論争と冷戦
誰が一番俺の欲望を満たす服を着れるか選手権。
通称コスプレ大会がいよいよ開催される。
俺の知らない前回大会(?)では、結果があやふやになったらしく今回から正式な競技として
開催するらしい……が正式な競技?って……と思いながらも、彼女達がそれで満足するならと
その提案に乗ってみた。
「皆の者!!準備はいいなのです?いっせの〜せで開始なのです!今回の掛け声、進行役はくじ引きの結果、ちーが担当する事になったなのです!だからリーダーであるちーの言う事は絶対聞くなのです!! 」
即席で作ったみかん箱の上に立ち、ドヤ顔でなんだか威張った様な感じでショコラちゃんと林檎に言う。
それを見て、ショコラちゃんはため息を吐き呆れた顔をして
「……たった……一回のくじ……それで威張られても……です……ボソッ」
ショコラちゃんのその一言に案の定ちーちゃんは怒り出した。
「むぅ〜!!ショコラちゃん!! なんか言ったなのです?このシュガーキッチンのアイドルであるちーに対してなんか文句があるなのです? ぷんぷん」
「はぁ……相手に……ならない……早く初めて……です……」
呆れ顔のショコラちゃんと怒ったちーちゃんが顔を付き合わせる。
「おいおい!二人共。小太郎が見てるんだ。喧嘩はやめよう……?」
険悪な空気が流れる中、二人のやり取りを見ていた林檎が止めに入るが二人は顔を見合わせたまま言い合いを辞めず、動かない。
あまりの重い空気に林檎が俺に助けを求めてきた。
「ちょっと〜!小太郎も二人を止めてくれよ!僕だけじゃ……ッ」
そう言って林檎は助けを求める様に俺を見るが、こんな険悪な二人の間に入って喧嘩の仲裁なんて、俺には出来ない。
俺は聞こえないフリをして、その場から立ち去ろうとソーッと後ろに下がると、何かに当たった。
恐る恐る振り向くと真後ろに、白髪の女の子が立っていた。
「何ぼさっとしてるんですか?佐藤小太郎……またですか? 」
そう言って白髪の女の子は、言い合いをしている二人の方を向き
「やれやれ……お二人共。お黙りなさい!!!! 」
そう女の子が言い放つと、二人共静かになり何か言いたそうな顔をするがじっと白髪の女の子の方を見る。
「全く。これは何事ですか?麗しの乙女がこんな言い合いをするなど品が無いと言わざる終えません。ましてやプレイヤーである佐藤小太郎の前で、この様な振る舞いなど言語道断!即刻、シュガー源老師様に報告した後、処分して頂く方がよろしいですわ」
それを聞いた二人は
「小太郎さんごめんなさいなのです……」
「……ごめん……なさい……です」
ショコラちゃんは反省した顔をして、ちーちゃんは俯いていた。
俺は、この場の重い空気に耐えきれず
「俺はいいから喧嘩しないでみんな仲良くな? 」
としか言えなかった。
白髪の女の子はそれを聞くと溜息を吐き
「本当に佐藤小太郎は何も出来ないダメ男の鑑ですわ……。まぁプレイヤーである佐藤小太郎がそうお決めになるのならわたくしはお任せいたしますが……」
少し言い方に腹が立ったが、喉が言葉で詰まる様な感覚があってなにも言い返せなかった。
そんな重い空気をぶち壊す様に
「まぁ喧嘩しても仕方ないなのです!その為のコスプレ大会なのです。 そこで決着をつけるなのです 」
ちーちゃんが取り繕った様にいい、腕組みをしながらショコラちゃんを睨む。
「絶対……負けない……です……」
二人の火花が散る中、林檎も
「僕も負けない!正々堂々、白黒はっきりつけよう!その為に白様をお呼びしたんだからな」
この白髪の子……白という名前なんだな……。
そんな事を思っていると白はおれの心を見透かした様に
「私の言うことを聞かなかったから、ここまで記憶が欠落してしまったんですわ。 自業自得です。浅ましい醜悪な人間に相応しい末路になりそうでワクワクしますわ 」
そう言って近づき俺に囁く
「まだ気づかないのですね……ふふふ」
恍惚の表情を浮かべ、耳打ちしてきたこの言葉の意味は俺にはわからない。
でも耳打ちしてきた微かな言葉に胸がざわめく。
その言葉の意味を必死に考えるが思い浮かばない。
ぼーっとそんな事を考えていると
「プレイヤー佐藤小太郎?聞きているのですか?もう競技が始まりました。別室に移動するわよ 」
その声にハッとして周りを見渡す。
いつも間にか始まっていた様で、みんな血眼になって服を探していた。
「むきぃ〜!!!ちーに似合う服はどこなのです〜こんなにたくさんあったら見つけられないなのです!!わわわ〜 」
「……ない……SMの女王……」
「SMの女王……?それならさっき見たな。確か……ここにあった様な…… ほら!あったぞ!!ショコラより先にショコラの着たかった服を見つけたぞ!」
ショコラちゃんはその様子を見ると顔を青くし、ひどく落ち込んだ様に体育座りをし始めた。
俺はその様子が気になったが、白に促され俺の部屋に向かった。
俺の部屋で白と二人きりになった。
静かな部屋で互いの息遣いだけが聞こえた。
意識してドキドキしない方がおかしい距離感で白は徐に、四つん這いになり近づいてきた。
「プレイヤーである佐藤小太郎がわたくしを、欲するのであれば与えましょう 」
そう言ってベットの上に座る俺に、近づき息がかかる距離まで顔が近づいてきた瞬間。
部屋の扉が開いた。
「小太郎!待たせたな。 一番手はこの僕だ。ショコラがきたがっていた服を僕が先にきてみたんだ……似合うかな?」
扉の前には、黒い革製のコスチュームもきた林檎が立っていた。
続く




