真っ赤な林檎と空白のネジ
心の何処かで、ずっと‘’ 何か ‘’を探している。
俺にはそれがなんなのかも、分からなかったがずっとそんな感覚が付きまとっていた。
____……俺の探している ‘’ モノ ‘’
その答えは、考えても分からなかった。
俺の記憶の、所々思い出せない空白。
瞬きするくらいの感覚で目を閉じ、次に目を開ける時にはいつも、別の場所にいる。
何故そうなっているのか、前後の記憶が曖昧で分からない事が増えた。
それでも、俺はそんな事はあまり気にしなかった。
頭の大事な部分ネジが、外れて俺は壊れてしまっているのかもしれない。
そう思いながらも、でも記憶がないくらい大したことではないという感情に支配され
それより、この可愛い女の子達とどう楽しく過ごすかが大事。
いろんな女の子と、えっちでドキドキした恋愛ごっこを楽しみたい。
そういう事に気持ちや頭は支配されていた。
記憶はない。
でも異常な事になっている事だけは、なんとなくわかっていた。
でも彼女達の笑顔を見ていると、幸せでそれだけで良かった。
目の前でショコラちゃんが微笑みかけてくる。
目が合う、するとまた……。
____……瞼が重くなり、俺は目を閉じる……その繰り返し。
次に開ける瞬間には、目の前にちーちゃんがいて俺に話しかけてきた。
「おぉーい!小太郎さん!!ちょっと聞こえてるなのです? ちーを無視するとプンプンなのです 」
ちーちゃんがほっぺたを膨らまし、怒っていた。
「……ちーちゃん?ごめんごめん……で、何の話だっけ……?」
そう言うと、俺の後ろの方から聞き覚えのない声が聞こえた。
「あぁ ⁈ 小太郎!!お前……みんなのアイドルちーちゃんがせっかく言ってるのに、何にも聞いてなかったのか? ちーちゃんが可哀想だろ? 」
後ろを振り向くと、赤髪でポニーテールの背の高い女の子が、立っていた。
「りんちゃん、援護ありがとうなのです!! そうなのです。皆んなの恋人、皆んなのアイドルであるちーのお話を聞いてないなんて、最近の小太郎さんはいつになくダメダメなのです 」
そう言ってちーちゃんはため息をついた。
この大きな女の子は、林檎だったのか……。
……ん?林檎は小さいままだったはずじゃ……?
そう思い、ちーちゃんに確認する。
「あれ?……あのさ……林檎っていつ大きくしたんだっけ……?俺……作った覚えがないだけど……」
そう言うとちーちゃんは不思議そうな顔をして
「ふへッ?小太郎さんが、この間小さいままだと、りんちゃんと出来ないし不便だから大きくするって突然言いだしたなのです! それでアップルパイの生地を作って、大きなかまどを使って大きくしたなのです 」
そう思い出しながら言うと今度は、疲れた顔をして話を続けた。
「りんちゃんを大きくしている間、ちーとショコラちゃんは大変だったなのです……」
ちーちゃんが余りにも、大変だった顔をしていたので
「えッ?何があったんだ? 」と聞くと
ちーちゃんは、待ってましたとばかりに語り始めた。
「いきなり、シュガー源老師様の声が上から聴こえたなのです……」
「今より第二乙女は第三次試練の「行動」の試練!この試練には第三乙女も同行して受けてもらう!!チームワークが肝になる試練じゃ!!乙女はおおいに頑張るが良い!!!なおこの試練は相性もある為三回までやり直りが可能じゃ!!今回で第三乙女は二度目だのぅ!!三回とも失格だった場合、乙女は現世に戻る資格無しとなる以上!!」
「……そう言って、ちー達試練を受けさせられたなのです!! 第三試練は鬼畜なのです!!しかも……合格できたのはショコラちゃんだけだったなのです 不公平なのです!!! 」
ちーちゃんはそう言って、泣き真似をしていた。
その声を聞きつけたのかショコラちゃんもきて
「……不公平……じゃない……ワンランク上……だから当たり前……」
「むむむ!!許せないなのです!!ぷっく〜!!!!なのです 」
ちーちゃんが、ほっぺたを膨らまれる。
二人は、じーッとお互いを、見たまま動かない。
そこに林檎が間に入って
「おいおい!二人共、あれから顔を合わすとこうやって喧嘩するの、良くないぞ!! ‘’ 僕の小太郎 ‘’ が戸惑っているだろ? ……それにショコラも言い方考えろよな?確かにワンランク上なのかもしれないけどでもそれは……」
「ん?今、りんちゃん ‘’ 僕の小太郎 ‘’ と言ったなのです? 」
ちーちゃんが林檎に詰め寄る。
するとショコラちゃんも、林檎に詰め寄る。
「……確かに……今……僕の小太郎……って……言った……」
林檎が二人に、まあまあとなだめながら
「二人には黙ってたけど……二人が試練に行ってる間に、僕と小太郎は結ばれたんだ!!二人には悪いけど小太郎は僕のモノだから」
「むぅ〜!!裏切り者なのです!!」
「……許さない……」
二人共、今度は俺に詰め寄ってきて
「小太郎さんの一番はちーなのです!!」
「……小太郎さんは……私が好き……」
俺は記憶にないけど、皆んなを傷つけたくないので曖昧な返事をした。
すると三人は睨み合ったまま動かない。
数分間重い空気が流れたが、その空気をぶち壊すように、ちーちゃんが提案し始めた。
「やっぱりここは、シュガーキッチン名物の、誰が小太郎さんの欲望を満たす服を着れるか選手権をして決着をつけるしか、方法がないなのです」
……俺の欲望を満たす服⁈
そう思ったと同時に、胸の奥に引っかかる何かを感じた
続く




