蘇りの鼓動と乙女の覚悟
白から聞いた俺の選択と心によって変わっていく運命。
「シュガープロジェクト」の世界で今まで存在し得なかった___……‘’ 異形の存在 ‘’。
その‘’ 異形の存在 ‘’ がどういうモノなのか、俺は全く分からない。
ただ、俺の心のしこりに引っかかって、俺の心を支配して離さないそんな感覚が何時迄も続く。
記憶が曖昧でも、頭の中がぼーっとする変な感覚があっても、話せない状況になっても全く気にしていなかった俺の脳と心は白の話に異常な程反応した。
頭の無くしてしまったネジが見つかりそうな、消えてしまった大切な何かを思い出せそうな……。
はっきりしない頭をフル回転させ、がむしゃらに追い求め、探している。
探している ‘’ 何か ‘’ は目の前にあるのに、雲をつかむ様に何時迄も届かないまま掴めずにいる俺。
それはまるで小さい俺が頭の中にいて、敵わない大きな何かと戦っているそんな感覚に近かった。
「プレイヤーである佐藤小太郎は、美しく甘く可愛い乙女を愛でてください 」
そう言われたが目の前にいる、艶やかな着物を着たちーちゃんを見なきゃと思いながらも
白の話が気になって集中出来ない。
「小太郎さん!ちーの着物姿似合うなのです?」
ちーちゃんはいつになく、お淑やかで恥じらう様に口元を隠しながら俺を見つめる。
俺は林檎の時同様、全く話せない。
微動だに動く事すら出来ない。
そんな俺を見てちーちゃんは、ほっぺたを少し膨らませいじけた様に
「ぷくぅ〜!小太郎さん!シュガーキッチンのアイドルであるちーがこんなに可愛い着物を着ているのに何も反応がないなんてどういう事なのです!ちーが優勝だとこの場で決定しても良いくらいちーは完璧なはずなのです! 何をそんなに躊躇する事がなのです!」
さっきまで、恥じらう様にいつになくお淑やかだったちーちゃんは何だったのか?と思うくらい
ちーちゃんのマシンガントークが始まった。
それをある程度聞いていたが、正直何を言っているのか早口過ぎてついていけない。
その俺の気持ちを汲み取っての行動なのか白、自身がうるさいと思っていたからなのかは分からないが、
ちーちゃんの話を遮る様に大きな声を出した。
「少しお黙りなさい!!」
白のその声に、さっきまで早口なマシンガントークで話し続けて止まらなかったちーちゃんのお喋りが止まった。
張り詰めた重い空気が流れる。
ちーちゃんが「でも!」と話し出そうとすると白が遮る様に話し出した。
「あのですね。可憐な第3乙女ちー。貴女は無邪気で十分に甘く可愛い存在です。それはプレイヤーである佐藤小太郎もそう思っています」
そう白が言うと「ならどうして…!!」とちーちゃんが話し出したのでまたそれを遮る様に
「……ただ!貴女の欠点はそのお喋りです。今の着物姿も非常に艶やかプレイヤーである佐藤小太郎の欲望を駆り立てる事の出来る服だとわたくしも断言できますが!そのお喋りのせいでムードはぶち壊しです。いつも元気で明るい貴女はムードメーカーでプレイヤーである佐藤小太郎を幾度と無く救ってきています。なのでそのおしゃべりは長所でもありますが今回はマイナスです。」
そう言って白は、ちーちゃんに近づき優しく頭を撫でながら
「是非次は ‘’ 大人の女性 ‘’を意識した服選びをしてみるのです。プレイヤーである佐藤小太郎も間違い無く気にいるでしょう。期待しています。。…以上が今回の評価です」
そう言って白は微笑んだ。
ちーちゃんはあっけに取られている様だったが事態を理解して、拳を作りガッツポーズをして
「ぜ~ったい!ちーは負けないなのです!大人な女の子になって戻ってくるなのです。小太郎さんは誰にもハートを奪わせないで待っとくなのです」
そう言ってちーちゃんは咳払いをして姿勢を正し、これでもか!というくらいにお淑やかに静々と部屋を出て行った。
……バタンッ
ちーちゃんが出て行って、さっきの話をもう一度白からしっかり聞きたいと心の中で願ってみる。
「プレイヤーである佐藤小太郎……貴方の心はそればかりになってしまいました。このままですと、評価と進行に害を及ぼすし必要の無い記憶を思い出す可能性があります。この角砂糖を口に含むと、事態が変化し導きが変わりますが服用なさいますか?次の乙女が来ます。5秒以内に貴方の御心のままに選択して下さい 」
____……必要のない俺の記憶
心のしこりは間違い無く、その中にある。
俺は何故か、そんな確信があった。
でも害を及ぼすほどの ‘’ 何か ‘’がその記憶にはある。
それを思い出してしまったら、俺は俺でいられない気がしていた。
でも……。
俺の脳は見えないモノに侵食され支配されている様に、白が止める声も段々聴こえなくなり今まで喋ることが出来なかったのに俺の口は勝手に
「いらない」
そう答えていた。
白はため息をつきながら顔の前で何か言うが声が聞こえない。
「…………………」
白に何かの間違いじゃないかと、もう一度なんと言ったか聞こうとすると、部屋のドアが開き白の後ろの方から声がした。
「小太郎…ん……ミニスカポリス……です……どう……です?」
……ミニスカ……ポリス……?
一瞬、目の前に何かが見えたがすぐに消えた。
頭にかち割れそうな痛みと吐き気が俺を襲う。
一瞬見えたアレは何だったのか。
声は聞こえなくても白の口元がさっき言っていた。
「罪人は生き続ける支配の化身」
この意味がどう言う意味なのか、俺は全く理解していなかった。
続く




