合わせ場所こっちにして正解だな」
神社内集合にしようと思っていたんだがやめといて良かった。一安心だがこれで誰も来なかったら悲しすぎるな。
「何か頼みましょうよ、おなかすいたわ!待ち合わせまでまだ時間はあるのよ」
「え、ああ。それもそうだな」
集合時刻よりだいぶ早めに来たのだが、既に飽き始めているうちのお姫様を一体どうしよう。俺の心配をよそに当の本人は料理を頼んで幸せそうに食べている。本当に呑気だな、こっちは心配で心臓が飛び出しそうだって言うのに。
「お前、もうちょっと緊張感ってものを持てよな・・・」
「あなたが進かにゃ?」
サマンサにかけた言葉を遮るように、静かな店内に響き渡るロリ声。ぱっと視線を向けるとそこには12歳くらいの女の子が立っていた。
「え?そうだけど、何で俺の名前知ってるんですか・・・?というかコスプレ?」
肩にかかるくらいのセピア色の髪の隙間から覗く猫耳、やけにリアルなカチューシャだな。可愛らしいウエストで絞られたワンピースからは尻尾まで出ている。
「コスプレ・・・?ってなんにゃ?」
「いやクオリティーの高い耳と尻尾だなって。あの、ツッコんでいいのか分かんないけどその語尾のにゃってそういう・・・趣味?」
「よくわかんないにゃ」
首を傾げた少女は言葉を続ける。
「パーティー募集をしてたの進じゃないのにゃ?」
「あ、パーティーの加入希望ですか!?でもまだ子供じゃ・・・」
「失礼にゃ!12歳は立派な大人にゃ!」
「そうよ進、失礼よ」
横でご飯を食べて全く会話に入ってこなかったサマンサがここで初めて口を開く。
「え、だってお前はつい最近成人したわけだろ?それなら12歳はまだ子供じゃないか」
「だってこの子獣人国の子じゃない」
「獣人国?」
「ええ、エルフ国とは別の国よ」
サマンサによるとその獣人国には、この女の子のような耳や尻尾の生えた所謂獣人が住んでいるらしい。一応101箇条は適応対象なのだが、獣人国内では12歳をもって成人扱いを受けるようになるらしい。
「はあ、ほんとに異世界複雑だな。えっと、子ども扱いしてごめんな」
「気にしてないのにゃ!」
「じゃあ、俺らのパーティーに入ってくれるってことでいいんだな?」
「そのつもりにゃ、名前はオリビア。職業は魔法戦士にゃ」
「おお、前衛職は助かるな」
「オリビア、私はサマンサよ!よろしくね」
「サマンサに進、よろしくなのにゃ!」
「これで仲間は増えたし、時間も時間だ。一回サマンサの家に帰ってこれからどうするか話し合おう」
「「はーい」」
すでに待ち合わせの予定より1時間が過ぎようとしていたので、会計を済ませて席を立つ。入口に手をかけて外に出たその時だった。
「ま、待ってください!パーティー募集加入希望なんですけどって、うわっ!!
目の前で美少女がすっころんだのは。




